セーブオン、スリーエフ……。ローソンはなぜ「提携したコンビニの名物サービス」を残すのか?

2021.10.06

セーブオン、スリーエフ……。ローソンはなぜ「提携したコンビニの名物サービス」を残すのか?

ポプラの「ポプ弁」やセーブオンの「生どら焼き」「モツ煮」、スリーエフの「店内オーブン調理」など、提携したコンビニチェーンの名物サービスを残す独自の路線をとるローソン。その理由を聞くと、ローソンならではの戦略が見えてきました。

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    世はコンビニの大統合時代。コンビニ大手三社に、中小コンビニのほとんどが合併される形で姿を消した。そんななか、異彩を放つのが3強の一角を担うローソンである。

     

    よく見ると、一般的なローソンとはちょっと違う

     

    ふつうコンビニチェーンといえば、提携したチェーンの特徴はすべて消し、まったく同じに同化させるのが常である。なのにローソンは、もともとのコンビニが持っていた「名物サービス」を多く残している。

     

    これらは、同じローソンであっても微妙に違う店舗になる。いったい、なぜ完全に「一つのコンビニ」に同化させないのか?

     

    株式会社ローソンの前河原浩樹氏に、そのキモについてのお話を伺った。そうすると、チェーンストアの概念を覆す数々の回答が飛び出した。

     

    業務提携案件の多くを手がけてきた、株式会社ローソン 経営戦略本部 関連会社経営支援部長の前河原浩樹氏

     

    なぜ「提携したコンビニの“いいところ”」を残すのか

    かつて群馬を中心に関東・東北・北陸に600店舗以上を展開していたセーブオン。2018年8月で全店舗閉店した

     

    辰井「ローソンでは、ローソンブランドとして吸収したコンビニを『まったく同じお店』にせず、名物サービス、いわば”いいところ”を残す方針ですよね。そもそも、なぜですか?」

    前河原「もともと、そういう会社なんですよ。ローソンの歴史をたどっていただくと、1989年にサンチェーンとの業界的に大きな提携があったんですが、そのころからローソンのDNAは多様性のある、集合体なんです

    辰井「80年代から続く社風なんですか」

    前原「だから、違う文化を受け入れる発想も自然で。いいものを無理にやめさせる理由はありません。支持しているお客さんがいて、セーブオン・スリーエフ・ポプラさんなどもともとの会社が大事にしていた事業の柱ですから」

    辰井「その考えが型破りですね」

    前河原「いままで彼らはオリジナルの『武器』で、ローソンも含めたほかのコンビニと戦っていたわけですよね。それがわれわれの武器にもなるか評価しているんです

    辰井「ローソンの武器にもなるか見定めるんですか」

    前河原「それにわれわれはチェーンですけれども、個店ごとにいろいろやっています。昔、『うどんを売るローソン』もトライしました」

    辰井「うどんローソン?」

    前河原「そんな挑戦する文化があったからこそ、各店の『武器』を残す発想は必然なんです」

     

    広島のローカルブランド・ポプラの「ポプ弁」が好調!

    広島を拠点に、かつて全国で800店舗以上あったポプラ。まだまだ単独ブランド店も営業中だが、おひざ元の中国地方では多くの店舗がローソン・ポプラに転換

     

    前河原「ポプラは、広島のローカルブランドなんですよ。そのポプ弁は、ローソンがベースの『ローソン・ポプラ』になっても、かなり売れているんです」

    辰井「釜からごはんを後のせしてくれる弁当ですよね。そんなに売れるんですか?」

     

    これがポプラのポプ弁。ごはんは釜から後入れで、大盛の350gまでは同価格なのがうれしい

     

    前河原「ポプ弁を入れているお店は、通常のお弁当に加え、ポプ弁の売り上げ分が多いんです」

    辰井「ローソンさん的にはポプ弁の分、トクしたわけですね」

    前河原「大前提は『ローソンのことはちゃんとやったうえで、商業ベースに乗るような自分たちの大事なものは残してね』っていうのを原則にやっています」

    辰井「ポプラのポプ弁は、炊きたてごはんがうれしいですよね。ごはんって弁当の面積の半分を占めますし」

    前河原「ごはんが温かいと、幸せな気分になりますからね。われわれも、『ちょっと違ったローソン』を見せられるし、競合先との差別化になりますから」

     

    筆者が頼んだチキン南蛮弁当。ふりかけが付いているのもうれしい

     

    辰井「お客さんとしては、同じローソンでも、いまの自分のニーズに合った店舗を選べるわけですね」

    前河原「ええ。ちなみにうちの娘、小学校6年生でポプ弁好きなんですよね。土曜日に『パパ、ポプ弁食べたい』って買いに行くんです。ごはんが温かくてうれしいし。そういう支持はあると思いますよ」

     

    SHOP99の焼きいもを残したのは「ローソンストア100はスーパー」だから

    生鮮食品から日用品まで100円の価格帯を中心に販売するローソンストア100

     

    辰井「ローソンストア100も、SHOP99時代の『焼きいも』をなぜ継続しているんですか?」

    前河原「SHOP99はいま『ローソンストア100』になりましたけれども、コンビニというよりスーパーなんですよね。焼きいもって、スーパーではときどき売っていますでしょう?」

    辰井「たしかに見かけますね」

    前河原「あくまで、スーパーとしてお客さんに刺さるものをと思ったんです。スーパーなら焼きいもなんですよね」

    辰井「スーパーとしてのキラーコンテンツに、焼きいもが残されたわけですね」

     

    焼きいもは驚異の100円。レジの近くにあることが多い

     

    前河原「いまは通常のローソンでも、焼きいもを扱っているお店もありますよ。大分の『甘太くん』というブランドの焼き芋を売っています」

     

    大分県をはじめ九州地区の一部ローソンで販売される「甘太くん」の焼きいも

     

    辰井「おっ、プレミアムな焼きいもですね」

    前河原「ええ。これは100円で出せませんが、一部の通常ローソンで提供しております」

     

    スリーエフが生き残るために磨いてきた数々の武器

    スリーエフは神奈川県を中心に多いときは600店舗以上を展開していた。2017年にすべての単独店が閉店

     

    辰井ローソン・スリーエフはとくに色々な特徴がありますね。オリジナルスイーツのもちぽにょとか、生鮮食品を多く置くとか」

    前河原「スリーエフさんは全国で500店ぐらいの中規模チェーンで、どう特徴を出して生き残るかを、ずっと考えられていたんですね。場所によっては青果を置いたり、本を売ったり。だから、もともとそれらが売れていたところは継続しました」

    辰井「残すべき有用性のあるものが多かったんですか?」

    前河原「ええ、神奈川県は、たとえば横浜でも都市部から郊外まで広いですよね。そこで特徴を出すために、いろいろ戦略が練られていましたから」

    辰井「その土地で生きるために考え抜かれた武器が多かったんですね」

    前河原「例えば青果は店頭で販売している店舗もあり、主婦の方などにも喜ばれています」

    辰井「近くにスーパーがなかったら助かるでしょうね」

     

    いま展開するローソン・スリーエフ。ローソンをベースにスリーエフ自慢のメニューやサービスをプラスした店

     

    前河原「ローソンストア100も、一時期、当日市場で競り落とした野菜を、当日入れていた時代があったんです。そのときは売れ方が違いましたよ」

    辰井「あんな安いのに、そこまでやっていたのか」

    前河原「もう、それは消費者にわかるはずですよ」

     

    「セーブオンの焼きまんじゅうが残る!」に沸いたあの日

    辰井「ネットで話題になったのは、セーブオンの焼きまんじゅうですね。セーブオンがなくなるとき、『焼きまんじゅうが残るぞ』となって、歓喜した群馬県民もいました」

    前河原「セーブオンとの提携を進めていたのは私なので、ネット上で『セーブオンなくなっちゃうんだ、悲しい』という反応も目にしていました。でも、一部店舗で販売を続けることを発表すると『おお、焼きまんじゅうが残るんだ!』って声に変わって」

    辰井「地元の味への思いが見えた一件でしたね」

    前河原「ローソンが競争で勝つために役立つならば、前のコンビニにあったものも残しますから。目的は同じになることじゃなくて、お客様に喜んでいただくためにどうとがっていけるかが大事だと思います

    辰井「そもそも、これだけ大きな『ローソン』というブランドにおいて『継続する』選択肢があること自体、とがっていますね」

     

    セーブオン時代から焼きまんじゅうを売っていた「ローソン伊勢崎緑町店」(現在は販売を終了しています)。特別ロゴには「セーブオン」の文字も

     

    前河原「焼きまんじゅうは『地元』の象徴ですから。セーブオンさんは、ベイシアさんという、群馬を中心にしてやってこられた地元密着型のグループ会社でした。そのなかでセーブオンさんは、群馬県民にとって大事な焼きまんじゅうを置いていたわけですよ」

    辰井「群馬県人の大事なピースの一つだったんですね」

    前河原「ええ。ちなみに沖縄のローソンでは、沖縄そばやゴーヤチャンプルーを出さないとたぶん“イケてない”んですよね。ローカルフードは結構なニーズがあって、『俺たち地元のもの』だから加盟店さんもがんばってよく売ってくれるんです。コロナで観光客が減っても売り上げは健闘しています。地元の人が食べる地元の商品が大事なんです」

     

    沖縄で人気の「ポーク玉子おにぎり」

     

    なんとかして厨房設備を入れる

    辰井「あらためて、“名物サービス”を残そうと思う際の決め手はなんですか?」

    前河原「店舗を転換するときに、立地条件をよく見極めて、継続するもの、しないものを決めますね。そして……

    ・収益性
    ・競争相手に対して特徴を出せるか

    の、ふたつの指標が決定打になります」

    辰井「なるほど。お店を作るにあたり、普通のローソンの店舗より苦労することはありますか?」

    前河原「いろいろ大変です(笑)。例えば、ポプラさんのポプ弁はお店でごはんを炊きますから、業務用の炊飯ジャーを入れる必要があります」

    辰井「その分のスペースを確保しなきゃならないし……」

    前河原「ときには、業務用のラップを巻く機械なんかも新たに入れます。新たな什器を入れる費用も考えて、収益性を試算したうえで、導入を決めますね」

    辰井「設備費との兼ね合いになるんですね」

    前河原「ええ。ただ、ローソンには厨房を備えた店舗もあるので、共通の設備もあります。それよりもレイアウトの変更が難儀です。でも、店の配置ごとに考えて、何とか設備を入れます

    辰井「さながらパズルゲームだ。『ローソン・○○』のお店は、苦労の結晶なんですね」

    前河原「お互いが『これは残そう』と納得したあと、何とか実現しようとする力は、結構あるかなと思います。いいものは残したいですから」

     

    消えたブランドの“ストロングポイント”を残した店は「刺激」に

    辰井「前のコンビニのストロングポイントを残したお店って、少しずつ減るイメージがあるんですが……? これからも残してくれますか?」

    前河原「意図的に減らすことは、なかなか無いですね」

    辰井「心配しているお客さんもいたので、いつかなくなっちゃうんじゃないかと」

    前河原「スリーエフやポプラを好きな人っているんですよ。たとえばスリーエフさんは神奈川県にずっと根付いているので、その場所で長くやっていたお店がすごく多いんです」

    辰井「根強いファンが買い支えるんですね」

    前河原「ええ。ただしフランチャイズチェーンなんで、加盟店さんがハッピーであるかが前提なんです。やはり経済合理性を担保できるかが判断軸ですね」

    辰井「なるほど。……これらの店舗なんですけれども、ローソンにとってどんな存在ですか?」

    前河原『刺激』ですよ」

    辰井「刺激……刺激になるものですか?」

    前河原「われわれの業態を見直す、いい刺激になるってことですよ。『こういうのもあっていい』って、自分たちを顧みるにはいいですよね」

    辰井「外からの起爆剤だ」

    前河原「そこから勉強できるんですよね。焼きいもだってSHOP99から始まり、ローソンにも一部入っているし。スリーエフさんのチルド弁当とか、「もちぷにょ」っていうデザートからも学んでいます」

    辰井「ローソン全体にも波及するんですね」

    前河原「山陰地方でポプ弁を、通常のローソン約100店舗に入れました。歳月をかけて磨いたものには、何かしら理由があるんですよ。まずよく聞く、知ることが大事ですね」

    辰井「丁寧に取り入れるからこそ、『刺激』をローソンの追い風にしているんですね」

    前河原「それは色々なDNAの集合体の企業だから、お互いの相乗効果で刺激になるということじゃないですかね」

    辰井「かっこいいな。その技術がローソン全体に活かされつつも、個々の独自店舗もますます発展していってほしいですし、それをファンとして願っています」

     

    画像提供:株式会社ローソン

     

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    この記事を書いた人

    辰井裕紀
    辰井裕紀

    卓球と競馬と旅先のホテルで観る地方局のテレビ番組が好きなライター、番組リサーチャー。過去には『秘密のケンミンSHOW』を7年担当。著書に『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』 (PHPビジネス新書)。

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