つわりを乗り切って安定期(妊娠16週〜)に入り、同僚などにも妊娠の報告を済ませ……と、産休に向けた引き継ぎなども本格的に動き出す妊娠後期(妊娠28週〜)。
しかし、妊娠後期は息苦しさやお腹の張り、むくみ、尿漏れなど「妊娠してみないと分からない」さまざまなマイナートラブルに悩まされる時期でもあります。また、胎動が昼夜問わず激しく痛くなったり、お腹の重みでなかなか快眠できないことも。
「体調が悪いんだけどもうすぐ産休だし、申し訳なくて周囲に相談できない」「仕事がつらくて一刻も早く産休に入りたい」などと悩む方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は数年以内に妊娠〜出産の経験がある方に、妊娠後期に抱えていた体調不良や仕事の面で抱えていた悩みとその対策、引き継ぎやあいさつの進め方などについてお話を伺いました。
※取材はリモートで実施しました
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尿漏れにむくみ、苦しいお腹。妊娠後期の体調不良は「知らなかったことだらけ」
コルさん(以下、コル) 私は頭痛と腰痛がひどかったのと、胸やけや息苦しさの症状がありました。あとは、妊娠性掻痒(そうよう)によるかゆみにも悩まされました。
妊娠前、街で見かける妊娠後期の妊婦さんはゆったり穏やかに見えて「やっぱりお腹に子どもがいると、気持ちや振る舞いに余裕が出るのかな?」なんて思っていたんですが……。
あれは「ただただ、お腹が大きくてゆったりせざるを得ない状況だった」ということに、自分がそうなって初めて気付きました(笑)。
平愛美さん(以下、平) すごくよく分かります(笑)。私はおなかの張りがつらかったのと、あとは尿漏れの症状が……。
普段は専用のライナーを着けて対処していたんですが、ある日オフィスでの勤務中に破水か尿漏れなのか判断できなかったことがあって。「でも破水だったら大変だし」と、思い切って同僚に伝えて病院に行ったこともありました。
結果は「尿漏れ」だったんですが、やっぱり気恥ずかしいですし、周りにも言い出しづらいので病院に行くかはすごく迷いました。
桜花さん(以下、桜花) 尿漏れ、戸惑いますよね……。妊娠後期の症状として尿漏れがあることすら、自分が妊娠するまで知らなかったです。
私の場合は足のむくみがつらかったです。妊娠前はちょっとむくんでも着圧ソックスを履いてケアすればなんてことなかったんですが、妊娠後期は靴下や靴が入らないくらいむくんで、眠れないほど痛い。
最終的に枕などで足を高くして寝たり、足湯をしたりして乗り切りましたが、普通のむくみとは全然違っていて、本当につらかったです……。
コル そうですね。慢性的な体調不良に加えて「私、これからどうなるんだろう?」という精神面での不安も強かったです。独身の頃は「産休いいな~」くらいにしか思っていなかったのに(笑)。
平 これからの生活に対して、漠然とした不安がありますよね。「無事に生まれてくるだろうか?」とか「保育園には入れるだろうか?」とか、不安が尽きなくて。
桜花 分かります。あと「お腹が大きくなること」があんなに大変だとは思わなかったです。
妊娠前に想像していたよりはるかに重たくて圧迫感がすごくて。デスクに座るとお腹がつっかえて、ただデスクワークをこなすだけでも一苦労ですし、妊娠後期ともなると中からドカドカお腹を蹴られて、すごく苦しくて。
元気なのはいいことだけど、これ以上暴れないで〜! と懇願する毎日でした。
妊婦さんってよくお腹をさすっているイメージがあって、妊娠前は幸せでついついお腹を触ってしまうんだろうなと思っていたんですが……。今は「痛みを緩和しようと思ってさすっていたんだろうな」と思うようになりました(笑)。
通勤はラッシュを避ける、引き継ぎは極力早めに。妊娠後期の働き方
コル 私は通勤です。職場までJR山手線で通っていたのですが、コロナ禍以前だったこともあり超満員で……。なるべく楽に通えるように、出社を30分遅らせてもらっていました。
平 私も通勤ラッシュの混雑を避けるため、下の子の保育園への送迎を夫に任せてピーク時間より前に乗車するようにしていました。
でも、どうしても体調が悪くて起き上がれない日もあるので、そのときは諦めて遅めに出社したり、リモートワークに切り替えたりしていましたね。
事前にそういう可能性や「こういうときはこうします」というパターンを会社に相談しておくと、スムーズだと思います。
コル 「会社に相談」となると気が重い人もいるかもしれませんが、妊娠後期のお腹って本当に大きくて、ただ歩くだけでも大変になります。
会社と事前に相談して、体や気持ちに負担がかかりにくい形を探すことが大切かなと思います。
平 とにかく無理しないことが大事ですよね。
満員電車の中で「お腹を守るポジション」をキープするのって本当につらいんですよ。ラッシュ時は優先座席もなかなか空いていないですし。ときどき譲っていただけたときは「なんていい人なんだ……!」と感激するくらいうれしかったです(笑)。
桜花 私はコロナ禍で妊娠後期を迎えたこともあり、全社的にリモートワークに切り替わっていたので通勤に関しては悩まずに済みました。ただ……「イスに座っているだけでもしんどい」んですよね。
そういうときはオンライン会議中でも、カメラをオフにして横になって参加していました。事前に「体調が優れないときはこうします」と共有しておけば、リモートワークでお互いの顔が見えづらい中でも状況が分かりやすいですし。
体調に関しては「きちんと休む方が結果的に迷惑をかけない」と考えて、積極的に会社と相談していました。
桜花 できるだけ早く引き継ぎたい! と思い、「巻き」を心掛けていました。私は妊娠中期に「絶対安静」を経験したので、もしかしたら予定より早く休むことになるかも、とずっと落ち着かなくて。
でも「巻き」過ぎてしまって、産休に入る直前には何もやることがなくなってしまったんです……。妊娠は最後まで「何があるか分からない」状態なので、引き継ぎのタイミングは本当に難しい。
平 急に休むことになったら周囲に迷惑を掛けてしまう、と心配になりますよね。
私は2人目が切迫早産だったので、3人目のときはかなり早めに引継ぎしました。結果として3人目も切迫早産で急遽休職することになり、そのまま産休に入ったので、早めに引き継いでおいてよかったです。
ただSEという仕事柄、普段から仕事に関するドキュメントをまとめたり、属人性の高い仕事をなくしたりといった工夫は常々していたので、引き継ぎといってもそこまで大きなタスクじゃなかったんです。
もちろん、職種や業務内容によるので全員がそうできるわけではないですが、普段から「誰でもやれる状態」を心掛けておくのは一つの手だと思います。
コル 私は小さな会社に勤めていて、いつも会社の事務全般を一人でこなしているんですが、そのせいかギリギリまで後任が決まらなくて。「いつ誰が引き継いでも支障がないようにしよう」と、自分がやっている業務を細かく洗い出して、マニュアルを作っていきました。
なので引き継ぎ自体は大変だったんですが、体調がいいときは先回りして仕事をしたり、つらいときは後回しにしたり、これはもう無理! ってくらい体調が最悪なときは遠慮なく早めに帰らせてもらったり……と「一人」だからこそ自由にできた側面もあります。
平 切迫流産や切迫早産を経験していたので、3人目のときは極力早く会社や所属チームに伝えました。大々的な全周知は産休に入る1カ月前、部署の全体会議で伝えましたが、結局その翌週に切迫早産で入院になってしまって……。結果的にあのタイミングで伝えておいてよかったです。
コル 私の場合は産休に入る1週間ほど前に、全社員へ向けた社内報のメールで産休に入りますと伝えました。
ただ小さい会社ですし、妊娠後期はお腹が膨らんでパッと見で「妊娠している」と分かる状態だったので、「もしかして……?」と聞かれた場合は答えていました。個人的にはわざわざ自分から言うものでもないという考えだったので、積極的に周囲に話すことはなかったですね。
桜花 私は産休に入る1カ月前に全社周知を済ませました。ずっとリモートワークで「大きくなっていくお腹」に気付かれることもなかったので、普段業務上の関わりがない方は全社周知でびっくりしていた方も多かったです。
精神的な不安も大きい妊娠後期。ささいなサポートや声掛けが支えに
桜花 私は生後4カ月ごろを目処に復職する予定を立てていたんですが、それは出産や保活がすごくスムーズにいけば、という仮定の話なので「もしかしたらこのまま復職できないかもしれない」という不安を感じていました。
あとはそのタイミングでの復職について「早過ぎる」「生後半年未満の子を保育園に預けるなんて」と言われたことがあって……。自分が「ベスト」だと思ったタイミングでしたし、最終的にはその決断に従ったのですが、ただでさえ不安な時期なので「早いのかな? かわいそうなのかな?」と悩みましたね。
ただ一番大きな不安は「激痛かつハードらしい出産に耐えられるか」という恐怖心だったので、出産後に対する不安は、出産時に対する不安で紛らわせていました(笑)。
コル 私も「保育園に入れないかもしれない」というのはすごく不安でした。あとは「職場に自分の居場所がなくなるかも」という気持ちもありましたね。
唯一無二のキャリアがあるわけでもないし、引き継いだ人が優秀だったら、その人に取って代わられちゃうかもって。子持ちの転職が大変なのは容易に想像できますし……。
そんなときは「でも私は◯◯ができるし、△△の資格もあるし、最終的にはなんとかなるはず……!」と自分に言い聞かせていました。
平 「復職できるのか」という不安は常につきまといますよね。
私は長男を産んだのが20代後半で、産休・育休中に資格を取得したり、勉強会に参加したり「スキルアップ」に時間を使えていたんです。だからか妊娠後期は比較的楽観的に構えていたんですが、30代後半で3人目を産んだあとは、体力が落ちて何もできなくなってしまって……。
甲状腺の機能も低下して3カ月くらい寝込んでしまい、ずっとこのままだったらもう働けないかも、どうしようという不安で頭がいっぱいでした。
桜花 リモートワークや時差出勤など、「体を休める」ための具体的なサポートは本当に助かりました。
あとは、周りに気を使わせてしまって申し訳ないという気持ちを抱えていたので、シンプルに「赤ちゃん楽しみですね!」と声を掛けていただいたのはがすごくうれしかったです。「そうか、私、子どもが生まれるの楽しみなんだった!」と、気持ちが前向きになるんですよね。
平 私も、女性社員同士でランチ会をして、妊娠や子どもについて他愛もない会話をしている時間が心の支えでした。あとは、社内の子育て経験者とチャットツールなどで雑談するのも、すごく参考になって心強かったです。
私もちょっとでも役に立てればなと思って、私より後に産休を取られる方や、育休に入る方に対しては何かしら声を掛けるようにしています。
コル うちの会社はお互い過度に干渉しない雰囲気があって、私が妊娠してからもそれは変わらなかったです。あまり妊娠には触れずいつも通り自然に接してもらえたことに、逆にホッとしました。
でも出勤・退勤時間の融通を効かせてくれたり、業務面ではしっかりサポートしてもらえたので、それは本当に助かりました。
コル あと、やっぱり夫のサポートは最高にありがたかったです。妊娠後期はごはんを作ってくれたり、上の子を遊びに連れて行ってくれたり、家のこともほとんどやってもらっていました。
平 夫に負担が偏ってしまって……という場合は、ミールキットの活用や家事代行サービスへの依頼など、家事の外注もオススメです。普段はちょっと贅沢かな? と思うことでも、体や心がしんどいときは無理せず「妊娠中だから」と割り切ってみてほしいです。