緑茶のおいしい入れ方をプロが紹介。ホット・アイス別「いつもの緑茶」をもっと楽しむコツ

緑茶のおいしい入れ方

緑茶のおいしい入れ方(ホット・アイス)を、プロに教えてもらいました。

会社でも家でも、飲み物で気分転換をしている方は少なくないはず。コーヒーや紅茶と同じように「緑茶」を飲んでいる方も多いと思いますが、身近な存在だからこそ、茶葉や入れ方にはこだわらず「なんとなく」選んだり、入れたりしているのではないでしょうか。

そこで今回は、知っているだけでいつもの緑茶がもっとおいしくなる、ちょっとしたコツや入れ方を紹介します。


こんにちは。日本茶インストラクターの市川雅恵です。

私はアパレル業界を経て茶業界へ入り、日本茶小売りチェーン店を展開する会社で商品企画や販促を約8年経験した後に独立。現在は、日本茶のおいしさや楽しさをもっと知ってもらいたいという思いから、自分でセレクトした茶葉や茶器をオンラインストアで販売しながら、ワークショップなども開催しています。

さて、日本で暮らしていると「緑茶」は当たり前に身近にあるものですが、それゆえに「なんとなく」選んだり、入れたりしている方も多いのではないでしょうか。

しかし、以下のようなほんのちょっとのコツを知るだけで、緑茶はもっとおいしく飲むことができます。

緑茶をおいしく入れるコツ

それぞれ詳しく紹介していきますね。

ティーバッグでもおいしい緑茶は飲める

ティーバッグに「急須で入れるお茶に劣る」や「安い茶葉が使われている」といった印象を抱いていませんか?

近年は質の高い茶葉を使ったものが増えているほか、お茶が抽出されやすいようティーバッグ素材の開発も進んでいるんです。例えばニット織のティーバッグ。伸縮性があり、水やお湯に浸したときに茶葉の重みでネットが広がるため、茶葉の味わいがしっかり出やすくなっています。

PLA素材ニットのティーバッグ
トウモロコシ由来の素材で作られた「PLA素材ニット」のティーバッグ

また、ティーバッグというと長方形で封筒型のものが一般的ですが、最近は三角錐型(テトラ型)のものも。このタイプは、立体的で中の空間に余裕があるので、茶葉がゆらゆらと動きやすく、お茶がより抽出されやすいのが特徴です。

丸七製茶の艶味

私のおすすめは、静岡県にある「丸七製茶」のティーバッグ緑茶。特に「艶味(つやあじ)」はお茶が濃く出て、旨味もあり、お気に入りです。

公式サイトでは詰め合わせが購入できます。

ティーバッグは茶葉を計量する手間が省けますし、入れた後はそのままゴミ箱に捨てられて、茶殻の処理もいらなくてとっても手軽に緑茶を楽しめます。ぜひ積極的に取り入れてみてください。

初心者には「深蒸し煎茶」がおすすめ

茶葉から入れる緑茶(リーフ茶)を楽しみたい、けど何がいいのか分からないという方には、「深蒸し煎茶」をおすすめします。

そもそも「煎茶」とは緑茶の一種で、私たちが口にする緑茶の多くが「煎茶」です。煎茶は蒸し製法の違いで味わいが大きく変わるのですが、中でも深蒸し煎茶は、蒸し時間が長いため、茶葉の繊維が崩れ、茶葉の形状が細かく仕上がるのが特徴。そのためお茶の成分が抽出されやすく、技術がなくとも簡単においしく入れることができます。

佐々木製茶のかごよせ

なので「ちょっとこだわってみたいな」という方は、まずは「深蒸し煎茶」と書かれた茶葉を探してみてください。

私のおすすめは、「佐々木製茶」のかごよせ。静岡県の掛川(かけがわ)で作られている「掛川茶」です。掛川ではさまざまなお茶が作られていますが、中でも深蒸し煎茶が特産として知られています。甘味があり、味や色が濃く出るのが特徴です。

公式オンラインショップでお取り寄せができます。

熱湯ではなく70~80℃で&最後の一滴まで注ぎきる

温かい緑茶

それではさっそく温かいお茶の入れ方を紹介したいと思うのですが、その前に知っておきたいポイントが2つあります。

まず1つめは「お湯の温度」。緑茶を入れるとき、湧かしたお湯をそのまま使っていませんか?

実は緑茶は100℃の熱湯で入れると、渋味や苦味といった味わいが前面に出てしまい、旨味や甘味が出づらいんです。

緑茶の持つ甘味や旨味がしっかり抽出されるのは70~80℃。温度を設定できるケトルやウォーターサーバー(機種にもよりますが、だいたい80〜90℃のお湯が出るものが多いようです)がない場合は、ほかの容器に移してから急須に注ぐといいですよ。一度容器に移すたび、だいたい10℃下がると言われているので、100℃の熱湯を2回別の容器に移せば、80℃に近くなります。

2つめは「最後の一滴まで注ぎきること」。

ティーバッグや茶葉を入れた容器に水分が残っていると、その水分でお茶が抽出されすぎてしまい、二煎目を入れるときに渋味やえぐみが出てしまいます。

お茶はホットなら三煎目まで楽しめるので、無駄なくおいしく楽しむためには水分を残さないことを意識してみてください。

それでは私がおすすめする「温かい緑茶の入れ方」をティーバッグ、茶葉別にそれぞれ紹介します。

温かいお茶の入れ方(ティーバッグ)

ティーバッグでの温かい緑茶の入れ方

【1】耐熱のピッチャー(マグカップや湯飲みでもOK)にティーバッグを入れる

【2】適当な容器に100℃のお湯を注ぎ、湯の温度を下げて湯冷ましする。効率よく温度を下げるなら、容器を2つ用意してお湯を移し替えるのがおすすめ

【3】冷ましたお湯を1に注ぎ、20~30秒ほど置いたあとティーバッグを2〜3回そっと揺らす。揺らしすぎるとお茶の渋味やえぐみが出てしまうので、やりすぎないように

【4】しっかりお茶が抽出されたら、マグカップに注いで完成。ティーバッグを入れている容器に水分を残さないように注ぎ切るのがポイント

温かいお茶の入れ方(リーフ)

リーフでの温かい緑茶の入れ方

【1】急須に茶さじ1杯(1人分)の茶葉を入れる。茶さじがない場合は、ティースプーンで2杯を目安に

【2】湯飲みやマグカップなどに湯を注ぎ、70~80℃くらいに湯冷ましをする

【3】急須に湯冷まししたお湯をそっと注ぎ入れて、急須の蓋をする。深蒸し煎茶など茶葉の細かいものであれば30秒、普通煎茶(浅蒸し煎茶)などしっかりした形状の茶葉であれば1分を目安に置く

【4】一度に全て注がず、ちょうどいい濃さになるまで急須の中の茶葉を揺らして少しずつ確認しながら注ぐ。好みの濃さになったら一気に注ぎ、急須にお湯が残らないよう、最後の一滴まで注ぎ切る

緑茶のおいしい入れ方
最後の一滴まで注ぎきる!

夏にぴったり! 水出し緑茶は失敗しづらい

次に、水出し緑茶のおいしい入れ方を紹介します。水出し緑茶は、ホットに比べると失敗しづらいのが特徴です。

なぜ失敗しづらいかというと、渋味、苦味の成分であるカテキンやカフェインは80度以上の高い温度で抽出されるから。一方、旨味成分であるテアニンなどのアミノ酸は低い温度でも抽出されるので、おいしさはしっかり感じられるのです。

またカフェインは10度ほどの水だと熱湯の半分くらい、0℃の氷水で入れるとさらに少なくなるので、カフェインを控えたい人にもおすすめ。カフェインは緑茶の味を構成する要素の一つなので、少ないことで物足りなく感じるかもしれませんが、一方でとてもさっぱりしてのど越しがよいので、暑い夏にぴったりです。

ただし自分で作る水出し緑茶は保存料が入っていないため「冷蔵庫で保存し、24時間ほどで飲み切る」こと。水筒に入れて持ち歩く場合は、保冷効果があるボトルに氷をたくさん入れて、温度が上がらないようにしてくださいね。

それでは水出し緑茶の作り方は以下の通りです。また、お湯で入れたお茶を氷で冷やす方法(オンザロック法)も併せて紹介します。

ボトルで水出し緑茶を作る場合

ボトルを使えば手軽に水出し緑茶がたくさん作れておすすめです。

HARIOのカークボトル

私が愛用しているのはHARIOのカークボトル。ふたの裏にフィルター(茶こし)が付いているので、茶葉を入れたままグラスに注げて便利です。もちろんティーバッグを使ってもOK。

茶葉の量は水500ccなら5g、1Lなら8gを目安に。水を注いだらゆっくりと2〜3回ボトルを振り、茶葉の成分を抽出してから1時間ほど冷蔵庫へ。色が薄いと感じる場合は、追加で2回ほど軽く揺らすと、濃くなります。

急須で氷水を使い緑茶を入れる方法(リーフ)

氷水出し緑茶の入れ方

少量だけ飲みたい場合は、やはり急須が便利。急須に氷と茶さじ1杯の茶葉を入れ、水を注ぎます。5分ほど置いて、氷を入れたグラスに注げば完成です。

お湯で入れた緑茶を氷で冷やす方法(オンザロック法)

お茶の香りをしっかり楽しみたい場合は、急須で温かいお茶を作ったあと、山盛りの氷で急冷させて入れる「オンザロック」がおすすめです。

オンザロック法での冷たいお茶の入れ方

温かいお茶の入れ方で紹介した手順でお茶を入れてから、氷を入れたグラスに注ぎ、一気に冷やします。

なくてもいいけど、あるともっと便利な「茶器」たち

お茶を入れるのに凝った茶器は必要ありませんが、専用の道具はやはり「あると便利」。もしお茶を飲む頻度が高くなり「よりおいしいお茶を入れたい」「道具も揃えたい」という気持ちが強くなった場合は、以下で紹介する茶器の選び方を参考にしてみてください。

あると便利な茶道具
【1】急須【2】耐熱ピッチャー【3】茶缶【4】茶さじ【5】茶こし

【1】急須

常滑焼の急須

急須は口径が広くて、注ぎ口に網目が細かな茶こしがついているものがおすすめ。口径が広いと急須の中で茶葉とお湯が対流してゆらゆらと揺れやすく、お茶の味わいがしっかり出やすいからです。

また茶葉が入れやすいほか、中がよく見えるので洗いやすいですし、茶殻も捨てやすいなど、手入れが楽なのも魅力です。

茶こし部分が細かいと、濁りの少ないきれいなお茶が入れられますよ。私は常滑焼の急須をよく使っています。

【2】耐熱ピッチャー

耐熱ピッチャー

耐熱ピッチャーは湯冷ましに、ポット代わりにと多用途で使えます。

湯冷ましは、マグカップや湯飲みなどでも作れますが注ぐ際にどうしてもこぼれがち……。注ぎ口が付いたピッチャータイプのものが1つあるだけで、お茶を入れるのがグンと便利になります。

【3】茶缶

茶缶

茶葉は鮮度が何よりも重要! 一度開封した瞬間からどんどん鮮度が落ちていくのですが、密閉できるタイプの茶缶に移しておけば、長く風味が楽しめます。

また、このように口径が広い茶缶だと入れ替えや取り出しが容易で便利です。

【4】茶さじ

茶さじと大さじ

茶さじはティースプーンでも代用できますが、飲む頻度が高くなるとやはりあると便利。もしくは、専用の計量スプーンでもOK。

私は手軽に手に入る、100円ショップの計量スプーン(画像上)を使うことも。大さじに軽く1杯でだいたい6gほど(約2人前)です。

【5】茶こし

茶こし

急須にしっかりとした茶こし機能があればなくても大丈夫ですが、漉せば漉すほどお茶の色は美しくなるので、見た目にこだわりたい方は茶こしも併用してみてください。

慌ただしい時こそ、緑茶で自分のための時間を楽しんで

いろいろな方法やコツを紹介してきましたが、「お湯の温度」や「ティーバッグを揺らしすぎない」など基本の部分さえ知っておけば、あとはあまり構えずでOK。「緑茶の入れ方」となると、「こんなことをしたら邪道」とか「こんな入れ方はマナー違反なのでは」などと考えてしまう方が多いようですが、そんなことは全然ありません。自由に、気軽に楽しんでほしいなと思います。

緑茶には「青葉アルコール」「青葉アルデヒド」という香り成分が含まれているのですが、これらには森林浴のような疲労回復効果があるという研究結果も。また、お茶に含まれるテアニンにはリラックス効果がありますし、私は心身が疲れているときほど、緑茶のおいしさが体に染み渡るように感じます。

慌ただしくて頭の中がごちゃごちゃになっている時こそ、緑茶を入れて少しだけ自分のための時間を作ってあげてみてくださいね。

取材・文:横田ちえ
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部

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著者:市川雅恵

市川雅恵さん

日本茶インストラクター。オールアバウト「日本茶」オフィシャルガイド。

株式会社チャイチワークスの代表として、日本茶と茶器を販売するオンラインストアの運営や日本茶ワークショップの主催、メディア出演、雑誌への執筆活動、企業での日本茶セミナー講師などを行う。著書に『私を整えるお茶の時間』(ギャラクシーブックス)がある。

Web CHA-ICHI WORKS Instagram @chaichi_works