ライフログを徹底したら頭がおかしくなった

2000連休の間、暇すぎて自分のすべてをデータとして記録しようとしたお話。読んだ本や聴いた音楽、さらに会った人や住んだ土地など、あらゆるデータを人生のログとして記録すると、人はどうなってしまうのか。

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 「頭がおかしくなった」とか雑な表現ですみません。今から具体的に説明します。

ライフログというのは、「自分の人生の色々を、コンピュータで記録すること」くらいの意味です。私は一時期、この作業にハマッてたんですね。具体的には以下の二つをやってました。

1:自分の体験した「コンテンツ」をパソコンに記録していく
2:自分の「日々の行動」をパソコンに記録していく

「2000連休」(参考記事)のあいだに、この二つを試してたんです。そのときに起きたことを書いてみます。今回は「1:自分の体験したコンテンツを記録する」について。

 

そもそも、何故そんなことを始めたのか?

きっかけは単純です。Delicious Library 2 というMac用の蔵書管理ソフトを知ったんです。「ブクログ」や「読書メーター」のパソコン版というと分かりやすいかもしれません。amazon からデータを引っ張ってきて、読んだ本を登録できるソフトです。ちょうど読書量が増えてきた時期だったので、最初は備忘録がわりに使いはじめました。

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(参考:Delicious Library 2 の画面はこんな感じ)

んで、この時の私は無職だったんで、「暇」と「凝り性」の核融合とでも呼ぶべきことが起きました。最近読んだ本だけじゃなく、「生まれてから現在までに読んできた本をすべて登録したい」と思ったんですね。途中で読むのをやめた本なんかまで含めて、全部登録したくなった。なんせ時間があるんで、即座に実行しました。

するとこの作業が楽しくて、すぐに「音楽、映画、ゲームなども登録しよう」と考えました。要するに、

自分が過去に体験したコンテンツを、些細なものまで含めてすべて登録したい

という野望が生まれたわけです。Delicious Library はCDやDVDやゲームソフトなど、amazon にあるものなら何でも登録できたのもラッキーでした。記憶を頼りにひたすら登録していきました。

そのうち、登録できるものが減ってくると寂しくなりました。すでに「記憶のデータ化」に夢中になっているので、この作業を止めたくないわけです。そして思いつきました。「人も登録しよう」と。

 

「人間」も登録しはじめた

本や音楽を登録しているが、それよりも自分が人生で出会った人々こそが、何よりも濃密な「コンテンツ」ではないのか。それは、一冊の本や一枚のCDより、ずっと自分に影響を与えているのではないのか。そんなふうに考えたわけです。

この時点で、Delicious Library の普通の機能では対応できなくなりました。amazon に私の知り合いは登録されてないからです(当り前ですね)。仕方なく、空ファイルを作って勝手に登録していくことにしました。

本名がわかる場合はフルネーム、アダ名しか知らない人はアダ名、日雇いバイトで一度だけ会った相手なんかは「メガネのオッサン」とか「紫のパーカーの若者」みたいに。さらにジャンルの欄には、「高校のクラスメイト」や「喫茶店バイト同僚」などと入力していく。

まあ、「人をコンテンツ扱いするかね」と今は思いますが、当時は記憶のデータ化に完全にハマッていたので、登録できるものが増えたことをシンプルに喜んでました。自分だけで思い出すことに限界を感じて、実家から卒業アルバムを送ってもらったりもしました。まさに夢中です。

この作業は楽しかったんですが、凝り性ゆえのストレスも生まれました。ライブラリを作る以上は完璧なものにしたいんですが、知り合いの顔写真がないので、サムネイルが空白になるんですね。これにイライラしてました。

つまり、本ならば表紙、CDやDVDならばジャケットをサムネイル画像にできるのに、昔の知り合いの写真は amazon のデータでは引っ張ってこれないわけです。これでは美しくない。なので「自分の脳のなかにそれぞれの人間の顔面イメージがあるのに、それを出力できないことが悔しい」と思ってました。自分に緻密なイラストを描く能力があれば、全員分の顔を描いてデータベースに登録するのに!

これもまあ、なんだか「頭がおかしくなった」と言いたくなる状態ですが、置いときましょう。このことを指して「頭がおかしくなった」と言いたいわけではないです。

 

「土地」も登録した

もちろん「土地を登録しよう」という発想も生まれました。過去に住んでいた家、通っていた学校、職場、よく行った店、観光で訪れた場所などですね。これも amazon にはないので、空ファイルを作って登録していきました。サムネイルには、グーグルマップなどを駆使して見つけた画像を登録していきました(なのでイライラしませんでした)。

こうして、「人間」と「土地」もコンテンツにしたことで、一気に作業量は増えました。楽しいのでじゃんじゃん登録していく。ようやくその作業も一段落したころ、「実際の知り合いだけじゃなく、芸能人や歴史上の人物も登録したい」と思いつき、少しだけ登録してみた時点で、飽きました。「これ泥沼じゃねえか」と思ったんですね。

まあ、すでに沼に沈んでるんですが。

 

集めたデータをどうしたか?

生まれてから現在までに読んだ小説、マンガ、本、ウェブサイト、音楽、映画、ドラマ、テレビ番組、ゲームソフト、それに、出会った人々と住んでいた土地のデータが集まりました。

このデータを整理するために、自分の人生を時期ごとに分けました。誕生~幼稚園、小学校、中学、高校、大学……というふうに、人生を段階ごとに輪切りにしていく感じです。スマートプレイリストの機能を使って、各時期の「コンテンツ」を表示できるようにしました。たとえば、「中学校」のリストを見ると、中学生の頃に体験したすべてのコンテンツが一覧で表示されるというふうに。

さらに、各コンテンツを色々なジャンルで分けてみたり、レーティング機能を使って、自分への影響度を考えたりもしてました。

 

この記録行為でどうなったか?

この作業を終えた時、自分の記憶が「他人事」になりました。それを指して記事タイトルでは「頭がおかしくなった」と表現してみました。まあ、激しく狂うというよりは、静かに淡々とおかしくなるという感じな気がしますが。

「XXX年、聖徳太子はXXXをした」みたいな文と、自分の過去の違いが、いまいち分からなくなったんですね。「それは本当に自分に起きたことなのか?」という感じ。

やはり、私の作業が特殊だったのは、

・どうでもいいようなものまで、徹底的に思い出したこと
・それをデジタルデータとして、整然と並べたこと

この二つだと思います。自分の記憶を思い出す行為はわりとよくあって、たとえば「自伝を書く」なんてのもそうですね。「インタビュアーに半生を語る」なんてのもあります。こういう場合、むしろ「自分はこういう人間だ」という感覚は強化されると思うんです。

自分の過去のうち、無意識のうちに重要な出来事を選んで語る行為だからです。あるいはデータとして思い出す場合でも、「自分を形作った10冊の本」だとか「自分に多大な影響を与えた10枚のアルバム」みたいな形ならば、「自分はこういう人間だ」という感覚は強化されるかもしれません。

しかし私がやったのは、「コンテンツの評価は置いといて、とにかく思い出せるものはすべて思い出すこと」と、「それをパソコン上にデータとしてまとめること」だった。これが「記憶を他人事にする」という効果を生んだんじゃないでしょうか。

これで終わってもいいんですが、最後に記憶のデータ化と創造性の関連について。

 

オマケ:ライフログは「創造性」と関連するか?

たぶん、あんまり関係ないです。

結局、創造性については、その場でヒョイッと記憶から出てくることが重要で、そこは運動神経に似ている。手持ちのカードから選ぶように記憶は引き出せない。「このネタがある、あのネタもある」というふうに複数のネタをデータとして用意して、そこから随時選んでいくという発想はあると思うんですが、どうもこれは、いまいち面白いものにならないんですね。

創造性は「その場でヒョイ」です。もうすこし一般的な言葉で言えば「ひらめき」です。何かを作る場合は、「よくわからないゴチャゴチャした記憶の混沌」から、必要に応じて「適切なものが勝手に出てくる」という現象を信用するしかないんでしょうか。そこをデータ化して管理してもうまくいかない。「なんだかよく分からないが、こういうものが出てきた」と感じられるときに、良いものになってる気がします。

やはり、分析的な発想で作られたものは、分析的な思考であっさりと殺せてしまうんじゃないですかね。

 

結び

ということで、今回はライフログにハマッていた時のことを書いてみました。もうひとつ、冒頭に挙げたように「自分の日々の行動をパソコンに記録する」ということもしていたので、これもまた別の機会に書いてみようと思います。

 

 

<過去のコラムはこちらから!>
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ライター:上田啓太

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京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita