「小1の壁」で派遣社員に、でも後悔はない。優先順位を見直したら「納得できる働き方」が見つかった


子どもの小学校入学を機に訪れる「小1の壁」。時短勤務の終了や保育園より短くなる預かり時間、夏休みなどの長期休暇など、壁を乗り越えられるだろうか……と不安を感じている人は多いのではないでしょうか。

長く正社員としてキャリアを積んできたブロガーのrinさんもその一人。

数年前、時短勤務の終了で学童のお迎えに間に合わないことから、葛藤の末、最終的には前向きな気持ちで異業種に非正規雇用で転職することを決めたそうです。

***

一日中大人に見守られている保育園の生活から、学校と放課後の生活へと大きく変わる小学1年生。子どもの放課後の過ごし方を考えるタイミングを迎えるにあたり、仕事と子育てのバランスの取り方に悩む方もいると思います。

申し遅れましたが、rinと申します。夫と小学生の長男、未就学児の次男の4人で暮らしています。

私は「小1の壁」をきっかけに仕事の優先順位を見直し、正社員から異業種の派遣社員へと働き方を変えました。それから数年がたちますが、働き方を変えてよかったと思っています。

ただ、元々正社員としてキャリアアップを望んでいたこともあり、転職することでキャリアが途絶えるかもしれない、収入がダウンするかもしれないといった不安や葛藤もありました。

今同じように悩んでいる方の心が少しでも軽くなりますようにと願いながら、私の働き方の変化と、今思っていることをつづります。

産前も産後も、キャリアアップを望んで頑張っていた

私は就職してから十数年、ずっと同じ業界で働いていました。転職や異動をきっかけに仕事の内容は少しずつ変わりましたが、経験を積み重ねるごとに専門性も高まって役に立てている実感があり、このまま正社員として経験を重ねてキャリアアップしていきたいと考えていました

その気持ちは産後も変わらず、長男の出産後、約1年間産休・育休を取得したのち復職。家庭の事情で片道1時間半と通勤時間が長いため、保育園のお迎えに間に合うよう時短勤務を選択しました。

登園は夫、降園は私と分担。お迎えがあると残業ができないので、朝は夫に任せて早めに出社するなど、できる範囲で協力し合いながら、育児と仕事を両立しようと頑張っていました。

「小1の壁」が近づき、このままでは無理かもと実感

小学生のイメージ写真 写真はイメージです


しかし「このまま働き続けたい」という思いを抱く一方で、心や時間に余裕がない毎日にストレスも感じていました。

当時の職場は属人性が高く、時短勤務となっても業務量は減らないどころか新たな仕事を任されることもあり、抱えるタスクはどんどん増えていました。

朝早く出勤してもお迎えまでの時間には終わらず、終わらない仕事を自宅に持ち帰り、子どもを寝かしつけた後にこなすのは、精神的にも体力的にもとてもしんどいものでした。

思うように仕事が進められないストレスや、遠方への出張を同僚に代わってもらうことに対する申し訳なさ。もどかしさから来るイライラを家族に向けてしまうこともあり、そんな自分にまたイライラするという負のループから抜け出せずにいました

「やっぱり今の働き方のままでは無理かもしれない」と実感したのは、長男が年少クラスに上がった頃。

保育園で会う保護者の方との会話に小学校の話題がちらほらと上がるようになり、「小1の壁」の存在を意識したことがきっかけです。

当時から「小1の壁」という言葉はありましたし、認識もしていましたが、日々の生活に精一杯で向き合う余裕はなく、また「小学生なんてまだまだ先のこと」だと思っていたのです。

改めて登校時間や学童のことを調べてみて、学童の開所時間は延長しても保育園より短いことや、延長するとお迎えも必要になることを知り、不安になりました

当時の職場で時短勤務を選べるのは、子どもが小学生になるまで。1年生になると通常勤務に戻り、帰宅はかなり遅くなってしまいます。夫はさらに帰りが遅く、私の両親も夫の両親も遠方に住んでいるため頼れません。

放課後をどう過ごすのか。「親が帰宅するまで留守番をしてもらう」「知人に面倒を見てもらう」「習い事を詰め込んで一人にさせない」といった方法も考えましたが、家族で過ごす時間がほとんど取れなくなり、子どもの生活環境が大きく変わってしまいます。

自分のキャパシティに限界を感じていたこともあり、当時の職場でフルタイムに戻るのではなく、働き方自体を見直してみようと考え始めました

「したくないこと」を整理したら、優先順位が見えてきた

最初に考えたのは、収入を変えずにこれまでの経験を生かせる業界で正社員として転職すること。

入学と私の転職が重ならないよう、早めに転職して新しい職場に慣れておきたいと思っていたのですが、一番重要な条件である「学童へのお迎えに間に合う勤務時間」をクリアするハードルは予想以上に高く、希望に合う職場はなかなか見つかりません。

進展のないまま時間だけが過ぎていき、仕事への優先順位を見直した方がいいのかもしれないとも考えるようになりました。

仕事選びの軸として「これまでと同じ業界で転職したい」「お迎えの時間は死守したい」などさまざまな要素が入り混じっていましたが、まずは自分の思いを整理するために、私にとっての「したくないこと」を書き出してみることにしました

<したくないこと>

  • 1年生になった子どもの生活リズムや環境を大きく変える
  • 子どもを不安な気持ちにさせる
  • 子どもと接する時間が減る
  • 私自身に余裕がなく、イライラしてしまう


書き出してみて改めて、自分が本当に大事にしたいことがはっきりと見えてきました。

そもそも働き方を見直そうと思ったきっかけは、子どもの生活環境を変えたくなかったから、そして、私を含めた家族みんなが安心して過ごすために、私の心や時間に余裕が欲しかったからです。

それであれば今、私が転職条件として優先すべきなのは、新しい働き方で「したくないこと」をいかに解決できるかどうかなはず。

ぼんやりとしていた自分の思いが目に見える形に整理されたことで、仕事選びの優先順位がはっきりしました。

ノートのイメージ写真 写真はイメージです


「したくないこと」を解決するには、やはり「学童のお迎えに間に合う勤務時間」であることが前提となるので、正社員だけではなく融通が効きやすいパートや派遣の求人も見てみることに。そうして選択肢に浮かんだのが「経験のない分野でフルタイム派遣社員として働く」でした。

派遣社員であれば残業が少なく、帰宅時間が安定しやすいので「したくないこと」が解決しやすくなります。

一方で「収入が下がるかもしれない」「一度正社員としてのキャリアがストップすると、再び正社員として働きたくなっても簡単には戻れないかもしれない」「これから先のキャリアはどうなるんだろう」など不安ももちろんあったので、「どうすれば自分が前向きな気持ちで納得できるか」の落としどころを考えてみました

収入については、収入と支出を長期的にさまざまなパターンで見積もったほか、夫とも話し合って「これくらいあれば何とかなりそう」という給与の水準を定めることに。

キャリアについては、正社員での転職ではまず難しい「まったく未経験の仕事に挑戦できる」という点をプラスに捉えました

派遣期間が満了となる3年後には、長男もさらに成長し、親子ともに小学生の生活ペースに慣れているはずなので、またその時の状況に合わせて働き方を見直そうと考えました。

「納得」を大事にすれば、前向きな気持ちが生まれてくる

そしてご縁のあった会社で派遣社員として働き始めてみたところ、想定していたよりも自分に合っており、長男が学童を卒業した今もそのまま同じ職場で働き続けています。

現在は9時〜17時半のフルタイムでほぼ残業なし。以前よりゆとりを持って働いています。

働き方を変えて一番よかったことは、小学生になった子どもと向き合う余裕ができたこと。特に低学年のうちは宿題、学校からもらうプリント類、持ち物のチェックといった毎日のフォローに慣れるまでが大変でした(翌日の授業で使うからと、真っ暗な公園へどんぐりを探しに行く羽目になったことも……)

学校に行くことを少し怖がる時期もありましたが、そんな時もしっかりコミュニケーションをとって子どもの様子を見守ることができました。

こんなふうに子どものサポートに時間をかけることができたのは、家に仕事を持ち帰ることがなくなって時間の余裕ができたからこそ。

また、私自身の心の持ち様にも変化がありました。

前職での正社員時代と比較すると、仕事の量や責任が驚くほど軽くなり、仕事にまつわるストレスも少なくなりました。

転職前はキャリアアップが見込めなくなるのではないかと不安も感じていましたが、今は知らなかった分野の知識や技術を学べることが面白く、「しっかり学んで私にできることを精一杯がんばろう」という気持ちで働くことができています

私「だけ」が働き方を見直したことで、もしかすると「母親だけが働き方を変えるのはどうなのか」と思われる方もいるかもしれません。

私自身も思うところがなかったわけではありませんが、当時は今よりもずっと「父親が育児と向き合うこと」に理解が得られづらい環境でした(今の時代であれば「小1の壁に夫婦でどう対応するか」をもっと考えやすいかもしれませんね)。

それに何より私自身が、心や時間に余裕を保ち家族と過ごしたいという気持ちを満たすためにも、これが一番いい選択だったと思っています。

***

仕事と子育てとのバランスに悩んだ時、優先したい要素を整理して落としどころをみつけていくと、納得のいく選択ができるかもしれません。

私自身は「子どもとの時間」を優先する働き方を選びましたが、「自分のキャリア」を優先する働き方はもちろん、どんな選択でもその時々にしっかり考えて納得していれば、どれも正解だと思います

決断にあたって葛藤があったとしても、迷いや悩みの総量より納得の総量が上回っていれば、前向きに考えて行動できるような気がします。

今は保育園に通う次男が小学生になるとき、また「小1の壁」に直面するかもしれませんし、この先子どもが成長するにつれ、また働き方に迷うこともあるかもしれません。その時もまた、その時の私が心から納得のいく選択をしたいと思っています。

そして近い将来、今よりももっと柔軟な働き方が広がって、さまざまな「壁」に悩むことがなくなるような、そんな世の中になるといいなと願っています。

編集:はてな編集部

自分が納得していれば「子育て優先の働き方」でもいい

子育てのしやすさを重視し、正社員から派遣に。時短・週4勤務が「理想の働き方」
時短・週4勤務が私の理想の働き方
働きながら子どもの不登校と向き合い「キャリアは常に右肩上がりじゃなくてもいい」と気付いた
仕事をセーブして子どもの不登校と向き合った日々
「無理しない働き方」を選んだ自分への後ろめたさ、を受け入れられるまで
「無理しない働き方」を選んだ自分に、葛藤もあったけど

著者:rin

rinさんプロフィール画像

ドタバタな毎日でも、ちょっとした幸せを見つけながら心穏やかに過ごしたいと模索中。最近はサッカーを観るのが好きです。昨年始めたブログには、心に残ったことをつづっています。

ブログ:日々のきろく