
スキマ時間で以前から興味のあった別の仕事をしてみたい、本業にも還元できるようなスキルを身に付けたいなどの理由で「副業」や「Wワーク」を検討したことはありませんか。
編集者・ライターの花沢亜衣さんも、「お酒の知識を深めたい」といった理由から、月に数回飲食店でアルバイトを始めた一人。
副業への不安もありつつも、勇気を出して一歩踏み出した結果「働くこと」や「居場所が増える」ことへの楽しさを感じているそうです。
私は食や暮らしにまつわるコンテンツの編集・ライターをしながら、ワインスタンドを併設したワインショップでも働いています。
“二足のわらじ”と言えればかっこいいのですが、実際はそう上手にバランスが取れているわけではなく、副業として“ゆるバイト”をしているという感覚です。
最初は週に3日、本業が忙しいときは週に1日、かなり余裕がないときはSNSのお手伝いのみ、というように、その時の状況に合わせて働き方を調整しながら約1年続けてきました。
この副業のはじまりは偶然のようでいて、いま思えばいろいろなことが重なっていました。今日はそんな話をさせてください。
娘が生まれ、お酒を「飲む」以外の楽しみ方を知りたいと思った
- 子どもが生まれ、自由に「好き」を楽しむのが難しくなった
- 限られた時間で「好き」を楽しみ、新たな“武器”にするため副業を検討
10年勤めた会社を辞めてフリーランスになった初日、近所のワインショップにふらりと立ち寄り、一杯のワインを決起のように飲んで帰りました。そこが、のちに私の副業先となるお店です。
もともと「三度の飯より食べること・飲むことが好き」な私は、長い間、仕事もプライベートも公私混同させながら、飲食に前のめりに過ごしてきました。
中でも「お酒」は大好物。仕事を通して、お酒を造る人、提供する人、愛する人の話を聞く機会も多く、興味の中心にはいつもお酒がありました。
しかし、娘を出産後は、これまでのように時間と体力、理性を溶かしながらお酒を楽しむと言うのは、かなり難しい状況に......。
限られた時間のなかで、お酒を楽しむにはどうしたらいいか——私が出した答えは「お酒の背景を知ること」でした。
背景を知れば、“酔って楽しい”だけではない、より深い楽しみを見つけられるかもしれない。
もうひとつ、これまでとは違う働き方をするタイミングだったこともあり、新しい武器を獲得したいという気持ちも少なからずありました。
副業の面接では「できないこと」も正直に伝えた
- 子どももいるし条件的には厳しいけれど、思い切って応募
- 家庭の事情や本業の都合で「できないこと」を正直に伝えた
- 求人条件には合わなかったが、自分のスキルを提示して交渉した結果、採用された
そんな思いを抱えていたある日、あのワインショップのスタッフ募集情報が目に飛び込んできました。
「あそこは私がもっとも疎いイタリアワインを中心に扱っているし、未知の世界に飛び込めるかもしれない!」と、直感が働いたのです。
ただ娘は当時2歳。夕方には保育園に迎えに行き、夕食を食べさせ、寝かしつけをする生活です。
ワインスタンド併設のお店なので、にぎわいのピークは18時以降。オープンの15時〜18時だけ働けたらいいけど、そんな都合のいい条件で雇ってもらえるんだろうか。
それに突発的な取材、出張、納期などで急にシフトに入れなくなる可能性もあるし......
条件的には難しい。でも「やってみたい」という素直な気持ちが、不安を上回りました。
思い切って応募し、面接では「小さな娘がいるから夜遅くまでは働けないこと」、「本業が忙しいとシフトに入れないこと」などの「できないこと」を正直に伝えました。
同時に、食に関わる編集・ライター歴が10年ほどあること、前職でSNSのコンテンツ設計・投稿・分析まで一通り携わっていたためお店のSNS運用を手伝えることなど、これまでに培った「できること」もかなり具体的に伝えました。
その結果「ピークタイムに入れないぶん、できることで貢献する」という形で採用が決定。
「できないこと」をここまで理解してくれる勤務先はそう多くはないかもしれませんが、「求人条件に合わなくても自分のスキルを提示して交渉できるケースがある」というのは私の中で一つ大きな発見になりました。
「できない」ことが「できる」過程こそ面白い
- 慣れない業務に悪戦苦闘するも「分からない」ことが「楽しい」と思えた
- 本業では得られなかった「喜び」が得られることも
はじめの数週間は仕事に慣れるべく週3日、開店準備の14時から18時までの勤務。
接客は学生時代のアルバイト以来20年ぶりで、しかも、当時はかなりポンコツだった記憶が……。
「私にできるだろうか」という不安も大いにありながら、編集やライターとして10年以上、人と向き合ってきた自負も少しあり、「今ならできるかもしれない」という淡い期待もありました。
実際に働きはじめてみると……
ワインの知識不足はもちろん、レジ操作やキャッシュレス決済にも大苦戦。検品して、値札をつけて、接客、グラスの洗浄……業務の流れを覚えるだけで精一杯。
あげくには慣れない立ち仕事と荷運びに筋肉痛になる始末……。
店内の空気やお客さんとのおしゃべりを楽しむ余裕なんて皆無で、てんてこ舞いでした。

でも「分からないこと」があることが、楽しいとも思ったんです。
前職では年次も上がり「先輩」と呼ばれる立場で、今思えば多少の驕(おご)りや思い込みもあったかもしれない。久しぶりの「新人」という立場は、できなかったことが少しずつできるようになる喜び」をもたらしてくれました。
「これができる」という“結果”ではなく、「できるようになる」という“過程”こそおもしろい、と。
また、「SNSの投稿を見て来ました」とお客さんから直接声をかけてもらえることも。不特定多数に発信することが多い本業では、直接感想をもらえる機会は意外と少ないので、「届いた実感」を得られるとてもうれしい瞬間です。
ワインの造り手が来店する際はその模様をレポートすることもあり、「その場の高揚感をいかにして伝えるか」はライターとしての腕が鳴るところでもあります。
副業を始めたことで、本業へのモチベーションが上がった
- 本業とは“使う筋肉”が違うため、意外と疲れない
- 副業が気分転換やアイデアのタネになり、結果として本業のモチベもUP
時折「本業があるのに副業もやるって大変じゃない?」と聞かれることがありますが、「“使う筋肉”が違うから意外と疲れない」というのが私なりの答えです。
編集やライティングは、PCに向かう時間が多い仕事。一方、副業はリアルな会話が中心で体も動かします。
本業で行き詰まりを感じたとき、まったく異なる環境で体を動かしたり、人と接したりすることは、思った以上に良い気分転換になりました。
結果的に、本業に戻ったときの集中力やモチベーションにもいい影響があったと思います。
他のスタッフやお客さんとの会話から、思わぬアイデアが生まれることもしばしば。実際に副業での出会いや会話をきっかけに、本業での企画につながったこともありました。
副業先が「もう一つの居場所」になった
- 副業で得られた何よりの収穫は「居場所」が増えたこと
- 勇気を出して一歩踏み出してよかった
「飲む」だけではないワインの楽しみ方や、働く楽しさの再発見など、この副業がもたらしてくれたものは数え切れませんが、何よりの収穫は「もうひとつの居場所」ができたことです。
いまは本業が忙しいこともあり、副業はSNS運用が中心で店頭に立つことは少なくなりましたが、それでも私にとって大切な居場所であることには変わりありません。
ふらりと立ち寄れる場所がある。それだけで、心が軽くなる日もあります。好きで通っていたお店のことが、働くようになってからもっと好きになった。それは、幸せなことだな、と。
「ここで働きたい」というシンプルな直感からはじまった副業。
「本当にできるのかな......」と躊躇する瞬間もあったけど、あのとき踏み出していなければ、この居場所は手に入らなかった。
そう思うと、「勇気を出して良かった」と心から思っています。
編集:はてな編集部
副業に週3日会社員など「働き方」は多種多様
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