育児中はフルタイムor時短の2択、ではない。“働き方の選択肢“はできるだけ多く知っておく

桜の花びらを持つ手

仕事と子育ての両立のため「会社員兼フリーランス」として働くちゃきさんが、ワーキングマザーが柔軟な働き方を実現する上で「選択肢を知ることの大切さ」について語ります。

子育て中の女性の働き方というと、「週5日フルタイムでバリバリ働く」もしくは「時短やパートなどで少しペースを落として働く」の2択をイメージする人が多いかもしれません。しかしちゃきさんは「自分のキャリアも大切にしながら、子どもとの時間もちゃんと持ちたい」と考え、正社員とフリーランスの両方の仕事をこなす「複業」という形にたどり着きました。

従来のスタンダードとは異なる新しい働き方を選んだことでどんな変化があったのか、また柔軟な働き方を考える際に気にかけておきたいポイントは何か、経験をもとにつづっていただきました。

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こんにちは、「ちゃき」こと田原未沙記といいます。現在39歳、夫と共働きで小学3年生の娘を育てるワーキングマザーです。私は週2日会社員として働きつつ、フリーランスの編集・ライターとしても活動しています。

もともとは週5勤務の会社員でしたが、バリキャリでもない、ゆるキャリでもない、自分にとってちょうどいい働き方を模索した結果、会社員とフリーランスの仕事をほどよく両立させる「複業」という働き方を選択しました。2023年でこの働き方を始めて5年目。以前よりも仕事と子育ての両立がしやすくなり、心に余裕を持って働くことができるようになったと感じています。

もちろん同じワーキングマザーであっても、誰でも今すぐに選べる働き方ではないし、私と同じ働き方が合うとは限らないでしょう。

ただ、働き方の「選択肢」をできるだけ多く知っておくことは、仕事と子育ての両立を考える際に、自分にとってより最適な道を見つけるきっかけになると思っています。

この記事で私の経験や考えを共有することで、同じように悩む人の道を照らすきっかけになれば幸いです。

「3歳の壁」に直面し、子育てを優先するため転職活動を開始

私は現在、都内の会社で専門誌の編集者として週2日働いています(繁忙期だけは週5勤務に戻るという働き方です)。そしてそれ以外の時間は、個人で編集・ライターの仕事をしています。

今の会社は勤続12年目。もともとは週5日フルタイムでしたが、働き方を変えようと考えたのは、子育てと仕事の両立に悩んだことがきっかけです。

当時娘が通っていたのは0〜2歳が対象の小規模保育園。タイムリミットが迫り新たに3歳以降の預け先を探したものの、希望の保育園には入れませんでした。いわゆる「3歳の壁」です。

わが家の場合は娘を預かり保育のある幼稚園(通常の教育時間の前後に子どもを預かってもらえる)に入れることになったのですが、幼稚園は保育園と違い、両親の共働きを前提としていません。全員参加の係仕事、平日の呼び出し、母親同士の昼間の懇親会など、働いていると負担に感じる場面が多々ありました。

さらにお昼寝の時間がないため、長時間預けていると夕方まで娘の体力がもたず、お迎えの時に自転車で寝てしまいそのまま朝を迎えることも。

「もっと早くお迎えに行ってあげたい」
「子どもに関わる時間を優先したい」

こうした思いが日々強くなり、転職を検討し始めました。

「複業」という新しい選択肢に気付き、会社に交渉

当時の私の転職条件は「なるべく自宅近く・経験が生かせる・時短OK」。しかしなかなか見つからず、「希望の働き方をかなえること」ことと「子どもと向き合う時間を増やす」ことを両立するのは、こんなにも難しいことなのかと実感しました。

そんな中で偶然発見したのが「在宅で働くライター」の募集です。

当時は、今ほどリモートワークが普及していなかった時期。「そうか、場所に縛られない仕事ならもっと可能性が広がるのか」と気付き、これはチャンスかもしれないと思い切って応募することに。

一方で、転職活動をしてみてあらためて気付いたのが「働き方は変えたい」けれど、「会社を辞めたい」わけではないということ。人手不足の状況は理解していたし、辞めて迷惑をかけたくないという気持ちもありました。

そこで思いついたのが、会社員とフリーランスを組み合わせた「複業」という働き方です。当時の私は、業務で情報収集をする中で「働き方改革」や「パラレルキャリア*1」といった世の中の変化に触れ、新しい働き方についても関心が高まっていました。「もしかしたら、自分にもそんな働き方ができるかもしれない」と思ったのです。

ワガママは承知の上で「勤務日数を減らし、ライターの仕事と並行しながら働けないか」と、勇気を出して会社に交渉してみました。

まずは、もともと私の子育て事情に理解があった直属の上司に相談。さらに経営層との面談の際には「週2勤務に変更した場合、これまでの担当業務をどうするのか」を書類にまとめて提示しました。

また、万が一ダメだった場合は会社を辞める覚悟を持った上で交渉に臨みました。おかげで中途半端な交渉にならず、自分の希望をはっきり伝えられたように思います。

その結果、無事にOKをもらい、ほぼ同時に在宅ライターとしての採用も決まったので、今の働き方に至りました。この働き方を認めてくれた会社には今でも感謝していますし、その分きちんと貢献しなくてはと考えています。

ビルと青空
コロナ禍をきっかけに、今では会社の仕事も在宅中心へ

子育てとの両立だけでなく、自分の幸せや成長にもつながった

バリキャリ志向でもゆるキャリ志向でもない私にとって、今の働き方はとても心地よく、たくさんのメリットを感じています。その中でも、特に大きいと感じる3つの変化があります。

1.時間の使い方を自分でコントロールできるようになった

もっとも大きな変化は、時間の使い方を自分でコントロールできるようになったこと。

週2勤務になることで固定の労働時間がそれまでの半分以下になり、大きな心のゆとりが生まれました。さらに、フリーランスの仕事量は自分である程度調整できるため、かなり柔軟に行動できるようになりました。

そして本来の目的だった「仕事と子育ての両立」については、働きながらも娘と一緒に過ごせる時間が増え、平日の予定にも対応できるようになりました。小学校に上がってからも、保護者会への参加、宿題や自宅学習のサポートができています。「3歳の壁」には苦労しましたが、結果的に「小1の壁」対策になったわけです。

それに、自分の選択で時間の使い方を決められるようになったことで、人生の幸福度が大きく上がったような感覚になりました。

2.自分自身が成長し、視野が大きく広がった

二つ目の変化は、自分自身の大きな成長を実感できたことです。

会社員+フリーランスという働き方には、思った以上の相乗効果がありました。

一方で得たスキルや情報をもう一方でも活用できると、自分自身がレベルアップしていくのを感じます。特に私の場合は、会社でも個人でも編集・ライターの仕事に携わっているため、双方で得た知識を生かしやすいと思います。

さらに、フリーランスとして自分の名前で仕事をするようになったことで、何者でもない自分に依頼が来る喜びや、信頼を積み上げる大切さ、世の中の動きに敏感である必要性、学び続けていく責任感など、今まで知り得なかった感覚が磨かれました。

3.以前よりも収入がアップした

そして三つ目は、働き方を変える前よりも、収入がアップしたことです。

もちろん、最初からいきなり収入が増えたわけではありません。週2勤務になったことで会社からの給与は減りましたし、ライターとしての収入も当初はそれほど多くありませんでした。それでも、自分なりにいろいろと行動し続けた結果、フリーランスの仕事が徐々に広がり、以前の年収を上回るように。

会社員として年収を上げることは容易ではありませんが、フリーランスなら自分の努力次第で収入を大きく増やせる可能性があります。

ただしフリーランスの場合、当然ですが仕事が得られないと収入はゼロになります。実際に私も、2020年にはコロナ禍の影響でライターの仕事がストップした月もありました。だからこそ、安定的に収入がある会社員との兼業は、いいとこ取りの働き方だと思っています。

手帳
毎年愛用していた手帳たち。今は全てデジタル管理にシフト

自分らしい働き方を実現するには「自分軸・情報収集・お金の試算」がポイント

新しい働き方を取り入れる上では「自分にもできるかな」「収入はどうなるかな」といった不安も当然あると思います。そこで私の経験をもとに、柔軟な働き方を考える上で大切なポイントを挙げてみます。

1.「自分がどうしたいか」を大切にする

普段、働き方についてSNSやブログ、書籍などで発信していると、仕事と子育ての両立に疲れた人たちから共感や悩みの声が寄せられます。

「いつの間にか毎日から『自分』がいなくなっていた」
「もっと『自分』の時間が欲しい」
「母でも妻でもない『自分』を取り戻したい」

責任感や貢献心が強い人ほど、子どものため、家族のためと、自分を犠牲にして頑張ってしまいがちです。それは一見美しく見えるかもしれませんが、常に「家族など自分以外の誰か」を最優先にしていると、そのうち無理が生じて、自分を追い詰めてしまうように思います。

だからこそ、ここで考えてみてほしいのです。

「あなたは、これからどうしたいですか?」
「あなたにとって、結局、何がどうなれば幸せに過ごせますか?」

もちろん、最終的に「どう働くか」は家族とも相談する必要がありますが、自分を幸せにするにはまず主語に「自分」を置くことが何より大切です。

働き方を変えるにはかなりのエネルギーが必要です。踏み出して後悔しないためには、その先に自分の求めている幸せがあるかどうか、自分のキャパに見合う仕事や働き方ができるかどうかをまず考える。そこから逆算して、仕事を探す上での具体的な条件に落とし込んでいくのがいいと思います。

2.情報に対するアンテナを張っておく

柔軟な働き方を考えるには、いろいろな情報(特に新しい動き)に敏感であることも大切です。

例えばこの記事をきっかけに、週2勤務という働き方や、複業で仕事と子育てが両立できる可能性について初めて気付いたという人もいるかもしれません。

もともと私がこの働き方に思い至ったのも、専門誌の編集という仕事柄、情報収集する中で「働き方改革」の動きや「パラレルキャリア」というキーワードを知っていたからでした。

働き方改革、副業解禁、コロナ禍によるリモートワーク化、AIの急速な進展など、ここ数年の間にも働く環境はどんどん変わっています。「こんな働き方は無理だろう」と今は思っても、時代の変化が追い風になって実現できるかもしれません。世の中の動きを知っておくことは、新しい行動を起こす時の武器となってくれるはずです。

情報収集というと難しく感じるかもしれませんが、SNSやYouTube、ブログ、ビジネス系メディア、ネットニュースなど、無理のない範囲でチェックする程度でOK。今は個人の発信も多いので、多様なロールモデルも探しやすいと思います。

3.お金の不安は必ずクリアにしておく

仕事と子育ての両立が最優先だとしても、避けては通れないのが収入の問題。家族の生活や今後のライフプランをふまえ、お金の不安を解消しておくことが大切です。

今よりもゆとりのある働き方にシフトした場合、多くの人は一時的に収入が減ることが予想されます。そのため、以下のような点を確認しておくといいでしょう。

  • 現状の家計は黒字なのか赤字なのか
  • 自分の収入が減る場合、どの程度であれば生活できるラインを維持できるのか
  • 新しい働き方で収入が増える見込みはあるのか
  • 今の支出の中でもっと減らせる要素はないか
  • 今後、新しく家族が増える可能性はあるか

このような内容を中心に、家計への影響を具体的に試算してみるのがおすすめです。そして、夫婦間で共有することも忘れずに。

そこから逆算すれば、週4勤務でギリギリなのか、週3勤務でも大丈夫なのか、副業を組み合わせるべきか……など、具体的なプランを検討できます。

つい新しいアクションばかりに目を向けがちですが、現実的にはこういった「守りの対策」が重要です。しっかり足元を固めてから行動することで後悔を防ぎ、着実に理想の状態に近づけると思います。

小学3年生の娘が好きな鳥
小学3年生の娘の夢は、鳥の博士になること

“普通の働き方”に縛られず、可能性を知ることが第一歩

私の周りでも「週4会社員×キャリアコンサルタント」「週3会社員×Webデザイナー」といったように、新しい働き方を選択する人たちが少しずつ増えています。

これまでの「普通」や「常識」からもう少し視野を広げてみると、自分らしく働ける可能性が眠っているかもしれません。柔軟な働き方を選べる環境は、徐々に整ってきていると感じます。

誰もが好きな働き方を選べるわけではないし、さまざまな事情で自由に働けない人もいると思います。それでも、まずは「選択肢」を知っていることが、いつか自分の道を切り拓く可能性につながるはずです。

今の働き方にモヤモヤしているのなら、ちょっとだけ足を止めて、これからの働き方について見つめ直してみませんか。健やかで持続可能な働き方を考えることは、人生100年時代のいま、子育ての時期を過ぎたあとにもきっと役立つことでしょう。

今回こうしてつづった話が、少しでも何らかの気付きとなり、自分らしく働くためのきっかけとなることを願っています。

編集:はてな編集部

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著者:ちゃき(田原 未沙記)

ちゃきさんプロフィール画像

週2会社員(編集者)+個人でもライターとして働く一児の母。都内在住。文章に携わって15年以上、フリーランスでは5年目。著書に『脱・週5勤務の働き方』。
note:ちゃき|田原未沙記 Twitter:@Chakimama1

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*1:キャリアを開拓していくために、本業以外の仕事や社会活動などにも取り組むこと