
夫婦などのパートナー間では、コミュニケーション不足が課題になりがち。普段から会話をして、相手への不満や要望をためないこと、感謝や愛情の言葉を素直に伝えることが大事だとは分かっていても「会話」は意外とハードルが高いものです。
4年ほど前から夫婦で「日誌」を書く習慣を続けているという早さんに会話以外のコミュニケーションがもたらしたポジティブな変化についてつづっていただきました。
「パートナーとうまくコミュニケーションできている」と自信を持って言える家庭は、案外少ないのではないでしょうか。
私自身、夫への不満をため続けたせいで余計なことを口走ったり、口頭でしたはずのやりとりを翌日にすっかり忘れてしまったり……これまで多数の失敗をし続けてきました。
しかし4年ほど前に夫婦である取り組みを始めてから、会話では補い切れない「コミュニケーション不足」を防げるようになったと感じています。
その取り組みとは「Notionに日誌をつける」こと! 夫婦それぞれの「今日あったこと」や子どもの様子、二人で会話したことなど、日々のログを残しています。
会話した内容をつい忘れてしまうから「日誌でログを残す」ことに
- 始めたきっかけは「話した内容をすぐ忘れてしまう」から
- 夫婦間の情報共有ツールだったNotionにメモするように
実はこのNotionを使った家族日誌は「コミュニケーションに役立てよう!」という明確な目的で始めたわけではありません。最初のきっかけは、私の記憶力があまりにも貧弱だったことでした
私は昔からエピソードや会話を記憶しておくことが苦手。楽しかった出来事や面白い会話のやり取り、一緒に行った場所、食べたおいしいもの……一定の期間がたつと、だいたいすっかりさっぱり忘れています。
相手から「あの時こんなことがあったよね」と言われても、かなりの高確率で「そうだっけ……?」と記憶があやふやに。
楽しいことも面白いことも人生にそれなりに毎日起きているとは思うんだけど、音声と言葉が欠落した状態でしか思い出にできないのがちょっと寂しいなって思うことがある。
— 早[SAKI]『海外みたいにセンスのある部屋のつくり方』発売中 (@sakihaya515) May 13, 2021
あの時ああいう会話したよね、みたいなのほとんど忘れちゃう
ぼやいてたら夫にコンテンツ化された
— 早[SAKI]『海外みたいにセンスのある部屋のつくり方』発売中 (@sakihaya515) May 13, 2021
そういえばこいつも字書き族だった https://t.co/EU1nKRstvT
せっかくのいい思い出を忘れてしまい、なかったことのようにしてしまうのは、なんだか残念。そんなことをインターネットでぼやいていたところ「じゃあその場で書いておこう」と夫が言い出して、以前から夫婦間の情報共有ツールとして使っていたNotionにメモをし始めました。

日誌なんて「なんでそんな面倒なことをやってるの? 話した方が早くない?」と思われるかもしれません。
もちろん、直接会話をする方がいいケースもあると思います。しかし4年ほど日誌を続けてみた結果「面と向かって話し合う」以外のコミュニケーションの選択肢があることで、スムーズに進むこともあるのでは? と感じるようになりました。
産後の温度差もテキストコミュニケーションで解消
- 産前産後に夫と温度差が生まれた
- 不満を直接伝えるのはしんどいが、文章でなら伝えやすい
- 冷静に過不足なく自分の気持ちを表現でき、夫婦間の温度差解消に
こうしてしばらくは、夫婦間だけの“内輪面白ブログ”として、日々のどうでもいい会話や日記が記録されていくのを楽しんでいました。

その役割が少し変化したのが、出産前後です。出産が近付くにつれ私の体調やメンタルが不安定気味になってきて、元気な夫との温度差が少しずつ気になるように。

時期的に出産時に立ち会えず、産院にも入ることすらできなかった夫は、産後1週間の入院から帰宅して初めて子どもと対面しました。そのためか「ここからは自分がやらねば!」という気合が高まり過ぎて、出産で疲弊していた私との温度差が決定的に……。
家事や育児に当事者意識があることはとっってもありがたいものの、何かするたびにあっちでドタバタ、こっちでギャーギャー。その様子を「やってます!」というアピールのように勝手に感じ取ってしまい、テンションの差がなんだかしんどい。
しかし当時は疲れ過ぎていて、相手の反応を気にしながら面と向かって不満を言うことが億劫(おっくう)でした。そこで、Notionにその気持ちを書いて、読んでおいて〜と伝えることに。
テキストだからこそ冷静に、過不足なく表現できる安心感があったし、読んだ夫も「了解、伝えてくれてありがとう」と書いて、すぐに受け止めてくれました。
直接のやり取りだったらちょっと気まずい内容も、コミュニケーションに時間差のあるテキストだからこそ、大きく感情を動かすことなくやりとりできる。これは日誌のメリットだと感じました。
この経験をきっかけに、日誌が単なる「記録」から「家族間の共有ツール」としてより機能するようになりました。
Notion日誌で「書く・読む」を続ける工夫
- 自動でページが生成される仕組みで、毎日更新を促す
- 無理に毎日埋めようとはせず、書きたいことを気が向いた時に書く
- 「書けない日が続く」ことも「今は忙しい」というメッセージに
- 過去の日誌をランダムで通知する仕組みが、新たな会話を生むきっかけにも
具体的にどんな仕組みで日誌を運用しているのか、もう少し詳しく紹介します。
書く工夫
自動化ツールを使って、Notion上で毎日自動的に1日分のページが生成される仕組みにしています。
書けずにいると空白のページがどんどん増えていくので「空のテキストエリアがあると埋めたくなる」という“インターネット物書きの習性”を利用して、毎日更新を促す作戦です。長年インターネットで文章を書き続けてきた私たちにはぴったりの仕組みでした。

1日のページ構成は次の通りです。
- 今日のみね(夫)
- 今日のさき(妻)
- 今日の〇〇(子の記録。夫婦どちらかが書く)
- 今日のみねとさきの会話(印象に残った会話のログを記録)
毎日全部を埋めているわけではなく、書くトピックがあった部分だけ、気が向いた時に書きます。忙しい時は書けない日が続くこともありますが、それ自体もメッセージ(=忙しさが可視化される)になります。

読む工夫
日誌を1年くらい続けたある日「たまに読み返すと面白いけど、どの日が面白い日なのかぱっと分からない」「たまっていく一方なのはもったいないけど、全部の中身を見る時間はない」という課題が発生しました。
そこで夫が「過去の日誌の中から、毎日ランダムに通知されたらいいのでは」と提案し、妻の私が「じゃあそのシステムを作ろう!」と実装を進めました。
Google スプレッドシートに日々の日誌のデータを転記する仕組みを作り、さらに1カ月以上前のログからランダムに1日分を抽出し、朝晩メールで届けるようにしました。

※Zapier は Zapier Inc. の、Notion は Notion Labs, Inc. の、Google Apps Script、Google スプレッドシート、Gmailは Google LLC の商標です。本記事は各社による承認・提携を受けたものではありません。
面白い内容が届くと「今日は当たりの日です!」などとどちらかが言い始めて、会話のきっかけにもなっています。
直接会話しなくても、お互いのことをなんとなく知れる
- 日誌により「今の相手の状況をなんとなく知っている」状態に
- 相手が忙しそうな時や大変そうな時などは自然と気遣える
- かしこまって言いづらい感謝の気持ちなども伝えやすい
- 後から振り返れば、今後の役割のバランス調整にもつながる
このNotion日誌は、家庭内のクローズドなSNSみたいなものだなと思います。「相手に宛てる」というよりあくまでも「自分の記憶のための日記」。
書かなくてもOKだけど、書いておくとちょっと楽しい、だから続けられる。
ゆるい取り組みですが、お互いに「言っていないけどなんとなく知っている」状態を作れるのはメリットだと感じます。相手の状況を知っているだけで、前よりも自然に気遣いができるようになりました。

忙しいとき、わざわざ「忙しい、忙しい」と口に出すとアピールや言い訳みたいになってしまうけど、文字で最近の様子を残しておくだけで、なんとなく忙しさが伝わります。さらには「最近任せきりでごめん」「やってくれてありがとう」と、かしこまって言うタイミングがない感謝の気持ちなども、文面なら伝えやすい。

日々の記録が残っているので、後から振り返った時に「この時期は任せ過ぎていたな」などと気付けて、役割のバランス調整にもつながります。
結婚して6年、日誌を始めてから4年。子どもが生まれて以降も、最初のやりとり以降はケンカらしいケンカもなく、会話が絶えない楽しい関係を維持できているのは、この日誌のおかげでもあると思っています。
「話し合い」以外のコミュニケーション手段を探ってみる
「Notionに毎日夫婦でログを残す」というやり方は、もちろんわれわれ夫婦がIT系で、お互いに個人ブログを10年単位で書いているような筆まめなタイプだから成り立っているもの。同じ方法ができる家庭ばかりではないとは思います。
ここで重要なのは「お互いに思っていることをため込まない仕組み」を持つこと。
面と向かって会話する、というのは案外難しいものです。あまりうまくいかないな、と思ったら「話し合い」で全てを解決しようとせずに、違うコミュニケーション手段も模索してみると、自分たちに合うスタイルが見つかるかもしれません。
わが家の方法は一例として「こんなやり方でコミュニケーションを取っている夫婦もいるんだ」という発見になればうれしいです。
編集:はてな編集部
夫婦間のコミュニケーションを円滑にするには?
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