
悩みを誰かに相談しても、解決するどころか「かえってモヤモヤが増してしまった」ことはありませんか?
作家・ライターの青山ゆみこさんも「相談の難しさ」に悩んだ経験を持つお一人です。しかし、さまざまな「対話」を実践することで、次第に「相談のハードル」が下がっていったと言います。
今回はそんな青山さんに「上手に相談に乗ってもらうためのコツ」を伺いました。
言葉の「裏」を読み過ぎて、うまく相談ができなかった
- お酒をやめたら「気楽に相談できる場」がなくなった
- 「言葉の裏」を読もうとするとほど、「相談」や「会話」が怖くなった
- 「言葉に裏がない」人との対話が転機に
青山ゆみこさん(以下、青山):以前は仕事が終わったら決まってお酒の場に足を運んで、そこで出会った方々によく相談に乗ってもらっていました。
普段はつい格好つけて心にバリアを張ってしまうところがあったのですが、お酒の場ではそのバリアが溶けて、友達や仕事関係の人には言えないようなことも話せていましたね。
でも5年ほど前、49歳のときに、体調のことを鑑みてお酒をやめたんです。そうしたら健康診断の数値はよくなった一方で、メンタルの調子が一気に悪化してしまって。
それ以降、人の言葉をうまく受け取れなくなり、人に相談するどころか「会話」することもできなくなってしまいました。
私は、お酒の力を借りて人間関係を円滑にしていたんです。

青山:例えば、調子が悪くて友人たちとの約束を守れなかったときに、みんなが「気にしなくていいよ」とやさしい言葉をかけてくれたんです。
でも「きっと気を使って言ってくれてるだけで、本心ではないんだろうな」と言葉の裏を考え過ぎてしまって……。
そんなことが続いて人と関わることがどんどん怖くなり、自分から心を閉ざすようになってしまいました。
こんな自分を何とかしたいと思い、漫画家の細川貂々(てんてん)さんに「一緒に“対話の実践”をしませんか」とお声がけしたんです。
青山:実は貂々さんとは以前少しお仕事をしたことがあるくらいで、ちゃんとお話をしたことはなかったんです。
でも精神科医の水島広子さんとの共著『それでいい。』(創元社)シリーズの中で「自分は人の言葉の裏を読んだり、空気を読んで行動したりすることが苦手だ」と書かれていたのを読んだことがあって。
そんな貂々さんの言葉にはきっと「裏」はないだろうし、私の言葉もストレートに受け止めてもらえて、安心して「対話」ができるのではないかと考えたんです。
「いずれ本にまとめることも視野に入れて......」と仕事にかこつけてお誘いして(笑)。
青山:いざ、対話の実践を始めてみると、貂々さんの「とにかく嘘をつかず、思ったことをストレートに言ってくれる」人柄にすごく救われました。
先回りして相手の気持ちを汲もうとしなくていい人間関係ってこんなに楽なのか、と。
次第に他の人とも気楽に話ができる状態に戻っていったんです。
漫画家・細川貂々さんとの「対話の実践」を綴った共著
▶『相談するってむずかしい』(集英社)
この経験を踏まえて、精神医療のアプローチの一種である「オープンダイアローグ」の手法を取り入れ、お互いの話を否定せずに「ただ聞き合う」ことを目的とした「対話の場」を主催するようにもなりました。
相談のコツ【1】「話が盛り上がる人」よりも「黙っていても安心できる人」を選ぼう
- 相手からの「気遣い」が負担になることも
- 境遇や悩みが同じ人とは「ヒエラルキー」が生まれやすい
- 相談したい内容によって相手を変えてみる
青山:話が盛り上がらなくてもいいので、「黙って一緒にいるだけでも安心できる人」が一番いいんじゃないかな、と思います。
「ふーん、そんなことがあったんだ」とお茶を飲みながら軽く受け止めてくれるような相手です。
逆に、大きなリアクションをしてくれる人や積極的にアドバイスをしてくれる人が相手だと、一時の私のように「本当にそう思ってるのかな......」とか「気を使わせてしまって申し訳ないな」とか、いろいろ考えてしまって思うように話せない、ということもあるんじゃないかな、と。
青山:そうなんです。それと私は「自分と同じ境遇の人」や「同じ悩みを抱いている人」にはあまり相談をしないようにしています。
なぜなら「同じ」だからこそかえって小さな差が気になったり、「あなたの悩みは自分と比べたらまだ軽い」といった「困りごとのヒエラルキー」が知らず知らずのうちに生まれたりしやすくて。
もちろん、同じ体験をしている人と話すことで気持ちが救われる場合もあるとは思うのですが、他方で自分の体験を軽く扱われて傷ついてしまう可能性もあります。
だから、特定の問題について相談をしたいときは、抱えている悩みがまったく同じ人を選ばない方がベターかもしれません。
青山:私はそう思いますね。
前提として、信頼し合える人がいるのは素晴らしいことです。しかし「この人ならどんな話でも受け止めてくれる」「自分のことはなんでも話せる」と思い過ぎると、頼られる方も自分も徐々に負担になってしまうのではないでしょうか。
例えば、相手が忙しくて自分の悩みをしっかり聞いてもらえなかったときに、「なんでも話せる人だと思ってたのに.....」と不満が募ってしまうかもしれません。
むしろ、近所の人とか関係の近過ぎない仕事相手とか、カジュアルに話せる場を複数持っておいて、話の内容によって相談する相手を変えられた方が、お互いにとって楽かもしれないなと思います。
相談のコツ【2】解決を急がない方がうまくいく
- 相談は最初からうまくいくものではない
- いろんな人を相談相手に経験を貯める
- 本当に必要なのは「相談」よりも「雑談」
青山:そこは本当に難しいところだと思います。特定の問題を解決してほしいときは、本来ならその問題に詳しい人や専門家に話を聞くのが一番なんですよね。
でも実際は、話しているうちに「ただ否定せずに話を聞いてほしいだけだった」と気付くことも多いと思うんです。
それなのに「考え過ぎじゃない?」とか「もっと違うやり方があるんじゃない?」などと言われて、「話さなきゃよかった」と傷ついてしまったり……。
特に混乱しているときには、その切り分けが難しいのが現実だと思います。
青山:そうですね。少し乱暴な提案かもしれませんが「相談は最初からうまくいくものではない」という前提で、いろんな人を相談相手にしてみるのがいいかもしれません。
もちろんせっかく相談したのだから傷つかずに終われることが一番ではありますが、「この人に話すのは違ったな......」と失敗することも決して無駄ではないと思うんです。
ときどき失敗しながらも「この話はこの人にならできる」という経験を少しずつ貯めていくつもりの方が、例え1回の相談がうまくいかなくても「次がある」「この悩みはゆっくり解決していけばいい」と自分の中にゆとりが生まれてくるのではないでしょうか。

青山:そう思いますね。「相談のコツ」というテーマと矛盾するようですが、一番の理想は悩みが大きくなり過ぎる前に、心に引っかかっている些細なことを日常的に周囲に話すクセをつけておいて「大きな相談」をしなくてもいいような状態を維持することだと思うんです。
何かを人に相談しなきゃいけないときは、すでに問題が限界まで大きくなっている状態。
もちろんそういう状況も人生では避けて通れないとは思うのですが、やっぱり、しょっちゅうはない方がいいですから。
青山:はい。本当に小さなことでも周囲に話して、自分も聞く側になったら「へー、そんなことがあったんだ」と受け止める。
必要なのは「相談」よりも「雑談」できる環境なのかもしれません。
しょうもない話だと軽く流すのでも、重く受け止め過ぎるのでもなく、「周囲の話をサラッと聞き合える環境」があれば、悩みってそこまで大きくならないものだと実感しています。
「相談」がうまくなれば、人の話を聞くのもうまくなる
- 聞いてもらえると「聞く」のも上手になる
- 「何か言ってあげなきゃ」と背負い過ぎなくていい
- 聞く・聞かれるスキルは人間関係を楽にする
青山:自分の話をただ受け止めてもらえる体験が増えたことで、私自身の「聞く」姿勢も変化してきました。
具体的に言うと、黙って話を聞けるようになったんです。以前なら「相手のことを思って」と根掘り葉掘り質問して、あれこれアドバイスをしてしまっていました。
でもいまは、話を遮らずに聞いてもらえることのありがたさが身に沁みて分かっているので、自分もそういった姿勢を少しずつとれるようになってきたんです。

青山:自分のおせっかいな性格もあって、いまだに人にアドバイスしたくなったり、余計な世話を焼いてしまったりしそうになるときもあるんですけどね……(笑)。
それも必ずしも悪いことではないと思いつつ、最近は、相手の話をあれこれジャッジしようとせず、一旦「保留」にする練習をしています。
人は必ずしも、その場で言いたいことを全て言葉にできるわけではないですから、受け止める側も「何か言ってあげなきゃ」と背負い過ぎなくていいのかな、と。
そう思えるようになって、人間関係が格段に楽になったなあと実感しています。
取材・文:生湯葉シホ
編集:はてな編集部
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