「人が集まれない」時代に、海賊シェフが無料レシピ公開を決めた理由

2020.04.27

「人が集まれない」時代に、海賊シェフが無料レシピ公開を決めた理由

新型コロナウイルスの感染拡大により、普段通りの営業が難しくなっている飲食業界。そんななか、店に来られないお客さんのためにと「レストランのレシピ無料公開」に踏み切ったシェフ・鳥羽周作さん。「sio」「o/sio」「パーラー大箸」などいくつもの店を持つ通称「海賊シェフ」はいま何を考えているのか?

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    料理人として、与え続けること

    「お弁当もレシピ公開も素敵な取り組みだと思います。でも正直、収益としては黒字とは限らないですよね?」

    「まあ、そうっすね。たぶんいま、みんなお金のことを考えてると思うんすよ。でも、こんな時だからこそ『料理人として何を与えられるか』を考えたい。だって、このご時世に自分だけ稼ごうとしてるやつ、信用できないでしょ」

    「とはいえ自分たちのお店も守らないと……」

    「いやいや、それだけじゃダメなんです! 俺らの側から、いまみんなが必要としていることをギブ(give)し続けることが大事なんすよ

    「ブレない……! それはなぜですか?」

    長く残る店って、つまりは『愛されてる店』なんすよ。大勢の人に、『残したい』と思われる店です」

    「戦略どうこうよりもお客さんから『あの店に残って欲しい』と思われることが大事、みたいなことですかね」

    「ええ。それに自分たちが愛されたいなら、まず自分たちからお客さんを愛さなきゃ。結局、考えることは、いつでも『いま、お客さんを喜ばすためにどうするか』なんすよ

    「自分の利益どうこうより、料理で人を喜ばせる……もしかして鳥羽さんって……」

    「気づきました? 俺、めちゃくちゃいいヤツなんですよ

    「(見た目は極悪海賊なのに……)」

     

    鳥羽さんを取材したニュース動画も

     

    「絶対やる」と決めること

    「sio」のメンバーは取材時にも、テイクアウトのお弁当を作るべく粛々と働いていた

     

    「『こんな時代だからこそ、ギブを与え続ける』という姿勢はすごいです。でも一方で、他の人を助けている余裕がない人もいると思うんです」

    「それはそうっすよね。結局は、『どうありたいか』だけだと思います。俺は、店を潰さないことより『料理人として与え続ける』ことが大事なんで」

    「鳥羽さんの中で、優先順位が決まってるんですね」

    「ウチも『sio』『o/sio』『パーラー大箸』で合わせて25人もスタッフを雇用してます。だから、もちろん彼らの生活は絶対に守るし、責任もあります」

     

    時折スタッフの方を振り返り、彼らに言い聞かせるように話す鳥羽さん

    「でもやっぱり、この時代に思うのは、店はお客さんに哲学を伝えていくべきってことなんです。哲学のある店はカルチャーになるし、『1つのレストラン』って枠じゃなくなる。俺たちは『sio』という新しいジャンルを生むつもりでやってます」

    「鳥羽さん、本当に精神も実務も強い人ですね……。なぜそんなに突き進めるんでしょう?」

    「『絶対やる』って決めてるからじゃないですか? 今って、飲食店が何かを判断するのにリスクが多すぎて、『耐えられるかどうか』で判断することも多いと思うんです。でも、俺は『耐えられなくても、おれはやる』って決めてるだけです」

    「なんだか、飲食店の人じゃない僕まで勇気をもらえました。この状況を乗り越えた先の目標って何かありますか?」

    「ああ、『ファミレス』を作りたいんですよね

    「ファミレス!?」

     

    「俺は子どもがいるんですが、通ってる幼稚園のお母さんがたが『鳥羽さんのお父さんは料理人なんでしょう?』と興味を持ってくれて。でも『sio』だと2万円のコースで誘いづらい。ファミレスなら、いろんな世代の人にも来てもらいやすいと思って」

    「確かに、2万円のコースより行きやすいですけど」

    「まず海外で店を持って、大活躍して、それから日本でファミレスがやりたい。そんな人いないでしょ?」

    「いないと思います。鳥羽さんはとにかく『たくさんの人を幸せにする』ことに懸けてるんですね」

    「ずっと同じですよ。愛を持って『料理でどうやって喜ばせられるか』を考えてきた。コロナの前か後かは関係なく、毎日が試合なんすよ」

    「そんな鳥羽さんは、今の時代にどう向き合えばいいと思いますか?」

    「この時代に対して、何か結果を出した人なんてまだいないんじゃないですか? 少し先もわからない世の中で『これです』なんて言えない。ただ一つ言えるとしたら、『周りをしっかり愛せよ』ってだけですよ」

     

    まとめ

    見た目も豪気な「海賊シェフ」の不安は、店が潰れることではなく「店がなくても、料理人でいられるか」ということ。それはずっと前から続いていた、彼の悩みでもありました。

     

    彼は今、テイクアウトやレシピ公開といった方法で「家でレストランを体験してもらう」ことを実現しはじめています。

     

    先が見えず、誰もが余裕のない時代だからこそ、誰よりも愛とギブを与え続ける。

      
    「コロナが終わった後の時代のために、今の時間をどう使えるかが一番大事だと思いますよ」

     

    鳥羽さんの言葉は、人々への問いかけではありません。それは、周りはどうあれ「俺はやる」という宣言。その背中を追いかけられるのは、料理人だけではないはずです。

     

    撮影:藤原 慶(HP

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    この記事を書いた人

    乾隼人
    乾隼人

    1993年生まれ。兵庫県宝塚市出身。関西の出版社で、酒場とかイベント会場をかけずり回ってました→上京しました。飲食店のメニューばかり取り上げるInstagramをやっています。

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