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「何度教わっても仕事が覚えられない」「自分だけミスが多い」と感じると、多くの人は「自分の努力が足りない」「頭が悪いからだ」と自分を責めがちです。けれど、仕事の「覚えにくさ」は、単純な努力不足だけでは説明できません。
仕事は、単に暗記をするだけではなく、
といった、脳のさまざまな機能を同時に使う複雑な活動です。ここには「ワーキングメモリ」という、一時的に情報を頭にとどめて処理する力が深く関わっています。
ワーキングメモリの容量は、もともと人によって違いますし、睡眠不足・強いストレス・疲労・体調不良などによっても簡単に低下します。また、ADHDなどの発達障害の特性によって、もともと仕事を覚えにくい人もいます。
つまり、
可能性が高いということです。
まずは「自分を責める」のではなく、「なぜ覚えにくくなっているのか」を冷静に切り分け、対処できるところから対処していく姿勢が大切です。
「仕事が覚えられない」とひとまとめに感じやすいですが、内訳を分けて考えると、対処法が見えやすくなります。大きく分けると、次の3つのパターンがあります。
自分がどれに当てはまりやすいか、最近の場面を思い出してみてください。
1の「あとで忘れる」タイプなら、
といった工夫が有効です。
2の「そもそもよく分からない」タイプなら、
など、理解しやすい情報の受け取り方を整える必要があります。
3の「集中できない」タイプなら、
など、集中しやすいコンディションづくりが重要です。
このように、「忘れる」「理解できない」「集中できない」を分けて考えることが、最初の一歩です。仕事が覚えられないとき、まず何から対処すればよいか分からない場合は、この切り分けから始めると、改善の方向性が見えやすくなります。
仕事が覚えられない背景には、職場側の教え方や環境の問題も大きく関わります。たとえば次のようなケースです。
このような環境では、多くの人が情報過多になりやすく、特にワーキングメモリが小さい人は、途中で情報がこぼれ落ちてしまいます。
一方で、説明する側には「これくらいなら一度で覚えられるだろう」という思い込みがあり、教え方を変えれば覚えやすくなるという発想がない場合もあります。
ですから、仕事の覚えが悪いと感じたときは、まず
といった、「自分と相手の両方」を調整する視点が有効です。
さきほど少し触れたように、仕事を覚えるうえで重要なのがワーキングメモリです。これは、「一時的なメモ帳」のような役割をする脳の機能で、例えば次のような場面で使われます。
ワーキングメモリの容量が小さいと、
といったことが起こりやすくなります。
また、ADHDを含む発達障害の一部では、
といった特性が見られることがあります。これらは性格の問題ではなく、脳の機能の特性によるものと考えられています。
「自分はどう頑張っても、指示を覚えていられない」「小さいころから忘れ物やケアレスミスが多かった」という人は、こうした特性が影響している可能性もあります。思い当たることが多い場合は、後半で触れるように、専門機関への相談や受診を検討してもよいでしょう。
どれだけ優秀な人でも、睡眠不足や慢性的な疲労があると、仕事のパフォーマンスは一気に落ちます。特に、次のような状態が続いているときは要注意です。
こうした状態では、ワーキングメモリや注意力といった脳の機能が落ちているため、「いつもなら覚えられること」も覚えにくくなります。
日本では、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場でストレスチェックの実施が義務付けられています(50人未満の事業場は現在努力義務ですが、法改正により2028年4月1日から義務化される予定です)。これは個人の診断ではありませんが、「自分のストレス状態に気づく」きっかけになります。
仕事が覚えられない・ミスが増えたタイミングで、同時に睡眠の質やストレス状態が悪化していないかを振り返ってみることも大切です。
本人の能力や努力に問題がなくても、職場環境や業務内容との相性が悪いことで「仕事が覚えられない」と感じるケースもあります。
例えば、
などは、人によって向き・不向きが大きく分かれます。
視覚や聴覚の刺激に敏感な人は、覚えにくい職場環境にいるだけで、集中が途切れやすくなります。また、「対人業務は得意だが、細かい事務作業は極端に苦手」など、得意・不得意の傾向が強い人もいます。
覚えにくさを「自分のせい」と決めつける前に、
を考えてみることも、大切な視点です。
仕事を覚えやすくするうえで、メモの取り方は非常に重要です。ただ「言われたことを全部書き写す」だけでは、後から読んだときに意味が分からなくなりがちです。
覚えやすいメモにするコツは、
を分けて書き、情報を整理することです。
例えば、上司から「この書類のチェックをお願い」と言われたとき、次のようにメモします。
このように項目ごとに分けることで、
ため、一度覚えた仕事を次に再現しやすくなります。
「仕事のメモをどう作ればよいか分からない」という人は、この4項目を基本の型として紙やノートにテンプレートを作り、そこに書き込む形にすると、毎回迷わずにすみます。
指示を聞いたときは、そのまま「分かりました」で終わらせず、必ず自分の言葉で復唱して確認する習慣をつけましょう。これは、相手にとっても、あなたにとってもメリットがあります。
例えば、上司からこう言われたとします。
「この一覧表、A社とB社だけ抽出して、明日の朝までにメールで送っておいて」
このとき、次のように復唱します。
「A社とB社のデータだけを抽出して、新しくファイルを作成し、明日の朝までに○○さんにメールで送る、という認識で合っていますか?」
このように、
を自分の言葉で言い直すことで、あいまいな部分が浮き彫りになります。
もし、不明な点があれば、その場で質問します。分からない仕事を質問するときは、
のように、自分なりに考えたうえで具体的に聞くと、質問された側も答えやすくなります。
この「復唱+その場で質問」のセットを習慣にすると、聞き間違い・やり直しが減り、結果として仕事を覚えるスピードも上がります。
「覚えよう」とするほど、プレッシャーになって頭が真っ白になる人もいます。このタイプの人には、覚えること自体を減らす工夫が有効です。具体的には、次のような方法があります。
これらはすべて、記憶を外部化する行為です。人間の脳のワーキングメモリには限りがあり、「全部頭で覚えておこう」とするとすぐにオーバーフローしてしまいます。
紙やデジタルツールにタスクを書き出すことで、
というメリットがあります。
自分がよく行う仕事を洗い出し、「覚えようとするより、チェックリストで管理する」くらいの発想に切り替えると、心理的な負担も大きく下がります。
一度にすべて覚えようとせず、まずはひとつの作業や短い手順に絞りましょう。メモを見ながら実際にやってみて、手順を確認できたら次の作業へ進みます。こうして実践する範囲を少しずつ広げると、仕事の流れが定着しやすくなります。ただ回数をこなすだけでなく、作業後に振り返ることも大切です。
仕事を終えたあと、数分でよいので、
を書き出してみてください。
こうして少しずつ補足していくと、自分専用マニュアルができていきます。市販のマニュアル本よりも、実際のミスや疑問が反映されているぶん、あなたにとってよほど役立つ資料になります。
同じミスを防ぐためには、
という「改善のサイクル」を回すことが重要です。「一度で完璧に覚える」ことを目指すより、「失敗しながら精度を上げる」ことを目指す方が、結果的に早く安定した仕事ぶりになります。
どれだけ工夫しても、常に話しかけられる・電話が鳴り続ける・人の出入りが激しい職場では、集中が途切れやすくなります。特に、覚えることが多い新人のうちは、刺激の多さがそのまま覚えにくさにつながります。
可能であれば、
など、割り込みや刺激を減らす工夫を試してみてください。
また、パソコンの通知やスマホのポップアップも、集中を妨げる大きな要因です。業務上支障がない範囲で、
といった「自己防衛」も、集中しやすい環境づくりに役立ちます。
一度にたくさんの指示を出されると、ワーキングメモリがあっという間にいっぱいになります。「AとBとCを、今日中にやっておいて」と言われた途端に、何から手をつけていいか分からなくなる人も少なくありません。
そのようなときは、
といった形で、指示の出し方を調整してもらうお願いをしてみましょう。
また、
ことで、理解と記憶の負担がぐっと軽くなります。
相手にとっても、「あとでやり直しになるより、最初に少し時間をかけて説明した方が効率的」です。遠慮しすぎずに、「こう伝えてもらえると覚えやすい」という自分の特性を、少しずつ共有していくことが大切です。
「仕事が覚えられない」「ミスが多い」と感じると、それ自体がストレスになり、さらに集中しにくくなる悪循環に陥りがちです。1人で抱え込みすぎず、上司や人事・産業医などの相談窓口に現状を伝えることも重要です。
伝えるときは、
という順番で整理すると、相手にも伝わりやすくなります。
会社によっては、
などのサポートをしてもらえる場合もあります。
自分の困りごとを共有し、「どうすれば今より仕事が覚えやすくなるか」を一緒に考えてもらう姿勢が、結果的にあなた自身と職場の両方にとってプラスになります。
工夫を続けても、
といった状態が続く場合、心身の不調が背景にある可能性があります。
そのようなときは、
といった形で、専門家のサポートを受けることを検討してください。
睡眠やストレスの問題を改善することで、結果的に仕事の覚えやすさや集中力が戻ってくるケースは少なくありません。「仕事の覚えにくさ」をきっかけに、自分の心身の状態を見直すことも大切です。
子どものころから、
といった傾向があり、大人になってからも
といった悩みが強い場合、ADHDを含む発達障害の特性が関係している可能性もあります。ただし、こうした傾向は多くの人にある程度見られるもので、当てはまるからといってADHDであるとは限りません。自己判断せず、専門家に相談することが大切です。
思い当たることが多い場合は、
などで相談してみると、自分の特性を理解し、対処法を一緒に考えてもらえます。
診断がつくことがゴールではなく、
といった、具体的な生きやすさの向上につながることが大切です。
「仕事が覚えられないのは、自分の甘えではないか」と感じている人は、とても多いです。ですが、ここまで見てきたように、覚えにくさの背景には、
といったさまざまな要因が絡み合っています。
もちろん、メモを取らない・復唱しない・振り返りをしないなど、「自分でできる工夫」をまったくしないまま「覚えられない」と言い続けるのは、甘えと受け取られても仕方ない部分があるかもしれません。
しかし、
といった場合、それを単純に「甘え」と片づけるのは適切ではありません。
重要なのは、「甘えかどうか」を判断することではなく、
という、一歩ずつの行動です。
多くの職場では、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が実施されています。現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施が義務付けられており、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも義務化される予定です。
このストレスチェックは、
ことを目的としており、個人の病気の診断をするためのものではありません。
そのため、
という点には注意が必要です。
一方で、
という意味では、早めの相談につながる大切なツールでもあります。
ストレスチェックの結果に不安を感じた場合は、その結果をもとに、
に相談し、「今の自分の状態をどう受け止め、どう対処すべきか」を一緒に考えてもらうのがおすすめです。
仕事が覚えられないと感じるとき、それは「自分がダメだ」というサインではなく、「今のやり方や環境が、あなたの特性や状態に合っていない」というサインでもあります。
原因を切り分けながら、
といった具体的なステップをひとつずつ実施していけば、「覚えられない」が「少しずつ覚えられる」に変わっていきます。完璧を目指しすぎず、「昨日より少しやりやすくする」ことから始めてみてください。
(イーアイデム編集チーム)