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退職を決めたとき、最初につまずきやすいのが「退職願をどう書けばいいのか」という点です。退職届との違い、書くべき項目、封筒の選び方、渡すタイミング——覚えることが多そうに見えますが、押さえるポイントは決して多くありません。
この記事では、そのまま使える例文を交えながら、退職願の書き方と提出マナーをまとめて解説します。
最初に整理しておきたいのが、「退職願」と「退職届」の違いです。検索の場面でも「退職願 退職届」といった組み合わせで調べる人が多く、混同されやすい部分です。
一般的な理解は次のとおりです。
退職願は、「退職させてほしい」と申し出るためのお願いの書類です。会社が退職を承認する前の段階で提出するもので、その後の話し合いを通じて退職日などが固まっていきます。あくまで「願い」ですから、提出後に事情が変わったとしても、会社と合意できれば撤回の余地は残されています。
対する退職届は、「〇月〇日をもって退職します」と退職を一方的に通告する書類として扱われるのが一般的です。会社側が提出を求めるのは、退職の合意が取れた最終段階で、手続き上の書類という位置づけです。いったん退職届を出せば、原則として撤回は難しくなります。
とはいえ実務上は、「退職願」と「退職届」の使い分けが会社ごとに違います。中身は同じでも社内書式のタイトルが「退職届」になっているケースもあるので、就業規則や人事から配られている書類の名称を確かめ、自社のルールに合わせてください。
本記事が中心に扱うのは「退職願」の書き方ですが、記載する内容自体は、多くの会社の退職届にもほぼそのまま当てはまります。
退職願の基本形はシンプルそのものです。最低限、以下の内容が漏れなく記載されていれば問題ありません。
ここでは、もっともベーシックな自己都合退職(転職・家庭の事情・体調など)の例文を挙げます。本記事の例文は縦書きで便箋に書くことを前提としていますが、読みやすさを優先して横書きで示しました。
退職願
私儀
このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇 〇〇部〇〇課
氏名 〇〇〇〇 印
株式会社〇〇〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 殿
日付は西暦(2026年〇月〇日)でも差し支えありません。ただし退職願の中では、和暦か西暦のどちらかに統一してください。
退職理由は「一身上の都合により」とするのが一般的です。「転職のため」「上司とのトラブルのため」のように、詳細な退職理由まで書く必要はありません。感謝を伝えたいなら、本文の末尾に「在職中は格別のご指導ご厚情を賜り、誠にありがとうございました。」といった一文を添えると丁寧な印象になります。
退職願は、そのまま手渡しするのではなく、必ず封筒に入れて提出します。封筒・提出マナーで押さえておきたいポイントをまとめました。
退職届を封入する際、選ぶべき封筒は、白無地のシンプルなものです。サイズはビジネス文書用の長形3号か長形4号程度が目安で、窓付き封筒や色付き封筒、柄付き封筒は避けるのが無難でしょう。封筒の表面中央に縦書きで「退職願」、裏面の左下に自分の部署名と氏名を書きます。
提出の際は、口頭で直属上司に「ご相談したいことがあるので、お時間をいただけますでしょうか」とアポイントを取っておきます。場所は会議室や応接スペースなど、周囲に聞かれずに落ち着いて話せるところを選びます。いきなり机に「書類です」とだけ言って置くのは避けましょう。
席に着いたら封筒から退職願を取り出し、相手から読める向きで机の上に置いたうえで、次のように一言添えます。
「大変申し訳ございませんが、一身上の都合により退職をさせていただきたく、本日退職願をお持ちしました。ご確認のほどよろしくお願いいたします。」
封筒にのり付けをするかどうかは、会社や風習によって異なります。その場ですぐ開封されることが多いため、完全に封をせず、フタを軽く折る程度にとどめるケースもあります。判断に迷ったときは、のり付けをしておいて構いません。マナー違反にはあたりません。
退職願とは、会社に対して「退職したい」という意思を正式に伝えるための書類です。口頭で「辞めたい」と告げるだけでなく書類として残しておくことで、社内の手続きや人事異動、引き継ぎの準備がスムーズに動き出します。
会社側の視点に立つと、退職願が果たす役割は次のとおりです。
したがって退職願に書く内容は多くなくて構わないものの、「退職したい日」と「誰からの申し出か」だけは正確に読み取れるようにしておく必要があります。
退職願と退職届は、いずれも退職に関わる書類ですが、意味合いは少し違います。
退職願は「願い」、退職届は「届け出」です。法的に言葉の定義が決まっているわけではないものの、実務ではおおむね次のようなイメージで区別されています。
多くの会社では、退職願を提出したうえで面談に臨み、退職日や引き継ぎ内容を話し合い、その後に会社指定のフォーマットで退職届を提出する——という流れが一般的です。もっとも実際には、最初から「退職届」のタイトルで書類を出すよう求められる場合もあります。
自分で書類を用意するなら、退職の話し合いを始めるきっかけとして「退職願」を先に出すのが無難です。会社から「退職届を出してください」と指示されたときは、それに従いましょう。
似た言葉がもうひとつ、「辞表」です。一般社員ではなく、役員や管理職、公務員などが職を辞する際に提出する書類を指して使われることが多い言葉になります。
企業でいえば、取締役や監査役といった会社法上の役員が任期の途中で退くときに「辞表」を提出するのが典型例です。一般の会社員が退職する場面で辞表というタイトルを使う必要はなく、むしろ退職願・退職届のいずれかにしておくほうが自然です。
自分の立場が判断しづらいときや、社内でどの言葉を使うのが正しいか迷ったときは、就業規則を読むか人事担当者に確認して、社内ルールに合わせるのが安全です。
退職願の書き方を調べるより先に、必ず済ませておきたいのが就業規則の確認です。退職に関するルールが会社ごとに細かく定められていることがあるためです。
目を通しておきたい主なポイントを挙げます。
近年は社内イントラネットから「退職届(退職願)フォーマット」をダウンロードできる会社も増えました。その場合、原則としてはその書式を使うことが前提になります。独自に作成した退職願では受理されないケースもあるため注意してください。
就業規則に書き方の指定が見当たらなければ、本記事で紹介する一般的な書式で問題ありません。
退職願をいつまでに、そして誰宛てに提出するのかも、見落とせないポイントです。
日本の民法では、期間の定めのない雇用契約であれば、原則として退職の申し出から一定期間(目安として2週間程度)で退職できるとされています。「月給制だから翌月まで退職できない」といった説明を見かけることがありますが、2020年施行の改正民法では、報酬の定め方に応じた予告期間の制限は使用者側からの解約に関する規定として整理されています。ただし有期雇用契約の場合は扱いが異なるため、詳細は専門家(弁護士・社会保険労務士等)にご確認ください。また実際には、多くの会社の就業規則が「退職の30日前まで」「2ヶ月前まで」といった、より長い期限を設けています。
実務では、次のように考えておくとよいはずです。
提出先については、ほとんどの会社で直属の上司が窓口になります。人事部や経営者へいきなり退職願を提出すると、上司のメンツを潰してしまう場合があるため避けた方が良いでしょう。直属上司に口頭で相談したうえで退職願を提出する、という流れが一般的です。
退職願を書き始める前に、「退職日」をいつにするかも固めておく必要があります。退職日が指すのは、一般的には会社に在籍している最終日です。最終出勤日と一致することもあれば、有給休暇をまとめて取得する「有給消化期間」を挟んだ後の日付が退職日になることもあります。
損をしないために、次の点を整理しておきましょう。
たとえば「〇月末を退職日にしたいが、有給が10日残っているので、最終出勤日は〇月中旬にしたい」——こうしたイメージで逆算していきます。有給消化の進め方は会社や上司との調整が必要になるため、退職願の本文には「〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、お願い申し上げます」と退職日だけを記載し、有給の具体的な扱いは面談の場で相談するのが一般的です。
退職願の一番上、中央に大きく「退職願」と記載します。これが表題にあたる部分です。縦書きが基本ではあるものの、会社の文書がすべて横書きという文化なら、横書きでも問題ありません。
その下に1行空け、縦書きなら行の下(末尾)、横書きなら右寄せで「私儀(わたくしぎ)」と置く形式がよく使われます。「私儀」は「私のことですが」という意味の前置きです。やや古風な言い回しながら、退職願・退職届などのフォーマルな書類では今でも一般的です。必須ではないため、省略して本文から書き始めても構いません。
手書きとPC作成のどちらが良いかは、迷う人の多いポイントです。特に指定がなければ、次のように考えるとよいでしょう。
最近は、社内で印刷されたフォーマットにPCで入力し、押印だけ手書きで行うパターンも増えています。判断に迷うなら、先輩や人事に「退職願は手書きとPC作成、どちらが一般的でしょうか」と確認しておくと安心です。
本文で伝えるのは、「退職したい」という意思と退職日です。簡潔で分かりやすく書きます。もっともシンプルな書き方は、次のような形です。
「このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」
この一文に、退職日と退職理由の大枠(自己都合であること)が収まっています。退職理由について、細かい事情まで書く必要はありません。よくある疑問への答えを整理しておきます。
本文の必須項目は、「退職の意思」「退職日」の2点です。加えて「在職中はお世話になりました」といった感謝の一文があると、読み手からの印象が柔らかくなります。
本文の後ろには、次の情報を順番に記載していきます。退職願の「型」にあたる部分なので、書き方をきちんと押さえておきましょう。
「殿」を付けるのを忘れがちなので注意してください。代表者の正式名称は、就業規則や会社案内、ホームページの会社概要ページで確認できます。
退職願に使う用紙は、ビジネス文書としてふさわしいものを選びます。一般的な選び方は次のとおりです。
「書類」としての見た目がきちんとしていることが肝心です。色付きや柄付きのかわいい封筒、キャラクター入りの便箋などは避けてください。
PC作成の場合も、できれば少し厚めの用紙に印刷し、ビジネス文書にふさわしい紙質を選ぶと印象が良くなります。
退職願を封筒に入れる際は、読みやすさとマナーの両方を意識して折り方・入れ方を決めます。
縦書きの便箋を長形封筒に入れるなら、一般的なのは縦三つ折りです。上から三分の一ほどを手前側に折り、続いて下から三分の一を手前側に折って、表題「退職願」が内側になるようにします。こうしておけば、封筒から取り出したときに、開いた内側へ本文が現れる形になります。
封筒の書き方は次の通りです。
封筒ののり付けについては、前述のように会社の習慣によります。その場ですぐ開封する想定であれば、封はしないか、軽く閉じる程度でも問題ありません。郵送で提出する場合や、社内便で回覧される場合は、きちんとのり付けをしておきましょう。
退職願の渡し方も、社会人としてのマナーが問われる場面です。基本的な流れは次の通りです。
自己都合退職(転職、家庭の事情、体調不良など)の場合に、そのまま使える例文をいくつか紹介します。状況に合わせて使いやすいものを選んでください。
【もっともベーシックな例】
退職願
私儀
このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
在職中は格別のご厚情とご指導を賜り、心より御礼申し上げます。
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇 〇〇部〇〇課
氏名 〇〇〇〇 印
株式会社〇〇〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 殿
【シンプルな短めの例】
退職願
私儀
誠に勝手ながら、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇〇 〇〇部
氏名 〇〇〇〇 印
株式会社〇〇〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 殿
理由が転職であっても、「転職のため」と明記する必要はありません。退職願はあくまで社内手続きのための書類であり、具体的な転職先企業名や条件などを記載するのは適切ではないでしょう。
リストラや事業縮小、会社の都合による配置転換の拒否など、いわゆる「会社都合退職」にあたるケースでは、退職願・退職届の扱いがやや複雑になります。
会社都合で退職するにもかかわらず、自分の退職願に「一身上の都合により」と書いてしまうと——実態は会社都合なのに、書類上は自己都合退職と扱われる可能性があります。失業給付などの条件に影響することもある重要なポイントです。
会社都合退職のケースでは、次の点に注意してください。
自分から退職願を作成し、会社都合であることを文面に含めたい場合は、たとえば次のような書き方が考えられます。
「このたび、貴社の都合により、令和〇年〇月〇日をもちまして退職することとなりましたので、ここにお願い申し上げます。」
ただし実際の文言は、会社との合意内容によって変わり得るものです。トラブルを避けるためにも、必ず事前に会社側と相談したうえで記載しましょう。
退職願をめぐるよくある質問には、「一度提出した退職願は撤回できるのか」「会社に受理を拒否されたらどうなるか」といった点があります。
結論からいえば、退職願は原則として撤回が可能とされています。退職願は「退職したい」という申し出の段階にすぎず、会社がまだ正式に承認していない(退職日を確定していない)状況であれば、事情が変わったことを説明して撤回を申し出る余地が残ります。
反対に、会社と退職日が合意され、既に退職手続きが動き出している段階では、実務的には撤回が難しいケースが多くなります。退職届は会社への一方的な意思表示とされるため、提出後の撤回は実務上難しいとされています(最終的な法的判断は専門家にご確認ください)。
もうひとつの「退職願の受理を拒否された場合」ですが、期間の定めのない雇用契約であれば、法律上は従業員の意思による退職が認められており、会社が一方的に拒否することは基本的にできないとされています(雇用形態によって扱いが異なる場合があるため、詳細は専門家にご確認ください)。とはいえ実際の職場では、
といった事情から、「今は困る」「時期をずらしてほしい」と言われることも少なくありません。そのときは就業規則を確認したうえで、上司と退職日や引き継ぎ期間について話し合い、現実的な落としどころを探ることになります。
話し合いがどうしてもまとまらない、あるいは会社から不当な扱いを受けていると感じる場合には、労働相談窓口や専門家に相談することも検討しましょう。
退職願の書き方とマナーは、一度ポイントを押さえてしまえば難しいものではありません。就業規則を確認し、必要な項目を簡潔に記載し、適切なタイミングで直属上司に提出しましょう。この基本さえ守れば、退職の第一歩はスムーズに踏み出せます。
「退職」は人生の大きな転機です。転職やキャリアチェンジなど、次のステップへ前向きに進むためにも、退職手続きはできるだけトラブルなく、丁寧に進めていきましょう。
(イーアイデム編集チーム)