20、30代は「うまくいかない日々」に悩んだ。でも小さな経験の積み上げが“今”につながった


「私の働き方、これでいいのかな?」「何もかもがうまくいかない……」といったモヤモヤを抱えていませんか。50歳を迎える今もIT業界の第一線で働く白川みちるさんも、20〜30代は同じような悩みを抱いていたといいます。

一見、華やかに見える白川さんのキャリアですが、新卒で入社した会社を1年で退職したり、仕事に打ち込み過ぎて燃え尽き症候群になってしまったりと予期せぬ変化に次々に見舞われ、アップダウンの激しい“思い通りにいかない日々”に悩むことも多かったそう。

そんな中で続けたのが「目の前のことを実直に続ける」こと。小さな経験の積み上げが、現在につながっていると言います。「明確なキャリアプランを持てなくても、うまくいかない日々が続いても、目の前の仕事を続けていけば何かにつながるのかもしれない」というヒントを与えてくれる、白川さんの歩みを振り返ります。


※記事中の情報(所属・肩書きなど)は2023年5月時点のものです

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はじめまして。IT企業でエンジニアリングマネージャーをしている白川みちるです。エンジニアとしてシステム設計やプログラムを書いたり、新規事業のプロジェクトをマネジメントしたり……といった経験を経て今に至ります。

またサイドワークとして、Googleが開発したプログラミング言語Goを日本国内で盛り上げる「一般社団法人Gophers Japan」の監事や、Go言語を楽しむ女性やジェンダーマイノリティーの方々が集う「Women Who Go Tokyo」というコミュニティの主催もしています。

今でこそWeb・ITに関わるさまざまな活動をしていますが、この業界に入ったのは20代も後半。それまでは何がやりたいかがわからず、行き当たりばったりで迷いの多い日々を過ごしてきました。

現在も思いどおりにいかないことはたくさんありますが、システム開発を軸にさまざまな活動に携わることができていて、以前よりも「仕事・人生を楽しんでいる!」と自負しています。今回は、迷いがちだった私が、なぜそう思えるようになったのかを振り返ってみたいと思います。

氷河期に就職した会社を1年で退職。「やりたいこと」がわからず迷い続けた20代

わたしが就職活動をしていたのは「就職氷河期」と呼ばれた時代。たくさんの企業にエントリーのための資料請求をしても、女性だったこともあり1〜2割ほどしか資料をもらうことができず、非常に苦労をした記憶があります。

とにかく就職先を勝ち取りたく、手当り次第に次々エントリーし、最初に内定をいただいた金融系企業に営業職として入社。社会人としての研修や試験などに追われつつ、先輩社員にサポートしてもらいながら営業先へ足を運ぶ日々を送ります。

しかし「とにかく就職をしなければ」と選んだ会社・業種だったため、自分自身が何がやりたくて、何ができて、それをどう社会に還元できるのか……などといったことは一切考えられないまま。「このまま働き続けていいのだろうか……」と不安を抱えながら月日が過ぎ、結局は1年ほどで退職をしてしまいました。

当時は「第二新卒」という言葉や概念もなく、今よりも「入社した会社をすぐに辞めることは許されない」という社会の空気が非常に強くありました。こんなに早く新卒入社した会社を辞める人は周囲におらず「こらえ性のないダメな人」という烙印を押されることに。両親には大層悲しまれましたし、自身も「ああ、人生に失敗してしまったな」という落胆を味わいました。

その後は漠然と「なにかものを作るような仕事をしたいかもしれない」と思い、未経験でソフトウェアを開発する会社に就職したり、その後はこれまた未経験で雑誌編集の仕事に携わったり、数年ごとのスパンで職を転々としました。

「そのときを生きている!」といえば勢いがあるように聞こえますが、何をやっても続かない、これからのキャリアも考えていない、いきあたりばったりの人生だったのです。


「やりたい仕事」を頑張り過ぎたら、今度はバーンアウト

今の仕事につながるきっかけが芽生えたのは、30歳が見えてきた頃でした。当時オンラインゲームやインターネットサーフィンを楽しんでおり「掲示板やカウンターを自分でも作ってみたい」というモチベーションが生まれたのです。

プライベートでWebプログラミングを勉強し始めた頃、ちょうどWebやモバイル開発の黎明期が訪れました。システム開発の仕事の需要が増え、わたしも運良くWebやモバイルシステムの受託開発をする会社に入社できました。

30代といえば、学生時代の同級生には責任のある立場を任されている人が増えてくる頃。経験も年収も彼・彼女たちに遠く及ばず、いつまでも“修行中”のような自分を恥ずかしく感じ「せっかくやりたいことが仕事がつながったんだし、30代はシステム開発に軸を絞りしっかりと『継続』しよう」と決めました。

「とにかく仕事を継続する」をモットーに掲げてからは、積極的に知識のアップデートをし続けました。一方で当時勤めていた会社はとてもハードで、昼夜問わず働き、何日も帰宅せず会社に“暮らしている”ような状態。当時の自分の息抜きは「お酒」で、毎日仲間たちと浴びるように飲酒しながら、がむしゃらな、でも充実感もある毎日を送っていました。

そんな生活を4〜5年ほど続けた頃、大きなプロジェクトが打ち上がった途端、急に燃えつき (バーンアウト) てしまいました。いわゆる「燃え尽き症候群」と診断され、身体を動かすことができなくなり、休職を余儀なくされました。このとき、「継続」はただがむしゃらにやり続ければいいのではなく、やり過ぎてはならない「バランス」があることを身を以て知ったのです。

「私は、なぜ働くのだろう」を見つめ直した余白期間

「燃え尽き症候群」になるほど無理して働き続けてしまった背景には、「今度こそはしっかり継続したい」という気持ちはもちろん、“諦め”もありました。最初の就職からつまづき続け、貯金も少なく、生きるためにとにかくがむしゃらにやるしかない。「そういう人生しか自分には歩めないのだ」と思っていたのです。

バーンアウトをきっかけに、わたしははじめて「働き方を変えたい」と思いました。そうして、無理なく仕事を継続していく方法を考えることになります。まずは昼夜逆転もしくは数日に一度の睡眠、といった生活を改善すべく、決まった時間に寝起きし、毎日ウォーキングをし、お酒に逃げない生活を始めました。

さらに「やり続けること」だけでなく、「なぜやるのか」にも重きを置くようになりました。それまでは忙しさのあまり「来た仕事は全部やるしかない」と考え、思考を止めて目の前の仕事をひたすら打ち返す状態。それが、一度立ち止まったことで「どうしてサービスを作るんだっけ?」「なぜユーザーに使ってほしいんだっけ?」と考えることが増えました。

「サービスを作りたい」に加えて、「誰のために」「何を解決したいのか」という要素が仕事のモチベーションに加わったのです。

うまくいかず、迷い続けた日々の「積み重ね」が40代で実を結び始めた

一度立ち止まって働く理由を見つめ直したことで「せっかくシステム開発の仕事をしているのだから、作っているものにもっと面白さや意義を感じたい」という気持ちが強くなり、休職から復帰して数年ほど働いたあとで受託の会社をやめて自社開発の会社に転職。受託の会社でひたすらプログラミングしたことで磨かれた技術力は、転職後のプロジェクトやチームマネジメントにおいてもわたしを助けてくれました。

また、休職後に時間の使い方を見直し、日々に余白を持てるようになったことで、勉強会などを通じて幅広いエンジニアとの交流が増えました。エンジニア同士のつながりは、継続して技術を学び続けることを支えてくれましたし、そこで築いた人脈がコミュニティ「Women Who Go Tokyo」の運営にもつながりました。

そうして、30代から始めた「継続」が、紆余曲折を経て、40代になり徐々に実を結び始めたのです。

もちろん、40代も全てが順調に進んだわけではありません。親の介護という大きな課題にぶつかり、自分の時間をほぼ全て仕事・介護に費やした時期もあります。それでも、投げやりにならずにコツコツと仕事を続けてこられたのは、自分なりに「積み重ねてきた」という自負があったからのように思います。

かつてのように「行き当たりばったり」で進む道を決めるのではなく、「社会への貢献」と「自身の成長」を考慮した目標を立てる。そして、その目標に向かって「何をするか」「どう進むか」を考えられるようになったのは、これまでの「うまくいかず、悩み続けた日々」があったからこそだと思います。

少しずつでも、目の前のことを実直に続けることで拓ける道がある

わたしは今年50歳を迎えます。

かつてのわたしと同じように、今、思いどおりにいかないジレンマを抱えている20〜30代は少なくないでしょう。そんなときは「まずは目の前にあるものを、無理のない方法で継続する」を一番に考えてもいいのかなと、今振り返って思います。

「結果論」や「生存バイアス」なんて言われてしまうかもしれませんが、でもやっぱり、継続することで目標が見えてきたり、積み重ねが次のキャリアに生きることはあると思います。

わたしの場合は「システム開発」が軸にありましたが、もちろん積み重ねるものや目標のターゲットは仕事だけに限らず、生活の中で大事にしていることを続けていくことが自信につながるかもしれません。また、親や子どもなど、自分以外を第一に考えなければならず「継続」がゆらいでしまうこともあるでしょう。ただ、どんなことであれ、少しずつでも目の前のことを実直に続けることで拓ける道があると思うのです。

どんな人にも共通で言えることは、何をする・気づくにも遅過ぎるということはない、ということです。この先の人生の中で、今の自分が一番「若い」状態なのです。

編集:はてな編集部

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著者:白川みちる

白川みちるさんプロフィール画像

システム開発、組織やプロジェクトのマネジメント経験を経て、バックエンドエンジニアのエンジニアリングマネジャーとして働いています。プライベートでは「Women Who Go Tokyo」や「Go Conference」といった Go 言語コミュニティの運営や、大学院生 (2021年10月から学生をやっています) を楽しんでいます。長い人生はジェットコースターのようだけど、自分にとっての “豊かさ” を考えて追求することが好きです。

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