休日や仕事が終わってから寝るまでのちょっとした空き時間に、自宅で少しずつできる趣味を持ってみませんか? りっすん編集部が注目したのは「羊毛フェルト」。手芸の一種で、羊毛を特殊な針でつつきながら好きな形の作品ができるのだそう。
今回は、書籍『クリアファイルの切り抜き型で作る羊毛フェルトの動物ブローチ』(講談社)、『羊毛フェルトの動物ブローチ』(文化出版局)でさまざまな動物モチーフの作品を発表している羊毛フェルト作家・のそ子さんに、羊毛フェルトでできる「ねこブローチ」の作り方を教えてもらいました。
はじめまして、のそ子です。羊毛フェルト作家として主に動物モチーフの作品を作ったり、頭に被ったり(プロフィール画像を参照)、地味ながらも地道に活動しています。
元々は2010年ごろ「何か趣味を持ちたい」と思い立ったときにたまたま目にした羊毛フェルト作品に惹かれたのがきっかけ。そのままの勢いで材料と道具を注文し、数日後からはもう始めていました。作品が完成したときのうれしさや、難しいことは考えずに作れることから、今に至るまで夢中になっています。
今回はぜひ、羊毛フェルトの楽しさに触れていただき、新しい趣味や余暇の過ごし方の一つになるとうれしいなあと思っています。
羊毛フェルトって?
羊毛フェルトとはその名の通り、羊毛を専用針(フェルティングニードルと言います)で刺し、つつくことで羊毛同士を絡ませ、キューッと収縮させて固める(=フェルト化)手芸です。
この「フェルト化」の仕組みを利用して、自由に好きな形を作ることができます。特に羊毛の風合いとの相性のよさから、動物をモチーフにして作る方が多いように思います。
また、羊毛を刺し固めて形を作っていくほか、羊毛をそのまま植えるように刺し付けて(植毛と呼ばれています)、ファーのようなふわふわの風合いを楽しむこともできます。他にも水を使い摩擦させて作る手法もありますが、私はこのニードルで刺していくやり方で活動しています。
羊毛フェルトのよいところは、そのとっつきやすさだと思います。
私自身、手先はとても不器用で、昔から縫い物・編み物・手芸・工作全般がまっっったくできない半生。子どもの入園入学用品、雑巾、袋物なども、縫い方が分からないので全てアウトソーシングしました。
ですが、羊毛フェルトは「針で毛を刺す」のみで、きちんと覚えなくてはいけない技法はなく、感覚的でOK。道具を手にしたその日から、自由に、やりたいように始めることができるのです。よく分からないけれど、ちくちく刺し続けていたら何かができる、という感じ。それが羊毛フェルトです。また、羊毛を刺す感覚がサクサクとしていて気持ちいいのも、個人的に羊毛フェルトのいいところだと思っています。
必要な道具って?
羊毛フェルトをはじめるときに必要なものは「羊毛」と「フェルティングニードル」です。基本この2つがあればOK。
どちらも大きめの手芸屋さんにあることが多いですが、確実ではないので通販を利用すると便利。ニードルは慣れないうちは折れやすいので数本は用意しておきたいところ。
あと必要な作業環境として、ニードルは細く尖っていて折れやすいため、机面を突いてしまって折れたり傷つけたりしないよう、常に「マットの上で作業すること」を約束してください。
マットは専用品も売っていますがそこそこお高いので最初のうちは100円ショップなどで売っているメラミンスポンジでOKです。終わったら鍋でも磨いてください、やだムダがない…とてもすばらしい手芸ですよね……。
作ってみよう!
さて、ここからは実際に一つ作品制作の過程を紹介します。
今回は「ねこブローチ」を作ってみたいと思います。所要時間は3時間ほどかかりますが、作業自体はとてもシンプル。思った形にならなかったりそろわなかったりしてもそれが逆に「味」として、いい「顔」になりますので安心してください。
なんなら見本通りにしない方が個性的かつ、かわいらしい作品になるのではないかと思います。「ねこ」にならなかった場合は似ている動物の名前に、どうにもならなかったら「いきもの」とかに作品名を変えてください。それでいいのです。羊毛フェルトは自由なのです。
材料と道具(できあがりのサイズが直径約7cmの場合)
材料
- 羊毛(好きな色、あれば黒っぽい色)……適量
- アニマルアイ(今回は6mmサイズを使用)……2個
- アニマルアイはぬいぐるみなどを作るときに使う手芸パーツです。動物などの目玉をつけたいときに使います。お好きなビーズやボタンで代用可
- 布フェルト(羊毛に似た色のもの)……7×5cmを3枚
- ブローチピン……1個
道具
- フェルティングニードル
- マット用スポンジ(メラミンスポンジなどで代用可)
- はさみ
- 接着剤、ホットボンドなど
作り方
(※画像をクリックすると拡大されます)
土台〜顔のパーツ作り
1. マットの上に布フェルト1枚を置き、くるくると巻いて丸めた羊毛のかたまりをニードルで布フェルトに刺しつけ、約縦3cm×横4cmの楕円形土台を作る。土台はまんべんなく刺しつけて全体を均一な固さにし、足りない部分は毛を付け足して5mmくらいの厚みになるようにする。
★POINT★
ニードルを刺す深さは布フェルトまで突き通すように、深く刺して布フェルトと羊毛をしっかり接着してください。
2. 羊毛を楕円形になるよう巻いて丸め、まんべんなく刺して固めたものを2つ作る。
3. (2)で作ったパーツを(1)の土台に刺しつけ接着し、隙間に丸めた羊毛を刺しつけ、口と鼻周りを作る。(※見やすくするため土台の色を変えて説明)
4. 指先で丸めた黒めの毛を刺しつけ、鼻を作る。黒い毛がない場合は丸めた毛を刺しつけたあとでペンなどで着色してもOK。
5. 土台にはさみなどで切り込みを入れ穴をあけ、接着剤を流しこみ目用のパーツを挿し、装着させる。ビーズやボタンの場合は縫い付ける。
6. 耳の形に切り抜いた同色の布フェルトを2枚作り(羊毛で作ってもOK)、耳の根本を少し折り、折った部分を土台にしっかりニードルで刺しつけて接着させる。
ふわふわ・もこもこの顔にするための「植毛」作業
7. 羊毛を約3cmの長さに切断する。一度に植える毛の束量は写真右くらい(ひとつまみ程度)がちょうどよい。
8. 毛束の中央部分(赤い線)を布フェルトに刺しつけ、「植毛」をしていく。刺しつけが甘いと抜け毛の原因になるのでしっかり刺すのがポイント。毛束が動いたりズレないよう指で押さえると刺しやすいです。(※見やすくするために毛束の色を変えて説明)
9. しっかり刺したら毛束を折りたたみ、根元(赤い線)をさらに刺しつけて補強する。
10. (8)(9)の方法で毛束を一つずつ刺し続けて、ライオンのたてがみのように1周分植毛する。
11. 1周植え終わったら、3mmほど内側にまた1周(赤い線)、刺しつけて植毛していく。
12. 2周目が終わったら3周目……と、どんどん内側に植えていく。(※赤い線は植え付けるラインの目安)
13. 全部植毛をした様子。もし黒い羊毛があれば、こより状にして目の周りに刺しつけてアイラインをつけると◎。
ブローチ加工をして完成!
14. 布フェルト1枚にブローチピンを装着し(縫い付けてもOK)、本体裏側(赤丸範囲)に接着剤やホットボンドを塗りつけ、貼り合わせる。接着した布フェルトを表から見えないように切り抜き、植毛をお好みでカット、トリミングして完成。
毛の色はお好みでなんでもOK。
ありえない色でもかわいいですし、
途中で羊毛の色を切り替えたり混ぜたりしても面白いと思います。
制作は一度に、一気に済まそうとしなくても大丈夫です。空いた時間に少しずつ進めるのもいいですね。制作途中の本体や切断した毛束は、それぞれチャック付ポリ袋などに入れておけば無くしたり飛び散ったりする心配もありません。私は道具箱のようなケースに制作途中の作品、使用している羊毛、パーツをそれぞれパッキングしたものをまとめて、時間ができたときに広げて作業しています。少しずつ毛を植えて成長? させていく作業をゆっくり楽しんでもらえたらと思います。
もっと詳しい作り方や他の動物モチーフなどで作ってみたい方は、書籍『クリアファイルの切り抜き型で作る羊毛フェルトの動物ブローチ』(講談社)、『羊毛フェルトの動物ブローチ』(文化出版局)もぜひ参考にしていただければと思います。
今回は目安として伝わりやすいよう、手順、サイズなど指定しましたが本来は自由です。材料やサイズを増やしても減らしても、大きくしても小さくしても、なんでもかまいません。
思いつくままのアイデアを羊毛に刺しつけて、楽しんでいただけたらと思います。
著者:のそ子
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編集/はてな編集部
※2019年5月31日21:40ごろ、記事の一部を修正しました。ご指摘ありがとうございました。