実録! 職場で出会ったおもろい女

皆様こんにちは。はじめましての方も多いと思います。桜島ニニコと申します。

20代の半ばまでアルバイトかけもちしまくりのフリーター生活を送ってきた私は、36歳の現在に至るまで、職種にして約10種(ほとんどの職場に4年以上在籍)という具合に、さまざまな職場を渡り歩いて参りました。
学歴はけして誇れたものではありませんが「多種多様な職場に身を置いた」という一点のみでは、そんじょそこらのお嬢さんには引けを取らないつもりであります。もう「職場グレートジャーニー」と呼んでくださって構いません。

さて今回は、そんな私がこれまでの職場で出会って特に印象的だった「愛すべきユニークな女性たち」の姿を書かせていただこうと思います。どうか皆様におかれましてはお忙しいお勤めの合間、ひとときの気分転換にお読みいただければと思います。

私が出会ったおもろい女・その1 「歯科医師ナツコ先生」

ナツコ先生(仮名)は私が20歳のときから7年間勤めていた歯科医院の先生です。

歳は私より7つ上、男性患者さんのうち2人に1人は、初診時の診察終わりに受付で「先生、綺麗な方っすねぇ……」と、ため息交じりの感想を漏らしていくような美しい方でした。
しかも見た目が良いだけではなく性格も優しいんです。治療の話には懇切丁寧に時間をかけ、世間話や患者さん自身の内輪話にも菩薩のような笑みでずっと対応してくれます。

歯医者がおっくうな方は多いと思いますが、恐る恐る行った歯科医院でそんな先生がいたら、大体の方はうれしいことでしょう。そんなわけでナツコ先生は男女問わず患者さんから人気があり、とりわけ男性患者さんに好かれやすいようでした。

男性患者さんの中には時々ナツコ先生のプライベート領域に踏み込んだ質問をする人もいました。

しかしナツコ先生は既婚者であったためか、はたまた元来のポリシーか、ご自分の素性については「患者さんに話さない主義」をお持ちの方でした。

なので「先生は休みの日、何されてるんですか?」などと個人的なことを聞かれたときの先生は、表情筋のみで笑顔を形作ったままクルリと椅子ごと後ろを向いて「あっ桜島さーん、さっきの〇〇の件、急ぎだって言ってたよね!」と毎回ごく自然に忙しいふりをして逃げるんです。まぁこれが毎回上手いのなんの。

おそらく美人ゆえに身についた「かわし技」なのだと思いますが、これを何回かされると大抵の男性患者さんはちゃんと「察してくれて」、先生自身の素性を探るのはやめてくれていました。小娘だった私はいつも先生のかわしっぷりに「さすがだのう」と感心したものです。

しかし、そんなナツコ先生の華麗な「かわし技」の中で、私が唯一「それアリか!?」と思った技がありましたので、お話しいたします。

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Aさんは「ナツコ先生と話すのが楽しくて仕方ない!」という様子の男性患者さんでした。3~4回目の受診まではご自分のことをしきりに話されていたのですが、この日は思い切ってナツコ先生に一歩踏み込んでみたかったようです。私はそばで聞いていて「また先生は上手くかわすんだろうな」と思っていました。

しかし先生の答えは……

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このときのナツコ先生には、なにか猟奇的なものを感じました……。

後から先生に「先生、あれはさすがに……」と聞いてみると、先生は笑顔で言いました。

「男の人で年齢のこと聞いてくる人って、想定よりはるか上の数字を女が言うと絶対固まるんだよね。だから年齢のことを言いたくないときはコレに限るの! 使っていいよ!」

なんという初耳学。

しかし、にわかに信じがたかったこのライフハックも、その後ナツコ先生がこの技を繰り出し成功しているのを私は何度も目撃したので、最終的には「ナツコ先生のかわし技はさすがだなぁ」とさらに感服いたしました。

ナツコ先生は医師としての知的な部分と、人としての天然ぽさを兼ね備えていて、本当に楽しい方でした。私が一緒に仕事をした日々からもう10年近く経ちますがとてもよい思い出です。

私が出会ったおもろい女・その2 「コンビニパートの石田さん」

2人目のおもろい女は、私が最近までパートをしていたコンビニに後から入ってこられたパートの石田さん(仮名)です。

彼女は私と同い年だったのですが、なんと若い頃から30代前半の当時までただの一度も仕事に就いたことがなく、そのコンビニが人生初仕事だったそうで、これまで雑草のような仕事人生だった私は出会ったことのないタイプの方でした。

そんな彼女と初めて一緒に働いたときの印象を一言で言うと「公家か!」です。

どういうことかと言いますと、石田さんは話し方から動作からそのすべてがとにかくゆーーっくりなんです。テンポとしては「花の色は~うつりにけりないたずらに~」レベル(百人一首の札を読み上げるような抑揚をイメージしてください)

そんなスロー&マイペースな彼女に、思わず私は平安時代の公家を連想してしまったのですが、皆様にも石田さんのスロー度合いを分かっていただけるよう、まずは彼女と初めて一緒に働いたときの様子をちょっとお見せします。

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超スローな動きでやっと水を出してくれたかと思ったら、なぜかチョロチョロとしか水を出さない石田さん。あまり待ってもいられないので、私は「もっとバーっと出しちゃっていいですよ」と、横から蛇口をひねるとすぐ後ろに下がりました。

てっきり石田さんがすぐ水を止めると思っていたら……

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まさか、振り返ってゆっくりと尋ねられるとは思いませんでした。水あふれまくりです。

こんな石田さんに私は心の中で「いや、公家だって蹴鞠の時はもうちょっとアクティブだったろ!」と軽くツッコむと同時に、「こんなんでちゃんと仕事が務まるんだろうか……」と心配になりました。
その後、彼女とはシフトが違って会えずにいると、上の方が「石田さん確かに動き遅いけどそれなりにがんばってるよ」と教えてくれたので私は一安心しました。

でも半年ほど経った頃、たまたま彼女とシフトが重なり、私はまたも彼女の独特なマイペースっぷりを目の当たりにすることになりました。

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ちょっと分かりにくい話で申し訳ないのですが、ようは「補充」に関しては、売り場で足りない数量を見て在庫棚にその分を取りに行くだけでいいので、在庫数を把握する必要はないんですよね。つまり、まったく意味のないことを、石田さんは20分もかけてやっている可能性があるんです。

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この出来事の後、私はじわじわと怒りが込み上げてきたんですね。

その怒りは彼女に対してではなく、「入ってから半年も経ってんだから、その間一緒に働いたスタッフが誰か教えたれよ!」という怒り。

なので私は「石田さんの今後の為にも自分が今日真実を告げよう!」と思い、なるべく彼女のしてきたことを強く否定する言い方にならないようにと思って「私は先に売り場に行って足りない分メモしてから在庫取りに行ってるよ~。その方が早く終わるからね~」と言いました。

さて、この時点でもしも石田さんがちゃんと事態が呑み込めたとしたら彼女は「あっヤダ、私ずっと無駄なやり方してたんだ!」みたいな反応をするはずなんですが、石田さんの反応はというと……

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結局石田さんとは3年ほど一緒に仕事をしたのですが、最後までスローさはほぼ変わりませんでした。でもどこか憎めないマイペースな彼女に私の方がだんだんハマってしまって、私が辞める時は最後に連絡先を交換して今でもときどき連絡してます。

ちなみに驚くことに彼女、LINEの既読後にものすごい速さで返信してきます。つくづく面白い人ですね。

私が出会ったおもろい女・その3 「柏餅売り場のおばちゃん」

さて最後は私がまだいたいけな18歳の頃の話です。

よくスーパーなんかで試食販売をやっている店員さんっていますよね。知っている方は知っていると思いますが、ああいう仕事を「マネキン」と言うんですね。これは私がそのマネキンを1日だけやった日のことです。

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しかし、世の中どんな仕事だってナメてかかったらいけません。

まるで神さまがそう言ってるかのように、「簡単な仕事です」なんてナメた私にはこの後まんまとバチが当たりました。

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そう、納品された柏餅は3種類あって、外側は「白・ピンク・黄色」の3色でした。そしてあんこも「つぶあん・こしあん・みそあん」の3種類だとは聞いていました。

しかし、おそらく私が着替えをしている間に台に出してくれたスタッフの方が、あんこの種類が書かれたメモを剥がしてしまったようなんです!

メモがなきゃ、どれが何あんだかサッパリ分からない!

遠くに見えるスーパーの店員さんはみんな忙しそうで話しかけにくい!

というかそうこうしている間に店が開いてお客さんが目の前にチラホラ来てる!

やばい! 今注文されても私できないよ!! 神さま簡単な仕事とか言ってごめんなさい! わーん! おかあさーん!!

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このときのおばちゃんはすごい剣幕だったのですが、正直私は怒られたことよりも「たすけておかあさん!!」としか思わず、すぐにおばちゃんに「あんこの種類が分かんないんです!!」とすがりつきました。

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これは今思い出しても衝撃的な瞬間でした。

おばちゃんにしてみれば「中身が分からなければ見ればいいじゃろ」というシンプルな回答だと思うのですが、まだ若かった私は「仕事中」であり「売り物」である、というくくりのせいで、そのシンプルな回答を見失っていたようです。頭が固くて青二才な証拠ですね。

それに比べておばちゃんの「ぱくっ」という一口の悠然とした貫禄。年長者の余裕と、臨機応変のすごさを見せつけられたというか、さすが人生経験豊富なおばちゃんだからこそなせる業だと思いました。

今考えると「食べなくても割って中を見るだけで良かったんじゃ……?」という気はしないでもないですが、そこはおばちゃんのご愛嬌で許せてしまう感じです。

ちなみにこの時のおばちゃんはお怒りモードで、売り場から去る時も「しっかりやんなさいよ!」と強めに言い放っていたので「助かったけど、怖い人だな」と私は思ったのですが、昼休憩の時にまたおばちゃんに声をかけられて「あたし、医者から甘いもの止められてんのよぅ! でもさっきのは仕方ないやね! ナイショナイショ!」と明るく言われたので、本当は優しくてお客様思いの良い店員さんだったんでしょうね。1日だけのバイトでしたが、人生の先輩に臨機応変を学ばせてもらった良い体験でした。

個性豊かな3人の女性たちの話、いかがだったでしょうか。

まだまだ他の職場でもそれぞれに面白い人がたくさんいたのですが、書ききれないのでこのへんにしておきますね。

皆様の職場にもいろんな方がいると思いますが、「仕事場だからこそ出会える縁」を大事に楽しみつつ、日々のお仕事がんばってくださいませ。


著者:桜島ニニコ (id:ninicosachico)

桜島ニニコ

80年生まれ。既婚。介護士(現在は休職中)。性格は極めて温厚。
よろしくお願いします。

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