「他己評価」と「自己評価」の違いに、どちらを優先すべきか悩んだ経験はありませんか。「一重モデル」として活躍する月山京香さんに、「他者からの評価との向き合い方」を伺いました。
仕事をする上で「自分の強みがわからない」と悩む方は多いと思います。そんなときに参考にしたいのが「他者からの評価」。しかし、自分では気にしていなかった点を「弱み」「直すべきところ」と指摘され素直に受け取れなかったり、「長所」として評価された部分を「本当かな……?」と疑ってしまったりすることもあるのではないでしょうか。
今回登場いただく月山さんが、自身の一重が“武器”になると気づいたのは、他者からの評価がきっかけだったそう。
自分では特に意識していなかった「一重であること」が誰かに必要とされていると知って、居場所ができたような感覚だった――そう話す月山さんは、どのように他者の評価を強みに変換してきたのでしょうか。
「他者からの評価」がうれしくて、芸能の道へ
月山京香さん(以下、月山) 小学生の頃、母に「ファッションモデルやキッズモデルの仕事をしてみないか」と勧められて、そこから芸能活動に興味を持つようになりました。とはいえ当時は「面白そうだからやってみようかな」ぐらいの感覚でしたね。
中学生になってから3年半ほどは、当時所属していた事務所に勧められたのを機にアイドル活動をしました。
月山 思いのほか背が伸びたこともあって、よく端っこのポジションだったんですよね。メンバー全員で並んだときのバランスの都合だと思うんですが……。「パフォーマンスはそんなに悪くないのに、なんで端っこなんだろう」なんて思ったりもしました。
事務所にも「やっぱり月山はアイドルじゃないよね」と言われて「え、じゃあ私、なんでここにいるんだろう」とグサってきて。そこから反骨精神のようなものが芽生えて、自分がもっと活躍できる場所を探してモデルの道に進みました。
それからは地元の関西を中心に、コンテストやショー、コレクションを経験し、高校3年生で上京して本格的にモデル活動をするようになりました。
月山 キッズモデルのコンテストでグランプリをいただいたり、選抜メンバーに選んでもらったり、そういった「家族以外の誰かに選んでもらえた経験」はうれしかったですね。「自分はここで輝くことができるんだ」という気持ちが芽生えたのは、初めてのことでした。
モヤモヤを感じていた“一重”が、他者からの評価で「魅力」に変わった
月山 違和感やコンプレックスのような感覚は、最初はありませんでした。一重か二重か、という違いもあまり意識したことがなくて。
ただ学生の頃クラスメイトに「京香って一重なんだ」と何気なく言われたことがあって、それがすごく心に残っていました。当時は「みんなと同じじゃないといけない」という感覚が強かったので、「みんなが“かわいい”と思っている目元と違うんだ」ということに恐怖を感じて。それから、二重テープやのりを試してみたりはしました。
月山 初めて雑誌出演のお仕事をいただいたのが、まぶたのタイプ別のメイク企画だったんです。「一重のモデル」として声が掛かったことで、「私の一重まぶたは必要とされているんだ」と感じて、すごくうれしかったのを覚えています。
それから、高校生のときに出演したバラエティ番組『林先生の初耳学』の「パリコレ学」でも、一重を生かしたメイクを評価いただけて。「自分でメイクをする」という企画で、アンミカさんから「コンプレックスを個性やチャームポイントに捉えていくことで、その人自身が強くなっていく」という言葉をいただいたんです。
まさかメイクで自分が評価されると思っていなかったので驚きもありましたが、メイクに対する自信が付いたし、学生時代の出来事をきっかけにモヤモヤを抱いていた自分の目元が確実にチャームポイントに変わった瞬間でした。
月山 そうですね。例えば私は身長が172cmなんですが、一般的にファッションショーモデルは175cmは必要といわれているので、身長をコンプレックスに感じることがあって。でも自分が他に持っているいいところに目を向けて磨くことで、個性の光り方も変わってくるはずだと思えるようになりました。
月山 そうですね。自分で「一重まぶたを個性にして頑張ろう」と思っていたわけではなかったけど、「一重モデル」と呼んでもらえるようになったことで、居場所ができたような感覚がありました。もともとお仕事は100%一生懸命やっていましたが、もっと熱が入るようになりましたね。一重まぶたの人の悩みは私も少なからず分かるし、その人たちのメイクを少しでも手助けできるのなら、私にとってそれはとてもうれしいことなんです。
他者からの評価で落ち込んだときは、心の声をひたすら聞いてあげる
月山 あまり意識はしていませんでしたが、言われてみれば、何かを勧められたときに「自分の評価とは違うんだけどな」という気持ちになったことはないかもしれません。というのも、もともと自分がどういう人間なのかをあまり分かっていないんですよ。だから言われたことに違和感もそれほど抱かないというか。
習い事も「やってみない?」「じゃあ、やってみる」で始めて、「合ってるね」「合ってる? よかった」みたいな感じなんです(笑)。もちろん合う・合わないはあるし、結果的にそれがやりたいことだったから受け入れられているんだと思いますが。
一重モデルも、人からのアドバイスを素直に受け入れたというよりは、自分でも意識していなかった魅力に気付けた。それがうれしかったし、振り返ってみるとそういう経験は確かに多かったなと思います。
月山 正直なところ、それはありますね。「私のいい所はまぶただけじゃないよ、もっといろんなことできるよ」とは思っています。
ただ、一重まぶたのモデルとして需要があることにはやっぱりやりがいを感じるし、求められるからこそ頑張れるんですよね。誰しもそうだと思うんですが、必要とされていることと私がやりたいことが一致していれば、ずっとそのお仕事は楽しい。それがなくなるまで、私はやり続けようと思います。
月山 もちろん、心ない言葉をかけられるとへこんじゃいます。だから「その評価は嫌だな」と思うこともありますが、そういうときは「好き嫌いは人それぞれ」と考えるようにしています。
ある人にとってはすごくかわいいと思うものでも、別の人はまったくそう思わないものもある。「絶対これがいい、これが正義です」というものはあり得ない。なので「それはあなたの好みであって、別の人には別の好みがあるし」に落とし込んじゃいますね。
月山 落ち込んだときは、自分の心の声をひたすら聞いてあげています。「今回はダメだったけど、自分に合ってなかっただけなのかもしれない」とか、そういうふうにポジティブに切り替えていく。
モデルのオーディションはたくさんあるので、一つひとつの結果に沈みきっていると、本当に心が折れちゃうんです。だから落ち込んだ日は食べたいものを食べるし、いつもは時間を決めているお風呂も好きなタイミングで入る。そういうちょっとした「こうしたい」に素直になってあげることで切り替えて、「また頑張ろう」って思うようにしています。
月山 もともと私はファッションモデルをやりたくてこの世界に入ったので、まさか雑誌の仕事で、しかもメイク企画で必要とされるようになるとは思っていませんでした。
だから、時にはまわりからもたらされる流れに身を任せるのも大事なのかなと感じています。お仕事をしていると、自分が思ってもみなかったところで必要とされることがあると思いますが、その先で自分の新しい才能に出会うこともありますから。
取材・文:ヒガキユウカ
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部
「自分を評価する」って難しい……
お話を伺った方:月山京香さん