家事分担、仕事の両立……。“共働き”について考えるイベント「りっすんお茶会」レポート

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2018年11月25日、東京・代官山にて「共働き」をテーマにしたトークイベント「りっすんお茶会」が開催されました。

さまざまな女性の働き方についての記事を発信してきたWebメディア「りっすん」初のリアルイベント。イベントは二部構成で、それぞれ視点を変えて「共働き」について参加者の皆さんと一緒に考える内容です。

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企業の取り組みを知り、共働きのヒントを探る

第一部では社員が働きやすく、仕事とプライベートの両立を実現できる環境を整備する企業の方をお招きしました。企業として取り組んでいる制度や福利厚生のこと、実際に制度を活用しているメンバーの事例を伺い、両立をする上でのヒントを探ります。

登壇いただいたのは、株式会社IDCフロンティア 社長室 ブランドマネジメントグループ 笹山恭子さんと株式会社フェリシモ 総務部 宇野加恵さん。共働き世帯にとって「仕事と育児の両立」は、企業のサポートや支援も重要です。社員一人ひとりがパフォーマンスを発揮できる環境作りのための取り組みを伺いました。

第一部の様子

共働き世帯の育児には、柔軟な勤務体制が重要です。IDCフロンティアは、フレックスタイム制に加え、月5回の在宅勤務が可能な「フルパフォーマンス制度」*1や、子どもが小学校を卒業するまで利用可能な時短勤務制度を導入しています。

時短勤務にすると、手取りが減ってしまいます。フルタイムで働きたいけれど、保育園の送迎が……という方も多そうです。笹山さんは「フレックスタイム制が導入されてから、育児中の社員も時短勤務ではなく、みんなそちらを利用するようになりました」と話します。

フェリシモでは「合同復職説明会」を毎年実施。同時期に育休から復帰する社員同士の交流の場を会社が設けることにより、職場復帰への不安を和らげるのだそうです。

出産は、心身ともに負担が大きいもの。父親も、赤ちゃんとパートナーのケアをしなければなりません。IDCフロンティア笹山さんは「男性社員も、2〜3ヶ月の育休を取得する人が多いです。1年以上取得した実例もあります」と、男性の育休についても紹介してくださいました。フェリシモでも、年々男性社員の育休取得率は増えているのだそう。

IDCフロンティア笹山さん、フェリシモ宇野さんはともに産休育休取得経験者。9歳と6歳のお子さんを育てるIDCフロンティア笹山さんは、「入社時と比較すると、環境がどんどん整備されてきた」と話します。

「第一子を妊娠したのは今から約10年前。そのときも時差出勤や時短勤務などを活用し乗り切りましたが、フレックスタイム制や在宅勤務が導入されてからは、より柔軟に働けるようになったと感じます。子供の予防接種などがあるときも、半休や有休を使わなくてもよくなりました」(笹山さん)

笹山さんと同じく2児の母であるフェリシモ宇野さんは、時短勤務と7時半~10時半の間で15分毎に出社時間を選べる「始業時間選択制*2」を活用。「1日単位でスケジュールが調整できるので、夫と協力しながら保育園の送迎なども柔軟に対応しています」と語ります。この制度は社員全員が利用可能な制度。残業翌日は少し遅めに出社……といった利用の仕方もOKで、育児当事者の方だけでなく、ほぼ全員が活用しているのだそう。

(左から)株式会社フェリシモ 宇野加恵さん、株式会社IDCフロンティア 笹山恭子さん

体制を整備し活用する流れを作り、社員が成果を出せる環境に

「制度を形骸化させず、きちんと活用してもらうことが重要だと思っています」と話すおふたり。育児当事者でなくても早退や休暇が普通に取ることができる環境づくりに尽力されているそうです。しかし時短勤務や子どもの急な熱での早退など、業務時間が限られると気になるのは、人事評価。本イベントでは、聞きにくい疑問も率直にぶつけてみました。

IDCフロンティア笹山さんは「全員が納得する評価制度というのは難しく永遠の課題でもあると思っています。ただ成果についてはきちんと評価されます」とコメント。今後は成果だけでなく、役割や責務といった面でも評価をするような人事制度を検討しているとのこと。フェリシモでも、「育休・復職組のキャリア形成は、会社全体の課題です。育児当事者だけでなく、介護などライフステージの変化によって選択肢が狭まらないよう、全社でケアをしていきたいと考えています」と心強い回答がありました。

2社ともに、ライフイベントの有無にかかわらず、みんながそれぞれ成果を出せる人事制度づくりのためのさまざまな取り組みを実施しているそう。人材不足・少子化は日本全体の課題なので、この柔軟な勤務の流れは他の業界・企業でも加速するでしょう。

夫婦3組に聞く「共働きをうまく続けるコツ」

第二部では実際に共働き夫婦として日々を送る夫婦3組に登壇いただき、パートナーと家事などを分担する上での工夫や、仕事との両立をする上での悩み・解決法を伺いました。お話いただいたのは、犬山紙子さん・劔樹人(つるぎみきと)さん夫妻、はせおやさいさん夫妻、仁田坂淳史さん夫妻。

第二部イメージ

犬山さん・劔さん夫妻とはせさん夫妻は、「妻が稼ぎ、夫が家事のリードをとる」スタイル。仁田坂さん夫妻は、ふたりともフルタイム勤務なので家事は半分ずつ分担。会社を経営する淳史さんと、助産師のパートナーがそれぞれ協力しながら、夜勤や多忙な時期を乗り切っているそう。

気になるのは、「家事分担、お互いの認識は本当に合ってる?」という部分。生活していると、掃除・洗濯・料理以外にも、近年話題となった「名もなき家事」など、可視化が難しい領域があります。それぞれ、不満を抱えないようどうバランスをとっているのか聞いてみました。

(左から)犬山紙子さん、劔樹人さん

犬山さんからは「夫が家事、私が家賃を払うことにしています。家事も、つるちゃん(劔さん)の負担になり過ぎるとよくないから、『時給で換算したら、外部サービスを使った方がいいよね』と相談。私は家事が苦手なので、家事代行サービスの料金も払うようにしています」と、家事をリードするパートナーへの気遣い溢れる回答が。

「外注というと高価なイメージがあるけれど、シルバー人材センターなど、行政サービスもたくさんあるんです」(犬山さん)と、具体的なアドバイスもありました。はせさん夫妻も、「ストレスをためないために、子どもがうまれてからはうまく外食や中食を取り入れています」と、合理的なお話がありました。

ふたりで家事を分担している仁田坂家では、「『苦手なこと』『得意なこと』の二軸で考えて動くようにして、自分たちがやらなくていいことは家電やネットサービスに頼るようにしている」とのこと。効率化のためAmazonフレッシュを活用し、スーパーに行く頻度を減らすようにもしているそうです。「夫婦は家庭の共同経営者」とよく言われますが、仁田坂家、まさに経営者らしいコメントでした。

(左から)はせおやさい夫妻、仁田坂淳史夫妻

全てを「完璧」にしようと思わない

中盤では、共働きをうまく続けるための秘訣も聞いてみました。「家事を完璧にするよりも、自分たちのメンタルを重視している」のは犬山家。20代のときに母親を介護していた経験がある犬山さんが「頑張ろう、全部自分でやらなきゃ! と背負いこむと、精神がやられちゃうんです。自分やつるちゃんのメンタルケアを優先するようにしています」と話します。これには、ほかの登壇者や会場の参加者の皆さんも強く頷いていました。

仕事と家事を両立するのも大変ですが、そこに育児も上乗せされると、キャパオーバーになってしまう人も少なくありません。40歳で第一子を出産したはせおやさいさんは「妊娠中からたくさんの不安が襲ってきたけれど、『具体的に何が不安なのか』は言語化できなかったんです。いまは小さなモヤモヤも全て細分化・明文化するようにして、それぞれに打開策を打ち出すようになりました」と語ります。思考を整理するクセをつけていくと、問題もスムーズに解決するそう。

トークセッションの最後は、これから共働き夫婦になる人たちへ向けたメッセージをいただきました。「“察して”は察してもらえないので、積極的に話し合いの場を持つようにすることが大切です」と話すのは、犬山さん・劔さん夫婦。はせおやさいさんは「共働きがスタンダードになってきたいま、社会が私たちに合わせる時代になりつつあります。親世代のロールモデルに固執せず、『自分たちの幸せは何か』について、すり合わせることが大事です」と、力強い言葉をくださいました。仁田坂さんは「共働きは、お互いのやり遂げたいことや自分たちの考えを見つめなおすためのいい手段だと思います」と、ポジティブにまとめてくださいました。

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その後、イベントは質問コーナーへ。挙手してくれたのは、最近同棲をはじめたばかりだというカップル。「今までは喧嘩しなかったけど、一緒に生活するようになってから重めの言い争いが増えてしまいました。皆さん、仲直りはどうしていますか?」というふたり。はせさんからは、「怒りや気まずい空気を翌日まで持ち越さないことが大切。翌朝は、必ず『おはよう』と明るく声をかけるようにしています」犬山さんからは「自分の思考のクセやイライラのポイントを見つけるために、カジュアルにカウンセリングを受けてみてほしいです。怒りっぽかったわたしも、穏やかな気持ちでいられるようになりました!」と、具体的なアドバイスがありました。

イベント終了後は登壇者も交えての懇親会も実施しました

Webメディア「りっすん」では、これからも働く人に寄り添うコンテンツを発信してまいります。イベントに参加いただいた皆さま、ありがとうございました。


※登壇者の所属先、勤務形態はイベント開催日時点のものになります

文/小沢あや 撮影/小野奈那子

*1:2016年に妊娠・育児中、および要介護者を抱える社員を対象とする制度としてスタートし、2018年には全社員対象に

*2:退勤後でもモバイル端末から前日(24時)までの申請で、7時半~10時半の間で15分毎に出社時間が選ぶことが可能。全社員が対象