中学受験の塾選び、共働きは「送迎なし」で通えるかがポイント。ワーママの「中受」サポート体験談


「中学受験(中受)」が気になっているけれど、共働きのため塾の送迎や食事の用意、学習面のフォローなど手が回らないのでは……と不安に感じていませんか。

今回は、実際に働きながら子どもの受験をサポートした経験を持つ2人に、仕事とのバランスや大変だと感じたこと、そのときの乗り越え方などについて語っていただきました。

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<参加者プロフィール>

ゆるっと母さんさん

ゆるっと母さんさん"

事務職としてフルタイム都内勤務。長男と次男がおり、長男が2022年に中学受験を経験。小4春から中規模塾に通塾し、第一志望校に合格、進学。
X(旧Twitter):@minnahanasake

あんこさん

あんこさん"

クリエイティブ系専門職としてフルタイム都内勤務。一人っ子の息子が2023年に中学受験を経験。3校中1校に合格するも、最終的には公立校へ進学。
X(旧Twitter):@ankoromochi06 ブログ:がんばるみんなの応援団

※座談会参加者のプロフィールは、取材時点(2023年11月)のものです

塾選びは子どもの意思を尊重&「一人で通える」こともポイントに

まずは受験を決断したきっかけと、抱いていた印象を教えてください。

ゆるっと母さんさん(以下、ゆるっと) 息子が小学3年生の春ごろに「友だちが中受をするから、自分もしたい」と言い出したのが最初のきっかけでした。私も夫も経験がなく、当初は「将来の選択肢が広がるかも?」とポジティブな印象でした。

でも本を何冊か読んで情報収集をしているうちに「全落ち」のリスクなどネガティブな情報にも触れることになり、印象が「怖い」に変わってしまって……。

夫とも情報を共有し、息子に改めてデメリットも含めてしっかり説明した上で「どうしたい?」と尋ねたところ「それでもやりたい」と言ったため、チャレンジを決め、小学3年生の夏ごろから塾探しを始めました

あんこさん(以下、あんこ) 我が家は夫が希望していました。息子が小さいころからよく「中受を……」と口にしつつも、実際に学校を検討したり、塾に通わせたりといった行動には移していなかったので、小学4年生の終わりごろに「本当に中学受験に挑戦するなら、今がラストチャンスだと思うよ!」と夫に決断を迫りました。

息子にしっかり意思を確認して「やる」と答えたので、小学5年生になる前の春休みに塾探しを始めました

私自身は中受とは無縁でしたが、同年代のママ友には中高一貫校に通っていた経験者が多く、彼女たちが「行ってよかった」と肯定的に話しているのを見て、中高一貫校や受験に対してはポジティブなイメージを持っていました。

受験にあたっては塾選びも重要かと思います。どのような条件で塾を選びましたか?

ゆるっと 検討したのは2校です。いくつかの塾から資料を取り寄せ、私が「いいかも」と感じたところをピックアップし、息子を連れて説明会や体験に参加しました。

1校は体育会系の指導で知られる大手塾でしたが、受付の段階で息子が「ちょっと違う」とネガティブな反応を見せたので、そこはやめました

子ども本人と塾の相性は重要ですね。

ゆるっと もう1校は説明会と、小学3年生の夏期講習にも参加しました。息子にはそこの指導が合っていたようで、小学4年生の春から通い始めました。聞いてみると「自分たちの気分を盛り上げて勉強させようとしてくれている」のがよかったみたいです(笑)。

下に弟がいて塾の送迎が難しいなと思ったので、夜でも安全に通れるルートがある塾であることも決め手になりました。

あんこ うちも、一人で行き帰りできる塾かどうかはチェックしました! 共働きですし、基本的には一人で通ってもらっていました。

我が家の塾選びは少し変則的でした。中学受験のために通塾を始めるのは一般的には小学3年生の2月〜小学4年生の4月ごろが多いようなのですが、我が家が中学受験を決めたのが小学5年生になる前と遅めだったので、春休みに体験がてら2校の短期講習を受講しました

どちらも息子の感触は悪くなく、そのうちの1校に通い始めましたが、塾の先生とコミュニケーションを取るうちに息子との相性の悪さを感じ「この塾にお任せして志望校に合格できるのかな?」と不安に思うようになり、小学5年生の9月で退塾しました。そのあとは家庭教師2社と契約して、教科を分けてお願いしたりと試行錯誤していました。

ただそれだとやはり効率が悪くて、小学5年生の2月から家庭教師1社と日能研を併用してみて、最終的には小学6年生の6月からは日能研で全教科を指導してもらうようになりました


塾に通い始めるのがゆっくりめだったことで焦りなどはありましたか?

あんこ もう少し早い方がよかったかな? と悩んだこともありますが、息子の性格的に、受験に向けた勉強期間が長くなると途中で挫折していた可能性もあったので、5年生からスタートして伸びるところまで伸ばして……という形で、大きな負担をかけすぎることなく取り組めたのはよかったところかなと思います

ただ、もともと3歳の頃から公文に通っていて学習の習慣が身に付いていたので、遅めのスタートでも続けることができた、という側面はあると思います。

サポートの負担が本格化する6年生。休日にできる限りのケアを

中学受験に向けての勉強は小学5年生(小学4年生の2月)から本格化していくと言われています。受験まで、どのようなスケジュールを送っていましたか?

ゆるっと 5年生の間は週4日、6年生からは週6日通塾していました。平日は17時から20時ごろまで、土日は朝から夕方まで。ただ授業外でも先生が息子の苦手な部分のフォローをしてくださったので、もう少し長くなることもありましたね。

あんこ 息子はもともと少年野球をやっていたので、5年生は平日週2日塾に通いつつ、土日は野球というスケジュールでした。

6年生になると土日に模試や塾の予定が入るようになり、受験勉強を優先するため7月に少年野球を引退。通塾は週3〜4回に増えました。ゆるっとさんのところと同じく、平日は17時から20時くらいまで、土日は半日ほど塾にいました。

通塾の頻度はそれぞれですが、やはり6年生になると受験に向けた勉強量がグッと増えるんですね。お二人とも、お子さんのサポートとお仕事はどのように両立していましたか?

ゆるっと フルタイムで仕事をしていてかなり忙しかったので、正直なところ学習面のケアはほぼできていませんでした。宿題をやっているかどうかもチェックできていないことが多かったです。

6年生の頃は仕事の担当が変わって、負担が軽減されたので多少余裕ができたものの、やはり平日は時間をとるのが難しく、土日にプリント整理などをしてサポートしていました

あんこ 5年生の頃はコロナ禍で在宅勤務が多く多少余裕がありました。とはいえフルタイムで10~19時が勤務時間なので、やはり勉強のサポートの時間はなかなか取れなかったです。

その分休日は息子の様子をしっかり見ていて、休みが休みではなくなった感覚がありました。

でも仕事との両立で一番大変だったのは、やはり入試のシーズンです。受験会場への同行や前泊などでどうしても仕事を休む必要が出てくるので、あらかじめ職場には状況を伝えて、仕事量を調整していました。

配偶者とはどのように役割を分担していましたか。

あんこ 夫自身が息子の中学受験を望んでいたこともあり、塾や冬期講習など、受験に関わる費用は全て出してくれました。

ただ、学校のリサーチや息子の毎日のサポートなど実働部分は私が行っていたので、「もう少し動いてほしいな」と不満に感じた部分はあります(笑)。

ゆるっと 受験期に下の子が急に体調を崩しても対応できるよう、夫も仕事を調整してくれたほか、学校説明会に参加してくれたり、受験時の前泊に同行してくれたりしました。私が中学受験の情報を集める中で悩んだときは、否定せず話を聞いてくれたのもありがたかったです。

ただ私と夫とでは「気づく範囲」や「サポートの粒度」が違うのか、夫が整理したプリントに、息子から「使いにくい」とクレームが入ったことも……(笑)。ついつい「自分でやった方が早いな」と抱え込んでしまい私のサポート量が増えたのは、反省点でもあります。

受験勉強がハードでも、睡眠時間は確保して体をしっかり休ませる

受験期間を通して「大変だったな」と感じるのはどのような点でしたか。

ゆるっと 息子の生活面のフォローですね。仕事もあって学習面のフォローができないかわりに、できる限り睡眠時間を確保してあげられるようスケジュールを管理していました。

息子は朝弱く、夜の方が「勉強しなくちゃ!」という気持ちが出てくるタイプなんです。でも夜更かしすると体調も崩しやすくなりますし、しっかり体を休ませるためにも親として睡眠時間の確保は譲れない。

塾から帰宅したらすぐにお風呂に入らせて、できるだけ早く寝かせるよう心がけていました。

あんこ 私も、どうすれば受験勉強をしながら規則正しい生活を送れるか? に悩みました。

我が家の息子も夜更かししがちなタイプで、夜は何時まででも起きていられる代わりに、朝起きられない。受験する学校によっては通学時間が長くなり早起きしないといけない可能性もあるので、中学入学以降のことも考えて「今のうちから規則正しく!」と伝えていました。


毎日の通学もある中で生活リズムが乱れてしまうと、子どもの体への負担が大きいですもんね。共働き世帯だと、子どもの食事面のサポートを気にする方も多そうです。

ゆるっと 「私が働いていることで息子につらい思いをさせているかも」と一番悩んだのは、食事面かもしれません

塾に持って行くお弁当は朝のうちに作っておいて、傷まないように冷蔵庫に入れていたのですが、冷えたおかずを食べさせるのがかわいそうだと感じて。せめてご飯だけでも温かいものをと思い、保温ジャーを用意して、塾に行く前に炊飯器からよそってもらっていました。

あんこ 「塾で食べる食事の準備」は共働きの最大の課題かもしれませんね。うちも冷蔵庫だと冷え過ぎるから野菜室の方がいいかな?とか、サンドイッチなら冷たくても食べやすいかな?とか、いろいろ試しました。

学習サポートに健康管理などの生活サポートなど親の方も疲れてしまいそうですが、どう対処していましたか。

あんこ 私自身「もう合格は無理かも」とネガティブな感情が湧くことも多かったのですが、家族の前では不安を出さないようにして、負の感情や本音はSNSは日記などに書いて気持ちのバランスを保っていました

中学受験にトライしている親御さんのアカウントとSNSでつながっていると、共感してもらえたり、励まされたりすることも多かったです。同じように日々を過ごしている仲間がいるという感覚でした。

私とは違い、息子は受験期間を通してずっと一定のテンションを保っていて、すごくはりきったり、やる気をなくしたりということもなく淡々と取り組んでいたので、そういった精神面でのフォローがほぼ必要なかったのはありがたかったですね。

ゆるっと 私は何度も「もう受験をやめたい」と思っていました(笑)。何がつらかったのか振り返ってみると「自分だけががんばって、空回りしているんじゃないか」と感じることが多かったからかもしれません。

そんなとき、どうやって気持ちを切り替えていたんでしょうか。

ゆるっと 子どもと物理的な距離をとって、頭を冷やすようにしていました。それから、余計なことを考えたり言ったりしないよう、筋トレに打ち込んだりもしていました。

一番つらかった6年生のお正月の頃は、一人でファミレスに行って、放心状態でコーヒーを飲んでいましたね(笑)。

かなり追い込まれていたんですね。

ゆるっと 子どもには幸せになってほしいという願いが大前提にあって、でも幸せな人生に「中学受験」はマストではないはず。毎日のように塾に通って、難しい問題を解いて……というのは「絶対にみんながやるべきこと」ではないんです。

でも子ども自身が中学受験に挑戦すると決めたからには頑張ってほしいし、結果がダメだったとしても「本気でがんばった」と思えるくらいの準備をしてほしいなという気持ちもあって。受験中はずっと「迷い」がつきまとっていたように思います。

人生を長い目で見て、親も無理をし過ぎないことが大事

中学受験を終えて、現在はどのように過ごしていますか。

ゆるっと 息子は第一志望の中学校に進学し、現在は中学2年生です。長時間塾に行くことがなくなったので、家にいる時間が増えたほか、友達と遊びに行くなどのびのびと過ごしています。

学習面に関しては「ペースダウン」の時期かなと思っています。塾に通っていた頃と比べると緩んでいるように感じてしまうこともありますが、ここまで頑張ってきましたし、次の関門である大学受験まではまだ時間があるので、様子を見ながらですね。

あんこ 息子は3校受験したうち1校に合格しましたが、そちらは辞退して現在は公立中学校に通っています。

受験時期の我が家は「受験のために集まっているチーム」のような雰囲気だったので、それがなくなってまた各々が個人としての人格を取り戻し始めたような感覚ですね。

息子にとって塾通いの日々はハードだったようで、「塾はしばらくいい」と言っています(笑)。中学受験でかなり勉強したこともあり、今のところ学習面で苦労していることはなさそうなので、あれこれ言わないようにしています。

合格したにもかかわらず、公立中学を選んだのはどうしてですか。

あんこ 第一志望校の合格を熱望していた息子にとっては、合格をいただいたのが「どうしても行きたい」と感じている学校ではなかったからです。

率直にいえば「合格した学校に行ってほしい」という思いはあったのですが、冷静に考えてみると「せっかく受かったから」という気持ちで選択するのが本当にベストなのかなと。

そもそも私立への進学には莫大なお金もかかりますし、それならと公立への進学を決め、受験を終えました。1校でも「合格」したことは、一つの成果として受け止めています。

中学受験を終えた今、当時を振り返って「中学受験へのチャレンジを考えている共働きの保護者」に伝えたいことはありますか。

ゆるっと 私はついつい「あれもこれもやらなきゃ」と抱え込んでしまったので、「無理をしないでほしい」と思います。子どものため……と、睡眠時間を削ってしまったこともあって。でも、子どもがハッピーに過ごすためには親が元気でいることも大切です。

中学受験のシステムは昔から変わっておらず、今でもなお家庭でのフォローが多く求められます。保護者のタスクが多過ぎて、たやすく倒れてしまうこともある。「これ以上は無理しない」とラインを決めて、しっかり休むとか、きちんと食べるとか、基本的な生活を守ってほしいですね。

私は仕事との両立が課題でしたが、働いていなくても、きょうだいのお世話や介護などをしている方もいます。時間があり余っている保護者なんていないと思います。

あんこ ゴールや目的を絞り過ぎないことが、受験期のメンタルを健全に保つポイントかなと思います。「ここに受かりたい」「偏差値をこれだけ上げたい」といった目標に向けて努力していると思うのですが、子どもの成長ってどこでスイッチが入るか分からない。

中学受験期で伸びる子もいれば、中学校に入ってから伸びる子もいるかもしれないのに、「中学受験」に目標を絞り過ぎると「今伸びないと……」と視野が狭くなってしまう。

結果はどうあれ、中学受験という経験は必ず子どものその後の人生の糧になるはず。いろいろな選択肢を持っておけたら気持ちも楽になるし、子どもにとってもよいのかなと思います。

取材・文:藤堂真衣
イラスト:caco
編集:はてな編集部

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