「妻が単身赴任するってどうなの?」世間では(多分)珍しい生活に奮闘し感じたこと

 まんまるもち
札幌の様子

札幌の中心部でも真冬はこの状況。こんな街で単身赴任していました

夫側の単身赴任ではなく、妻側の単身赴任はまだ多くはないように感じます。そんな中、結婚後すぐに、転勤辞令が出たはてなブロガーのまんまるもちさんは、悩んだ末に「単身赴任」の選択をします。転勤を決意するまでのこと、単身赴任先での妊娠生活、出産、そして復職ーー。これまでの「働き方」の体験談、そこから感じたことについて寄稿いただきました。

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新卒の時から営業職として全国展開する会社で働いている、既婚アラサーのまんまるもちと申します。勤務先の違う夫も同じく転勤族。現在は夫と1歳になる子供と都内で暮らしていますが、実は私、新婚からずっと北海道・札幌に単身赴任をしていました。

今回「女性の単身赴任経験についてつづってほしい」という依頼をいただき、りっすんへ寄稿する運びとなりました。あくまで「私の場合」という体験談にはなりますが、これまでの暮らしぶりを振り返ってみたいと思います。

結婚直後の思いがけない転勤辞令

「辞令は突然に…」と、某バラエティ番組のコーナータイトルを言いたくなってしまいますが、まさに突然のことでした。

当時、東京勤務していた私は別の勤務先の夫と入籍したばかり。結婚式の準備や一緒に住むための物件探しなど、ごくごく普通の新婚の楽しい時期を過ごしていました。

が、そんな折に思いがけない転機がやってきました。

私の勤め先は年に1回定期的な人事異動があるのですが、それとは全く違う時期に、会社の組織再編のため大規模な配置換えをすることに。なんとな~く、嫌な予感がしていたのですが、私も異動対象者に選ばれてしまったのです。北海道への転勤の内示が出たのが、入籍して2週間後というタイミング。もう頭が真っ白に。

後に聞いた話では、転勤の件は私が結婚を知らせるより前に決まっていたらしく、新婚夫婦を引き離す意図はなかったそう。だけど、辞令が覆ることもなく。女性とはいえ、男性と同じく転勤のある総合職として働いている以上、辞令の拒否は基本的にできません。もっと早く結婚していれば、もっと人事異動が遅ければ……とタイミングの悪さに嘆きました。

社内でも既婚女性が単身赴任するという前例がなく、全く未知の世界。そもそも数少ない総合職の女性はほとんどが私より若く独身ばかり。拠り所を求めて、ネットでもしょっちゅう「新婚 女性 転勤」などと検索していましたが、やはりポジティブな意見はなく……万事がそんな具合だったので、正直会社を辞めることも頭をよぎりました。

知人のほとんどは転勤には否定的で、退職すべしという意見でした。本当に悩みに悩んだつらい日々でしたが、結局転勤を決意。意外にも、夫や両親が励ましてくれたことが大きかったです。また当時の上司が、単身赴任に際して手厚い待遇を受けられるよう働きかけてくれたのもあって、その思いやりに報いて転勤をすることにしたのです。

だけど単身赴任を決断した一番の理由は、転勤命令がきっかけで、新卒からずっとやってきた仕事を手放すのが悔しかったから。やらずに後悔するより、とりあえず挑戦してみようというように気持ちを切り替えました。

それから新婚の新居探しはストップして、札幌で私の家探し・引っ越し準備を始めました。転勤が決まる前までは想像もしていなかった日々の始まりです。

初めての北海道での暮らし

本格的な冬になる前に、無事に札幌へ転居が完了し、新生活がスタートしました。

夫婦共に北海道には縁もゆかりもなく、初めての北国暮らしに不安な気持ちでいっぱい。私は西日本のだいぶん温暖な地方の出身で、それまで住んだことのある北限が東京で、寒いのが大の苦手でした。

北海道の寒さは桁違い。引っ越してすぐに寒いシーズンに入り、新婚別居という寂しさも加わりどんよりした気分でしばらく過ごしていました。一番の衝撃が、11月の初旬に自宅周辺が数10センチ積雪したこと。早速雪国の洗礼を受けたなあとかなり驚きました。この雪の季節が半年近く続くと思うと、大変な所に来てしまったなと憂鬱になりました。

とはいえ、さすがは都道府県魅力度ランキング10年連続1位の北海道*1

北国ならではの冬の苦労もあるけど、面白い発見もたくさんありました。大自然の恵みといいますか、景色はきれいだし、ご飯もうまい。とにかく話題には尽きないエリアです。

スープカレー

滞在中何度もお店に足を運んだ、マイベスト・スープカレー

転勤族の楽しみといえば、その土地土地のグルメや観光だと思いますが、こういう人気都市に住む機会がもらえたのは恵まれていることなのかもしれません。ただ、正直に言えば、新婚単身赴任という状況でなければもっと楽しめただろうなとは思います。

新婚の単身赴任生活について

週末は夫のいる東京に帰っていることが多く、月2回くらいのペースで帰省していました。会社の東京出張にくっつけて帰ったり、安い航空券を入手するなどしてできるだけ交通費を節約。

その当時札幌の支店は、事務員さん以外は男性社員しかいなかったのですが、支店メンバーの半数ほどが単身赴任者でした。そのため親近感というか、お互い頑張って乗り切ろう! という仲間意識がありました。

また、単身赴任経験の先輩がたくさん居たので、節約方法や便利な交通手段など、アドバイスもたくさん受けられて心強かったです。

金曜日の夕方に仕事を終えて新千歳空港に向かい、羽田行きの飛行機に乗るのが定番のコース。土日を夫と一緒に過ごしたら、また札幌に戻るという具合に。文字通りの週末婚です。あまりにも飛行機に乗る頻度が多くなったので、子供の頃のように飛行機に乗ってワクワクするという感覚が麻痺してしまいました……(笑)。

空港

何度となく訪れた新千歳空港。ラウンジでコンビニおにぎりを食べながら待機するのが定番でした

平日夜はスカイプをつないで、PCの画面越しに夫と喋りながらご飯を食べ、毎日できるだけコミュニケーションを欠かさないようにしていました。これは長年海外赴任をしていた人生の大先輩(女性)からの助言。「離れていても、できるだけ一緒にいる時間をつくるのが大事」と言われていて、離れてみないと気付かないことだったなあと思います。

北海道に限らず男性の単身赴任者は社内でも結構多くて、家族と離れて寂しいというのもあれば、一人が気楽だしずっと単身でいいというのもあって意見はさまざま。まさか私も単身赴任をすることになると思っていなかったので、他の人がどういう思いで家族と離れているのか、人生観、会社の人事制度についていろいろと改めて考えるきっかけになりました。

妊娠・出産で再び転機がやってくる

単身赴任になる前から考えていたのが子供のこと。

単身赴任先の北海道支社もギリギリの人数で仕事を回していましたし、入れ替えにしても、私の後任者もすぐには確保できなさそうだったので「子供でもできない限りは当分東京へは戻れないだろうな…」と感じていました。

もちろん単身赴任解消のために子供が欲しいというわけではなかったのですが、「しばらく夫婦水入らずの生活を楽しむ」などと悠長にしていられる歳でもなかった我々夫婦。しかし転勤してすぐ妊娠・出産ともなると職場の同僚にもバツが悪い……。そんな両方の思いに葛藤しながらも、こっそりと妊活を始めました。

とはいってもサプリを飲んだり運動したりという程度。遠距離別居だとクリニックで不妊治療というのも現実的ではありませんでした。やはり別居なのがネックでそう簡単にはいかず、同年代の知人たち(別居婚ではない)の妊娠・出産報告にブルーな気分になったりもしました。頻繁に東京へ帰省するのは大変でしたが、幸いにも約半年で子供を授かることができました。

母子手帳

住民票を札幌に移していたので、母子手帳も札幌で交付されました

妊娠を無邪気に喜んでいたのも束の間、次の懸念事項が職場への報告。

直属の上司へはすぐに知らせていたのですが、普段仕事を一緒にしていた同僚へ切り出すタイミングが難しくて足踏みしていました。営業職は私以外男性だし、過去も今まで私のようなケースがなかったので、どういった反応をされるんだろうかと。ネガティブな受け止め方しかされないのではないかと、しばらく悶々としていました。

ようやく決心して報告できたのが安定期に入った頃。周囲の反応は意外にも(?)祝福ムードで、私の体調にも気遣ってくれるようになりました。内心は複雑な思いだったのかもしれませんが、以降はとても仕事しやすくなりました。

私の場合は、幸いにも妊娠期間中通して健康面のトラブルがほとんどなかったというのもありますが、単身で妊婦生活を送ること自体は問題なく過ごせました。むしろ一人なので家事をきちんとしなければならないというプレッシャーがなく気楽。掃除も洗濯も一人分だとすぐ終わりますし、疲れたら家事は放って寝てました。食事も気分が乗らない時はスーパーのお惣菜や外食に頼って。仕事に関しては、上司や同僚が気を使ってくれて負担の少ない業務を回してもらいました。

どちらかというと単身という状況よりも、妊娠期間中がちょうど北海道の真冬にあたっていたのがつらかったです。雪が踏み固められた道路はツルツルで、とてもスリリング……。歩くのにかなり神経を使いました。それでも3回ほどは転びましたが。あとは普段が一人暮らしということで、風邪・インフルエンザ予防には特に気を付けて。なんとか気合いで乗り切り、妊娠中は体調を崩さずに過ごせました。

そして一番の気がかりは、子供を授かった後の働き方。さすがに子連れで単身赴任継続は無理だろうということで、単身赴任解消の方向で会社とも話をしていました。しかしその時点では会社も未確定なことだらけでハッキリとポジションも決まらず。結局、東京に戻れるかどうか未定のまま異動の辞令もなく、めいっぱい北海道で働いて、産休と同時に北海道を引き上げました。

復職と初めての同居共働き生活

産休と同時に東京に戻り、結婚2年目にして初めての夫婦同居生活となりました。それも里帰り出産で帰省するまでのわずか2週間だけ(笑)。

ようやく迎えることができた新婚気分をじっくり満喫することもなく、あっという間に臨月→里帰り出産となり、夫は東京で一人留守番。怒涛のごとく過ぎ去った日々でした。

無事に出産を終え、息つく暇もなく育児生活の始まり。初めての育児に悪戦苦闘しながらも、夫と協力してやってきました。みんなが言うように、生まれた後の方が大変……! 単身赴任の妊婦生活はそれほど大変ではなく、新生児の世話の方がはるかにハードと感じました。もし単身赴任が継続していて一人で育児していたら…想像が及びません。実際にシングルで子育てされている方に頭の下がる思いです。

産休と育休合わせて、1年近く休職していたのですが、実は育休終了近くまで復職後の役職が未定だったので「もしまた北海道勤務を命じられたらどうしよう」と不安な気持ちを抱えながら過ごしていました。東京で復帰できると決まったのが育休終了の1カ月前。ようやくこれで単身赴任が終わったなあと安堵しました。無事に自宅近くの保育園入園も決まって予定通り4月から復職し、現在に至っています。

お子さん

夫婦そろって、子供の成長を近くで見守れることに感謝

以前の生活と大きく変わったこととして、時間の使い方があるなと感じます。独身の頃はなんとなくお付き合いでダラダラ残業することも多かったですが、今は極力定時であがるために効率よく仕事をこなすようになったので生活にメリハリができました。夫も同様に頑張ってくれています。それでも公私の両立は大変で毎日バタバタ。次の課題は、もっと家事を効率化して自分の時間を確保することです。

これからの働き方

現在は会社側の配慮もあって、フルタイムながら出張や残業が少ないポジションで仕事をしています。だけど総合職でいる以上は、またいつか転勤で夫か私のどちらかが単身赴任になる可能性があります。その時に私たちはどんな決断を下すのか……。今は想像もつかないけど、もっとどっしり構えられているような気がします。単身赴任の経験を経て「なんとかなるさ」と度胸が据わったかもしれません。

妊娠・出産を機に、家庭を優先して負荷の少ない補佐的な働き方にシフトするというのも考えられましたが、私の場合は育休日数がたつにつれ、やはり仕事でもこれまでのような充実感を得たい! という思いに至りました。とはいっても、バリバリ働きまくってどんどん昇進したい、というよりかは、今も地方で頑張っている後輩の女性営業の子たちに、ある程度のロールモデル的な働き方を示したいと思っています。

それには個人の努力だけではハードルも高いのも事実で、組織の変革も必要。会社の上層部も想定していなかった(?)、私のような新婚女性の単身赴任をきっかけに、まだまだこれからではあるけど、社内でも転勤のあり方を見直そうという機運が高まってきたのもうれしいことです。

家族同居の生活に戻れた今だからこそ言えることなんですが、「新婚女性が?」と周囲に驚かれながらも単身赴任してみたことは、自分の経験値も上がったし、会社の人事制度にも一石投じられたと思うので、個人的には意味のあるものだったんじゃないかと思います。

転勤という制度が一概に悪いものとは思わないけど、みんながみんな「辞令一つでどこへでも」という時代ではなくなってきていて、今はちょうどライフスタイルや価値観の変化の過渡期。女性も遠方へ転勤するし、男性だって育休を取る。ちょっと前までは絶対受け入れられなかったであろう物事も少しずつ認められるようになってきているけど、まだまだ社会のシステムが追い付いていないという感じ。国や会社にも働き方改革の一環としてこのあたりを整備してほしいところ。今の転勤制度って、専業主婦(夫)の支えが前提の仕組みだから、女性も同様に転勤するようになると、どこかで不都合が出てくる。それが今の状況だと思います。

男女関係なくいろいろな働き方が認められるような雰囲気ができてくるといいなと思います。我が家の場合は、もうしばらくは夫婦ともに転勤がなく腰を据えて仕事できることを願って……。

著者:まんまるもち

まんまるもち

旅行とグルメが好きな営業系のアラサー会社員。入籍直後の転勤により北海道で単身赴任生活をしていました。自分の経験をきっかけに、女性の働き方について日々思うことをブログに綴っています。出産・育休を経て別居解消し、現在は都内で夫と子供と3人暮らし。
Blog:元単身赴任妻の日記

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編集/はてな編集部

*1:ブランド総合研究所より