お笑い番組急増中! “第七世代“の活躍で、テレビの視聴層が変わる?【エンタメ現場観察 #2】

2020.11.12

お笑い番組急増中! “第七世代“の活躍で、テレビの視聴層が変わる?【エンタメ現場観察 #2】

”ためになるテレビ”が主流だった頃から時代は変わり、テレビには”お笑い番組ブーム”が到来中。その背景には、”お笑い第七世代”と呼ばれる若手芸人の活躍や、『有吉の壁』、『千鳥のクセがスゴいネタGP』といった番組があるそう。コンテンツ作りの最前線で活躍する放送作家・白武ときおさんが、その実態を解説します。

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    今、テレビ業界にはこれまでにない「お笑い番組ブーム」の波が来ているとか。

     

    それはかつて”ネタ見せ”から大ブレイク芸人を次々と生み出した、「爆笑オンエアバトル」や「エンタの神様」といったネタ番組主流の時代とも、また違った潮流。”お笑い第7世代”と呼ばれる若手芸人たちの活躍が、「お笑い番組」にも確実に影響を与えているのです。

     

    そう指摘するのは、「YouTube放送作家」という新しい職業を世に広め、霜降り明星、かが屋、”小籔フットジュニア”など、様々な人気芸人のYouTubeコンテンツに携わる作家・白武ときおさん。

     

    テレビ番組の放送作家としても最前線で活躍する白武ときおさんに、昨今の「お笑い番組ブーム」について、オススメの番組と共に語っていただきます。

     

     

    【コラムに書かれた内容を、ちょこっとだけネタバレ!】

    ・”とんねるず”、”めちゃイケ”の終了とテレビの変化

    ・『有吉の壁』が象徴する、お笑い番組ブームの到来

    ・若手芸人と番組を作り、育てようとするテレビ朝日

     

    話を聞いた人:白武ときお

    1990年京都府生まれの放送作家。テレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 笑ってはいけないシリーズ』『霜降りミキXIT』、『霜降り明星のあてみなげ』を手がけるほか、YouTubeチャンネル「しもふりチューブ」「みんなのかが屋」「Aマッソのゲラニチョビ」などを担当。

     

    象徴は『有吉の壁』?「タメになる」ではないお笑い番組がブームになった理由

    こんにちは。放送作家の白武ときおです。普段は、テレビ番組の放送作家として活動し、芸人さんのYouTubeチャンネルの企画や構成を手伝う「YouTube放送作家」としても活動しています。

     

    連載第二回では、現在のテレビに巻き起こる”お笑い番組ブーム”について、お話ししたいと思います。

     

    ここ数年のテレビ番組は、「ためになるテレビ番組」が主流でした。見ているだけで役立つ情報が得られる情報番組や学びながら楽しめるクイズ番組は、人口ピラミッドの多くを占める高齢者にも好かれやすかったからです。

     

    それ自体は、いまの日本で視聴率をあげるための番組づくりとして、とても理にかなった考え方でした。

     

    しかし、ここ数年で「若者にもテレビを見てもらった方が、広告価値としては高いんじゃないか」という指標・考え方に切り替わりました。

     

    可処分時間をスマホでのSNSや動画視聴に費やす若者が増えるなか、業界的にも「50代以下にテレビを見てもらうこと」の価値が高まり、もっと若者が見たくなるような番組の企画やキャスティングについて、制作側の意識が向けられるようになりました。

     

    そこにやって来たのが、『M-1グランプリ2018』優勝からお笑いの最前線に躍り出た、”霜降り明星”です。

     

     

    彼らが牽引した”お笑い第7世代”(※EXIT、ミキ、ハナコ、四千頭身、宮下草薙など、平成生まれの芸人たち)の人気によって、これまで40代以上の芸人さんが出ずっぱりだったテレビ番組にも、20代の芸人さんたちが多く出演するようになってきました。

     

    そんな彼らの人気もありながら、「お笑い番組ブーム」が起きた背景には、コロナの影響も大きい。不景気になるとお笑いが活気付くという傾向があるようです。暗い気分をテレビ番組で笑い飛ばそうという気持ちになるからでしょうか。コロナ禍はネタ番組が好調で、次々に大型ネタ番組が誕生しました。

     

    『とんねるずのみなさんのおかげでした』と『めちゃ×2イケてるッ!』というレジェンドお笑い番組が同時に終了したのは、2018年3月のことでした。この2番組が終了したことが、ゴールデンタイムで完全にお笑いに振り切っている番組の難しさを象徴しています。

     

    しかし、それから2年が経ち、『有吉の壁』や『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ、毎週木曜21:00〜放送)など、情報性がない、笑わせることだけを目的にしている番組が出てきています。

     

    『千鳥のクセがスゴいネタGP』テレビポータルサイト『TVer』より

    『千鳥のクセがスゴいネタGP』
    フジテレビ系列・毎週木曜21:00〜放送中

    千鳥がMCとなり、今を輝くお笑い芸人たちの『普段とは一味違った”クセがスゴいネタ”』を見ていく番組。四千頭身やハナコなど、大人気芸人たちが勢ぞろいする……にも関わらず、MCノブに「どこがお笑いやねん」とツッコミを入れられるほどの変化球ネタを見ることができる。

     

    『千鳥のクセがスゴいネタGP』は、芸人さんの面白いネタに加えて、千鳥さんのコメントでさらに面白くなっています。お笑いファン以外にはわかりにくい攻めすぎたネタでも、「意味がわからない」「大人を笑わせることを諦めたのか!」と千鳥さんがツッコむことで笑えるという、最高のシステムになっています。

    そして、今のお笑いブームの世の中で、象徴的なのは『有吉の壁』だと思います。

     

    『有吉の壁』公式YouTubeチャンネルより

    『有吉の壁』
    日本テレビ系列・毎週水曜19:00〜放送中

    若手芸人たちの”壁”となった有吉を笑わせるべく、ロケ地に隠れた芸人たちがネタ見せに挑む番組。閉園間際の遊園地や、巨大雑貨店、温泉リゾートなど多彩なロケ場所と、シソンヌやさらば青春の光、ハナコなどコント師たちが見せるその場ならではのボケが魅力。

     

    『有吉の壁』は見ていてほっこりします。それは、芸人さんたちが番組に参加していることを楽しんでいる感じが出ているから。あれだけ大勢の芸人さんが移動して、ネタを作って毎週放送しているなんて、凄まじいカロリーを使いながら制作しているはずです。家族でも安心して見られるので、この番組からブレイクする芸人さんがどんどん出てくると思います。

    『千鳥のクセがすごいネタGP』と『有吉の壁』の2つは、今芸人さんが出たいと思われている番組だと思います。これからどんどん面白くなってムーブメントを生むと思うので、注目しています。

     

    一方で、大型ネタ見せ番組もたくさん誕生して、視聴率的にも成功していると思います。

     

    『お笑いの日』
    2020年9月26日にTBS系列で放送された、8時間の大型お笑い生特番。芸人たちが自信のある1本のネタを披露する『ザ・ベストワン』、コンビの組み合わせをシャッフルしたネタ作りに挑む『ザ・ドリームマッチ』、コント師日本一決定戦『キングオブコント2020』など多くのネタ見せ番組を内包した。

     

    『ザ・ベストワン』、『ネタジェネバトル』といった特番や、『キングオブコント』もプログラムのひとつに入っている『お笑いの日』など、大型の特番が立ち上がっています。それもコロナ禍によって、家でテレビを見て笑いたいという気持ちの現れかと思います。

     

    番組作りで若手芸人を育てる、テレビ朝日の試み

    そうした流れの中で、いま、テレビ局も若手芸人と一緒に番組をどんどん作って、若手を育てていこうとしています。

    顕著な例で言えば、テレビ朝日の『バラバラ大作戦』です。

     

    『バラバラ大作戦』公式HPより

     

    『バラバラ大作戦』は、2020年10月から新しく始まった深夜バラエティゾーンです。深夜2時台以降の番組を大きくモデルチェンジして、一気に14番組をスタートさせました。

     

    さまぁ~ずさん、くりぃむしちゅーさん、バナナマン設楽統さんなど大御所もいながら、高校あるあるで有名になった土佐兄弟さん(ワタナベエンターテインメント)EXITさんとCreepy Nutsさんなど、新しい人選のバラエティ番組が増えてるんですよ。

     

    実験的な企画も多くて。中でも、パン好きのロバート秋山さんが名店のパンを食べ歩く『秋山とパン』はとくに話題を呼んでいます。

     

    『秋山とパン』テレビポータルサイト『TVer』より

    『秋山とパン』
    テレビ朝日系・毎週水曜深夜1:56〜放送

    パンを愛する秋山が数々の名店へロケに行き、「明日食べたいパン」を紹介する……という体裁を取りながら、大きく話を脱線させていく秋山を眺める番組。パン屋の主人を置いてけぼりにしながらも、秋山による、本当か嘘かもわからない独特のトークが展開されていく。第2回では、秋山の親友(?)バンクシーとの交友エピソードが語られた。

     

    『秋山とパン』は他のどの番組にも似ていません。パンを紹介する番組なのかなと思いきや、まったく違う話へ脱線していく。とんでもない設定でも、乗り切ってしまう秋山さんの類稀なるパフォーマンス力が発揮されている番組だと思います。毎週楽しみにしています。

    『バラバラ大作戦』という深夜枠の中から、早い時間帯へ上がっていく番組も出てくると思います。

     

    特にテレビ朝日はこれまでにも、千鳥さんの『テレビ千鳥』や、霜降り明星の二人が体当たり企画に挑戦していく『霜降りバラエティ』など、芸人さん自身が面白いと思ったことをやる番組に挑戦しています。

     

    挑戦的な番組づくりが多いので、これまでにないパターンの新しい番組が育って行くのではないかと、視聴者としても注目しています。

     

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    構成:いぬいはやと

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    この記事を書いた人

    白武ときお
    白武ときお

    1990年京都府生まれの放送作家。テレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 笑ってはいけないシリーズ』『霜降りミキXIT』、『霜降り明星のあてみなげ』を手がけるほか、YouTubeチャンネル「しもふりチューブ」「みんなのかが屋」「Aマッソのゲラニチョビ」などを担当。

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