専業主婦から再び歯科衛生士になって「子育てのしやすさ」と「求人の選択肢の多さ」に気づいた


出産・育児をきっかけに一度退職し専業主婦になったものの、再び歯科衛生士として働き始めたこんこんさん。

就職活動や復職後の職場の環境などを通じて「歯科衛生士という仕事と子育ての両立のしやすさ」に気付いたそうです。

子どもが生まれ「仕事と子育ての両立、無理かも?」と退職

高校3年生の時に「手に職をつけた方がいいだろうし、将来は歯科衛生士になったら?」と母に勧められ、「そうしよっかな」と仕事の内容もよく知らぬまま歯科衛生士専門学校に入学。その後、無事に国家試験免許を取得して歯科衛生士となった。

仕事が終わったあとに渋谷や新宿などに出かけやすいという理由で、港区の歯科医院に就職。東京暮らしを謳歌しながら正社員として10年働いたタイミングで結婚し、妊娠した。

産休に入るまで元気に働き、育休を取得して初めての子育てに悪戦苦闘しつつも充実した日々を過ごしていた私は、そのまま元の職場に復帰すると信じて疑わなかった。

ところがある日私は気がついた。職場には、子どもを育てながら正社員として働いている人は一人もいない。スタッフの数も少ない。

私が急に休んだり早退しなければいけないときはどうするのだろうか。復帰したとして、本当に育児と両立しながら仕事ができるのだろうか。

そしてさらに気がついた。子育ては新生児期が一番大変で、成長すればするほど手がかからなくなると思っていたが、成長するにつれ逆にどんどん手がかかるようになっているぞ? ということに……。

子どもを産むまで気が付かなかったことが一気にのしかかってきた。そして感じるようになったのは「このまま復帰しても、育児も仕事もうまくいかないのでは」という不安

一方で、育休をとっている身としては復職すべきという責任も感じていた。なので子どもが1歳になる年に保育園に入園させ、復帰の準備をしていたが、入園後まもなく新型コロナの大流行が世界を襲った。

ただでさえ復職や育児のことでいっぱいいっぱいいっぱいであるのに、未知のウイルスの恐怖までのしかかった。「もう無理だ……」と思い詰めたことで仕事を辞める意志が固まり、復職せずにそのまま退社することとなったのだった。

その頃、新型コロナの影響で夫も在宅勤務が可能になった。そうなると、都心に住み続ける必要がなくなった。そもそも当時住んでいた家は、エレベーターがなく4階まで階段、34平米、風呂はバランス釜……と、子育てに適しているとは言えない物件だった。

夫婦での話し合いの結果、親も親族も友達も周りにいないけれどのびのびと子育てができそうな北関東の地に引っ越しを決めた。

「育児と両立できる」を条件に、専業主婦ののち再び就職

新しい家にはエレベーターがあり、部屋は55平米、風呂はバランス釜ではなくなった。私は港区の正社員から北関東の専業主婦になり、寝転んでいた子どもは自力で歩けるようになった。

がらりと変わったライフスタイルに対応して生活基盤を整えるべく、しばらくは仕事はせず家庭に専念しよう。私はそう決めた。

2年もたつと新しい土地での生活にも慣れ、同時に子どもをずっとつきっきりで見ていることに閉塞感を感じ始めた。

一度断念した「子育てをしながら働く」という選択肢。私はふたたびそれを意識するようになった。

それでもまだ私の中には「果たして私に育児と仕事の両立ができるのか」という不安があった。ただ、何事もやってみなくては分からない。「どうしてもダメなら辞めればいい」と思い、まずはパートで復職することを目指した。ダメ元で申し込んだ近所の保育園は無事に内定をもらえ、私の職探しがスタートした。

2年の子育て経験と前職での経験を生かし、私は4つの条件を決めて就職先を探した。

1.家と保育園から近い
在宅勤務をしている夫に加え、私も子どもの急なお迎え要請に駆けつけられるよう、自転車で通える範囲で仕事を探した。通勤時間を短くすれば、体力も温存できる。

2.急な休みの影響が小さい
小さな子どもは突然熱を出すので、急な休みが許容されるかどうかは重要だ。そもそもスタッフの人数が少ないと急な人手不足に対応できず診療がままならないであろうことは経験上予想できたので、人数があきらかに少なそうなところは避けた。

また求人サイトでは子育て世代が働いていて理解がありそうか、子持ちを歓迎しているかなどをチェックした。面接でも幼い子どもがいること、急な発熱などで休みたい場合に対応してもらえそうか、あらかじめ院長に確認した。

しかしいくら休みを許容してくれるからと言って、職場での急な欠員に困らないわけはないので、病児保育の申請など、こちらの備えも同時に進めた

3.自分の希望する時間で働ける
まずは時間を抑えて少しずつ働き始め、自分の「仕事と子育ての両立のバランスを見つけたい」という気持ちがあった。

保育園も預かり時間の短い制度を利用予定だったので、規約にあわせたシフトを組んでもらえるかを念頭に仕事を探した。具体的には「週3日か4日程度、16時までの勤務」という条件を面接時に伝えた。

4.子どもに携われる
正直なところ出産するまであまり子どもが好きではなかったのだが、不思議なもので出産後は視界に入る子ども全員をかわいく思えるようになった。

専業主婦をしているあいだに、今後は子どものためになることがしたいと漠然と思うようになったため、子どもの来院が多い職場を選ぶようにした。


改めて思う、歯科衛生士の仕事と子育ての両立のしやすさ

条件がはっきりしていたこともあってか希望する職場がスムーズに見つかり、無事に内定をもらうことができた。そして現在、週に3〜4日、朝は9時過ぎに出勤し16時ごろに退社というスケジュールで働いている。

月に数回は子どもを夫に見てもらって土日も出勤し、勤務日数は月に15日程度。ほぼ希望に沿った働き方ができている。

心配していた子育てとの両立も今のところ無理なくできており、子どもをつきっきりで見ていた頃に比べて生活にメリハリができたことで、今の方が精神的に余裕がある。

私が無事復職を果たせたのは、歯科衛生士の資格を持っていたこと、そして歯科医院はコンビニより多いと言われているほど全国どこにでもあることが大きかった。自分の望む環境が整った街に引っ越しても、希望の職場が見つかるのは歯科衛生士のいいところだと思う(もちろん、夫の協力と在宅勤務のおかげもある)。

母に勧められるまま歯科衛生士の職に就き、20代は「私は一体なんでこの仕事を選んだのだろう……」と思い悩む日もあった。

しかし今改めて歯科衛生士という仕事について考えてみると、

  • 働き口が多く、自宅付近で職を探しやすい
  • 医療職ではあるが基本的に夜勤がない
  • パートから正社員への移行がしやすい


と、子育てとの両立においてメリットが多い。今の職場では、子育てが落ち着いた40〜50代でパートから正社員になる人もいて、ライフステージに合わせて柔軟に働き方を変えられるのも技術職の良さだと感じる。

この記事を読んで歯科衛生士に興味を持ったけど、資格を持っていないから無理だな……と思った人もいると思う。しかし私が通っていた専門学校では、子育てがひと段落した主婦の方や、大卒後他の仕事を経験してから資格を取りに入学した方など、生徒のおよそ10%くらいが社会人だった。

なので年齢や経歴を気にせず、興味がある人はぜひ足を踏み入れてほしい。歯科助手から始めて、歯科医院の雰囲気を体験してみるのもいいと思う。

私が学生だった10年以上前から、全国的に歯科衛生士の数は不足しているので、就職先も見付けやすいはずだ。

***

「ある時期は最適だと思っていたことが、ライフステージや自分自身の変化によってしっくりこなくなる」ということは仕事でもプライベートでも起こり得る。

フィットしないようであれば、今の自分に合う形を探し試していくことで、その時の心地よい働き方や暮らし方に出会える。これは転職や引っ越しを通して感じたことだ。

そう思えるようになった今、何らかの理由で職場を変えることになった時に備え技術の向上に意欲的になり、以前よりも歯科衛生士という職に前向きな気持ちが持てるようになった。また何時も健康でいられるよう、最近は体まで鍛え始めている。

この記事が、歯科衛生士という仕事に興味をもってもらうきっかけになったらうれしいです。お互い、頑張りましょう!

編集:はてな編集部

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著者:こんこん

こんこんさんプロフィール画像

歯科衛生士。海外旅行が好きで旅行先ではかならず現地の歯医者を訪れ歯のクリーニングを受けるという楽しみを持つ。好きな食べ物はフォー。
X(Twitter):@satomiconcon