
AIはアプリまで作ってくれるしなんでもスマホを使う日々です。そんな今の時代にレンタル商品としてクイズの早押しボタンというのを見かけたんです。

そういえばクイズブームとも聞くけれど、意外とあの機械って置き換わらないんでしょうか?

レンタル会社は「四国電飾工芸」という高知の会社です。HPを見ると自作の機械の雰囲気があるし説明書がオリジナルで長大。一体これはなんなのか。
聞いてみたらなぜかよさこいの隆盛を追うというすごい展開になりました。

四国電飾工芸の岡弘明さん
(目次)
クイズ早押しボタンを作ってる会社って?
岡さんの事務所付近のGoogleマップ。こういうところから早押しボタンが送られてくる
──現地に行けなくてオンラインですみません。そちらの四国電飾工芸さんは会社なんですか?
Googleマップで見てもらったらわかるんですけど、220坪くらいある場所でね。名前から会社と思われがちですが、実は個人でやっています。ものづくりが好きでね。必要なときは仲間に手伝ってもらうけど、細かいところまでこだわって柔軟に丁寧に対応しています。
──クイズの早押しボタンをレンタルされてますよね?
今のイベントレンタルの三本柱は早押しボタンと大声測定器とアンケートマシンですね。

四国電飾工芸の三本柱。どれも一度は見たことのある機械だ
『笑っていいとも』でお客さんがアンケートのボタンを押すコーナーがあったでしょ。同じような機械を作ってほしいと頼まれて、意外とレンタルの需要があったのでホームページを作って現在に至ってます 。そのあと早押しクイズの機械とか、だんだん増えていって。
でも高知でこんなことやってても、高知で借りる人は少ないんですよ。借りる人の90%は東京。
──たしかにこういう機械ってイベントで必要なことが多いから、自分で買うよりもレンタル需要があるんでしょうね。早押しボタンが専用の機器である必要ってなんですかね?
展示会に出たりして気づいたんだけど、お客さんは素晴らしい機材を探してるんじゃなかった。とにかく「本番で動きませんでした」が一番怖いんだよね。イベントを担当してる代理店の担当の人だったら心臓が止まるよね(笑)。
うちと同じような機械で無線のものがあるけど、無線はトラブルが多いんです。機材レンタルだけだと現場の対応はできないでしょ。来週も、とある会社さんのイベントにレンタルするんだけど、クイズの賞金が100万円とかなんですよ。「ピンポン」って鳴って札が二つ起き上がったりしたら、もうイベントが成立しないよね。
イベント仕事とはとにかく確実性

四国電飾工芸の早押しボタンは最大20人まで対応
──とにかく正確に動いてくれさえすればってところですかね。
とはいえ、大声の測定器にしても裁判所に持っていけるような正確な数字は出ないし、あくまでもゲームで使うもの。 イベント会場で「口から何センチで」といちいち測ってたら成立しないしね。
──正確さより、確実にゲーム自体が成立するかという点ですかね。安定性というか。
とはいえ絶対なんてないから、僕がオペレーターで行くときは、一度に5人が参加する早押し大会でもボタンを15個持っていくの。
──3倍! 多いですね。
予備の予備の予備を考えて、いかに100%に近づけるかがプロだから。それは説明書の書き方一つにしてもそう。物と説明書の両方で100%になるように近づける。この早押し帽子の在庫は何個ぐらいあると思いますか?
──20個くらいですか?
全部で60個あるんですよ。

──多いですね(笑)! これ、そもそもどうやって作ってるんですか?
誰かに習ったわけではなくて、全部独自にやってるんです。高知県のとある団体に『笑っていいとも』のアンケートの機械みたいなのを頼まれたのが最初。「お客さんの手元のボタンと本体は本当に繋がってるのかな?」「どうやったらできるかなあ?」って考えてね。
僕ね、あれは繋がってない、つまりカウントされてないと思うんだよ。
──ええっ。バレたらえらいことになるから繋がってるとは思いますけども。でも生放送だと「放送事故よりはウソついてでも無事に終わってくれ…」となるのもわかりますが。
ところでアンケートマシンは早押しみたいなシビアさがないから、専用の機械がなくてもいけそうですけど。

すべて有線で50人をつなぐアンケートのマシンもレンタルしている
アンケートの機械も今は無線のタイプとかアプリがあるんですよ。でもここでも確実性が求められるのと、あとは匿名性も大事。
無線はインターネットもそうだけど回答者それぞれにIDが割り当てられるから、匿名性があるようでないのよね。イベントのあとでアンケートの結果見られて「君、会社に不満あるそうだな」なんて言われたらね。その点、アナログの僕のボタンだったら誰の回答か絶対わからないんです。
人が集まったときの楽しさは置き換えられない
──最近、ちょっとしたものは大体スマホアプリに置き換わっていきますよね。
アンケートマシンなんかは「iPad(など)でできるものなのに、なんでこんなレンタル代が高いんですか?」ってよく言われるけど、イベントでiPadのタッチパネルをガタガタ叩いても楽しくないからね。
大声を測る機械はAmazonでも買えるんだけど、うちの機械みたいに数字がだんだん上がっていく演出なんて安い機械にはないですから。この数字をどうやってみんなに面白おかしく伝えられるか。どんなにデジタルになってiPadでどうのこうのってなっても、みんなが集まって必死になってボタン押すのが楽しいんですよ。

「残り日数」が表示される機械「残日系」も需要のあるレンタル品だそう
──たしかに。この残日計も、このでっかい数字の表示を見ると盛り上がりますね。演出が込められてる。
早押しボタンでも、テレビでは不正解だった瞬間にボタンをバタバタバタバタ連打してるでしょ。 あの切り替わりがぼんやりしたら成立しないんだよね。「ブー」の瞬間に札がピッて降りてお手つきになって、スタートの「チキチキ」へ戻る。それが全部この機械の中に入ってる。それがないとテレビみたいなことはできないの。
──だから説明書があんな何十ページになるんですね。イベント用品ならではの工夫ですね。
コロナ禍のときにリモートでできるアプリを作れませんか?って話もあったけどね。やっぱりリアルの空間で、大声を出したり、司会者が面白おかしく盛り上げてくれたりするから楽しい。時代が変わっていっても、早押しや大声といったイベントはなくならないと僕は思ってるの。

説明書より。独自の機械に独自の機能が入っている。項目が33でまだ続くのがすごい。独自の機械に100ページ近い説明書である
電飾屋さんがテレビや舞台に欠かせない
──こういったクイズの機械って普通はどこが作ってるんですかね?
電飾屋さんと呼ばれる会社も早押し判定機というのを作ってるんだけど。一般への貸し出しというのはほぼやってなくてテレビ局のためのものだね。
──まず電飾屋さんという専門業者がいるんですね。知らなかったです。
紅白歌合戦とか昔はステージの電飾がすごかったでしょ。ああいったものをやるのが電飾屋さん。『ミュージックステーション』は電飾の番組みたいなもんですよ。ステージを作るには音響があって照明があって電飾があるんだけど、今はステージの一部にモニターがあって映像が当たり前のように流れるから、映像と電飾というのが一つになってるんだよね。
YOASOBIの『アイドル』のYouTube(ライブ映像)なんか見たらもう電飾LEDパネルショーみたいになってるよ。昔は照明さんの下に電飾とか映像屋さんがいたわけだけど、むしろ今は立場が逆転してるくらいじゃないかな。
今みたいにLEDパネル全盛になる以前は、電飾に使われてるのは電球だったわけで、はんだごてを持ってステージの裏を走ってたんだろうけど。電飾屋さんは技術屋さんみたいな意味もあるのね。

──そういった電飾屋さんがバラエティ番組の機械を作ってると。岡さんは電飾の世界出身ですか?
電飾屋で勉強したことはないけど、そういう現場へ遊びに行く機会はあったの。僕はバブルの頃、東京の照明の会社にいたんですよ。でもバブルが崩壊して仕事もなくなったから、高知へ帰ってきてこんなことを始めた。
あとは工業高校に行ってたのもあるね。子供の頃はものづくりが好きで。『スパイ大作戦』に夢中になったり。テレビを壊してラジオ組み立てたりっていうのをやってきた世代なんですよ。
──技術的な下地はあったんですね。照明に進んだきっかけは?
高校を出た後に音楽をやっててね。オリジナル曲のフォークロックバンドだったけど、歌のセンスはダメだった。『いかすばんど天国』(※バンドブームを作った80年代のTV番組。通称『イカ天』)とかはまだ先の先。
──バンドマンの過去が!
3〜4バンド集まって500人規模のホールで歌ってたのがパイが小さくなっていって、ライブハウスとか小さな喫茶店でやるようになったの。それが高知だと1980年くらい。
でも喫茶店には照明設備がないから、自分で作ってたのね。ビールの缶を拾ってきて電球はめて。手作りの音響をやる人はよくいるけど、アマチュアで電飾をやってるバンドなんてないから、やがて1500人ぐらい集めるバンドの人たちと出会って照明を頼まれたんです。そうやってだんだん裏方家業に入っていった。その後にいくつか挟んで東京の照明会社に。
でもきっかけはよさこい祭りというのがあるね。人生の転換点にはよさこい祭りがある。
──え、そうなんですか。高知県のよさこいまつり?







































