……すみません、早とちりしました。令和生まれの方がWeb記事を読むのは、まだちょっと早いですね。

 

というわけで、ここからは平成を生きた皆さんに、化石化の裏側をお伝えしたいと思います。

 

製作作業の一部では、秋葉原のものづくり施設「DMM.make AKIBA」を利用しました。

 

最新のハイテク機材が揃う工房で、あえて時代に逆行するものを作る。そんなひねくれた大人の行動も受け入れてくれる、器の大きな施設に感謝しかありません。

 

最新機材で最古のものづくり

赤いボディの機械はレーザーカッター。虫眼鏡で太陽の光を集めて葉っぱを燃やすのと同じ原理で、アクリルや木材の板に熱を加え、彫刻やカットを行うことができます。

 

 

上の動画はMDF(木質ボード材)に「ギャル原人」の姿を彫刻している様子です。

 

これはこれで壁画みたいで良い感じなのですが、より始祖鳥の化石らしくするため、色の違う2種類の素材からパーツを切り出し、パズルのようにはめ合わせていくことにしました。

 

組み合わせたボードの外側を切り抜けば、「ギャル原人舞踊図」の完成。

 

MDFは木粉を集めて接着剤で固めた素材なのですが、その特徴が地面のような風合いを出すことは新たな発見でした。

 

続いて、たまごっちをコハクに閉じ込める方法について。本来のコハクは樹脂が長い年月をかけて地中で硬化したものですが、今回は短時間で液体から固体に変化するレジンを利用しました。

 

たまごっちを容器に入れ、オレンジ色の染料と土を混ぜたレジンを流し込んでいきます。

 

二日ほど待って硬化したかたまりを取り出し、ヒートガン(※)で温めながらカットして理想の形に近づけていくのですが、これがなかなか大変で泣きそうになりました。 もっと型をちゃんと作っておけばよかった。

 

※ 熱風で物質に熱を加えるための機械。見た目も機能もドライヤーとよく似ているが、数百度に達することもあるので決して髪を乾かしてはいけない。

 

そんな僕を救ったのが、こちらの卓上ディスクグラインダー。円盤状の砥石が高速回転することで、みるみる素材が削られていきます。

 

中のたまごっちに傷がつかないよう慎重に形を整えてく作業は、まるで本物の発掘作業のようで、とても興奮しました(発掘したこと、ないんですけど)。

 

家でもできる、化石製作チャレンジ

MDの化石は、石こうで作られています。いろいろやり方はあるのですが、今回は美濃粘土の「モデリアル」というキットを利用しました。

 

まずはMDを掴んだ状態で手を「型どり剤」に突っ込み、そのままの姿勢で10分ほど静止します。

 

この姿勢で10分間。これで固まったまま手が取れなかったら嫌だな……と思いながら待ちます。

 

孤独と疲労に耐えきると、手とMDの形状を写しとった型が完成するので、ここに水で溶かした石こうを流しこみます。

 

1時間ほど待つと石こうが固まるので、型どり剤を取り除いていきましょう。石こうが崩れないように周囲を取り除いていく作業は、これまた本物の発掘作業のようでとても興奮しました(発掘したこと、ないんですけど)。

 

型どり剤はブヨブヨと柔らかく、「もぎる」という表現がよく似合う

 

さて、最後は「あゆ塚」。世の中に群生している「あゆマーク」グッズから、今回は小型のチャームを集め、陶芸用の粘土に押し付けて模様を刻みました。

 

そこはかとないラピュタ感

 

チャームと一緒にその辺で拾った小石を埋めてみると、この時点でだいぶそれっぽくなったので笑ってしまいました。

 

材料として利用したのはヤコの「オーブン陶土」という製品。一般家庭用のオーブンで焼成することができます。

あゆチャームを焼く前に取り外し、妙な土くれを自宅の魚用グリルへ。小一時間ほど加熱すると、こんがり焼きあげることができました。

 

 

おわりに

あゆ塚のチャームは自由に着脱可能

 

こうして「平成の化石」づくりは終了しました。

しかし……化石をつくるって難しい!  汚し塗装(ウェザリング)などもやってみたかったのですが、自分の技術が追い付かず。

 

本物のカッコ良さには及ばずで、とてつもなく長い時間によって生まれる化石のすごさを改めて感じました。

 

そして意外だったのは、加工と同じくらい「素材集め」にも苦労したこと。

そもそも物が見つからなかったり、あったとしても価格が高騰していたり。

 

仕方ないことではありますが、平成の産物が手に入りづらくなっていくことを実感し、少し寂しい気分になりました。

 

化石にするのもいいですが、思い出の品は大切に保管しておくのが良さそうです。

数十年後、令和生まれの子供たちと、ものを見ながら昔話に花を咲かすことができたら、素敵なことだと思いませんか?

 

それではまた、令和の終わりにお会いしましょう!

 

※この記事は、2月7日に渋谷・LOFT9Shibuyaで行われた次世代ライター企画プレゼンイベント「ENTER」で獲得した企画です。