一人っ子はかわいそう? 私たち夫婦が迷いながらも、子供は一人と決めた理由

文・写真 大西まお

家族三人の写真

第一子を妊娠・出産した人も、これから子供を持ちたいと考えている人も「子供は何人欲しいか」について悩む機会は、たびたびあることでしょう。二人以上欲しいと思う人、欲しいけれど育てられるか心配だという人、まだ欲しいかどうかも分からない人、その思いは実にさまざまです。

特に、現在一人っ子を育てている人は、周囲から「二人目は?」「一人っ子はかわいそう」と言われてとまどったり、「きょうだいがいた方がいいのかな?」と悩んだ経験があるかもしれません。

今回、実際にそんなふうに悩んだ経験をつづってくださるのは、夫と小学三年生の子供と三人で暮らす編集者の大西まおさん。夫婦で「子供は最初から一人と決めていた」というお話や、子供の成長につれ再び気持ちが揺れたときの思いなどについて語っていただきました。

***

ある日、夕方まで公園で遊んでいた子供を迎えにいくと、一緒にいたきょうだいの多い同級生が大きな声でこう言った。

「いいなあ! 一人っ子は!!!」

私が、いつも必ずうちの子を迎えにいくからだ。うちの子は、いま小学三年生。もう一人で遊びにいけるけれど、少しでも暗くなるとまだ心配なので迎えにいく。多忙な夫も、たまに早く帰れる日はやはり迎えにいく。

友達に一人っ子であることをうらやましがられたうちの子は、まんざらでもないといった顔をしながらも「そうかなあ」と言い、私はその子に「うちに来たらいいじゃない」と言い、それを二人は「おれたちが入れ替わるんじゃないと、ただの二人っ子じゃん」と仲良く笑った。

最初から子供は一人と決めていた

私は、子供が大好きだけど、最初から産み育てるのは一人と決めていた。

その最大の理由は、十代後半から長く付き合ってきた、今では子供を驚くほど溺愛している夫が、昔はまったく子供好きではなかったから。むしろ、彼は子供が大の苦手だった。それに自分の人生を、写真の仕事や趣味に多く費やしたいと話していたからだ。私も編集の仕事をとても大事に思っていたし、人生の目的はそれぞれなので尊重したいと思った。

パートナーがいる場合、子供を産み育てるかどうか、子供を何人にするか(授かるかどうかは分からないので、希望にすぎないわけだけど)は、二人ともの人生を大きく左右することだから、互いの価値観を擦り合わせて決めるものだと思う。夫は私の「どうしても子供がほしい」という気持ちを汲(く)んで、子供を産み育てることに同意してくれた。「一人なら大丈夫だと思う」と。私はそれで十分にうれしかった。そもそも私の場合は、子供を産み育てることを前提として彼とパートナーになったわけではなく、パートナーの彼と日々を過ごしていくなかで子供も産み育てられたらいいなというような気持ちだったのだ。

この気持ちは、産後も当分は変わらなかった。

第一、初めての子育てに追われて疲れ果てていた私は、次の子供のことなんて、まったく考えられなかった。産後すぐ、子供が三人いる仕事相手の男性に「次の子はいつ?」と聞かれたときには、ちょっとびっくりして「いやいや、子供は一人だけのつもり。それにそうじゃなくても、本当に妊娠って身体がしんどくて大変だし、出産はとてつもなく痛いし、その後は授乳や世話に追われて眠れないし疲れているし、産んだばかりで次なんて考えられないよ」と答えたのを、今もよく覚えている。

二人目が欲しいかもしれない

親子の手とたんぽぽの写真

ところが、子供が3〜4歳になった頃、私は「二人目が欲しいかもしれない」と気持ちが揺らいだ。まさかと思ったけど、夫も同様だった。子供と意思疎通ができるようになって少しラクになるタイミングだったし、何より子供があまりにもかわいくてかわいくてかわいいから。それに、子供がきょうだいを欲しがったから。でもその時点で、私の年齢は38歳。年齢と妊娠の確率を考えると悩んでいる時間はあまりなかった。

どうしようかと夫と冷静に話し合ってまず思ったのは、できるだけ笑顔で穏やかに子供を育てていきたいということ。何より子供が日々幸せな気持ちですくすく育ってくれるのが一番だけど、自分たちのためにもイライラしたりはしたくない。次に、自分たちの仕事や趣味も大事にしたいと思った。

そうして、お互いに不規則な仕事状況(特に夫は職種からして自分の都合で早く帰ることは不可能)、双方の実家が近くはないという生活状況(仲は良いけど同居や近居はしたくない)、できるだけベビーシッターや祖父母には預けずに自分たちと保育園で育てたいという共通の価値観、お互いの能力や余力に照らし合わせると、やはりどう考えても子供は一人がいいという結論に至ったのだった。まあ、たとえ望んだとしても授からなかったかもしれないのだけど。

一人っ子はかわいそうなの?

こうしてうちの子は一人っ子に確定したのだけど、よく耳にする「一人っ子はかわいそう」という声が気にならなかったというと、やはり嘘になる。目や耳にするたび、少しは気になった。でも、本当にそうなのだろうかとよく考えたら、何事にも必ずメリットがあることに気付いたのだ。

きょうだいがいることのメリットは、例えば仲が良ければ家の中でいつでも子供同士で遊べること、将来的に親や家について相談し合えるかもしれないことなどが挙げられると思う。そして一人っ子の場合は、例えば親の手も目もお金もより多くかけられること、家ではマイペースに過ごせること。どちらも大きなメリットだと思う。

そして、それぞれにデメリットと思える部分もあるだろう。だけど、デメリットを補うために工夫することもできると思う。例えば一人っ子はなかなか家の中で子供同士で遊べないというなら、友達やいとこなどと頻繁に行き来するオープンな家庭にするという方法もある。きょうだいが多くて甘え足りないかもしれないなら、それぞれが親と一対一で過ごせる時間をもうけたり、祖父母や誰かの手を借りたりすることもできる。

だから、私は近所の食料品店の年配の店主に「一人っ子はかわいそうだよ」と言われたときに「そうとは限らないよ。一人っ子って、手も目もお金もよりたくさんかけられるっていうメリットがあるし、決めつけるのはよくない」と伝えたことがある。向こうは明らかにびっくりしていた(そのときは子供が一緒にいなかったから普通に答えられたけど、もしも子供が一緒にいて「かわいそう」という言葉を浴びせられていたら怒ったと思う)。

何事にもメリットもデメリットもあるし、どうするかは自分次第。そして私はそれを、とても明るい事実だと思っている。何を選んでも、メリットはあるのだから。

持てるものに目を向けてほしい

虫取りをする子供の写真

それでも「子供自身はどう思っているんだろう」と言う人もいるだろう。

冒頭に出てきた子供の友達は、「きょうだいがいるっていいよ。楽しいよ」と言うときもある。うちの子は、友達がきょうだいに意地悪をされていたら、こっそり「きょうだいがいなくてよかった」と言うときもあるし、一方で楽しく遊んでいるきょうだいを見れば「きょうだいがいたらいいのに」とうらやましがるときもある。それはやっぱりメリットもデメリットもあるからだろうし、気分にもよるからだろう。

ただ最近、子供はおおむね「たくさん甘えられていい」「友達をたくさん呼べていい」と自分の環境のいいところに目を向けていて、満足そうだ。後者は私にとってもメリットで、さまざまな子をかわいがれて本当にいい。

ちなみに、私と夫は子供がもっと小さいときに「どうしてきょうだいがいないの?」と聞かれたとき、最初は「あなたがあまりにもかわいくて最高で、ママとパパはもう十分だと思ったからだよ」などと答え、少し大きくなってからは他の理由も併せて説明してきた。私たち親には、私たち親の人生と価値観があることも伝えている。

それにきょうだいがいないことにはメリットもデメリットもあることも、そのまま説明している。「いつだってママやパパを独占できるのは、一人っ子だからだよ」。これはこれで事実だ。私は子供の頃、よく母を弟と半分こしていた。文字通り母の体の真ん中から右は私、左は弟と決めて、どちらかが少しでも侵食するとケンカしたりしていたのだ。

そして本当のところ、何だって人それぞれで、何もかもみんなと同じなんてことはありえないし、子供だって現状を受け入れてやっていくしかないと私は思っている。誰にでも持っているものもあれば、持っていないものもある。持てるものに目を向けたらいい。

結婚するかしないかにも正解はないように、子供の数にも正解なんてない。「一人っ子はかわいそう」と言う人は、きっと子供の数が増えれば今度は多過ぎるだの、男の子がいなければダメだの、女の子がいなければダメだのと余計なことを言うだろう。ただ余計なことを言いたいだけだ。

誰もが周りの声に煩わされることなく、自分の人生にとってよいと思う選択が自由にできる社会になってほしいと、心から思う。

著者:大西まお

大西マオ

1977年生まれ。編集、ライター。大学卒業後、複数の出版社・編プロで、雑誌、PR誌、書籍、Webなどの編集とライティングを担当。最近の担当書籍は、はらだ有彩 著『百女百様』、森戸やすみ 著『子育てはだいたいで大丈夫』(いずれも内外出版社)など。9歳の子供、カメラマンの夫と三人家族。

Twitter:@mao7735

最新記事のお知らせやキャンペーン情報を配信中!
<Facebookページも更新中> @shinkokyulisten

編集/はてな編集部

関連記事