いろんな縁が交わり、つくり上げられていく沖映社

ISO:僕がいろいろPodcastを聞いたうえで、沖映社が良いと思った理由のひとつが「音の良さ」でした。もちろん内容も大切なんですが、音の部分って割と皆がPodcastを選ぶ重要なファクターなんじゃないかなと。

潤一さん:僕らも沖映社を始めた頃はきちんとした機材がなく、音も良くなかったんです。でもある方に機材などを寄贈いただきまして。

ISO:ある方とは?

潤一さん:CHEMISTRYの「君をさがしてた〜The Wedding Song〜」などを作曲している音楽家の川口大輔さんです。

ISO:え、ビックネームだ! どういう流れでそんなことに?

潤一さん:川口さんは普段は東京在住なんですが、HYをはじめとした沖縄のアーティストのプロデューサーをしている関係で沖縄にも拠点を置いていて。沖縄の社会状況や歴史について知りたいと思っていたタイミングで、Twitterのやりとりから僕と2人で呑むことになったんです。それですぐ意気投合しました。

ISO:Twitterはやっぱりすごいな……。

潤一さん:川口さんは映画をあまり観られなかったんですが、沖映社を聞いてくれたことを機に観るようになったそうなんです。ただ沖映社について「音だけが本当に悪い」と言われて(笑)。それで個人スポンサーとして、マイクや録音機材まで全部購入してくれたんです。

モバプリさん:僕らのあしながおじさんですね。

ISO:そして収録場所も特殊ですよね。

モバプリさん:那覇にある「Dish&Wine CRIB」というレストランの定休日に、場所を借りて収録させてもらってます。部外者なのになぜか合鍵を持っていて。

ISO:それはなぜ?

モバプリさん:最初の頃は会議室を実費で借りて収録していたんです。でもある時、沖映社を聞いてくれているリスナーの縁で、CRIBのオーナーから「定休日なら無料で使って良いよ」とご提案いただきまして。

潤一さん:毎週定休日に来ていたはずが、メシがめちゃくちゃ美味いので気がついたらしょっちゅう来るようになってました。番組内でも推してるからか、リスナーもよく食べに来ています。

ISO:沖映社の聖地的な場所なんですね。

モバプリさん:沖映社は機材も場所も、聞いてくれてる人の支えによってできているんです。そういうミニマムな運営だからこそ、僕らが大喧嘩しない限りは終わりません。

 

元芸人と元バンドマン。異色の職歴を経て辿り着いた現在地

ISO:インタビューもそろそろ終わりなんですが、お二人のキャリアもすごく気になっていて。そもそもスマートフォンアドバイザーって……?

モバプリさん:スマホに関する講習からメディア出演、ライターまでいろいろやる自称の職業です。キャリアを説明すると、僕はもともとお笑い芸人で。高校在学中に芸人を始め、沖縄のお笑い事務所であるFECというところに入ったんです。ゆるいノリではありつつ、ラジオやイベントで喋ったりネタを披露していました。

ISO:やたら喋り慣れていると思っていましたが、納得です。

モバプリさん:その後、芸人をしながら大学に通ってたんですが、あるとき唐突にぜんぶ辞めたくなって。とりあえず東京に行って、仕事をしながらお金を貯めようと思い上京したんです。それで携帯ショップで働き始めて、仕事に没頭していたときに発売されたのが「iPhone 3G」だった。

ISO:時代の転換点だ。

モバプリさん:僕も衝撃を受けてスマホに夢中になったんです。すると会社から「各ショップのスタッフにスマホを教える仕事をしてくれ」と言われ、研修担当として会社公認でスマホのことばかり考えられるようになって。

そんなとき、芸人時代に交流のあった方に近況を聞かれて「ひたすらスマホを愛してます」って言ったら「専門職にすればいい」と後押ししてくれたんです。それで携帯ショップを辞めて、モバイルプリンスとして活動を始めました。

ISO:モバイルプリンスという名前の由来は?

モバプリさん:昔ハニカミ王子やハンカチ王子っていたじゃないですか。彼らはそう呼ばれて謙遜してたと思うんですが、あえて王子感のない僕が王子を名乗り出てみようかなと。

加えて、スマホのモラル講師として小中学校に呼ばれることもあるんですが、スーツ姿の本名おじさんが行くより謎の名称の人物が行く方が興味を惹かれるかなって。

ISO:確かに学校がざわめきそう。

ISO:潤一さんはどういう流れでライターに?

潤一さん:僕はもともとバンドマンなんです。大学時代からMONGOL800と同じレーベルでバンドをしていて、音楽で食っていこうとしたけど叶わずで解散。それで27歳くらいのときに就活をして新聞社に入社しました。

ISO:バンドから新聞社ってギャップがすごいですよね。

潤一さん:大学で良い先生に巡り会えたおかげもあり、勉強が好きだったんです。大学時代、ライブで全国を回りながらレポートを書いたりしていて。

ISO:新聞社ではどういう仕事を?

潤一さん:特定の地域の市町村のあらゆることを担当する「地方部」という部署で、沖縄中部の行政から議会、イベントごとまであらゆるトピックを担当していました。その後に配属されたのが、いろんな事件を扱う警察担当。それから宮古島支局と内勤を経て、8年間在籍した新聞社を離れてフリーのライターに転身しました。

ISO:改めて濃いふたりによるPodcastだ……!

 

常に開かれたコミュニティでありたい

ISO:2024年にPodcastで取り上げて、印象に残っている映画はなんですか?

潤一さん:予想外にくらったという意味では、依存症からの回復を題材とした『アディクトを待ちながら』かもしれない。

モバプリさん:たしかに!当事者もたくさん出ていて、自分のなかの偏見にも気付かされたり、自分ならどう言うかとか考えたり、いろんな感情が引き出されました。つくりに甘い部分はあるけど、それが気にならないぐらい愛おしい映画です。

依存症患者らで結成されたゴスペルグループがコンサートを開催する。だが主要メンバーであるミュージシャンが現れず……。高知東生が主演を務め、実際の依存症者(アディクト)やその家族を多数起用している

潤一さん:実は番組内でも一番反響があって、当事者やその家族の方から「取り上げてくれてありがとう」とたくさんコメントをもらったんですよ。

モバプリさん:もちろん嬉しかったんですが、ただ映画の感想を発信しただけなのにこれほど感謝されるということは、当事者や家族は普段どれだけ逆境のなかにいるんだろうと思わされましたね。

潤一さん:僕らはあの映画を観て、その後に依存症に関する本を読んで得た借り物の知識を噛み砕いて話をしただけ。だからそれを取り上げた沖映社がすごいわけではなく、そういった発信をしないメディアがサボりすぎなだけなんですよ。

ISO:他国に比べ、日本では依存症は軽視されている印象がありますもんね。でもそういった見過ごされがちな作品をきちんと取り上げ、発信する沖映社の存在は大切だなって改めて思いました。

ISO:今後、沖映社をどのように育てていきたいですか?

モバプリさん:マネタイズなしで、コミュニティづくりのためのイベントはやりたいですよね。たとえば材料費だけ集めてみんなで沖縄そばをつくるとか、普通の企業や放送局がやらないような距離感で。それが僕らの視野を広げて番組を良くすることにも繋がると思うし。

潤一さん:番組を介して誰もが安心して話せる、開かれたコミュニティを広げていきたいですよね。そのうえで今の感じで番組を続けられればいい。

モバプリさん:常に開いてはいたいけど、僕らの考え方を嫌う人にはバレたくない(笑)。だからそうならない規模感で、ひっそりとじわじわ広げていければいいなと思っています。

取材協力:沖映社
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note:https://note.com/okieisha
Dish&Wine CRIB:https://www.crib-okinawa.com/

撮影:本永創太