巨大生物「ヘラジカ」を探しにアラスカへ行ってみた

2019.02.27

巨大生物「ヘラジカ」を探しにアラスカへ行ってみた

北欧やロシア、アメリカ北部に生息するシカ科最大の動「ヘラジカ」。北アメリカでは「ムース」と呼ばれています。「大きい」ことへの憧れがあるライターの地主恵亮が、動くヘラジカに会うためアラスカまで行ってきました。アラスカ州最大の都市アンカレッジからフェアバンクスまで車でひた走る……!

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    ヘラジカという生き物がいる。

    北欧やロシア、アメリカ北部に生息するシカ科最大の動物だ。体長は2メートルを超え、体重も大きな個体は700キロを超える。北アメリカではムースと呼ばれている。かつては日本の動物園でも飼育されていたけれど、現在では見ることができない。

     

    そのため日本という土地に生きていると、その大きさを実感することも難しい。

     

    規格外の大きさは、SNSでも話題に

     

    けれど、シカ科最大という言葉に惹かれる。ぜひ見てみたいけれど、日本では見ることができない。でも、見たい。

    ということで、自腹でヘラジカを探しに行くことにした、アラスカに。

     

    ヘラジカへの憧れ

    大きいは素晴らしいと思っている。定食屋などで大盛り無料です、と言われたら必ず大盛りを頼むようにしている。仮面ライダーよりウルトラマンが好きだ、大きいから。大きな葛篭と小さな葛篭なら、絶対に大きな葛篭を選ぶ。大きいことへの憧れがあるのだ。

     

    そこでヘラジカです!

     

    山でシカを見つけるとテンションがあがるのだけれど、本州シカより、体長の大きいエゾシカを見た時のほうがテンションはあがった。大きい動物を見たいのだ。となると「ヘラジカ」ということになる。だって体長は2メートルを優に超えるのだ、見たいじゃない。

     

    とにかくでかいんです!

     

    ネットでヘラジカと検索すると車よりも大きく、優雅にアラスカの道を闊歩している画像がある。見たい、ぜひ見たいという思いが強くなった。この願いは届くのだろうか。可憐な少女の願い。嘘だ、30代男性の願い。ぜひ届いて欲しい。

     

    ということで急いで、

     

    飛行機に乗って、

     

    アラスカに来ました!!!(写真3枚で到着していますが、24時間かかりました)

     

    ヘラジカ天国

    願いは特に届く気配がなかったので、もう自腹でアラスカまで来てしまった。冬のアラスカは気温マイナス30度くらいなので、寒いを通り越して痛い。ただヘラジカを見るためだ。難しいかもしれないチャレンジだ。

     

    あ、空港でいきなり剥製あったわ

     

    空港についたらいきなりいた。剥製だけどいた。大きいな、という感想だ。浮かない顔をしているのは、いきなりいたからだ。もうこれでもいいんじゃない、となった。いや違う、生きている、ムーブしているムースを見たいのだ。

     

    車でフェアバンクスへと、

     

    走る

     

    ヘラジカはアラスカ州最大の都市「アンカレッジ」でも見ることができるが、じっとしていても向こうから現れることはないので、レンタカーを借りて、アラスカ第二の都市「フェアバンクス」へと車を走らせながら探す。

    なんとなく大きいから寒いところにいるのかなと思ったからだ。

     

    看板が、

     

    ムース(ヘラジカ)!

     

    日本では鹿だったり、イノシシだったりの看板は目にするけれど、アラスカではそれが「ヘラジカ」だった。しかも、コンビニくらいのペースでこの看板が出てくるので、めちゃくちゃ出るのだろう。衝突事故も起きているようだ。

     

    でも、出ませんでした!

     

    というか、道すら見えないし!

     

    めっちゃ期待したよね、期待しながら600キロを走ったよね。しかし、ヘラジカは全然現れなかった。私の純粋で無垢な気持ちはヘラジカに届いていないようだ。

    ネットで検索したら、バンバン写真あるのに、全然出ないのだ。便秘か! というくらい出ない。恥ずかしがっているのかな、ジャパニーズイケメンに。

     

    探しに行く

     

    クソほど寒い中!

     

    動物が全くいない。ヘラジカだけが出ないのではなく、もう動物がいない。ちょっとくらい出てくれていいでしょ、って思うのに出ない。看板はあんなにあったのに出ないのだ。

    私がヘラジカだったら、ちょっと気を使って道路脇に出るくらいするけどね。

     

    カラスくらいよ、いるのは!

     

    ただこのカラス、日本で普通に見るカラスではなく、おそらく「ワタリガラス」だ。日本でよく見るハシブトガラスより大きく、北欧では神話にも登場する。たしかに大きいが、違うのだ。見たいのはヘラジカなのだ。

     

    アラスカの動物園でも、このカラスは飼育・展示されている

     

    牛より美味しいヘラジカ

    探した。めちゃくちゃ探した。テレビのリモコンを無くした時より探した。ただ見つからない。凍えながら探しているけれど見つからない。ヘラジカ素人なので、そもそも探している場所が正解なのかわからないけれど、小学生時代のウォーリーより探したと思う。

     

    ヘラジカの遊具があったり、

     

    ヘラジカの糞のイヤリングがあったり、

     

    ヘラジカのツノを利用したボタンがあったりはする!

     

    ヘラジカの人気というか、愛され具合はすごいようで、遊具がヘラジカだったり、糞を利用したイヤリングを売っていたりはした。日本では見ないので、珍しいけれど、ムーブするムースを見たいのだ。

     

    探したね!

     

    ヘラジカとも寝たね!

     

    偶然泊まった宿のお布団がヘラジカだった。ヘラジカに抱かれて眠った。とても健やかな眠りを与えてくれた。ただ夢も何にも見なかった。朝、起きたら裸のヘラジカが隣に眠っていてくれたらと思ったけれど、誰も寝てなかった。

     

    宿のオーナーのジム!

     

    宿のオーナーのジムにヘラジカの話を聞いた。9月1日から25日までの25日間だけヘラジカ猟が認められていて、1家族で1頭だけ狩っていいそうだ。肉は脂身が少なく、牛より美味しいと言っていた。

    ジムが脂が少ないを「グリスレス」と言っていて、発音がよすぎてずっと「グリズリー」に聞こえていた。

     

    呼んで狩るらしい!

     

    「ブォーンブォーン」と鳴き声に似た音を出すとヘラジカが寄ってくるらしい。ジムは嫁さんもこうやって呼ぶんだぜ! と言って奥さんと一緒に笑っていた。本場のアメリカ人によるアメリカンジョークだ。私も笑ったけれど、あとで、これ笑ってよかったのかな、と少し心配になった。

     

    ジムが狩ったヘラジカ

     

    ヘラジカは昼も夜も関係なくいるらしい。その辺にもいるよ、と言っていたけれど、見つけられなかった。冬のヘラジカは子連れのことがあり、非常に危険なので近づくな、と言っている。あと私は英語がわからないので、おそらくそう言っていると思われる。

     

    謎の記念撮影!

     

    いた、ヘラジカいた!

    フェアバンクスでは特にヘラジカを目撃することはなく、アンカレッジへとまた600キロ車を走らせる。いなかったな、と思いながら、敗戦投手みたいな感じで運転していたらいた。普通にいた。ヘラジカいた。

     

    ヘラジカの、

     

    登場です!!!

     

    デカ、と言ってしまった。冬場はツノが落ちるようなので、ツノがないのだけれど、間違いなくヘラジカだ。めちゃくちゃ普通にいたので、会釈しながら通り過ぎそうだったけれど、普通に葉っぱを食べていた。

     

    また普通に、

     

    いた!!!

     

    タイミングなんだね、普通にいた。車を止めて休憩していたら、普通にいた。こっちを見つめていた。月9だったら恋に落ちる感じで見つめあった。素直におしゃべりできない感じで見つめていた。

     

    いなかったとき用に、

     

    こういう写真撮ってたけど、

     

    必要なかった!

     

    感動がすごい。マジで一週間くらい探したのだ。

    もうダメかなと思った時に現れたヘラジカ。牛より美味しいヘラジカ。しかし、肉は流通していないヘラジカ。会いたかったヘラジカ。月9だったら感動の最終回で16%の視聴率を取るし、ヘラジカダンスが流行ったと思う。

     

    颯爽と走って行った、どこかに!

     

    近くで見る動物たち

    この感動をもう一度味わいたい、もっと近くで見たいと思い「アラスカ野生動物保護センター」に行くことにした。

    よく考えると私は一言も「野生のヘラジカを見たい」とは言っていなかった。ムーブするムースが見たいとは言ったけど。つまり最初からアラスカ野生動物保護センターに行けばよかった。

     

    だって、

     

    めちゃくちゃ、

     

    いるんだもん!

     

    アンカレッジからフェアバンクスまで8時間くらい車で走ったけれど、ここならアンカレッジから1時間くらいで来られた。近くにいたな、と思う。目と鼻の先だもん。ヘラジカ以外もいるし。

     

    グリズリー!!!

     

    グリスレスがグリズリーに聞こえて以来の登場。これは野生では絶対に出会いたくないけれど、ここでなら安心して見ることができる。やっぱりものすごい感動があった。ヘラジカと同じくらい、グリズリーの剥製もあちこちにあったからだ。

     

    空港にて!

     

    とにかく日本では見ることのできないヘラジカに出会うことができた。しかも、野生の。

    渋谷のスクランブル交差点の人通りほどはいないけれど、1700キロほど車を走らせると出会えるのだ。野生でなかったらもっと簡単だけど。とにかく見られてめちゃくちゃ嬉しかった。

     

    嬉しすぎて、ずっと見ていた!

     

    ヘラジカ見にいこうぜ!

    私の記憶がたしかならば、2010年くらいまでは日本でも動物園でヘラジカを見ることができた。しかし、今はいない。

    調べてみたら、夢見ヶ崎動物公園にいた「ポロウ」というヘラジカが日本最後のヘラジカということが分かった。ラストヘラジカ。

     

    もう日本でヘラジカに会うことは叶わないのだろうか。できれば1700キロの移動もマイナス30度の世界も体験せずにヘラジカの大きさだけ味わいたい。

     


    こんな経験は、しなくていいならしないほうがいいに決まってる!

     

    ということで、2010年まで夢見ヶ崎動物公園でヘラジカの飼育担当をしていた斎藤さんに、お話を聞いてみました。

    「いきなりですが、どうしてヘラジカは日本からいなくなってしまったんでしょう」

    「まず大きな要因は『日本の環境に適さない』ということです。日本には四季があって寒い冬もありますが、基本的に人間が快適に過ごせる気候ですよね。それは、ヘラジカにとっては快適な環境ではないんです」

    「ヘラジカに快適な環境って、やっぱり寒さが大事ってことですよね?」

    「そうですね。最低でも雪がちらつく程度から動きがよくなって、寒くなればなるほど活発になります」

     

    たしかにマイナス30度でもピンピンしてた

     

    「もう一つは、2010年に『口蹄疫』が流行した影響でヘラジカの輸入ができなくなったことですね」

    「『口蹄疫』……! 記憶にあります。ヘラジカもその対象だったんですか?」

    「はい。哺乳綱の偶蹄目なので」

    「そもそも、あれだけ大きいと飼育するのは大変なんじゃないですか?」

    「そうですね。ヘラジカは体が大きいわりに足が細くって。若いうちはいいけど、年を取ってくると立ったり座ったりするときに苦労するようになるんですよ」

    「そこは人間と一緒なんですね」

    「もともと雪深い土地に生息する動物なので、体もその環境に適したつくりになっています。飼育していた時は、蹄の隙間に固いものが刺さらないように、砂やコンクリの状態には常に気を使ってましたね」

     

    かつで夢見ヶ崎動物公園で飼われていたヘラジカたち。たしかに、言われてみれば足が細くて長い。美脚の持ち主だ

     

    「ちなみにヘラジカの個体数は、世界的に見て減っていたりするんでしょうか? 今回ヘラジカに会いたくてアラスカまで行ったんですが、なかなか会えなかったんです。至るところにヘラジカ注意!の看板はあったのに」

    「ヘラジカ自体はアメリカ以外にも中国やカナダにも生息していて、野生でも飼育下でも十分な個体数がいるので、今のところ絶滅の恐れはないと言われています。世界的には、わりと目にすることができる動物のはずですよ」

    「あんなに会えなかったのに!?」

    「タイミングが悪かったか、運が悪かったか……ですね」

     

    でも、日本ではもう見ることができないヘラジカ……!

     

    取材に答えてくれた斎藤さんは、なんと20年間もヘラジカの飼育員をしていたという。「ポロウ」の最後も見守った斎藤さん。飼育係歴は28年ほどというから、そのほとんどをヘラジカの飼育に捧げてきたプロヘラジカーだ。

     

    そんな斎藤さんが、「今後、日本で生きているヘラジカを見るのは難しいだろう」と教えてくれた。

    そうなると、やはりアラスカなのだ。飛行機で24時間かかるけれど、それでも見る価値があった。めちゃくちゃ写真を撮った。憧れの人に出会えたような感動だった。やっぱ大きいって素晴らしいね!

     

    かわいいよね!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    地主恵亮
    地主恵亮

    1985年福岡生まれ。基本的には運だけで生きているが取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。著書に「ひとりぼっちを全力で楽しむ—リア充に負けない22の人生戦略」(すばる舎)「妄想彼女」(鉄人社)、「インスタントリア充」(扶桑社)があるので買ってください!

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