宇宙葬に御朱印アート? 葬儀業界の最前線が想像以上にカオスだった

2019.10.03

宇宙葬に御朱印アート? 葬儀業界の最前線が想像以上にカオスだった

終活、おくりびと、墓じまい……お葬式や供養のスタイルは時代とともに変化しています。最新の葬祭業界の実態を「エンディング産業展」の会場で探ってきました。後半では「次世代僧侶オブザイヤー」の表彰式および優勝者インタビューも。予約殺到の「アートな御朱印」も紹介します。

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    銀河ステージの宇宙葬!?

     

    ドリルでライブペインティングするお坊さん!!??

     

    ライターの村中貴士です。今日は「エンディング産業展」に来ています。

     

    エンディング産業展とは、葬儀・埋葬・供養など「終活」に関するさまざまな企業が集まる国内最大級の専門展です。

     

    「終活」や「死」の話と聞いても、特に若い世代の方はピンとこないかもしれません。多くの人は、親や知人の葬儀ではじめて「死」に直面するでしょう。なかには「突然の死にとまどった」「受け入れるまでに時間がかかった」という人も多いはず。

     

    もし、葬儀や供養についてあらかじめ知っておけば、心おだやかにおくり出すことができるかもしれません。

     

    そしていまどきの葬儀や供養って、何やらすごいことになっているようです。どうなっているのか、ちょっとのぞいてみませんか?

     

    ちなみに会場では、「次世代僧侶オブザイヤー」なる気になる名前のイベントも。お坊さんのコンテストとは一体…?

    こちらの模様も、記事後半でお伝えします!

     

    遺骨をダイヤモンドに? 変化する「弔い」の形

    ということで、まずは冒頭の写真を改めてご紹介。

    寺院向けの納骨壇、仏具などを扱っている「(株)IRC」のブースです。写真の仏壇は、なんと総額1200万円! 新本堂を作る、あるいは建物の老朽化で建て替える際に納品することが多いそうです。

     

    まるでカフェバーみたいな内装……実はこれ、霊柩車の中なのです。しかも車種は皆さんがよく知る「アルファード/ヴェルファイア」。

     

    「光岡自動車」が手がける霊柩車「アルファード/ヴェルファイア プレミアムフュージョン」。外見は霊柩車っぽくないですよね。価格は500万円前後です。

     

    人工衛星の打ち上げに成功したのか? と思わせる展示。ここは「宇宙葬」と「海洋散骨」を扱う「銀河ステージ」のブースです。

     

    宇宙葬とは、遺灰を収めたカプセルをロケットに搭載し、宇宙空間へ打ち上げる散骨プランのひとつ。ロケットは宇宙空間を4~5分浮遊し、その後引力により再び地球へ。大気圏へ再突入する際にすべて燃え尽き、最後は流れ星になります(ただし、肉眼では見えません)。すでにアメリカで4回の打ち上げ成功、約30件の宇宙散骨実績があるとのこと。

     

    価格は、いちばん安いプランで45万円から。どんな人が依頼するのか聞いたところ、「いわゆる富裕層がメインですが、意外と一般のサラリーマン家庭の方からも申し込みがあります。いまは葬儀にお金をかけなくなっていて、お墓を持たない代わりに宇宙へ、という方も増えていますよ」と説明してくれました。

     

    ただし、北朝鮮による飛翔体など、世界情勢によって打ち上げが延期されることもあるようです。

     

    さすがに宇宙はちょっと……という方には、遺骨を海にかえす「海洋散骨」がおすすめです。価格は、代理委託プランだと5万円~とリーズナブル。家族が一緒に乗船できるプランは12万円~となっています。

     

    お次は「ダイヤモンド葬」を紹介していた「アルゴダンザ・ジャパン」のブース。遺骨の中に入っている炭素だけを抽出し、熱と圧力を加えることで人工的にダイヤモンドを製作するそうです。

     

    価格は、一番小さい0.2カラットで48万円、最大の1カラットで248万円!

     

    ちなみに、どんな人が依頼するのか聞いてみると、

    「最初のころは、子どもを亡くしたお母さんや、40~50代でご主人を亡くした未亡人など、若くして亡くなった方のご家族が多かったですね。最近では、お墓を建てる代わりに遺骨全部を使ってダイヤモンドを作りたい、という依頼もありますよ」(アルゴダンザ・ジャパン代表取締役、法月雅喜さん)

     

    どうやら傾向として、

    ・家族葬や樹木葬(墓石の代わりに樹木をお墓の目印にする)など、葬儀を簡素化し、お金をかけなくなっている

    ・お墓を建てない人も増えている

    ・海洋散骨、宇宙葬、ダイヤモンド葬などの代替案が出てきた

    という流れのようですね。

     

    卒塔婆ECや葬儀費用の電子決済。進むIT化

    さて、いまや卒塔婆もネットで注文する時代。卒塔婆専門の通販サイト「卒塔婆屋さん」のブースです。運営しているのは、創業明治15年の「有限会社谷治新太郎商店」。

     

    「急に卒塔婆が必要になってしまって……」という方は、こちらのサイトですぐに注文してください。最短で翌日納品も可能、バラでも購入でき、価格も100~500円程度と大変お求めやすくなっています。

     

    葬祭事業者向け決済サービスを案内していた、「ソニーペイメントサービス(株)」のブース。葬儀費用もクレジットカードや電子マネーで決済……これも時代の流れでしょうか。

     

    これ以外にも、訃報や葬儀の案内をクラウド上でシェアできるサービスなど、エンディング産業にもIT化が浸透しつつあるなあ、と感じました。

     

    続いては「遺品整理クリーンサービス」のブースで展示されていた、ゴミ屋敷のミニチュア。

     

    2年前のエンディング産業展で展示用にミニチュアを作成したところ、SNSで拡散(Twitterで14,000RT)。 テレビや新聞でも取り上げられました。

     

    ミニチュアの作者は、遺品整理クリーンサービス(株式会社ToDo-Company)の社員、小島美羽さん。なぜこのようなミニチュアを?

     

    「最初のころは、ポスターや写真を展示して説明していたんです。でも、聞いている方はなかなか実感がわかないんですよね。自分には関係ない、で終わらせてはいけない。孤独死の現実を知ってもらうためにはどうすればいいかと考えて、じゃあミニチュアを作ろう、と。社長や他の従業員にはバカにされつつも、勝手に作ったんですよ」(小島さん)

     

    ミニチュアはめちゃくちゃ精巧で、孤独死の現場がリアルに再現されています。反響の大きさを受けて、今年8月には書籍『時が止まった部屋』も出版されました。

     

    さてさて、会場の一角ではこんなイベントが。その名も「次世代僧侶オブザイヤー2019」……つまりお坊さんのコンテストということらしく。

    一体何を審査するんでしょう…?

     

    ライブペインティング、ジャグリング、電気事業者……新世代のお坊さんが続々登場!

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    この記事を書いた人

    村中貴士
    村中貴士

    編集&ライター。大阪生まれ。路上観察とエッジの効いたイベントレポートが得意。デイリーポータルZ新人賞2017で入選(佳作)。「大阪人っぽくないよね」とよく言われるが、人を笑わせたいという吉本的アイデンティティーが自分の血には確実に流れている、と思う。

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