ブランク約8年。専業主婦を経て再び外で働き始めた私が、不安を乗り越え手にしたもの

イラストと文 スミカ

スミカさんアイキャッチ用イラスト

さまざまな理由で、一度仕事を「辞める」選択をした人は少なくないはず。また働きたい、と思ったときブランクが長かったり、環境によっては「大丈夫だろうか」と迷いが生じたりすることも。

東海地方在住のブロガー・スミカさんも、多忙を極める日々で家庭との両立に悩み、一度会社を辞める決断をしました。それから約8年振りに、デザイナーとして現在の会社にパート勤務として復職したというスミカさん。時折在宅でできるイラストの依頼を個人で引き受けていたものの「ほぼ専業主婦だったから不安だった」のだそう。どのようにして復職を進めていったのか、実際に仕事を再開して感じたことなどをつづっていただいています。

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働き続けることって、難しい

「人を動かす広告を作るぞ!」と大きな野望を胸に、新卒でグラフィックデザイナーとしてデザイン事務所に就職した私。

多くの人が「知ってる!」と答えるようなクライアントとの仕事や、自分が携わった制作物を日常生活で見かけたときの喜び、優しく楽しい同僚に囲まれた毎日は、忙しかったけれど充実していました。そして25歳のとき、同じ会社の別部署の人と結婚。

結婚生活がスタートしたものの、夫も同様に忙しかったため、徹夜・深夜帰宅・休日出勤が続きすれ違いの日々。そのため、共働きの基盤をまったく築けず、家事に関しては「気になる方がやる」という流れに。夫が家事に関してほぼ無頓着だったこともあり、お互い忙しいということは理解しつつも、私の負担が増えていく形となっていきました。

そんな家庭内の家事分担に悩み始めた頃、立て続けに同僚が退職し、引き継ぎやら何やらで忙しさが加速。うまくまわせない仕事、なくなる自信、家に帰っても負担ばかりで安らげない……。正直、とても疲れていました。

「子どものことを考えたいけれど、とてもそんな状況じゃない」というのが、結婚して1年たった当時の素直な心境です。悩んだ末、デザイン事務所を退職する選択をしました。

退職後は少しだけ別の仕事に就き、長男の妊娠をきっかけに専業主婦になりました。子どもが生まれたら「一緒に子育て」を望んでいた私に対し、夫は「大黒柱として仕事を頑張る」というスタンス。「また外で働きたい」という思いを持っていましたが、夫の仕事状況なども考えると、現実的にはなかなか難しかったです。彼が頑張れば頑張るほど、私の孤立育児が加速する……そんな不安を感じていました。

ただこの頃、かつての職場からイラストの依頼を不定期で請けられたのは本当にありがたかったです。自宅保育をしながら、たまにではありますが「外とのつながり」を持てたことで、なんとか気持ちを保っていました。

在宅ワークのために一時保育を利用。肩の荷がふっと下りた

長男が幼稚園に入園する頃、次男を妊娠。次男出産後は、個人向けにブログのデザインやイラスト制作を在宅でするようになりました。

きっかけは、妊娠期の体験をシェアするために始めたブログです。さまざまなブログを見ていたとき、偶然にも「ブログパーツのデザイン」を在宅ワークで行う人がいることを知り、私も仕事としてできるかも! と感じました。

しかしこのとき、デザイン事務所を退職し約6年。デザイナーとしての経験値やブランクのことを考えるとなかなか一歩を踏み出せない……。そんな思いをブログで書いたら、育児ブログつながりで仲良くなった方が仕事を依頼してくれたんです。

この依頼がきっかけとなり、別の知り合いや、それまでつながりのなかった方のイラスト依頼も増えていきました。

依頼が増え嬉しい一方で、まだ小さい次男を見ながらの在宅ワークは作業時間の確保が難しく、限界を感じはじめていました。そこで、日中の作業時間を確保するために、一時保育*1の利用を始めました。

作業時間を確保するために利用を開始したけど、「自分の時間を持てた」ことが、本当に心が軽くなる経験でした。ずっとほぼ一人で自宅保育をしていたため、家族じゃない誰かがこの子の行動や成長を見守ってくれている「育児の共有者」ができたというのがすごく心強く感じたんです。謎の孤独感に襲われていたけれど、肩の荷が下りたような感覚がありました。

手続きの大変さや、何より地域によっては予約自体が大変、ということはもちろんあると思います。でも、もし可能なら是非利用してみてほしいな、と感じます(特にさまざまな事情で家事育児を一手に担っている方!)。

そして、家では私にべったりで甘えたがりの次男が、預け先の保育園では小さい子のお世話をし、お友達とワーワー遊んでいるという家とは違う一面があることも知れました。1対1の育児では甘えん坊でわがままな印象が強かった子の違う面を知ることで、家でべったりのときも「今は甘えてる時間なんだな」と大らかに育児に向き合えるようになったような気がします。

理想の仕事を見つけ「外で働く」ことを決意

2019年、長男は小学生に進学し、次男は3歳に。ここで、次男の就園問題に直面します。長男が通った幼稚園は長期休暇中の保育体制がなかったため、在宅ワークを続けるにしても、長期休暇の度に手が止まるのは自分の現状からすると不安でした。今後外で働くにしても、保育園を目指したい。

変わらず激務の夫と、未就園児含む幼い子どもがいて、かつデザイン事務所を辞めてからのブランクがこのとき約8年。正直、いきなりフルタイムでの復帰は難しい。私は外で働く? 働ける? ……と、迷いっぱなしでした。

そんなある日、求人サイトを見ていたら、私の住む地域ではなかなか見かけないデザイナー職のパート求人を発見。とある店舗のオンラインスタッフの募集でした。

働くだけだったら選択肢はたくさんある。でも、できることなら自分の好きに根付いた仕事がしたい。なかなか先行きが見えなかった自分の人生に道が見えた気がして、その晩、すぐにエントリーシートを送りました。

同じ時期、かねてから予約していた、育児や介護で離職してしまった女性の再就職を後押しする就労相談員との面談を受けました(ハローワークや女性の就労を支援してくれるところで開催されていると思います。個人面談以外にイベント内でのプチ相談会などもあります)。

就労相談員さんと相談している様子

どんな仕事があるのか、どんな働き方があるのか、この精神状態(実はパニック障害回復期でもありました)で働くことができるのか……などの質問とともに履歴書と職務経歴書を持参したところ、的確に修正箇所のアドバイスをもらうことができました。

また、次男の妊娠中に乗り物に全く乗れなくなってしまったため、面接に向けて電車に乗る練習を何度もしました。無理だと思っていたものができるようになって少しずつ不安が和らいでいき、自信にもつながりました。

緊張して挑んだ面接は同世代と思える女性の社長が対応してくれました。これまでのこと、これからのこと、子どものことなど諸々話をしたら「女性はどうしてもライフステージで働き方が変わってしまうものよね」と言ってくださり、「保育園が決まるまでは一時保育の予約がとれた日だけの出勤」というわがままな条件の私を採用してくれました。

ここで印象的だったのが、「ブログも書かれていますし、SNSにも興味があっていいですね。なにより書類が読みやすかったです」という言葉。ブログを書き続けていたことが自分の身になっていた、この数年が無駄じゃなかったと救われました。好きでやっていたことだけど、それが何かにつながるんだ、と感動すら覚えました。

採用が決まったことで、翌年に控えていた次男の就園については、保育園を目指し申し込みをしました(無事入園も決まりました!)。

好きなことへの探求は楽しい。働きはじめてからのこと

外で働き始めてからの日々はかつての自分がやってきた経験が生かせたり、今まで興味はあったけど挑戦できていなかったことが経験できたりの連続でとても充実しています。個人として受けられる評価、自分の成果が出せるのもうれしかった。もっともっと知識をつけ、ものにしたい!という気持ちになっています。

とはいえ、デザイン事務所で働いていた頃からソフトも進化し過ぎていて、最初はなかなか慣れず、とにかく作業に時間がかかりました。学ぶべき課題は山積みです。

正直、今は会社にどれくらい貢献できているかは分かりません。ただ、いつかはこの作業は私に勝る人はいない! と言えるくらいのポジションにつきたい(という野望だけは持っています)。

家族とのひとこま

私が通勤を始めたことで夫目線でもオンオフがきっちり見えてきたのか、協力要請がしやすくなりました。これは我が家にとってかなりのイノベーション! 夫はほぼ休みなく仕事の毎日だけど、朝は少しだけ時間に余裕があるので、可能な時は子どもたちの準備などをお願いできるようになりました。

正直、私たちは今まで「できないことは押し付けあう」みたいな感じでなんとかやりこなしてきた夫婦。ここに来てやっと共通の課題である「育児」において互いに不足を補って協力し合うことができてきたかな……と思っています。生活基盤というレベルで言うとまだまだといった感じですが、やっと「家族」らしくなってきたな、と感じています。

先の見えない不安から卒業するために、決断する

2020年度からは次男が保育園の年少クラスに入り、今はパートと在宅業務(個人事業)を自分なりにバランスをとり、相互でいい仕事を与えながら取り組めているのかな、と思います。

私は長い年月を経て土壌を整え、再び外で働くことを選びました。職歴にブランクがある場合、いざ復帰しようと思っても、大丈夫かな……と不安になる方は少なくないと思います。私もそうでした。

でも、「この先どうしよう?」という状態をずっと繰り返すことへの不安があったんだと思います。そして私は不安耐性が限りなくゼロ。未来の自分の不安を取り除くためにも、このタイミングで「外で働こう!」と決断したことは間違っていなかったと思います。

ただ、まだまだどうにもこうにも負担が大きい。それまでも不定期に在宅での仕事をしていたものの、がっつりと毎日のスケジュールとして仕事がある生活は、子どもを持ってからは初めての経験です。お互いの状況をもっと夫婦でシェアし、さらに子どもたちとも協力してやっていけたらいいな、と思います。

著者:スミカ

スミカ

7歳と3歳の男児を週6.5日ワンオペ育児中。荒れた部屋と上手く回せぬ家事育児に翻弄されながら、在宅でイラストの仕事をしています。昨年末から小売店のEC部門でパートデザイナーとして働き出した新米ワーキングマザー

※お子さんの年齢などは、2020年3月時点のものです

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*1:一時預かりとも言われる。保育所等を利用していない家庭においても、保育所、幼稚園、認定こども園等で一時的に乳幼児を受け入れる事業のこと。条件や利用にあたっては各自治体で異なる