
どうも、ライターのISOです。仕事柄ほぼ毎日映画を観ているんですが、いつも思うんですよね。
「翻訳者の皆さんありがとう!!」
……と。遠い国の人たちが知らない言葉で作った映像作品を、僕みたいな日本語しかできない人間がシームレスに理解して楽しめるってすごくないですか。個人的には字幕派なんですが、限りある文字数の中で原語の意味+作品の空気感やキャラクター性を込めて自然な台詞として出力するのって本当に大変な作業だと思います。
最近は機械による翻訳も増えてきましたが、翻訳者さんの作品と見やすさを比べると一目瞭然。普段の字幕がどれだけ職人技なのかを改めて実感します。感謝しかない。
そこで「翻訳者さんがどのように仕事をしているのか取材してみたい」と、僕が絶大な信頼を置いている翻訳者さんに依頼したところ、快諾いただきました。

その名も、アンゼたかしさん!
映画ファンなら、映画の最後に出てくる【字幕 アンゼたかし】という文字を一度は目にしたことがあるはず。
アンゼさんが手掛けた作品の一部はこちら。
・『シャーロック・ホームズ』
・『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
・『インセプション』
・『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
・『マッドマックス:フュリオサ』
・『キングコング:髑髏島の巨神』
・『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』
・『ジョーカー』
・『グランツーリスモ』(※字幕のみ)
そう、数々の名作の字幕・吹替を手掛けてきた翻訳者さんです。

やってきたのは、アンゼさんの母校でもある1975年に設立された翻訳専門の専門校「フェロー・アカデミー」。
翻訳の現役プロが講師陣となり、映像翻訳だけでなく実務翻訳、出版翻訳まで学べるんだとか。

フェロー・アカデミーのラウンジで我々を出迎えてくれた翻訳者・アンゼたかしさん。サメの絵で顔は隠れていますが、渋くて優しいお方でした
普段我々が見聞きしている字幕や吹替は一体どのように作られているのか。アンゼさんに伺うと、翻訳の苦労や名作の裏話、気になるその経歴まで、いろんな話が飛び出しました。
<この記事のハイライト>
・翻訳業に一番必要なのは「体力」
・字幕にはルールが盛りだくさん! その中で「映画全体の骨格部分」を表現する
・満足度の高い字幕は『マジック・マイク ラストダンス』
・アンゼさんの翻訳のルーツは幼い頃の音楽体験にあり
・翻訳力を上げたきゃ「英語を理解し、日本語で書く」を突き詰めろ
翻訳業に一番必要なのは……体力!

「はじめまして……ですが、いつもお世話になってます。翻訳者の皆さんのおかげで楽しく映画を観られているので頭が上がりません」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
「今年だけでも超大作からミニシアター系までいろんな作品で【字幕 アンゼたかし】という文言をお見かけしましたよ! 普段どれくらいのペースで翻訳をしているんですか?」
「僕が担当するのは年に10作品くらいで、吹替はそのうち2〜3作。他の翻訳者さんより少ないほうだと思います。配信系の依頼も来るんだけど、予定が合わなくて。基本は劇場公開作品ばかりですね」
「年に10作品でも少ないんですね。1つの作品につきどれくらいの時間をかけて翻訳しているのかも気になります」
「ジャンルや尺にもよりますが、我々に与えられる納期は大抵1作品につき10日から2週間くらいです」
「短っ! てっきり数ヶ月くらいは貰えるものかと」
「公開前の映画は情報規制がとても厳しくて、素材が手元に届くのがどうしても直前になるんですよ。ただ依頼自体は結構前から頂くので、素材が届くまでの期間は作品の下調べをしています」
「素材が届いてからの10日から2週間はどんな感じなんですか……?」
「ご想像にお任せしますが、ハードなのはたしかです(笑)。だから翻訳力というより完全に体力勝負ですね。特に最近は長くて台詞も多い作品が増えてきていますから」

「アンゼさんはクリストファー・ノーラン監督の映画も度々担当していますよね。ノーラン作品は長いうえに、難しいから下調べも大変そう……」
「下調べで一番大変だったのはノーラン監督の『インターステラー』でした。物理学の本をいろいろ読んだり、映画の監修に入っていた理論物理学者キップ・ソーンの理論を噛み砕いて解説した本を読んだりしてから翻訳に挑みました」
地球の終焉が迫る近未来を舞台に、人類が居住可能な惑星を探すミッションに挑む宇宙飛行士たちの姿を描くSF超大作
「すご! 専門的な知識を観客が分かるように訳すのも難儀しそうですね」
「それが一番難しい。ノーラン監督は映画の中で用語の説明もしないですしね。だからこれは不要かなと思う用語は省くこともあるんですが、かといって内容を勝手にわかりやすくするのも違う。専門的な用語も残しつつ、その言葉があることで全体がわからなくなるのは避けるというバランスで訳していきました」
「あと担当されている中だと、アメコミ映画や『ホビット』シリーズも知識がいりますよね」
『ホビット』シリーズ……J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』を映像化したファンタジー冒険映画。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚
「アメコミは作品に関係していそうなコミックを一通り買って読んだし、『ホビット』の時は『指輪物語』や関連する作品もできる限り読みました。後者は監修の方も付いてくれましたが、コアなファンがいるわけだし世界観は崩したくないなと」
「最近では字幕監修が入る作品も増えていますが、監修の方とはどのようなやり取りをされるんですか?」
「例えば『TENET テネット』で物理学者の山崎詩郎さんに監修に入ってもらった際は、物理学的にこの言葉や表現はおかしいといったアドバイスを頂きました」
『TENET テネット』……時間のルールから<脱出>して、第三次世界大戦から人類を救うミッションを与えられた男の奮闘を描くクリストファー・ノーラン監督のSFアクション
「翻訳するたびにどんどん博識になりそうですね」
「翻訳が終わるたびに全部忘れてます。全部溜めておけるほど脳のキャパがないので(笑)」

「(笑)。専門知識とは別に翻訳が難しそうだなと思うのがコメディ映画ですね。『ハングオーバー』シリーズとか」
「『ハングオーバー』は大笑いした好きな作品ですけど、翻訳は難しかったですね。国が違うと言葉だけじゃなくて笑いのツボも違いますから、別言語では完璧には変換はできない」
バチェラー・パーティーでハメを外しすぎた男たちに待ち受ける、思いもしない大騒動を描いたドタバタコメディ
「コメディ映画の字幕で毎回感心するのがダジャレです。上手く会話やその状況にハマるダジャレを考えるのってどうやるんですか」
「ダジャレなんかは、トイレへ行った時にふと思い浮かぶようなことが多いんですよね。むしろ『これはどうしよう?』と机に向かって考えているだけだと全然思いつかない」
「あるあるだ。『ハングオーバー』は結構お下劣ですが、そこをどこまで表現するかの塩梅もありますよね」
「原文でどギツいことを言っている場合は字幕もどギツくしたいんだけど、そこは配給サイドと要相談ですね。カットされないよう多少の自主規制はしつつ、『この表現ならどうだ』とできるだけそのトーンは保つよう頑張っています」
「ちなみに僕が最近一番感銘を受けた字幕が『MEG ザ・モンスターズ2』のED曲でした。巨大サメ目線のヴァイブス高いラップの歌詞で大笑いしたんですが、あれもアンゼさんだったので流石だなと」
ジェイソン・ステイサムが大量の巨大生物と戦うサメアクション
「あれはラップだし、ある程度、自由ににやらせてもらいました。CDの訳詞の時には韻は気にしてなかったんですが、映画だと一緒に音も聴こえてくるわけだし、どうせなら韻も踏んじゃおうと」
「『どうせなら』でできるのがすごい」
縛りの中でどう言葉を置換していくか

「字幕と吹替だと、翻訳の仕方も違ってきますよね?」
「そうですね。どちらも口語体ではあるけど、字幕は目で読んで理解するという点で小説のセリフとか漫画の吹き出しに近い。一方の吹替は音だけで理解できないといけないので、訳し方もかなり異なります」
「どちらが難しいんですか?」
「難しさの種類が異なるけど、僕は吹替の方が難しいかな。耳で聞いただけで理解できることを意識しつつ、原音の表現を日本語の自然な会話として再現する必要があるので」
「気をつけるポイントがめちゃくちゃある。難易度は高そうですね」
「一方で、字幕も短い文字数の中でどう表現するかが難しい。一文の情報量やカタカナや漢字のバランスなど、字幕を視覚的にどう見せるのかの匙加減も大変です」
「字幕は文字数に限りがあるので吹替の方が入ってくる情報量が多い、というのはよく言われますよね」
「全体としては吹替の方が情報量はたくさん入ります。ただ難しいのが、キャラクターの喋り方にも左右されるんですよね。ゆっくり喋る人物だったらあまり情報を入れられない一方で、字幕だとゆっくり喋るぶん、結構な情報を入れられたりする」

「なるほど! 字幕にもいろいろルールがあるんですよね」
「基本的に字幕は1秒につき4文字で、1行は多くとも14文字くらい、そして2行まで。なので一画面に詰め込めても最大28文字です。ただ28文字あると画面に文字がびっちりになるので、3〜4秒ごとに台詞をうまく切って表現していきます」
「縛りの中で上手く訳すのって相当難しいですよね。最近、ある映画の字幕で“インティマシーコーディネーター”が“制作スタッフ”と訳されて文章のニュアンスが変わったことが議論を呼んでいました。文字数的な葛藤があったんだろうな……」
「それだけで15文字ですもんね。ルビを入れる手もあるけど、ルビも含めて読めないと意味がない。巧い翻訳が思いついても、綺麗に2行では切れないこともあったり……それが難しいところです。ただ、今では2人の被っている台詞を同時に出すことも普通にあるし、細かいルールはちょっとずつ変わったりもしていますよ」

「一般的なルール以外に、アンゼさんが字幕翻訳で大切にしていることはありますか?」
「パッと見での理解のしやすさと、リズム感ですかね。ゆっくり喋る人でもたくさん言葉を乗せられると言いましたが、できる限りは喋っている台詞の文量と同じだけ日本語が乗るよう考えています。難しいから全部はできないけど、全体で見た時にそうなっていれば良いなと」
「全体としての字幕の見え方も考えているんですね」
「部分部分の訳がはまっているかも大事ですが、それ以上にテンポや作品性という映画全体の骨格部分を字幕で表現できているかが何より重要だと考えているので」
「すごいなぁ……。ちなみに翻訳した作品が世間にどう反応されているか調べることはあるんですか?」
「劇場公開作の反応は割と見ますね。翻訳を批判されることもあれば、逆に評価されることもあります。厳しい意見も真摯に受け止めていますよ」
時代と共に字幕も変化する

「個人的にアンゼさんの翻訳といえば『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ですね。言葉数は少なめですが印象に残る台詞ばかりで」
秩序が崩壊した砂漠の世界。暴君イモータン・ジョーに支配される女たちと、さすらいの男マックスによる決死の逃亡を描くハイテンション・アクション
「あの作品について翻訳家の柴田元幸さんと対談した時に『翻訳前に作品の世界観について説明があるんですか?』と聞かれて、ないと答えたら『作品を汲み取る力がすごいですね』と褒めて頂いたことがあります。嬉しかったですね」
「翻訳者の方って、事前に設定資料みたいなものは貰えるんですか?」
「設定資料を貰えるのはレアケースですね。基本的に、映画の映像のみを頼りに翻訳します」
「えー! てっきり何かしら資料があるものかと。翻訳って映画リテラシーが高くないと務まらないんですね」
「『マッドマックス』はシリーズなので比較的楽でしたけどね。もちろん納品した翻訳には映画会社のチェックも入りますよ。メジャー作品になると配給だけでなく、ネイティブによる二次・三次チェックがあったり」
「監督によるチェックもあるんですか?」
「基本的にないですが、たまに『この役柄はこういう話し方』という注文を事前に受けることがありますね。でも『アメリカ南部のアクセントだから』と言われてもそのままは訳せないので、他の人物と差別化することで表現するようにしています」
「修正は結構入るものなんですか?」
「ものによります。試写までに各所から出てきた意見を汲んで修正したり、そのままにさせてもらったり。ただ僕の独断で決めるわけにもいかないので、そこは配給会社の人たちとチームで仕上げていきます。『マジック・マイク ラストダンス』はネイティブの方と細かい部分まで協議して作ったので、個人的にとても満足度の高い字幕になりました」
『マジック・マイク ラストダンス』……全てを失い落ちぶれたストリップダンサーの再起をかけた最後の挑戦を描く『マジック・マイク』シリーズ最終章
「仕上げはチームで、とのことですが翻訳作業中は誰かに相談したりするんですか?」
「守秘義務もあるので、完全に1人の勝負ですね。そこがつらいところです」

フェロー・アカデミーのラウンジに飾られた『マッドマックス:フュリオサ』のポスター
「『マッドマックス:フュリオサ』も面白かったですよね。『怒りのデス・ロード』と『フュリオサ』を比べると女性語が避けられていたり、翻訳もアップデートされているような印象を受けました。ステレオタイプな表現は見直されつつある状況かと思いますが、時代の変化は翻訳においても意識されているのでしょうか」
「時代の変化はもちろん意識しますが、全体的な話で言うと、昔から翻訳者は女性の台詞を必ずしも女性語で訳してはいませんでした。ただ語尾を『〜だ』にすると、もっと女性っぽく『〜よ』にしてくださいと言われたり……。そういう我々への要求は昔の方が多かったですね」
「そんな葛藤が……わかりやすさを求められてしまうわけですね」
「ただ、いろんな縛りの中でベストな翻訳を出していくのかが仕事なので、過去の翻訳に悔いはあるけど後悔はないです」
翻訳者のルーツは幼少期からの音楽体験にあり

「アンゼさんは昔から翻訳者を目指していたんですか?」
「そういうわけでもないですね。大学も経済学部でしたし」
「えっ……てっきり外語大かと。そこからどうやって翻訳業界に辿り着いたんですか?」
「大学に入ってやっと自由になれたと思ったのに、皆キチッとしだす就活に嫌気がさしたんです。それで自分に何ができるのかなと考えながら音楽雑誌を読んでた時に、ふと海外アーティストのインタビュー翻訳の仕事もありだなと思いまして。それでフェロー・アカデミーに入学して翻訳について2年間勉強して……という流れです」

フェロー・アカデミーのウッディでお洒落な校内。奥には5つの教室と、自習に使えるスタディスペースが。明るく開放的な空間でここなら勉強も捗りそう!
「英語はどの段階で身につけたんですか?」
「留学とか英会話とか、特にこれといったことはしていないんですよね。普通に中高で勉強して……大学も経済学部だし。大学でも原書を授業で使うので英語の勉強はしていましたが」
「え……天才……?」
「いやいや。多分大きいのは、幼い頃から洋楽を聴く環境があったこと。幼少期に家のレコードを聴いて育ち、小中学校の頃にはクイーンやボブ・ディランなど当時の洋楽にどハマりしてました」
「音楽好きだったんですね!」
「歌えるようにまず英語の歌詞を覚えて、それはどういう意味なんだろうと歌詞カードの対訳と見比べるのが大好きでしたね。それで『gottaやain’t noって何?』と気になることを調べたり」
「翻訳者としてのルーツはそこにありそうですね」

「実は初めての翻訳の仕事も洋楽の訳詞だったんです。洋楽の訳詞をしていた人に『翻訳の仕事ない?』と聞いたら偶然その人が仕事を辞めたがっていて。その人経由で洋画の訳詞を始めて、そこからライナーノーツやハーレクイン小説の翻訳など、いろんな仕事をするようになっていきました」
「映画の初仕事は何だったんですか?」
「かつてレンタルビデオの業者が海外から独自に映画を買い付けて貸出していた時代があったんですよ。僕が最初に翻訳を手掛けた長編映画もそういう作品でした。多分誰も知らない映画です」
「アンゼさんにもそんな下積み時代が……」
「その後、特集上映の作品で劇場映画デビューはしたんですが、なかなか劇場映画の字幕界隈に入るのが難しく……。ジャンル問わず単館系の映画翻訳をしながら、VHSの吹替仕事をメインで担当していました。するとその吹替収録現場に大手映画会社の人がよく来ていたので、そこで人脈を増やしていきました。それでご縁があり、一番最初に担当したメジャー作品が『ハッピーフィート』の吹替版でした」
『ハッピーフィート』……歌が何よりも重視されるペンギンの世界を追放された、音痴だけどダンスが大得意なペンギンの冒険を描くCGアニメ映画

「個人的に気になるのが翻訳物の著作権です。翻訳物は二次的著作物にあたるという認識ですが、劇場公開だけでなくブルーレイ販売や配信の度に印税が入るんですか?」
「契約次第ですね。都度都度の契約の場合もありますが、上映〜配信まで全部をひっくるめた契約が主流かと思います。その場合は配信されてもお金はもらえません」
「配信が普及する前に翻訳した作品が配信入りしたら……」
「それは貰えます。 かなり前に翻訳した作品も結構あるので、配信が盛んになってから連絡を貰うことが増えています」
「嬉しいボーナスですね!」
「そう大きな額ではないですが、ありがたいですよ。会社員のようなボーナスがない仕事だし、僕は皆さんが想像しているほど稼いではないから(笑)」
翻訳者として更に上を目指す

「昨今は洋画離れ、字幕離れという言葉をよく耳にしますよね」
「かつて東京では洋画といえば字幕上映が一般的で、地方と比べても吹替はあまり人が入らなかったんです。ところが今は東京でも吹替上映が増えてきていると聞きます」
「何が原因なんでしょうね」
「若い人もバラエティなどで字幕は見慣れているはずなので、字幕が苦手ということはないと思います。単純に面白い邦画が増えて以前より洋画や字幕が身近じゃなくなったのはあるかもしれない。あと4DXで情報量の多い作品を字幕で観たくないというのもありそうです」
「逆に北米では字幕映画が身近になってきたという話もあるので不思議ですよね」
「以前まで海外では吹替が一般的でしたからね。日本の字幕文化って特殊だったんですよ」

「そうなんですね! 海外で字幕が浸透してきた要因のひとつは動画配信サービスの普及だと聞きます。ただ配信映画はたまに機械翻訳が使われていたり、読めた字幕ではないこともありますが」
「機械翻訳が不自然なのは世界観や台詞のニュアンスを理解できていないのが大きいのかなと。でも今後AIがどんどん学習していって、そこにポストエディット(※)する人がいれば、いずれは機械翻訳ベースでも普通に観られるようになると思います。それも進歩の速さを見ている限り、そんな未来の話ではないんじゃないですかね」
※ポストエディット……機械翻訳で生成された翻訳文を、さらに人間が修正すること
「それでも表現力という点で翻訳者さんの存在はなくなることはないと信じてます! 若い人で翻訳者になりたい人もたくさんいると思いますし」
「それこそ配信のドラマシリーズが好きで、そういう作品の翻訳がしたいという人が増えてきましたよ。劇場公開作に負けないくらい配信作品の翻訳も納期などが大変なので、大事なのはそれに耐えられるかどうかですね」

「若手翻訳者の育成も行われているんですか?」
「今はお休み中だけど、以前はフェロー・アカデミーでクラスを持って教えていました。方法論を言語化することは自分のためにもなるので」
「学生や同業者からアドバイスを求められることもあるのでは?」
「どうすれば翻訳がうまくなるか聞かれたこともありますが、僕もまだまだなので……。でも間違いなく言えるのは、とにかく基本的な技術を突き詰めること」
「やはり基礎が一番」
「翻訳には英語の理解力は大前提として、それを日本語で出力する能力も必要不可欠です。『英語を理解し、日本語で書く』という単純なものであるからこそ、その両方を上げていくほかないと思います」
「最後に、今後やっていきたい活動や仕事はありますか?」
「うーん……明確にはないのですが、今後も翻訳の技術を高めていきながら良い作品を担当できれば嬉しいです」
「音楽がルーツということで、個人的にはぜひ音楽映画の翻訳をやってほしいですね」
「できるように頑張ります」
取材を終えて
「翻訳者の皆さん、本当にありがとう!!!!」
本当にこれに尽きます。想像以上にさまざまなルールやしがらみのなか、作品や観客のことを考えて創意工夫しながら言葉を届けてくれていることがわかりました。
改めて我々が映画を楽しく観られているのは映画制作者はもちろん、こちらに届くまでのいろんな人の尽力があってなのだなと。いやはや、本当にリスペクトです。
これから映画を観る際には、翻訳の技巧にも注目してみるのも一興かもしれませんね。
取材協力:フェロー・アカデミー
撮影:本永創太
映画にまつわる仕事が気になった方へ
この記事を書いたライター
奈良県出身。メインジャンルは映画。雑誌やWEBメディア、劇場パンフレットなどで映画評やインタビューなどを執筆。時折ラジオにも出没。映画以外には風呂、旅行、猫、アメリカ、音楽、デカ盛りも好き。経費でアメリカに行きたい。 note:https://note.com/iso_zin_


































