朝の鎌倉のよさを、鎌倉育ちの店主に聞く

「朝食屋COBAKABA」の店主、内堀敬介さんは鎌倉生まれ、鎌倉育ち。

 

両親が営んでいた「小林カバン」は、2006年に内堀さんのお母さんとお姉さんが中心となって引き継ぎ、日替わり食堂の店「コバカバ」としてオープン。

 

和洋折衷の家庭料理を提供していましたが、2017年にメニューを固定した「朝食屋COBAKABA」としてリニューアルしました。

 

なぜ、鎌倉で朝食専門店を始めようと思ったのか。そこには、鎌倉に流れる時間が「自然とともにある」ことへの気づきがありました。

 

自然とともにある鎌倉時間を感じられる朝食屋

「鎌倉で朝食専門店というのは珍しいと思うんですが、なぜ朝食のお店にしようと思ったんですか?」

「お店のリニューアルにあたって自分の中でいろいろ棚卸ししていったときに、『鎌倉の魅力ってなんだろう?』って考えたんです。思い当たったのは、観光地なので割と都会的な面もありながらも、自然と近い時間が流れているところが魅力なんじゃないかということ。そこで、鎌倉で過ごす『時間』を伝える店にしようと辿り着いたんです」

「鎌倉に流れる、自然に近い時間とはどういうことでしょう?」

「鎌倉って、日が昇ればお寺で座禅が始まったり、海でサーフィンしている人がいたり、市場が動き出して、日没になったらお店も結構閉まっちゃう。結構自然のリズムに近い時間で動いているんですよね。なので、振り切って朝食屋にしました」

「早朝から開いているお店があれば、観光客の方も鎌倉の日常を垣間見ることができますね。『朝食屋COBAKABA』はメニューも一汁一飯の和食がベースになっていて、外食というよりも日常のごはんという感じがします」

 

「そうですね。朝はまだ胃が起きていないので、シンプルでやさしいごはんがいい。それも自然のリズムのひとつですよね」

「COBAKABAには『汁飯香』という、ごはん、味噌汁、香の物だけのシンプルなメニューがありますよね」

「朝食を通して季節を感じてもらうことをメニューに込めています。季節を感じるって、基本的にお金もかからないし、ただ見ていれば発見できるものなんです。都会的な生活をしていると、どうしてもいろんなものが欲しくなったり、足りないものを埋めようとしてしまうけど、『もうあるよ』ってことに気づいてもらいたくて」

「禅の『吾唯知足(われただたるをしる)』のような精神性。そういう感覚が自分の中に生まれてきたのって何がきっかけだったんですか?」

「もともと、常に右肩上がりに進化していかなきゃいけないみたいな感覚のほうに違和感がありました。自然界には春夏秋冬があって、夏も冬も同じように収穫するってありえないじゃないですか」

「たしかに……」

「だからその時その時の季節の波に乗って生きていくほうが、本来は自然なこと。自然の時間っていうのはお野菜に反映されるので、COBAKABAのお味噌汁が『今の時期はこうですよ』と知らせる時計のような役割になったらいいなと思っています」

 

店内に時計はなく、季節の移り変わりを伝える「地球暦」が貼られている

 

「今日のお味噌汁はトマトや大葉など、旬の夏野菜がたっぷりでした」

「大葉の季節も北海道と沖縄だったら全然違うんです。だから『この時期は大葉が旬』というような固定観念から入るのではなく、鎌倉の土地に大葉が出てくるタイミングを大切にしたいと思っていて。その土地の時間、土地に流れる時間みたいなものを発信するようにしています」

 

鎌倉は「オードブル」みたいな街

「内堀さんはずっと鎌倉に暮らしていて、ここはどういう街だと感じていますか?」

「多様性がある街。観光地なので入れ替わりが激しい部分もありますが、いろんな個性を認められたり、小さく挑戦がしやすい寛容さがあると思います。狭いエリアにいろんな人が住んでいるので、自然と相手を尊重する姿勢が身につくのかもしれません」

「私も鎌倉に来て、魅力的な個人店やイベントがすごく多いと感じています。街が多様で寛容だから挑戦しやすい文化が生まれるんですね。COBAKABAでポップアップなどを経て独立したお店も多いですよね」

「そうですね。うちにドーナツを置いてもらっている『べつばらドーナツ』もここからスタートしましたし、今も夜の時間は『yuge』というちょい呑みのお店に使ってもらっています」

「べつばらドーナツさんは、今回の朝の鎌倉10選でも紹介していて、私も大好きです」

「朝食屋をする上で、『いろんな始まりに立ち会う』というのをすごく大事にしているんです。一日の始まり、旅の始まり、鎌倉暮らしの始まり、お店の始まりもそう。ずっと見ているという関係性よりも、『いらっしゃい』ってここから送り出していくような、 そんな場所になるといいなと思っています」

 

COBAKABAでは、自家製お味噌などのほかに、店主セレクトの地域の食材も販売。地域をつなぐハブとなっている

 

「内堀さんの思いが自然とお客さんにも伝わっていると感じます。友人をCOBAKABAに連れてくると、みんな『鎌倉に住みたい』って言うんです」

「それこそ鎌倉って、何かの始まりにちょうどいい街だと思うんです」

「どういうことですか?」

「歴史があって、海があって、山があって、都会的なお店もある。ただし、どれもそのジャンルの一番というわけじゃない。お寺なら京都があったり、いい波を求めるなら九州とかもっと別の地域もある。でも狭いエリアにこれだけの魅力がいいとこ取りのオードブルみたいに詰まっていることが唯一無二なんですよね」

「オードブル! 言われてみるとすごくしっくりきます」

「だから自分が鎌倉のどこに惹かれるのか紐解いていくと、理想の暮らしが見えてくるんだと思います。実際に、鎌倉移住を経て、さらに別の地域に移住する人も多いですよ」

「そうなんですね! 私はいろいろ食べたいタイプなので、オードブルな街であること自体にすごく魅力を感じています。ちなみに、内堀さんのおすすめの鎌倉の朝スポットはありますか?」

「妙本寺が好きです。朝に行くと、ほとんど人がいないんですけど、 雨のような蝉時雨が聞こえて、ちょっと違う世界に連れて行かれるような不思議な感じがあるんです」

 

早朝に訪れた妙本寺の参道。木漏れ日と自然の音が美しくて、吸い込まれそう

 

「あとは鶴岡八幡宮。夏には池に蓮がいっぱい育って朝に花が咲くので、特別な光景です。毎朝6時ごろになるとラジオ体操をやっているので、一緒に身体を動かして、少し散歩して帰ってくるのはいいですね」

「お寺も早朝に行くと全然雰囲気が違いますよね。すごくいい気が流れている気がするし、一日の始まりに背筋が伸びる感じで。私も鎌倉の朝活をもっと楽しみたいなと思います。今日はありがとうございました!」

 

 

おわりに

もう当たり前すぎて、改めて言うのも恥ずかしいですが言わせてください。

 

早起きは三文の徳!!

 

いつもにぎやかな鎌倉の街が、朝にだけ見せる、凛とした景色。昼に歩いているだけではわからない、この地域の新しい表情を見ることができました。

 

人が多い昼の時間は「ザ・観光地」の趣が強いですが、人が少ない朝の時間のほうが歴史・海・自然などの魅力がオードブルのように詰まった鎌倉のよさがダイレクトに感じられると思います。

 

朝のお寺参りと一緒に、ぜひ朝の鎌倉の街を歩いてみてください。みんな、早起きしよう〜!

 

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