日々仕事のタスクをこなす中で、プライベートの「自分や家族のためにやりたいこと・やらなくてはいけないこと」を後回しにしていませんか。
2021年に独自のタスク管理術を紹介した『あなたの24時間はどこへ消えるのか』を出版し、現在1歳の子どもを育てながら働くスワンさんに「仕事もプライベートも大切にするためのタスク管理術」について伺いました。
「休む」ことをタスク化したら罪悪感が減った
仕事「以外」も大切にするための「タスク管理術」をまとめた一冊
▶︎『あなたの24時間はどこへ消えるのか』(SBクリエイティブ)
スワンさん(以下、スワン):会社員だったときは、毎日深夜に仕事を終えタクシーで家に帰り、翌朝は定時に出社するような生活でした。上司に残業を言い渡されたわけでも、誰かの行動をマネしたわけでもなく「そうした方が評価されるだろう」みたいな意識があったんです。
スワン:20代後半でフリーランスとして独立したばかりの頃です。一層働きづめになりメンタルのバランスも崩してしまう中で、父が「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病が原因で59歳で亡くなったんです。
母と一緒に老後の計画も立てていたのに、ふたを開けてみれば父の老後は実質ゼロだった。それで「もし明日から自分の体が動かなくなったら、私は何を後悔するだろう」と思って、葬式の後に「今やりたいこと」を洗い出してみたんです。
「やりたいことがたくさんあるのに、仕事ばかりしていたら体が動かなくなる前に頭が動かなくなる」と思って、「仕事」を優先するのではなく、「プライベート」も同等に大切に扱うための「タスク管理術」を実践するようになりました。
スワン:いろいろ試しましたが、効果があったのは「休むこと」をタスク化してカレンダーに入れること。例えばリモートワークの日なら「12時半からベッドで昼寝する」というタスクを作って、それが達成できたらチェックを入れる。「今日のタスクを1つ達成できた!」という捉え方をすることで、少しずつ休むことに罪悪感を抱かなくなりました。
仕事「以外」も大事にするためのタスク管理術
スワン:私は「Notion」というサービスを使って、1週間単位でシートを作成し曜日ごとに1日のタスクを書き出しています。ポイントは「仕事」のタスクも「プライベート」のタスクも同じシート内で管理すること。「プライベート」のタスクはどうしても後回しにしがちなため、同じシートに書き出すことで「仕事」のタスクと同様に重要なこととして意識しやすくします。
その上で、タスクを「親タスク」と「子タスク」に整理し「親と子」のセットで管理します。「親タスク」はあくまでラベルなので、具体的なアクションではなくプロジェクト名などを入れ、子タスクには「何をすればこの親タスクが終わるのか」をできるだけ具体的に書き出します。例えば「プレゼンテーションの準備」を親タスクとしたら、子タスクには「会議室を押さえる」や「資料の作成」などをリストアップしていくイメージですね。
理想は「親タスク」を1時間以内で終わる複数の「子タスク」にまで分解すること。そうすると、今やるべきことの解像度が格段に上がりますし、1つ1つが小さなタスクになるためハードルが下がり取り組みやすくなります。
「Notion」を使ったタスク管理については、テンプレートも作成・配布しているので(こちら)ぜひ活用してみてください。
スワン:仕事はゴールから逆算して取り組んでいけますが、「プライベートでやりたいこと」はゴールが明確じゃないことも多く、何から始めたらいいか分からないケースが多いかもしれません。
例えば「英会話ができるようになる」というタスクがなかなか進まないのは、理想が曖昧であることと、それを達成するために何が必要なのかが想像しづらいからだと思います。また、仕事と異なり期限がないから取り掛かかりにくい。
そこで、まずは「英会話について1時間考える」ことを1つのタスクとしてみる。「考える」って、一見抽象的でタスク化できていないように見えますが、実は効果的で私もよくやっています。
「英会話ができるようになるとは具体的にどういう状態なんだろう」と考えたり、理想を叶えるための手段を調べてみたりする。あんまり難しいテーマでない限り、1時間も考えれば「英会話教室を5社ピックアップする」など、何かしらのネクストアクションが見えてくると思います。
スワン:そうなんです。さっきお伝えしたように「タスクの解像度を上げること」がタスク管理の基本ですが、「プライベートでやりたいこと」は性質上、少し例外だと思っていいかもしれません。
「考えてみる」「調べてみる」くらいの粗い解像度でいいから、とにかく「始めること」を意識してみてください。その後に、具体的なタスクや目標を明確にしていけば良いのではないでしょうか。
パートナーのタスクには手を出さない。「子育て」のタスク管理
スワン:「Notion」に加えて、産後1年くらいは夫婦で共有できる育児記録アプリ「ぴよログ」も使っていましたね。育児に関するお互いのタスクを可視化して、やったことを褒め合ったりするために始めました。
あとは、夜子どもを保育園に迎えに行った後は仕事もプライベートも一切予定を入れなくなりました。子どもを寝かしつけてから仕事を再開する方も多いと思いますが、私の場合は「なんで寝てくれないの?」とイライラしちゃって。
スワン:火曜日と木曜日は夫がお迎え担当なので、その日は遅くまで会社にいたり、帰りにカフェで作業したり、ひとり焼肉したりすることもあります(笑)というのもわが家では、お迎えに行った人が子どものごはんから寝かしつけまでまるっと担当して、相手はその内容には「何も文句を言わない」というルールを決めていて。
スワン:仕事と同じで、誰かが途中までやったタスクを引き継ぐのはやりづらいんですよ。
例えば、わが家では子どもの予防接種に関するあれこれは全て夫の担当にしていて、もし自治体から何か案内の封筒が届いても私は決して開けず「これ、よろしく!」という感じで渡しちゃいます。……まあ、封筒が机の隅に追いやられていたらそっと真ん中に置き直したりはしてしまうんですが(笑)
ここで私が封筒を開けて「そろそろ●●のワクチンの接種の時期だよ!」なんてサポートをしてしまうと「これで回ってる」と勘違いさせてしまう。別に夫を困らせたり、負担を増やしたりしたいわけではなく、あくまで「これは夫のタスク」という意識で、私は私でやることをやって相手のタスクと自分の責任を切り離すようにしています。
そうすることで、相手も自分なりの最適なタスク管理方法が見つかって、タスク管理の精度がだんだんと上がっていきますし。
スワン:そうですね。相手のタスクまで管理しようとすると、「何でやってくれないの」とイライラの原因になってしまうと思います。
ただ私たちは「それぞれのタスクはそれぞれで責任を持って」と同時に、「お互いにめっちゃ迷惑かけ合おうぜ」という方針も取り入れています。
「子育て」は1人ではなく2人で取り組むものだから、完全な分担を目指すのは不可能だと思っていて。どちらかの仕事が忙しい時期には「ごめん、今週忙しいからお迎えをお願い!」と頼む代わりに翌週は「全部私が迎えに行くね」というように、「今日のタスク量」だけじゃなくて、子育ての全期間を通して二人の負担が平均化されていればいいのかなと思うんです。どんなにタスクを管理していても、うっかり忘れちゃうことだってありますしね。
万人に合うタスク管理術はないから、小さな実験を繰り返す
スワン:自分も発信する側ではありますが……万人に合う「タスク管理術」はないと思うんです。本やWeb記事などのマネをしてしっくりこなかったり、続かなかったりしても、また別の方法を試したり、自分なりにアレンジしたりしてみてほしい。
先ほど紹介した「Notion」のテンプレートも、そのまま使うのではなく、他のタスク管理術と組み合わせたりしながら、少しずつ自分のライフスタイルに合うようにカスタマイズして使ってもらえるとうれしいです。
スワン:あとは、「タスク管理に完璧を求め過ぎないこと」も継続のコツかもしれません。全然予定通りにいかない週もあるし、そもそも忙し過ぎてタスク管理をする余裕がないときもありますよね。そういう波があることを踏まえた上で、「今日のベストを尽くす」ぐらいの感覚でやってみることが大事かなと思います。
そもそも見積もりは外れるものだと思うんですよ。なぜなら人は「これくらいはできるはず」とつい無理なスケジュールを立ててしまうものだから。
なので私はあえて「どんぶり勘定」するように意識しています。1つのタスクにかかる時間を長めに見積りつつ、週の前半はタスク量多めにして週の後半にかけてだんだん量を減らしておく。そして金曜日は何もタスクを入れず「調整」の日とする。こうすればタスクが後ろにずれ込んでも週内には対応できますから。
スワン:でも最初からその方法にたどり着いたわけではなく、自分に合う方法を2年くらいかけて見つけていったんです。
自分に合うタスク管理術を習慣化してからは「何で私は“できない”んだろう」と自分を責めることが減りましたね。あとは気持ちに余裕が生まれて、自分や周囲に「怒り」を抱くことも減ったと感じます。その結果、疲れにくくもなり仕事においてもプライベートにおいても「やりたいこと」ができる気力が増えたな、と。
最初はうまくいかなくても、続けていれば確実にタスク管理の精度は上がっていきますから、夏休みの自由研究だと思って楽しみながらトライしてみてください。
取材・文:ヒガキユウカ
編集:はてな編集部
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