テレワークのお供にも。約1,000軒のパン屋を巡ってきたパン好きが教える、とっておき「通パン」5店舗

 入江葵
おいしそうなパン

外出しづらい日々が続く中、家で食事を済ませる機会が増えています。そんな中で需要が高まっているのが、遠方のお店の味を気軽に楽しめるお取り寄せ。中でも昨今InstagramやTwitterでは、パンの通販に関する「#通パン」というハッシュタグが注目を集めています。多くのパン屋さんが自粛期間の新しい販売経路として「通パン」に対応。家にいながら、全国各地のおいしいパンを楽しめるようになりました。

おうち時間の気分転換に、テレワークのお供に、普段はなかなか行けないお店のおいしいパンを取り寄せて味わってみるのはいかがでしょう?

今回は、これまでに国内外合わせて1,000軒近いパン屋を巡ってきた入江葵さんが、今ぜひ食べてほしいおすすめの通パンを紹介します。

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全国各地の「あの味」をいつでも自宅で。通パンの魅力

こんにちは。BREAD LABの入江葵です。幼い頃からパンが大好きでパンを食べ続け、気付けば四半世紀。国内外、おいしいパンがあればどこへでも足を運ぶ、根っからのパン好きです。

青山パン祭りの企画・運営などを経て、2015年にパンの食べ手と作り手をつなげる、パン好きが集まるラボ「BREAD LAB」を立ち上げました。現在は沖縄に暮らしながら、パンにまつわるイベントやワークショップを不定期でコーディネートしています。

沖縄で暮らすようになってから私も「通パン」を利用する機会が増え、気になるパン屋さんを見つけては通パン情報を収集しています。遠く離れていても「あの店の味」を自宅で味わえるのが、通パンの大きな魅力です。

沖縄のパン

本当は焼きたてパンを求めて気軽にパン屋さんに通いたいところですが、そうもいかないこのご時世。こんな時だからこそ、ホッとできる時間を意識的に作り、おうち時間を大切に過ごしたいですよね。通パンを利用し、おうちでおいしいパンのある豊かな時間を楽しんでみませんか?

「通パン」でパンを買うには?


お取り寄せの需要が高まる中で、これまで通販に対応していなかったパン屋さんも、続々と「通パン」を開始するケースが増えています。

通パンの利用方法は、お店によってさまざま。オンラインショップから常時注文を受け付けている店舗もあれば、毎月1回など、一定期間のみ申し込みを受け付けている店舗も。また、特に小規模な店舗の場合はオンラインショップではなくInstagramなどのSNSで販売告知をし、ダイレクトメールで注文を受け付けているケースもあります。

通パン募集がかかるとすぐに完売してしまう人気店も多いので、気になるお店はこまめにSNSなどをチェックするのがおすすめです。

今食べてほしい、とっておきの「通パン」5選

今日はこれまでに私が食べてきた中でもとっておきの通パンを、全国から5店舗ご紹介します。その土地ならではの素材使いに注目したり、お店のロケーションなども想像したりしながら、ぜひ現地を旅しているような気持ちで味わってみてください。

オンラインショップで常時購入できる2つの店舗


まずは、いつでもオンラインショップから注文できる2つの店舗からご紹介します。


1. エネルギー溢れる沖縄の味をご自宅で「宗像堂」(沖縄)


沖縄県中部にある「宗像堂(むなかたどう)」は、熱心なパン好きなら誰もが知るであろう名店です。全国にも多くのファンを持つ宗像堂のパンは、噛(か)むほどに味わい深く、私にとっても唯一無二の存在です。

開業時からかけ継ぐ自家培養の発酵種を使い、手製の石窯で焼き上げるパンはエネルギーに満ちています。また、緑が生い茂るお庭がある外国人住宅を改築した店舗は、訪れるだけで気持ちがよく、そのロケーションも多くの人々を惹(ひ)きつけてやみません。「パンの聖地」だと、個人的に認定しています。

宗像堂のパン

「通パン」体制も昔から整っているので、通販初心者も安心して利用できると思います。初めての方には、数種類のパンを詰め合わせた「おまかせ便」がおすすめ。また好きなパンも1個から指定できるので、気になるパンがあれば気軽にリクエストしてみてくださいね。お店を訪れたことがある方は、思い出のパンを自宅で楽しめるのがうれしいですよね。

個人的にぜひ食べてほしいのは、ローズマリーとざらめをたっぷり使った「サブリナ」と、店主の宗像さんが沖縄で育てている小麦を使った地粉が味わえる「読谷カンパーニュ」。生い茂る熱帯植物と、南の島の景色を思い浮かべながら噛みしめてほしいパンです。

宗像堂のお庭

公式サイト:宗像堂
オンラインショップ:宗像堂


2. ハード系から菓子パンまで、全てがおいしい「KANEL BREAD」(栃木)


栃木県の黒磯はここ数年で店舗が続々と集まり、栃木県内でも有数の観光地になりました。那須高原や温泉地なども近く、また都心部からも2時間ほどで訪れられるアクセスの良さも人気です。

そんな黒磯駅の目の前にあるベーカリー「KANEL BREAD(カネルブレッド)」は、食パンやイングリッシュマフィンなどの食事パンはもちろん、ハード系からクロワッサン、ブリオッシュ生地の菓子パンまで幅広い品揃え。そして全てがしっかりとおいしいパン屋さんです。

カネルブレットのパン


通販サイトもとても見やすく作られているので、お買い物するのも楽しくなります。ここまで、作り手の顔が見え、気持ちよくオンラインでパンを買えるサイトはなかなかないので、「通パン」初心者にも一押しです。

通販用のセットはテーマがユニークで、パンの種類にフォーカスした「冷凍デニッシュセット」、パンを食べるシーンごとに、朝食用の「7時のセット」、おやつ用の「3時のセット」など、選ぶ間もわくわくすること間違いなし。(※購入できるラインアップは、時期によって異なります)次の休日の過ごし方に合わせて、お好みのセットを選べます。併設のカフェ「iris bread&coffee」のSNS投稿を見ながら、自宅でカフェ気分を味わえるサンドイッチメニューに挑戦するのもいいかも!

iris bread&coffeeの様子

販売期間を事前にチェックして、ぜひ一度味わってほしい3店舗


続いては、購入できる期間などが限定されているため少し入手難易度は高めですが、ぜひ一度食べてほしい通パンを3店舗ご紹介します。


3. 酵母の魔術師こだわりの絶品パン! 「Rinascimento cafe」(群馬) 


群馬県にある「Rinascimento cafe(リナシメントカフェ)」は、全国の中でも大好きなパン屋さんの一つ。松本シェフのこだわりが凝縮されたパンは、その生地の口溶けのよさが圧倒的!! 秘密は複数の自家培養発酵種をパンによって使い分け生み出す、独特のアロマなのでは、と私は思っています。

Rinascimento cafeのパン

「通パン」は月に1週間程の募集期間があり、その間のみ、サイトで申し込みを受け付けています。毎月の募集期間を気にかけておく必要がありますが、パン好きなら絶対にチェックしてほしい一軒です。

私はここの「パン・ド・ミ」を初めて食べた時、おいし過ぎて危うく一人で1斤食べきるところでした。それくらい、人を魅了するパンです。口の中に広がるさまざまな味わいと鼻に抜ける芳醇な香りは、数種類の酵母が生み出す賜物。シンプルな食事パンではその神髄を感じられ、ヴィエノワズリ(フランスの甘い菓子パン)や焼菓子では繊細でありながら素朴なおいしさをしっかりと味わうことができます。冬のシュトレンもおすすめです!

進化し続けるリナシメントカフェのパン、食べたことがないあなたはぜひ一度お試しあれ。

公式サイト:Rinascimento Cafe | Rinascimento Cafeは自家製パンとコーヒーのお店です
販売方法:月に1週間程、通販告知ページで申し込み期間を告知して販売


4.季節をパンに閉じ込めて。鮮やかな旬の酵母の味わい。「タロー屋」(埼玉)


春夏秋冬、季節の果実や野菜、花を酵母にしてパンを焼く、珍しいパン屋さん「タロー屋」。埼玉県の北浦和駅から徒歩20分ほどとアクセスが良いとは言えない住宅街にたたずむお店ですが、週2日の営業日には次々とお客さんがやってきます。

タロー屋のパン

初めてタロー屋を訪れた時、その色鮮やかな酵母の美しさに魅せられ、そのパンを一口食べて、口中に広がる華やかな素材の香りにハッと驚かされました。店主の太郎さんは「こんなふうに季節をパンに閉じ込めて、私たちに感じさせてくれるパン屋さんがいるんだ!」と感動させてくれた職人さんです。

これからは「秋のコウボパン」の季節。「巨峰酵母のフォカッチャ」は巨峰で起こした酵母を使い、たっぷりの巨峰をのせた、まさに秋らしいパン。「キンモクセイのリュスティック」はキンモクセイのお花を食べているような感覚になる甘い香りとみずみずしい生地の組み合わせ。タロー屋の季節を感じさせてくれるパンは、四季のある日本に生まれた喜びに満ちている気がします。

通販は販売日が限定されていますが、(詳細はお店のサイトまたはSNSでご確認ください)チャレンジする価値あり。スケジュールを事前にチェックして、ぜひトライしてもらいたいです。

公式サイト:畑のコウボパン・タロー屋 |
オンラインショップ:タロー屋の通パン
販売方法:月に数回、オンラインショップやInstagramで申し込み期間を告知して販売


5.探求心が生む、国産小麦の武骨なパン「Baking Garage Harimaya」(和歌山)


和歌山県で国産小麦を自家製粉し、全てのパン生地を手でこね、自家培養の発酵種でゆっくりとパンを発酵させて焼く「Baking Garage Harimaya(ベーキング・ガレージ・ハリマヤ)」。以前は、街のパン屋さんらしいバラエティーに富んだラインアップだった同店ですが、数年前からシンプルな食事パンを主軸にパンを焼いています。

私がHarimayaを知ったのは、一枚のかっこいいパンの写真がきっかけでした。武骨で力強く、見ただけでおいしいと分かる、そんなカントリーブレッド。素材に対して真っ直ぐに向き合い、パンに対する飽くなき探求心を突き詰め続けるシェフが作るパンは、実際に目の当たりにして、味わっても、力強くて美しいのです。

Baking Garage Harimayaのパン

「通パン」は主にInstagramのダイレクトメールで購入可能。随時Instagramで募集しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね。定期購入もあるので、まずは一度お問い合わせを。

公式Instagram:Hayato Tabita(@hayatotabita)- Instagram
販売方法:随時Instagramで申し込み期間を告知し、ダイレクトメールで申し込みを受け付け

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全国各地のおいしい「通パン」。まだまだご紹介したいパン屋さんはたくさんありますが、今日はひとまずここまで。最後に手前みそではありますが、パンを食べながらぜひ読んで欲しい一冊、自著『CRAFT BAKERIES』(メディアサーフコミュニケーションズ)をご紹介します。

『CRAFT BAKERIES』
『CRAFT BAKERIES』


国内外61軒のパン屋さんを取材しまとめた、職人さんの物語が詰まった本で、写真も素敵なので、読むだけで旅した気分になれます。今回ご紹介した店舗も3軒載っているので、パンを食べながら本を読む、というぜいたくなおうち時間の過ごし方も楽しめます。


外出が思うようにできないこの頃ですが、普段なら通販をしていないパン屋さんも、今だからこそ通販を始めたり、限定で通販をしていたり……。新しいパンの楽しみ方の一つとして「通パン」が広く認知され、確立されてきた2020年。

あなたも「通パン」を利用して、とっておきのパン屋さんの味を、おうちで手軽に楽しんでみませんか。お気に入りがきっと、見つかるはずです。

著者:入江葵

入江葵

パンを愛するチーム「BREAD LAB」主宰。青山パン祭りの企画・運営を経て、現在は不定期でパンにまつわるイベントやワークショップを開催。2017年より拠点を沖縄に移し、2020年8月、宜野湾市普天間にアイスクリーム店「CAFUNÉ」をオープン。パンとアイスと沖縄が大好きです。著書「CRAFT BAKERIES」。

Twitter:@aoin427irie
Instagram:Bread Lab(@bread_lab2015) - Instagram
note:CAFUNÉ|note

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編集/はてな編集部