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家族を養っている人の税負担を軽くするのが「扶養控除」です。名前は知っていても、対象になる家族の範囲や、いくら控除されるのかを正確に把握している人は多くありません。しかも所得要件は近年2度にわたって改正され、長く知られてきた「103万円」という目安はすでに過去のものになっています。
この記事では、扶養控除の基本から最新の金額基準までを整理して解説します。
<令和8年分(2026年分)以後の税制に対応>
本記事は2026年8月時点の法令等に基づいて作成しています。扶養控除に関する所得要件は令和7年度・令和8年度の税制改正で連続して引き上げられており、適用される金額は「何年分の所得税か」によって異なります。最新の情報は必ず国税庁ホームページでご確認ください。
「扶養控除(ふようこうじょ)」は、家族などの扶養親族を支えている納税者の税負担を軽くするための制度です。ざっくり言えば、家族を養っている人の所得税・住民税を安くしましょう、という仕組みだと考えてください。
ここでいう「扶養」は、単に同居しているという意味ではありません。生活費や学費などを負担し、家計をともにしている実態が求められます。ややこしいのは、税法上の「扶養」と健康保険などの「扶養」で条件がそろっていない点です。同じ「扶養」という言葉でも、税金上のルールは別物だと理解しておくことが重要です。
税法上の用語としては「控除対象扶養親族」が使われます。これは一定の条件を満たす親族を指し、この控除対象扶養親族がいる納税者に対して「扶養控除」が適用されます。
扶養控除は所得控除の一つに分類されます。所得控除とは、納税者の年間の所得(もうけ・利益)から一定額を差し引いてよいとする制度で、流れにすると次のようなイメージになります。
【ステップ1】「所得」を計算する
まずは収入から仕事にかかった必要経費を引いて、手元に残る「本当の利益」を出します。
年収 - 必要経費や給与所得控除 = 所得
【ステップ2】「課税所得」を計算する
税金がかかる対象の金額(課税所得)を小さくするため、個人的な事情(家族を養っている、保険料を払っているなど)に応じた「控除」を引きます。
所得 - 扶養控除などの「所得控除」 = 課税所得
【ステップ3】「所得税額」を計算する
最後に、残った「課税所得」に対して法律で定められた税率を掛けます。
課税所得 × 税率 = 所得税額
つまり扶養控除は、「その人の課税対象になる所得額」を減らす役割を持っています。税額そのものを直接マイナスする「税額控除」ではなく、税額の計算のもとになる所得を小さくする仕組みです。ここが混同されやすいポイントです。
扶養控除と並ぶ主な所得控除としては、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、医療費控除などが挙げられます。納税者はこれらの控除を条件に応じて組み合わせて適用でき、結果として課税所得が減少します。
扶養控除により税負担が軽くなる仕組みを、具体的な数字で追ってみます。
ある会社員の課税所得が300万円だとしましょう。この人に一般の控除対象扶養親族が1人いる場合、扶養控除の控除額分だけ課税所得が減少します。一般の扶養親族1人あたりの控除額(所得税)は38万円ですので、
という計算になり、税率をかける金額そのものが小さくなるため、結果として所得税も住民税も安くなります(住民税の控除額は所得税とは異なり、一般の扶養親族で33万円です)。
所得税の税率は所得金額に応じて段階的に上がります。そのため同じ控除額でも、所得が高い場合ほど軽減額は大きくなる傾向があります。逆に所得自体が少ない場合は、もともとの税額が小さいため、扶養控除を使っても軽減額が大きくならないケースもあります。実際にどれだけ税負担が軽くなるかは、扶養親族の人数や年齢区分、納税者本人の所得によって変わります。
※扶養控除には、納税者本人の所得による適用制限は設けられていません。本人の所得に応じて控除額が変わるのは基礎控除、本人の所得に上限があるのは配偶者控除・配偶者特別控除です。
扶養控除の対象になるのは、原則として「配偶者以外の親族」です。配偶者(妻・夫)については「配偶者控除」および「配偶者特別控除」という別の所得控除が用意されているため、扶養控除とは区別して扱われます。
「扶養親族」として認められるのは、次の範囲に含まれる人です。
この範囲に入る人のうち、所得要件を満たし、かつその年12月31日現在で16歳以上の人が「控除対象扶養親族」となります。実際に多いのは、高校生・大学生などの子ども、収入のない(または少ない)両親・祖父母、障害があり働くことが難しい兄弟姉妹などのケースです。
「生計を一にする」は、必ずしも同居を絶対条件とするものではありません。
たとえば、大学進学で一人暮らしを始めた子どもの家賃や生活費を親が送金しているケース、実家に住む親の生活費の大部分を子どもが仕送りしているケースなどは、住所が別々でも「生計を一にしている」と認められる場合があります。
反対に、名目上は親族であっても、生活費を一切負担しておらず、完全に別家計で暮らしているような状況であれば、「生計を一にしている」とは認められません。実務上は、送金記録(振込明細など)を保管しておくことが大切です。
扶養控除を受けられるかどうかを大きく左右するのが、扶養親族自身の所得要件です。
令和8年分以後の所得税では、扶養親族の年間の合計所得金額が62万円以下(給与収入のみの場合は年収136万円以下)であることが要件となります。なお「年収136万円」という目安は、給与所得控除の最低保障額の引上げ(69万円に上乗せ5万円を加えた74万円)を前提に算出された金額です。この上乗せ分は令和8年・令和9年分に限った措置とされているため、令和10年分以後は目安となる年収額が変わる可能性があります。
※過去の年分については金額が異なります。令和7年分は合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)、令和6年分以前は48万円以下(同103万円以下)でした。長く目安とされてきた「103万円の壁」は、基礎控除と給与所得控除の引上げによってすでに過去の基準となっています。過年分について申告や訂正を行う場合は、その年分の基準で判定してください。
注意したいのは、この基準が給与所得だけでなく、事業所得・雑所得・不動産所得なども含めた「合計所得金額」で判定される点です。アルバイト収入のほかに副業収入がある場合などは、合算して判定する必要があります。
次のいずれかに該当する親族は、扶養控除の対象になりません。
事業所得の計算上、すでに給与や専従者控除という形で必要経費に算入されているため、さらに扶養控除まで認めると二重に控除を受けることになるからです。個人事業主が家族に手伝ってもらう場合には、扶養控除にするのか、事業専従者として給与や専従者控除を取るのかを事前に検討し、どちらか一方を選択する必要があります。
海外に住む親族(非居住者)を扶養控除の対象とする場合は、要件が上乗せされています。令和5年分以後の所得税では、非居住者である扶養親族は年齢等による限定が設けられており、16歳以上であれば一律に対象となるわけではありません。
また、扶養控除の適用を受けるには、親族関係書類や送金関係書類などの提出または提示が求められます。「仕送りをしている」という事実だけでは足りないため、対象になるかどうかは国税庁の該当ページで具体的な区分を確認し、必要書類を必ず保管してください。
扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居状況によって4つの区分に分かれます。控除額そのものは近年の改正でも変更されていません。
その年12月31日現在で16歳以上70歳未満であり、特定扶養親族・老人扶養親族のいずれにも該当しない扶養親族が「一般の控除対象扶養親族」です。高校生の子どもや、収入が少ない20代・30代の兄弟姉妹などが該当します。
控除額は所得税で38万円、住民税で33万円です。
「特定扶養親族」とは、その年12月31日現在で19歳以上23歳未満の扶養親族を指す区分です。多くの場合、大学・専門学校等に通う学生の子どもが該当します。
進学や学費・生活費の負担が特に大きくなる年代であることから、控除額は手厚く設定されており、所得税63万円、住民税45万円です。
令和7年度税制改正で創設された制度です。19歳以上23歳未満の子がアルバイト等で稼ぎ、扶養控除の所得要件を超えてしまった場合でも、収入に応じて段階的に控除を受けられる仕組みが設けられました。
対象になるのは、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者・青色事業専従者等を除く)で、控除対象扶養親族に該当せず、合計所得金額が62万円超123万円以下(給与収入のみなら136万円超197万円以下)の人です。
所得税の控除額は次のとおりです(令和8年分以後)。
▼特定親族特別控除の控除額(所得税)
※横にスクロールしてご覧ください
| 特定親族の合計所得金額 | 給与収入のみの場合 | 控除額(所得税) |
|---|---|---|
| 62万円超85万円以下 | 136万円超159万円以下 | 63万円 |
| 85万円超90万円以下 | 159万円超164万円以下 | 61万円 |
| 90万円超95万円以下 | 164万円超169万円以下 | 51万円 |
| 95万円超100万円以下 | 169万円超174万円以下 | 41万円 |
| 100万円超105万円以下 | 174万円超179万円以下 | 31万円 |
| 105万円超110万円以下 | 179万円超184万円以下 | 21万円 |
| 110万円超115万円以下 | 184万円超189万円以下 | 11万円 |
| 115万円超120万円以下 | 189万円超194万円以下 | 6万円 |
| 120万円超123万円以下 | 194万円超197万円以下 | 3万円 |
※住民税にも同様の特定親族特別控除があり、最大控除額は45万円です。適用される金額の区分は所得税と異なる部分があるため、住民税については居住する自治体の案内をご確認ください。
<ポイント>
子どもの収入が要件を少し超えただけで控除がゼロになる、という心配は現在では当てはまりません。段階的に減っていく仕組みになっているため、まずは合計所得金額がどの区分に入るかを確認してください。
その年12月31日現在で70歳以上の扶養親族が「老人扶養親族」です。主に高齢の父母・祖父母などを扶養しているケースが該当し、同居しているかどうかで控除額が変わります。
同居老親等は「直系尊属であること」が要件です。同居している70歳以上の兄弟姉妹などは、同居老親等ではなく、その他の老人扶養親族として扱われます。
▼扶養控除の区分と控除額
※横にスクロールしてご覧ください
| 区分 | 対象年齢(12月31日現在) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上19歳未満・ 23歳以上70歳未満 |
38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 70歳以上・直系尊属と同居 | 58万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(上記以外) | 70歳以上 | 48万円 | 38万円 |
| 年少扶養親族 | 16歳未満 | 控除なし | 控除なし |
扶養控除とよく混同されるのが「配偶者控除」です。両者のいちばん大きな違いは、対象となる人にあります。
妻や夫については、原則として扶養控除ではなく配偶者控除(または配偶者特別控除)を使うのが正しい取り扱いです。同じ人について「扶養控除」と「配偶者控除」を二重に適用することはできません。
配偶者控除にも所得要件があり、令和8年分以後は配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与収入のみなら年収136万円以下)であることが条件です。加えて、配偶者控除・配偶者特別控除には納税者本人の合計所得金額にも上限が設けられており、本人の所得が一定額を超えると控除額が減り、やがて適用できなくなります。この点は扶養控除との大きな違いです。
「配偶者特別控除」は、配偶者の所得が配偶者控除の要件を超えているものの、一定の範囲内にとどまる場合に適用される所得控除です。令和8年分以後は、配偶者の合計所得金額が62万円超133万円以下(給与収入のみなら136万円超207万円以下)の場合が対象となります。
パート収入が増えて配偶者控除の対象から外れても、すぐに控除がゼロになるわけではない、という住み分けになっています。
1つ目は、健康保険などの「扶養」と税法上の「扶養」の違いです。社会保険の扶養は、主に保険料負担や給付の対象を決める制度であり、税金の扶養控除とは別の基準で運用されています。「健康保険で配偶者を扶養に入れているから、税金でも扶養控除を取れるはず」という誤解はかなり多いのですが、税金の世界では、配偶者については配偶者控除・配偶者特別控除で判断します。
2つ目は、同じ家族でも年齢や所得によって控除の種類が変わる点です。子どもの場合は次のように区分されます。
3つ目は、同一人物を複数人で扶養親族として申告できないことです。1人の親を子ども2人で仕送りしている場合であっても、扶養控除として申告できるのはどちらか一方だけです。家族間でよく話し合い、どちらが扶養控除を取るかを決めておく必要があります。
結論から言うと、16歳未満の子どもは、所得税・住民税いずれについても扶養控除の対象になりません。かつては16歳未満も「年少扶養親族」として扶養控除の対象でしたが、児童手当(子ども手当)の創設に伴い、所得税・住民税ともに廃止されています。
ただし、16歳未満の子どもについても、年末調整や確定申告の書類に「16歳未満の扶養親族」として記載する欄があり、住民税の非課税判定など税金以外の場面で重要な情報となります。書類には正しく記載しておきましょう。
一方、16歳以上になった年からは、所得要件を満たせば控除対象扶養親族となります。子どもが高校進学などで年齢区分をまたぐ際には、いつから扶養控除の対象になるのか、アルバイト収入がどの程度までなら扶養控除を維持できるのかを確認しておくと安心です。
税法上は、別居していても次の条件を満たせば扶養親族となる可能性があります。
地方の実家に住む両親の生活費を都会で働く子どもが負担しているケース、大学進学で一人暮らしを始めた子どもに親が送金しているケースなどが典型例です。
ただし、老人扶養親族の控除額については同居と別居で扱いが変わり、同居老親等のほうが控除額は大きくなります。「扶養に入るかどうかの判定において同居・別居は決定的な条件ではないが、控除額には影響する」という構造です。
実務上は、別居扶養の場合に税務署から確認を受けることもあるため、仕送りの記録(振込明細など)や生活費負担の実態がわかる資料を保管しておくことが重要になります。
令和8年度税制改正による所得要件の引上げは令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。毎月の給与や公的年金から差し引かれる源泉徴収税額への反映時期とはずれが生じるため、令和8年分については年末調整または確定申告で精算する形になる場合があります。
会社員・給与所得者の場合、多くは年末調整で扶養控除を反映させます。勤務先から配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、控除対象扶養親族の氏名・生年月日・続柄・所得の見込みなどを記入して提出することで、年末調整時に扶養控除が適用されます。
一方、次のような場合には、年末調整だけでは扶養控除が反映されず、確定申告が必要になることがあります。
扶養控除の申告漏れに後から気づいた場合でも、修正できる可能性があります。その年の確定申告期限前であれば、正しい内容で確定申告を行えば足ります。すでに申告済み、または年末調整のみで確定申告をしていない場合は、税務署への「更正の請求」や還付申告により、一定の期間内(原則5年以内)であれば対応できる場合があります。
必要となる書類はケースによって異なります。一般的には、扶養親族の収入・続柄・送金の事実などを確認できる資料が求められますが、具体的に何が必要かは事前に所轄の税務署へ確認するのが確実です。
扶養控除は、「誰を、どの条件で、いくらまで控除できるのか」を正しく理解しておけば、家計の負担を抑えることにつながります。ポイントは次の3点です。
対象となる扶養親族の年齢、所得、同居・別居の状況を整理し、年末調整または確定申告の際に漏れなく申告することが何より重要です。実際の軽減額は所得や家族構成によって異なりますので、ご自身のケースに当てはめて確認してみてください。
本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断や税務相談に応じるものではありません。税制は毎年改正され、適用される金額や要件は年分によって異なります。個別の事情に応じた判断や手続については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことにより生じた損害について、当方は責任を負いかねます。
※住民税の所得要件および控除額は、所得税とは適用年度・金額が異なる場合があります。お住まいの自治体の案内を必ずご確認ください。
(イーアイデム編集チーム)