2019年になって早3ヶ月。
あと2ヶ月後の5月には、ついに「平成」も終わりを迎えます。
さまざまなブームが生まれては消えていった、「平成」。その中で、平成をしぶとく生き続けた女の子の文化といえば何でしょうか……?
正解は、「プリクラ」です。
ブームは去ったとはいえ今でも最新機種が次々と出ては、女の子を魅了し続けているプリクラ。数年前には「プリクラで全身写真を撮ると脚が伸びる」「目が大きくなりすぎて不自然」と、ネット民を騒がすほどの加工っぷりを見せていましたが、今はまた「ナチュラル」に戻ってきているんだとか。知っていましたか?
プリクラは、そもそもどうやって流行ったのか。なぜ女の子たちは「プリクラ」が好きなのか。そしてプリクラの未来はいかに……?
今回は、東大博士研究員・久保友香先生にお話を伺ってきました。
話を聞いた人:久保友香
東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員、シンデレラテクノロジー研究者。1978年、東京都生まれ。2000年慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科卒業。2006年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(環境学)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、14年より東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任研究員に就任。専門はメディア環境学。著書は『盛りの誕生』(太田出版、2019年3月刊行予定)。
「えっと……、一言でいうと、どういう研究をされているのでしょうか?」
「女の子はよく写真写りに対して『盛れてる』と言いますよね。私は主に技術の観点から、『盛り』を研究しています。とりわけ、技術の変化と女の子の文化との関係に興味がありますね」
「なるほど。今日はよろしくお願いします!」
まずは最新機種の事情を知る
まずは、プリクラの“今”を知らなければ、ということで最新機種『トキメキルール』でプリクラを撮ることに。カメラの真横にムービースポットと呼ばれる絶妙なスマホ置き場もあるという最新っぷり。なんでも、そこにスマホを置くと撮影中のムービーが撮れるのだそうで……。「なにゆえ??」という気持ちを抱えたまま、とりあえずセットしてみました。
次々指定されるポーズに従って撮影した後は、落書きコーナーへ。
二人で一緒にプリクラを選ぶのではなく、各々好きなプリクラを選んでシールにできるのだそう。「お友達のことを気にせず、自分の好きなプリを選ぼう!」とメッセージが表示されていました。(私はこれがいいけど、友達の写りが微妙だな〜。でもこれほしいな〜どうしようかな〜)という謎の忖度をしなくていいという配慮のようです。助かる。
最近の流行りはシンプルな落書き、とのこと。簡単にリップを塗ったり(!)、少しアイシャドウを足したりして(!!)、日付スタンプなどを押せば終わり。
そしてできたプリクラがこちら。
も、も、も、盛れてる〜!!
「別人のようになっている……」
「そうですか? ちょっと前はもっと目元ばかりが目立って、別人のようでした。最近は、“ナチュラルに盛る”というのが主流です」
「ナチュラルに盛る、とな……」
完成したプリクラはこんな感じで、カード型になっています。切れ目が入っているので、パキッと折れば半分こに。ハサミで切る必要はありません。最近では、専用のカードケースも販売されているようです。
「うーん、最新機種は驚きが満載……。でも、やっぱり楽しい……」
最新機種の事情がわかったところで、いろいろと気になるお話を伺ってみました。
プリクラブームのきっかけはSMAP
「久しぶりにプリクラを撮ると、その進化にびっくりしてしまいました。わたしは平成2年(1990年)生まれなので、青春時代には当たり前のようにプリクラがあったのですが……、そもそもプリクラっていつ頃から流行り始めたんでしょうか?」
「プリクラが世の中に広まったのは、1995年に出てきた『プリント倶楽部』からです。角が丸くて、フレームを選べる機種です」
「懐かしい!」
「それが世の中に広まった最初のプリクラ機ですが、実はそれ以前の1993年に似たようなものはありました。カメラが撮影した画像を、顔認識して加工する今のプリクラ機の原型ともいえるもので、『メタモルフェイス』という機械です。 Panasonicや技術系の会社が作った機械だったのですが……」
「どんなプリクラが撮れるんですか?」
「大仏と合成した顔が作れるとか……」
「大仏」
「それから男女で撮ると、子どもの顔が合成されて、未来の家族写真のようなものが作れる……とか」
「子ども」
「技術的には、かなりすごいんです。この時期ですでに目を認識しているので。でも残念ながら流行りませんでした。当時はゲームセンターには男の人ばかり集まっていましたし、機械が大きかったために奥のほうに置かれてしまい気づかれなかったんですね」
「(原因はそれだけではなさそうだ・・・)」
最近ではゲームセンターの入り口近くにプリクラ機が設置されていることも多い
「そのあとに出たのが、株式会社アトラスの『プリント倶楽部』だったんです。技術としては本当に単純な作りで、パソコンも入っていないし、SEGAが作っていたアーケードゲーム機を使って、デジカメとプリンターを繋いだだけという簡素なものでした」
「それが流行ったのはなぜでしょうか?」
「ターゲットを、女子高校生にしたんです。『プリント倶楽部』の生みの親であり、当時アミューズメント販売部長だった方にお話を聞いたことがあるのですが、アトラスは『女の子は、シールや手帳を持ち歩いているし、これは絶対に売れる』っていう確信があったようですね。でも出たばかりのときは、やっぱりなかなか広まらなかった。広まったきっかけの一つは、SMAPでした」
「SMAPですか?」
「はい。SMAPがレギュラー出演するテレビ番組で、毎週『SMAPが撮ったプリクラをプレゼントします』という企画を行ったら、徐々に応募が殺到するようになったんです。しかも応募ハガキにアピールとして自分で撮ったプリクラを貼る人が多かった。そこから広がっていったみたいですね。結果的には女子高校生だけでなく、老若男女に一気に広がったんですよね」
「そこからプリクラの歴史が始まるわけですね……!」
「はい。そこからは各社が一気にプリクラ機に参入しました。今や1社になってしまいましたが、最盛期の1997年頃はあらゆる電機メーカーが参入して20社ほどの機種がひしめいていたこともありました」
「プリクラバブル時代ですね。『プリント倶楽部』以降、急激に写りが良くなっていったような記憶があるのですが……」
「はい。97年頃、ゲームセンターがプリクラ機を真似て作ったプリクラ機の簡易版のようなものがあったらしいんです。それがカメラや光源がむき出しの簡素なものだったので、女の子たちが自分でカメラの位置を動かしちゃったり、光源をいじってわざと白飛びさせて肌がきれいに写るようにしたりと、ハックを始めたようなんです。
それを見ていたプリクラ会社のフリューさんが、『女の子たちは、そのまま写ればいいわけじゃないのか!』ということに気づいて。それで画像処理が始まりました」
「女の子たちの行動がきっかけになったんですね」
「そうなんです。その後は、1998年に『ストリートスナップ』という機種が出て、全身のプリクラが撮れるようになって、その頃から髪の色を変えられる・肌を白くするなどの加工も可能になりました。落書き機能もこの辺りからですね。そして2002年には、プロ用のストロボが入りました。ストロボをたいて、光で飛ばすというのが流行ったんですよね」
『ストリートスナップ 』©株式会社日立ソリューションズ
「この辺りから女の子たちも写りに好みが出るようになったので、肌を白くする他に『美黒(びくろ)』や、『(写りが)くっきりorふんわり』など選べるようになりました。
「くっきり・ふんわり、懐かしい〜! そういえば、『空を飛んでいるように見える合成プリクラ』とか『天井カメラ』とか、バラエティに富んでいたものもありましたよね?」
「はい。2000年〜2005年くらいは、『おもしろ系』の機種が多かったんですよね。合成、風が吹く、背景の色が変わるとか……。まだ、プリクラを撮るたびに“ひとネタ”というか『物語作り』を楽しんでいた感じがありました」
「そして、2003年。『盛り』を牽引してくれた、バンダイナムコの『花鳥風月』という機種が登場しました」
「花鳥風月! 懐かしすぎる!!!」
「『花鳥風月は写りがいい!』と、大人気になったんですよね。少し前から使われるようになっていた『盛り』という言葉も、プリクラでよく写るために『化粧で盛る』というニュアンスから、『プリを使ってきれいになる』というニュアンスに変わって・・・。女の子たちの『盛り』文化が本格的にはじまったのです」
『花鳥風月』©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
「おぉ〜!! 『盛り』の誕生ですね!!!」
「はい。とはいえ、『盛りプリ』というのは、カップルプリやおもしろプリ、エロプリなど、さまざまあるジャンルのひとつに過ぎませんでした。プリクラ全てが、盛るための『盛りプリ』になっていったのは、2007年頃ですね」
「2007年にフリューさんが『美人―プレミアム―』という機種を出しました。それまでは目を大きくするにしても、せいぜい目の縦幅を大きくするのみ。そうじゃないと別人になっちゃう、というのが主流でしたが、フリューさんが目の横幅も大きくする機種を出すと女の子は大喜びで……。そこから各社競争がはじまって、目はどんどん大きくなり、その3〜4年後には脚もどんどん伸びるようになったんです」
「一時期、すごかったですよね。全身プリを撮ると、脚が細長くなって。こんなの不自然だ! といってネットで大人たちがよく話題にしていた記憶があります」
「そうなんです。でも、女の子たちは目が慣れているから『もっと目を大きくしたい』『もっと脚を長くしたい』って言うんですよね。プリクラ会社は悩んでいたはずです。あんまりやりすぎると、新規ユーザーが入ってこれないし、でもヘビーユーザーの声を大事にするべきなのか? って」
「悩ましい状況ですね……。それで、結局はどうなったんでしょう?」
「解決策として『目をナチュラルにするか、デカ目にするかをユーザーが選べるようにしよう』ということになったんですよね。でも『選べてしまうのはどうなの?』っていう意見も多かったようなんです」
「えっ、どうしてですか? 選べたほうが便利なのに……」
「選べてしまうと、『あんなに目が大きくなっているのは機械の仕業』ってわかってしまうじゃないですか。プリクラ会社の人たちは、女の子たちに『あくまでも“写りがいい”』のだと思わせてあげたかったようなんです。
でも実際選べるようにしてみると、女の子たちはすぐに受け入れてくれて。今日は化粧薄いから目を大きくしようとか、今日は化粧ばっちりだから少し薄めでいいかとか。お化粧と同じように、プリクラを使うようになったんですよね」
「おもしろい〜! 大人の心配をよそに、女の子たちは意外と冷静にプリ機を捉えていたんですね」
「そうした紆余曲折を経て、2011年以降。画像処理の技術が発展して、顔の影や顎のラインなども操れるようになって、やっとナチュラルになってきたんです」
「“ナチュラル”といっても、まだめちゃめちゃ加工されていますけどね(笑)」
「そうなんですけどね(笑)。ナチュラルにするために、あちこち加工するようになったので、逆に人工感が出てくるというか」
「昨年出た新しい機種の『PINKPINKMONSTER』は、仕上がりに“一眼レフ感”が出るのが特徴です。いいカメラで撮ったみたいな、立体感が出るというものですね」
「なるほど……。新しい機械ということは、今はそれが一番人気ってことですよね?」
「いえ、今はもう最新機種だけが人気なわけじゃないんです。技術がだいぶ行き着いたので目新しいこともないし、女の子たちも『私はこれが好き』という機種を持っているようですね。大人から見ると同じでも、女の子からすると『機種ごとに全然違う世界観がある』と感じているんです」
「全部同じに見えるのに、女の子たちには違うものに見えているのか……!
この先どんな機種が流行るんでしょうか…? なんだかここまで行き着いてしまったら、もう宇宙人みたいな顔しか想像できないような」
「原点回帰もありえますよ。今『写ルンです』が流行っていたり、フィルムっぽく撮れるアプリも流行っていたりしますし」
「ブームは過ぎたにせよ、プリクラが無くならないのはすごいですよね。今や盛れる自撮りアプリなんてたくさんあるのに!」
「そうですね。プリクラの持つ“ステージ感”が理由ではないかと私は思っています。お金をかけているからこそ、そこに向かって準備をするというか。帰り道にちょっと撮ろう、というよりも、『撮りに行くぞ』と気合をいれる感じでしょうか」
「『今日は盛るぞ!』と気合を入れているんですね」
「この『盛り』の文化は、海外の人も評価しているところがあるんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「はい。元の顔によらず、自分で自分の顔はつくれるって、すごくいい傾向じゃないですか? 『かわいいはつくれる』ってことですよね」
「たしかに。『盛る』は、努力次第ですもんね」
「元の顔で評価するっていうのは、よく考えればあまりに原始的ですよね。『腕力の強い人が評価される』というのが原始的だとすると、文明が進むうちに『道具を所有したり、うまく使いこなす人が評価される』ようになったのと同じで、『お化粧がうまい子』『自分の魅せ方がうまい子』が評価されるというのは真っ当ですよね」
「なるほど……。言われてみれば、現代的で真っ当な価値観かもしれませんね」
「かわいい」は各地で同時発生している?
「昔撮ったプリクラは、当時は『死ぬほどかわいい!』と思っていたのに、今見るとダサいですよね……。どうしてこんなに感覚は移っていくんでしょうか?」
「日本の女の子は、『イケてる』が常に変化する文化なんですよね。
例えばフランスの女性って、家に自分の若い頃の写真を飾る人が多いと聞いたことがあります。でも日本ではあまりいないですよね。昔の姿は、眉が細すぎたり変な服を着ていたり、ダサくて飾れない、と」
「あっ、わかります! 流行りに乗っかっていたつもりはなかったのに、時間が経って振り返ると、化粧も流行りメイクだし、その時にしか流行っていなかった謎のアイテムを身につけていたりして……(笑)」
「ヨーロッパはたぶん『自分』というものをすごく持っているんですよね。でも日本は、『自分』というものを持っておらず、世の中の流れとともに生きている。これを『悪いこと』と捉えられることも多いですが、私は『しなやか』だと思いますね。
その価値観のおかげで変化には柔軟だし、なにより『今が一番いい』と思える。前向きじゃないですか?」
「たしかに……」
「もう一つ不思議に思ったことがあって……。昔はスタンプもゴテゴテとしていて華美なものが主流だったと思うのですが、今回久しぶりにプリクラを撮ったときには『シンプルなスタンプがかわいい!』と思ったんです。
プリクラを撮るのは数年ぶりなのに、こっちのほうがかわいい!と思えるのって、不思議ですよね……? プリクラに対する“かわいい”の感覚は、いつの間にアップデートされていたのかなと……」
左の画像はひと昔前、派手な落書きが主流だった頃のプリクラ。最近では右のようにシンプルなものが好まれるとのこと(※画像は一部加工しています)
「やはり、知らず知らずのうちに周囲から『かわいい』の最新情報を感じ取っているのだと思います。むしろ、『かわいい』を共有できるかどうか、常に試されているというか」
「試されている?」
「女の子が持つ『かわいい』という感覚は、彼女たちは意識していないでしょうが、『仲間かどうかを見分ける“暗号”』なんです。同じ感覚を持たない異質なものを排除し、同じ感覚を持つものを『仲間』とする。そのために常に新しい『かわいい』を用意している気がしますね」
「結束を強めるために『かわいい』がある……?」
「学生の頃、友達同士だけでわかる暗号を作っていたことはありませんか? 学校で手紙に書いて回して、それが誰かにバレそうになるとすぐに新しい暗号を作って、結束を強める。『かわいい』というのも、そういう『暗号』に近いものだと私は考えています。だから、あれだけのスピードで変わりゆくんです」
「おもしろい……!!」
「ほかにも『なんか、グレーの洋服に飽きたし、今はベージュがいいな!』と思って買って、ハッと気づけば世の中みんなベージュを着ていた! とか。または、『なんとなくピンクのスカート欲しいなぁ』と思って買いに行くと店員さんに「『今季はピンクが流行ってますよ〜』と言われる、みたいな経験はありませんか?」
「うわ〜〜! めちゃめちゃあります! あれもいつの間にか世の中の『かわいい』を読み解いて、乗っかっているんですね!」
「『かわいい』の暗号をまだ共有できている証拠なのだと思います。もし、『そろそろベージュが欲しいな』『ピンクのスカート欲しいな』と感じなくなって、いつまでも『かわいい』をアップデートしなかったら……。それはもう“おばさん”になってしまった、ということですね」
「こ、怖い」
「『これがかわいい』という感覚は、パリコレやモード系の持つ意味とは違うんですよね。本当に、日本の女の子たちだけで作り上げている感覚です。
そして不思議と『誰から派生しているか』がわからないんですよね。誰をお手本にしているわけでもない。女の子たちの集合知、ですよね。さらにSNSが出てきたことで、ほぼ同時発生的にその『かわいい』の感覚が起こっている……。本当にすごいと思います」
「雑誌も読んでいないし、お手本にしている人もいないのに、『かわいい』の変化のスピードについていけるなんて、女の子たちすごい」
「日本の女の子って、周りからその情報を得る能力が高いと思うんです。根底にあるのは、やはり“協調性”でしょうね。コミュニティを大事にしている。だからみんな同じように見えるし、同じような流行りを受け入れているのでしょう」
「それは、『みんなと同じ』に見られたいということでしょうか?」
「いえ、それが……。女の子たちは『人とかぶりたくない』んです」
「えっ、同じようなものばかり追い求めているのに?」
「はい。大人から見れば同じに見えていることでも、女の子同士では違いが見えているようなんです。先ほどプリクラ機の話でも話しましたが、『同じように見えることでも、女の子の中ではぜんぜん違う』ということが多々ある。たとえば同じ『ピンク』でも些細な違いで個性を出していたり、同じ『流行りアイテム』でもほんの少しの差異があったり。
おじさんには『同じ』に見えても、女の子同士では『ぜんっぜん違う!』と言うことってありますよね。『君たち、双子みたいだね!』とか言われても『はぁ? どこからどう見ても違うでしょ』みたいな」
「わかりやすい……。その『差異』を読み解けなければ異質なもの、ということかぁ」
ギャルとオタクは似ている……?
「女の子が『かわいい』という暗号を使って異質なものを排除している、というのは、昔から変わらないんでしょうか?」
「そうですね。私は『ひらがな』も、女の子の楽しみとして発展したのではないかなと考えています。男性が漢字を使っている中で、女の子は女の子にしか読めない『ひらがな』を作り出した、と」
「時代が変わっても、その性質は変わらないんですね……!」
「はい。むしろインターネットが普及している今、より有効になっている気がします。インターネットの世界って侵略されやすいじゃないですか。Twitterを友達同士で楽しんでいるだけで、おじさんからクソリプが飛んでくるとか」
「たしかに……」
「でも、『そもそも』の話になってしまいますが、どうして女の子たちは異質なもの、つまり“おじさん”を排除したいんでしょうか……?」
「うーん。そうですね……。ここまでずっと『女の子』の文化として話してきましたが、『異質を排除したい』という点に関しては、男性も同じではないでしょうか……? 車好きやプラモ好き、オタクなんかはそうですね。
『自分の外にあるもの』を加工してつるむのが男性に多く、『自分自身』を加工してつるむのが女の子に多いというだけで」
「たしかに! オタク文化で考えると、めっちゃ腑に落ちます。彼らにしかわからない言葉を使ったり、彼ら独特の顔文字をつかったり……。オタ芸などは、見た目によるイメージも共有しあっていそう。そうすることで、仲間と結束を強め、自分たちとは違うものは排除しようとしているのかも」
「はい。そういう意味では、オタクとギャルって実はすごく近いかもしれません。女の子文化の濃度を高めた“ギャル”という文化も、自分たちだけの言葉を使って、見た目の近い人同士で結束し、コミュニティを強化していますよね」
「本当だ! オタクとギャルはとても近い人種だったのか!」
「はい。話が膨らみすぎてしまったので、そろそろまとめましょう(笑)。
女の子は自分たちだけの『かわいい』基準を作り、その基準を次々と変化させながらコミュニティを形成し、異質なものを排除していく。その性質がプリクラを進化させ、日本の技術をも向上させていった。この先も女の子たちの『かわいい』がある限り、プリクラは変化し続けると思いますよ」
「うーん、すごく面白かったです。ありがとうございました!」
最後に
プリクラの話からいつのまにかオタクの話まで……思わず8000字を超えてしまう超ロングインタビューとなりましたが、楽しんでいただけましたか?
お話を伺っていると、日本の女の子たちがいかに繊細でハイコンテキストなコミュニケーションをとっているのかが、少しだけ垣間見えた気がします。女の子たちの「かわいい」についていけなくなった時が「おばさんの入り口」なのかもしれません。恐ろしい。かわいいの端っこくらいは掴んでいきていきたい。
さて、そろそろお別れです。みなさんもぜひ平成のうちに最新のプリクラを撮りに行ってみてはいかがでしょうか? それでは、またね〜!