こんにちは、ライターの店長と申します。

 

みなさんは今までの人生で、度肝を抜かれたことってあるでしょうか?

先日、とあるアーティストの作品を見たとき、僕は「こんなの今まで見たことない!!」と度肝を抜かれてしまいました。

どんな作品かというと―

 

こんな作品です

 

拡大すると……

 

ぜ~~~んぶ四角

 

な、な、なんじゃこりゃ〜〜〜!!!!????

見渡す限りの四角、四角、四角……!! 

 

どういう意味があるのこれ???

どんな人が何を思って作ってるの? 

居ても立ってもいられず、ご本人にインタビューさせていただくことになりました。スクエアアーティストのMINAMI MIYAJIMAさんです。

 

本人の服もカバンも四角~~~!!!

 

MINAMI MIYAJIMA

1997年生まれ。大阪府大阪市出身、在住。四角形が大量に密集した作品を中心に手掛ける。クラウドファンディングでは目標金額の500%近い資金が集まるなど、急速に知名度を高める現代アーティスト。

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ちなみに、この日のためにMIYAJIMAさん自ら作品をスタジオに持ち寄り、準備してくれました。ありがとうございます!

※この取材は2020年に行いました

 

なぜ四角を大量に描いている?

「今日はよろしくお願いします。改めて間近で見ると物凄いインパクトですね……! 集合体恐怖症の人が見たら、卒倒しそう

※集合体恐怖症=小さな穴や斑点など、集合体に対する恐怖症のこと。蓮コラなどが有名

「小さな突起や穴の集合が苦手な人はいますが、こういった“柄(がら)”なら大丈夫かなと。私は四角の集合が大好物なので、家中に四角を描くとか、どんどん規模を大きくしてみたいです」

「MIYAJIMAさんの作品を見て、良いな~きれいだな~と思う一方、『いや何なんだこれ??』という理解不能な感情もあります。一体どういった意図で描かれてるんでしょうか」

「実は描こうと思って描き始めたわけじゃないんです。なんとなく無意識で描いてしまったのが四角だっただけで」

電話しながらメモ帳に意味のない図形を描いちゃう、みたいな感じですかね」

「そういう感覚に近いかもです! 四角をカリカリ描いてると落ち着くんですよね。私、建築物とか無機質なコンクリートの塊とかがすごく好きなので、なんとなくリンクしてるのかもしれません」

「四角を描いてると落ち着く……ご出身がマンションや団地だったとか?」

「あ、まさにその通りです。小さい頃は団地に住んでました。工業団地がズラーっと並んでる町で……それが私の原風景ですね」

「四角を描き始めたのは、何歳ぐらいからですか?」

「作品として四角を描き始めたのは高2からですけど、絵自体は3歳ぐらいから描いていたと思います。もしかすると、その頃から四角を描いていたかもしれないですね」

「神に選ばれた四角エリート……だからこんな作品が描けるんですね」

根性があれば誰でも描けると思いますけどね」

「無理無理無理!」

 

「こんなに四角を描いてると、屋台で丸いたこ焼きが並んでるのを見たらブチギレそうになりませんか?」

「そんな情緒不安定じゃないです! それに私、丸いキャラも好きなんですよ。カービィとか」

「丸の権化みたいなキャラじゃないですか」

 

「お菓子でも、チョコエッグが好きだし」

「丸い物もイケちゃうんですね。『角のないものはすべて嫌悪の対象である』みたいな人かと思ってました。ちなみに、ぷよぷよとテトリスだったらどっちが好きですか?」

「それはテトリスですね」

良かった〜〜〜

「何が? 」

 

どうやって描いてるの?

「この壁に貼られてる作品にも、数え切れない量の四角が描かれていますよね。全部手で描いてるんですか?」

「これは同じものを何枚かコピーして貼ってますけど、元の一枚はマッキーで1個ずつ手描きしてます」

「ひえ〜〜〜考えるだけで気が遠くなりそう。1枚描くのに何週間ぐらいかかるんですか?」

「本気を出せば、1日あれば描けますね」

「1日!? マッキーも凄い勢いで消費しそうですね」

「そうですね、マッキーは大量に常備してます。ずっと同じペンで描いてると、先が平らに潰れて線が太くなっちゃうんですよ。そのたびに新しいものに交換してるんで、消費スピードは早いですね」

「デジタルで描くことはあるんですか? 図形だし、そっちの方が速そうな気がするんですけど」

「たまに描くこともありますけど、やっぱりデジタルだと線が綺麗すぎるんですよね。手描きだと線の太さが一定じゃないので、それで立体感が出たりします」

「ブレが逆に良いのか。確かに、“四角を大量に描く”というのは、作風としては無機質なはずなのに、『手描きならではの温かみ』を感じますね。相反する不思議な感情が生まれます

 

「大量に描くために、描く順番もパターン化されてそうですね。上の一列を描いたらどんどん下に進んでいって、みたいな」

「それが逆なんですよ、パターンを決めちゃうと集中力が保たなくて。“左上から描き始める”ってことは大体決めてるんですけど、左上をある程度描いたら急に真ん中のあたりを描き始めたり、横の方を描いたり上の方を描いたり、バラバラに進めてます」

「へええ、僕だったら左上から右下まで順に描いちゃいそう。で、2列ぐらい描いたところで諦めちゃう」

流れ作業的にやろうとするとしんどいと思いますよ! 飛び飛びで、気のままに描いた方が楽しいです」

「まさに、感性の赴くままってことですね。ちなみにこの中だと『この四角がお気に入り!』っていうもの、あるんですか?」

「お気に入り……う~ん」

 

 

「この子ですね」

「……自分で質問したのに申し訳ないんですが、他の四角と違いってあるんですか? どれも同じでは?」

「全然違いますよ~! この子は、奥に凹んでるのか、前に出っ張ってるのか分からない感じが良いですよね。錯視っぽい! そう思いませんか?

 

「……あ、はい」

 

「これだけたくさん四角が並んでるのに、これが好き!って即答できるの、すごいですね。全部把握してるんですか?」

「いえ、自分でも全部は把握してないです。以前に自分の作品をパズルにしたことがあったんですけど、完成できなかったくらいなので」

「ちなみに、見る人にウケがいい四角とか、不人気の四角もあるんですかね?」

「個別にどの四角が人気かはわかりませんが、全体でいうとワンパターンで同じ構図ばかりだと、やっぱり飽きられちゃうかなと思います。だからたまに人物と一緒に四角を描いたりしてます。SNSでは好評いただいてますね」

 

 

 

「作品としては高2から描き始めたとのことですが、昔から作風って変わってないんですか?」

「実はちょこちょこ変わってますね。最初はこんな感じでした」

 

 

「色が塗ってある! なんと言うか、今の作風よりメッセージ性が分かりやすい感じがしますね。四角も縦に長くてビルっぽかったり、浮いてるような雰囲気があったり」

「この時は本当に気持ちが落ち着かなくて、感情のままに描き殴ってました。同じ形の四角は1つたりともないと思いますよ」

ミツメテ……見つめてって書いてますね。色も入ってて、焦点を絞らせないというか、全体に目が行く構成になってる」

「この作品は『自分自身を見つめてほしい』という気持ちを込めて描いたんです。色も1箇所だけ塗るんじゃなくて、散りばめて。『色んなところをよく見つめてみたらカラフルだよ』と」

「こういった作品を作ることで、MIYAJIMAさんは何か伝えたいことがあるんでしょうか」

物事は自分1つの捉え方で完結するんじゃなくて、色々な見方をしたら様々な解釈ができると思うんです。それを色んな人に伝えたいんですよね」

「多様な見方をしようよと。確かに、四角が繰り返されてるだけだからこそ、見る人の想像力によって受け取り方は千差万別ですね」

 

「ある人には窓に見えたり、ある人には街に見えたり」

「僕は頭の中というか、思考回路みたいなイメージを持ちました」

「それも1つの正解だと思います! 私自身はこの子たちのことを『心のモヤ』と呼んでます。心の中の窮屈感というか、余裕がない感じが四角に出るから。実際、イライラしている時に描くと四角が小さく、細かくなるんですよ」

「ということは、MIYAJIMAさんの心に余裕ができたらどうなるのかな。宝くじで10億円当たったら、でかい四角を3つぐらいポンポンポン! と描いて『はい終わり~』ってなるんでしょうか」

「どうだろう、試してみたいですね(笑) でも結局、何も描いてない部分があったら四角で埋めたくなっちゃう気がします」

 

同行したカメラマンには「街」に見えたらしい。みなさんは何に見えますか?

 

MIYAJIMAさんってどんな人?

 

作品を発表したりといったアーティスト的な活動は、学生時代からされていたんですか?」

「ずっとやってますね。ただ、『やりたいからやってる』というよりは『やれるからやってる』って感じです。小さな頃から無意識で四角を描いてたので、それを続けてたら今に至った、みたいな」

「四角ばかり描いてるから、何か明確なブランディングがあるのかなと思ってました」

「四角を作品として描き始めた当時、私は人間嫌いが酷くて、感情の波が大きかったんです。そんな時でも、四角を描いていたら冷静になれるというか、頭の仲が整理される感覚があって」

「あくまで、気持ちを落ち着ける手段だったんですね」

 

「だから最初は四角がアートだとは全然思っていませんでした。ただ高校2年のときにそれを作品として大会に応募したら、賞をいただけたんです。『これ、人によってはアートだと捉えてくれるんだ! 』って気付きました」

「その~、聞きにくいんですけど……客観的に見ると人間嫌いの女子高生が、四角を無数に描き続けてたわけですよね? 学校の先生から何か言われたりしませんでした?」

めっちゃ心配されました。『大丈夫か!?』って。でも最終的には、『誰もあまり描いていないジャンルだし、やってみろよ!』 と背中を押してくれました」

「そして大阪芸術大学に進学されたんですよね。すごいなぁ」

「まあ、3ヶ月で辞めちゃいましたけどね」

「ええ!?  せっかく難関を突破したのに……! け、けど短い期間でも、友達とかは沢山できたんじゃないですか?」

 

 

友達の定義って何ですかね

「友達いない人がよく言う台詞じゃん」

 

MIYAJIMAさんがロゴを手掛けた、法律会計事務所のロゴ

 

「MIYAJIMAさんは大阪生まれで、現在も大阪を拠点に活動されてますよね。東京や海外への進出は狙ってるんですか?」

「もちろん東京のお仕事も増やしたいし、海外も行ってみたいです! 大阪は便利だし、大好きな街なんですけどね」

「『東京のお仕事も増やしたい』ということは、現在すでに東京から依頼がくることも多い?」

「ありがたいことに、結構お仕事を頂いてます。最近は打ち合わせもオンラインで出来ますし、便利ですよね」

「『草間彌生さんといえば水玉』、みたいに『MIYAJIMAさんといえば四角』のイメージが定着しつつありますね」

「この活動も、もう6年以上やってますからね。少しずつ認知もいただけるようになってきて、たまに顔を見てピンと来てくださる方もいらっしゃったり」

「四角の人だ! って言われることも増えたんじゃないですか?」

「そうですね、そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです! ただ、私自身は『四角は根性さえあれば誰でも描ける』って本当に思ってて。四角以外の、まったく別なことにも挑戦してみたいなって気持ちもあります」

「根性で描けるような作品じゃないと思うけどなぁ」

「私は売れることやマネタイズより『自分のコンセプトを知ってほしい』『こんな考え方のアーティストもいるんだなと思ってほしい』って気持ちを優先したいんです。それが四角を進歩させることなのか、まったく別の活動なのかはわかりませんが、いけるところまで頑張ってみます!

「これからのご活動も楽しみにしています! 今日はありがとうございました!」

 

まとめ

他にはない作品を精力的に生み出し続けているMIYAJIMAさん。一見無機質に見える作品の裏には、心の葛藤を抱えながらも真っ直ぐ自分の気持ちと向き合う、そんな思いが感じられました。

 

「……ところで、このアトリエってレンタルスペースなので、このあと他の人も使うわけじゃないですか。今貼ってる作品ってどうするんですか?」

「あぁ、これは……」

 

バリバリバリバリ!!!!!

 

バリバリバリバリバリ!!!!

 

バリバリバリバリバリバリ!!!!!

 

わあああああ!! もったいないもったいない!!」

「まあ、また描けばいいですから。よければ持って帰りますか?」

「もう少しマネタイズのことも考えて!」

 

というわけで、撮影後に作品を何枚かいただきました。自室に貼ろうと思います。

 

ちなみに記事中でMIYAJIMAさんは「家中に四角を描くとか、どんどん規模を大きくしてみたい」とおっしゃっていましたが―

このインタビューのあと、実際に四角だらけのクリエイティブスペースをオープンしました。凄すぎる。

ちなみにMIYAJIMAさんの作品やグッズは→ここ か→ここ から購入も可能です!