
番組が面白くなることを確信した、おにぎりの食レポ
──シーズン4までつくったことで、そろそろバラエティにも慣れてきましたか?
平出:正直、いまでも変わらずずっと緊張しっぱなしです(笑)。だって百戦錬磨なのに現役でカンペを出している佐久間さんに対して、ペーペーの僕がカンペを出すなんて……という感じで慣れないままですね。
──佐久間さん、平子さん、福田さんと仕事を重ねたことで、コミュニケーションをとりやすくなってきた部分はあるのでしょうか。
平出:実際にお会いした回数でいうと、じつは演者のおふたりはシーズン1から4までの撮影4回と、佐久間さんは別番組で1回、福田さんは東京出張の際に1回だけしかお会いしていなくて。まだ緊張する部分は残っています。
──視聴者としてはたくさん見ているつもりになってるけど、1シーズン1日で撮影すると、会う回数は少ないのか……。ロケのなかで印象に残っている場面はありますか?

堀田:シーズン1初回の冒頭で、地元のスーパー『マルト』に行ったんですけど、その時点でこれは本当に面白くなるかもしれない……という予感がありました。人生で始めて食レポをする佐久間さんがおにぎりを食べて、平子さんにダメ出しされる。そして平子さんが食レポのお手本を見せるというシーン。おにぎりを食べるだけでおもしろくなるのか、と衝撃でした。
平出:あれは僕も印象に残ってますね。情報番組をやってきたので、食べてみて「おいしい」というコメント、モノをカメラに見せながらお米や具材の産地など情報を語る、そして生産者やつくった職人に思いを語ってもらう……みたいにやってきたんですけど。おにぎりの食べ方をいじりいじられておもしろくなるなんてことを想像もしていなかったんです。
──今ではYouTubeなどでハイレベルなレポをこなしている佐久間さんの、貴重な初食レポのシーンですよね。トークがうまくて演者として達者なので、なんでもできるスーパーマンに見えがちですが、じつは2021年の時点では食レポはうまくなかったことがわかる、いまでは貴重なシーンといえます。
堀田:たしかに、佐久間さんの食レポは僕たちの番組が初出しだと思います(笑)。平子さんからダメ出しされてガチ反省している佐久間さんの表情がおもしろくて。平子さんが佐久間さんをいじる構図は、東京でディレクターとして佐久間さんが平子さんに指示をするのと立場が逆転しているのもポイントなんだと思います。
──ラジオ巧者のふたりなので、元々なんでもないことから展開をつくることは得意だったはずで。そこに加えて、同郷のふたりが地元ならではの絡みをできる雰囲気ができあがった瞬間があの食レポだったのかもしれませんね。
1箇所15分で撮れ高をつくる、千鳥レベルのロケスキル
──ほかにも情報番組とバラエティの違いを実感した場面はありますか?
平出:とんかつ屋さん・やきかつ太郎での大将のコメントは、その最たる例ですね。お年を召した方なので、佐久間さんが「いつまでお店をやりたいですか?」と聞いたところ、「あと3日でやめたい」という、最高の返しがきて爆笑が起こったんですけど。あれって、情報番組だと苦笑いして困っちゃうコメントかもしれないんです。
無意識のうちに「死ぬまでお店を続けたい」的なコメントを欲しがって、きれいな展開にしがちだったな、と気づきました。
──ロケ終わりのバス内で、佐久間さんが「数字ボケの100点だった」と絶賛していたシーンですね。情報番組の予定調和が悪いわけではないですが、そのなんとなく決まっている雰囲気を壊していくのがバラエティのおもしろさということなのかも。めちゃおもしろい。

平出:シーズン2初回(『ロストテクノロジー編』)では、せっかく刀鍛冶の元を訪れたのに、ふたりが刀を叩く体験をするシーンはまったくなくて、ほぼトークシーンだけ。これも情報番組だとありえない作りでした。
──刀の伝承が途切れてしまい、平安時代までの刀がいちばん性能がいいので、美術館で昔の刀を目視で研究しているというエピソードが出たロケですね。
平出:あのロケ場所は15分しかカメラを回していないんですが、編集してみたら12分くらい使ってたんです。
──ほぼ完全ドキュメントですね(笑)。
平出:普通の番組なら鉄を熱してカンカン叩いて汗をかいて……ってやるところを、ほぼ立ってトークをしているだけ(笑)。それであんなに面白くなるのは、感動でした。
──シーズン1初回の冒頭で、佐久間さんが「1箇所15分で撮れ高をつくるって、千鳥とか(レベル)だからね(笑)」とクレームを入れてましたが、ふたりがまさにそのレベルにいる証のシーンだったと。コンビでもないのに、お互いにいじっていじられて、すごくいい組み合わせに加えて、15分でなんとかしないといけないという縛りが、いい緊張感とドキュメント感につながっている可能性もありそうです。
平出:我々としては、もう本当に、おふたりと福田さんにおんぶにだっこという感じです(笑)。
行政のゴリ押しゆるキャラを武器に変えたプロデュース
堀田:いちばん反響があったのは、シーズン2の第2話(『ローカルマスコット編』)に出てきた“行政バーガー”です。ローカルコンビニのWAIWAI SHOPで売っている食べ物で、『フラおじさん』という、いわき市のゆるキャラのコラボハンバーガーなんですけど……。

フラおじさんの行政バーガー(税込350円)湯本のゆるキャラ「フラおじさん」がプリントされたロコモコ風バーガー。ザクザクのメンチと目玉焼き、レタスやサンシャイントマトなどが相性抜群。番組内のプロデュースにて、「ロコモコ風バーガー」と「行政バーガー」のふたつを売り出してみて、売上が多かったほうに名前を決めたらどうか、という案が出て採用されたという。https://waiwaishop-iwaki.com/fura-burger
──番組を未視聴の方にとっては、いきなり知らない情報が多すぎる。
堀田:番組でお店を訪れたときは、“フラおじさんバーガー”として売っていたんですが、お店の人が「味には自信があるからもっと人気を出したい」と。これに対して平子さんが「行政の味がする」と指摘して(笑)。番組内のプロデュースの結果、“行政バーガー”と名前を変えて売り出してもらったら、とんでもなく売れたそうです。
──行政が無理やりしかけようとしてすべってるゆるキャラに対して、「行政の味がする」という絶妙なワードを出すあたり、さすがのバラエティスキル。地元の人たちもうっすら思っていたからこそ爆売れしたと。これも情報番組だと気まずくて絶対にできない展開だと思います。
平出:でも芯を食ってるから、現場ではみんな大笑いできるんです。これも地元出身のふたりの“愛ある地元いじり”だからこそ、ではあると思います。
──そして番組の仕掛けだったプロデュースが、実際の効果を上げているわけですね。すばらしい。個人的には、スパリゾートハワイアンズのゆるキャラをプロデュースする場面で、“行政バーガー”と似たようないじりをされたとき、担当広報の苦笑がすごくリアルだったのが印象に残っています。
平出:ハワイアンズといえば、全ロケのなかでダントツでたいへんだったのが、職員で結成されたアーティスティックスイミングのチーム・スプラッシュボーイズの撮影でした。
これはもうシーズン3の第3話をみていただければわかるんですが、着地点が見えずにふたりも相当頭を悩ませていて(笑)。過去最長の40分ほどかかって、30分押してしまったんです。
※スプラッシュボーイズ……スパリゾートハワイアンズのスイミングチーム。披露している演目は、映画・ドラマ『ウォーターボーイズ』のシンクロ指導をしたことでも知られるトゥリトネスの監修のもと構成されているという。https://www.hawaiians.co.jp/show/splashboys/
──10分押したら破綻するのに、大ピンチ!
平出:チームメンバーのなかで、なんとかひとりいじっても大丈夫なキャラを見つけてから、そこを軸にオチをつけようと動いていって。結局、その後の場所を猛スピードで回ったんです。あれが、全シーズン通していちばん苦労しましたね。
──シーズン3はほかのシーズンとは違って、第4話の冒頭の時点で空が暗くなっていたので、どこかでスケジュールが押したんだろうなとは思っていました(笑)。
TVerとradikoがなければありえなかった大ヒット
──TVerを中心に全国で人気を博して、番販は20局以上と全国ネットに近い数字です。番組のシーズン4放送から約1年が経ちますが、この大ヒットは局内ではどのように受け止められているんですか?
堀田:じつは、福島にいると全国のみなさんに楽しんでもらえているのか、そこまでわかっていないんです。県内の放送では大きな反響があったわけではないので……。TVerも自分たちの番組の数字は見られるんですが、ほかの番組の数字はわからないので、どのくらいの数字だとスゴイのか、いまいちわからないんですよ。

非売品の番組特製ポストカード。シーズン4第3話『バックストリートいわき編』で訪れた、コスプレ撮影にぴったりの「旅館こいと」で撮影された写真を使用している
平出:番組開始当初は、佐久間宣行さんの存在を知っている人が福島県にはあんまりいなかったのかもしれないです。僕はラジオやお笑いが大好きなのでもちろん存じ上げていましたけど、そもそも佐久間さんの古巣であるテレビ東京が、エリア的な問題で福島だと放送されていないんですよね……。
堀田:佐久間さんの手掛ける『ゴッドタン』(テレビ東京)は、番組販売で深夜に流れてるんですが、お笑い好きの方たちが見ている番組なので。その意味ではこの『サクマ&ピース』も、TVerを通して全国のお笑いやラジオが好きな方、エンタメの感度が高い方たちが見てくれているのかな、と思っています。刺さっている人には深く刺さっているのかなというイメージはありますね。
平出:番組発足当初も、せっかく佐久間さんが番組のことをラジオで紹介してくれたのに、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)を聞いている方は、福島中央テレビを見れない。逆に福島で『サクマ&ピース』を見ている人は、『オールナイトニッポン0』で地元の番組がいじられていることを知らないという、なんともいえない状況で(苦笑)。
堀田:TVerとradikoがなければ、こんなにたくさんの方に見てもらえることはなかったと思うので、インターネットさまさまという感じです。
──結果的に、地元のリソースで番組を作って、現代のテクノロジーによって全国に届けることができる仕掛けになったわけですね。もし10年前だったらここまでのヒットにならなかった可能性もあると考えると、地方局とキー局という境目だけでなく、いろいろな壁が壊れ始めていることがわかる好例なんだと思います
番組のヒットで新たな編成枠のつくり方ができた
──とはいえ、TVerで数字が出ているうえ、カルチャー好きに届いたヒット番組ということで、さまざまな反響が合ったと思います。
堀田:東京支社で、広告代理店から「『サクマ&ピース』おもしろいですね」ってお声がけいただくこともあったみたいなんですが、社内の人が「え、そうなんですね」とピンときてないケースはあったみたいです(笑)。
平出:星野源さんのラジオを聞いているとき、不意に「『サクマ&ピース』を見てます」って話が聞こえてきたときはすごくうれしかったですね。
堀田:あと視聴者の方たちがSNSで「聖地巡礼しました」って投稿してくれたり、「どこであれが食べられるんですか」と問い合わせがあったりして、聖地巡礼マップを慌てて作りました。

平出:シーズン3までのマップを作ったんですが、シーズン4放送の前だったので、平子さんから「シーズン4まで待ってつくればよかったのに」と言われて、たしかに……となりました(笑)。
──(笑)。視聴者からは「次のシーズンを見たい」という声もあると思うのですが、その予定はありますか?
堀田:ありがたいことに、SNSなどでそういった声をいただくことは多々あります。もちろんぜひ次のシーズンもやりたい気持ちはあります。じつは番組中で話が挙がっていたイベントも試行錯誤したことはあるのですが、佐久間さんと平子さんのおふたりが本当に忙しくてスケジュールが難しい。くわえて、そもそも我々ふたりも帯の番組を担当しているので、なかなかリソース配分が難しい部分があるんです。
──さきほど名刺をいただいて分かったんですが、ふたりとも、局内で随一の影響力を持つ帯番組のディレクターとプロデューサーなんですよね。局内のエース的存在だから『サクマ&ピース』がヒットしたからといって、他の番組を作ってもらおうという感じにはならないという。
堀田:エースではないですが(笑)。一応、毎日夕方に放送している帯番組のプロデューサーと総合演出なので、気軽に他番組ロケに行くことは難しいんです。『サクマ&ピース』も年に1回放送してきましたが、ロケは1日で終えているのでなんとかなっているという感じで。
平出:新入社員の面接で、『サクマ&ピース』みたいな番組を作りたいという人もいるんですよ。うれしい反面、僕もバラエティを作りたいと思い続けてようやく実現できたのがこの番組なので、心のなかで「なかなか難しいかもね……」って思ってます。
平出:もちろん局内でも全国に向けた企画が必要という認識はあります。とはいえ地元では、福島中央テレビといえば『ゴジてれ Chu!』と言っていただく方が本当に多いんです。『サクマ&ピース』は全国のいろいろな地方で見ていただいている方が多いと思うんですが、ローカル局のリソース配分としてはなかなか難しいのが現状です。

『ゴジてれ Chu!』は福島中央テレビで毎週月曜〜金曜まで、午後3時50分〜午後7時に放送中。リニューアル前の番組を含め、今年で番組放送開始から30周年を迎える
──とはいえ、全国に向けたヒット番組も作れるという実績を作れたことは大きいと思うのですが、局内でポジティブな変化はありましたか?
堀田:『サクマ&ピース』のような特番を、シリーズで複数話連続放送するという企画が通りやすくなったのはありますね。
これまでの特番といえば、1回放送して終わりという固定観念がありました。放送枠の作り方として、連続放送するという発想がなかったんですね。そこを突破して、しっかり作れば続きものでも見てもらえるという成功体験ができたのはよかったと思います。
──すごい! 大きな一歩になったわけですね。その後、そういった枠で番組は作ったんですか?
堀田:去年はLDHのダンス&ボーカルグループ『FANTASTICS』のメンバー全員が出演する番組を作りました。『ゴジてれ』の中で月に2回メンバーの特集があったので、そのスピンオフを特番にして。
『FANTASTICS畑』という、メンバーたちが福島県内の畑を巡って県内産の野菜を紹介する番組です。この反響は大きかったですね。12月にも放送があるので、ぜひ見てほしいです。
※『FANTASTICS畑』……2024年12月14日・21日・28日の午後4時30分~午後5時放送。放送地域は福島県内。各話、放送終了直後より民放公式テレビポータルサイト「TVer」で配信予定。https://www.fct.co.jp/program_sp/fantastics_hatake_sp2024/
──グループのファンが多く見てくれたと考えると、カルチャー好きの『サクマ&ピース』とはまた違った客層を開拓できたわけですね。ヒットを積み重ねていて、すばらしい。
ヒットの裏には屍が多数。シンプルに数を打つべし
──最後に、それぞれの地方から全国に向けた企画を仕掛けたい人がたくさんいると思うのですが、なにかアドバイスはありますか?

堀田:アドバイスというほど偉そうなことはいえないですけど……。前提としては、必ず福島のためになる企画であることを意識しています。
もう一つは、数を多く打つしかない。これに尽きると思います。じつはヒットしなかった番組も作ってきたので、ヒット番組の影には屍が積み上がっているんです。ごちゃごちゃこねくり回すよりも、シンプルな企画で数を打ったほうがいいと思います。
平出:シンプルな中にもひとつテーマがあるといいと思っていて、『サクマ&ピース』でいうと、“愛ある地元いじり”が大テーマになっています。番組の作りとしては、いろいろなスポットを巡るなかで、最後はその場所やモノをプロデュースするという着地点を作りました。紹介された人たちが喜んでくれるものをひとつお土産にして去りましょう、という決まりです。
堀田:企画段階では、それぞれの場所でCMをつくるなどの案もあったのですが、場所ごとに差が出ちゃう、時間などリソース配分が難しいなどの問題もあって。こねくりまわさずにシンプルにしよう、と今のかたちになりました。
──それぞれのプロデュースも芯を食っていて、その部分だけで十分おもしろい作りになっているから、すごいですよね。
平出:そうなんです。そう考えると、佐久間さんと平子さん、福田さんの3人がすごいんです、本当に(笑)。
堀田:そうだね。あらためて、僕たちがすごい番組を作ったっていうより、あの3人がやっぱりすごい。ここだけは太字にしておいてください(笑)。
──最後にイチ視聴者として、シーズン5も期待していいてしょうか?
堀田:売れっ子のおふたりのスケジュール次第ですが、ぜひやりたいとは思っています。シーズン4までで、春、夏、秋のロケができたので、雪のあるエリアに行ってみたいと思っているんですが……。
平出:冬は路面凍結や新幹線の欠便の可能性があって、ロケスケジュールが不安です……。
──雪で立ち往生して困るロケ、ぜひ見てみたい……(笑)。楽しみにしております!! 本日はありがとうございました!
あわせて読みたいテレビ局の記事
この記事を書いたライター
毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。守備範囲は政治社会からアイドル、スポーツ、ゲームなどエンタメまで。最近はテックや食と農に関する仕事が多め。


































