雑念日記|あいみょんの分裂、他

2021.09.17

雑念日記|あいみょんの分裂、他

「雑念日記」は、家から出ないことに定評のあるライター・上田啓太が、日々の雑念や妄想を書いていく連載です。今回は、文字列ループ、あいみょん、どうぶつビスケットについて語ります。

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    ほとんど家から出ずに黙々と一人で生活していると、さまざまな雑念が頭に浮かんでは消えてゆくもの。

     

    この日記では、家から出ないことに定評のあるライター・上田啓太が、日々の雑念や妄想を文章の形にして、みなさんにお届けします。

     

    今回は、

    ・文字列ループのサイコ感

    ・あいみょんの分裂

    ・どうぶつビスケットで動物園を作る

    の三本です。

     

    上田啓太

    文筆業。ブログ「真顔日記」を中心に、ネットのあちこちで活動中。
    ブログ:真顔日記 Twitter:@ueda_keita

    人は2000連休を与えられると、どうなるか?

     

    文字列ループのサイコ感

    金沢の市役所から健康保険の書類が届いた。その封筒のデザインが面白かった。封筒の内側に薄青色の模様が印刷されているのだが、よく見るとそれはすべて文字で、

     

    かなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわかなざわ

     

    と書かれていた。しばらく笑っていた。

     

    まあ、たんにそういうデザインということなのだが、どうも同じ単語がびっしり書かれていると、サイコ人間の手紙を連想して笑ってしまう。金沢市が発狂していると思った。自治体が狂うことあるか。

     

    こうした心理は不思議なもので、たとえば高校の教室で一人の生徒がクラスメイトに手紙を渡して、そこに小さく「好き」と書かれていれば、青春映画のワンシーンといった感じだが、同じ状況で手紙一面にびっしりと、

     

    好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き

     

    と書かれていた場合、惨劇の予感がする。青春映画にしてはサイコホラーの味つけが強すぎるし、クライマックスでは二人の生徒が刃物を片手に向き合って、えんえんと生き死にの話を続けることになる。

     

    今年の一月頃、散歩中に近所の小学校の前を通った。生徒たちの書きぞめが飾られていたのだが、ああいう課題では学校側が内容を指定するから、全員、同じ言葉を書いていた。それが緑色のボードを等間隔で埋め尽くしていて、これもよかった。

     

    明るい未来 明るい未来 明るい未来 明るい未来
    明るい未来 明るい未来 明るい未来 明るい未来
    明るい未来 明るい未来 明るい未来 明るい未来
    明るい未来 明るい未来 明るい未来 明るい未来
    明るい未来 明るい未来 明るい未来 明るい未来

     

    なんとなく、未来は暗い気がした。ただようディストピア感。

    あいみょんの分裂

    ハルノヒ【通常盤】(特典なし)

    駅前の人ごみを歩くたび、あいみょんを何人か見かけている気がする。

     

    もっとも、私はあいみょんの外見をよく知らない。有名な曲は好きで聴いている。『マリーゴールド』とか『君はロックを聴かない』とか。最近だと『裸の心』がすごくよかった。それにメディアにふれていると自然とあいみょんの写真は目に入る。だからまったく外見を知らないわけでもない。

     

    要するに、非常に雑にテキトーに、あいみょんの外見を記憶している。そして駅前の人ごみを歩くたび、毎回、あいみょんを見かけた気分になっている。こんなものは認知のバグだろう。あいみょんに対する粗雑な記憶と、大量の通行人を視界に入れたとき特有の粗雑な処理の結果、頭脳が「もしかして:あいみょん」というサジェストを出力している。

     

    粗雑と粗雑が恋をして、アホらしい認識を産み落とす。反省しなければならない。あいみょんはこの世に一人しかいないし、むやみに分裂することもない。私の住む町に何人もいるはずがない。何がどうなった結果、私は通行人をあいみょんとして認識しているのか。

     

    考察結果を書いておく。

     

    重ための黒髪に、濃い赤のリップ。そして、ボディラインを強調しないダボッとした服。私の脳は、この三条件を満たした人間をすべてあいみょんとして認識していることが発覚した。なさけないよ。ディープ・ラーニングの発達を待つまでもなく、私の脳はコンピュータに負けている。しっかり確認する前に、三つのヒントで強行突破。

    どうぶつビスケットで動物園を作る

    どうぶつビスケットをテーブルに並べて、巨大なサファリパークを作る。ライオン、ゴリラ、ワニにゾウ。ビスケットにはさまざまな動物が描かれている。キリンや、シマウマや、サイもいる。ビスケットを並べただけなのに、広大な動物園ができあがる。

     

    明日はコアラのマーチを買ってきて、動物園におけるコアラの割合を激増させるつもりだ。

     

    「この動物園、ほとんどコアラしかいないじゃねえか。それに、どのコアラも色々な格好をして、好き放題していやがる」

     

    お客さんからの、そんなクレームが予想される。無視しよう。

     

    その後、アルファベットビスケットを買ってきて、世界初の、動物とアルファベットの両方が楽しめるサファリパークを創設する。ゾウのとなりに、Bがいる。Sのとなりに、コアラがいる。文字と動物の未曾有の混淆。これは、お客さんがたくさん来るにちがいない。

     

    しかし、遠くから見ると、キリンとhの区別が付かない。お客さんは困惑するかもしれない。キリンもまた、これまで長い首によって高いところの葉っぱを独占していたはずが、突如あらわれたライバルに困惑している。キリンの子どもの中には、親キリンと間違えてhになついてしまったものもおり、園内はまさに混乱のきわみである。

     

    一方、ゴリラはHを鉄棒と勘違いして、面白そうにぐるぐると回転している。

     

    しばらくは平和な日々が続くだろう。園内の多数派を占めるコアラたちと、さまざまな種類の動物たちと、AからZまでのアルファベットたちが、それぞれ自由に活動するだろう。

     

    私はその光景を眺めながら、はやくお客さんが来ないかと、わくわくして待つことだろう。

     

    だが、ある時、コアラたちの中に、自意識に目覚めた者があらわれる。自意識を持った存在に平穏の日々はなく、コアラたちの頭のなかを無数の問いが埋め尽くしてゆくことになる。コアラたちは周囲を見回し、ひとつの疑念を抱くだろう。

     

    「他の生きものたちと違い、われわれだけが分厚くふくらんだ肉体と、体内に流れる黒いチョコレートを持っている。これは一体、なぜなのだろう?」

     

    こうしてコアラたちは、自意識を持った生きものが到達する普遍的な問いを発することになるだろう。すなわち、

     

    「わたしたちは何者で、どこから来たのか?」

     

    コアラたちの探求の日々は続き、やがて、ひとつの発見に至るであろう。

     

    「われわれコアラ族の身体には、一個の小さな穴が空いている。この穴は、他の動物やアルファベット族には見られない特徴である。遠い昔、われわれも他の生きものと同じく、薄っぺらなビスケットに過ぎない時代があったのだろう。しかし、何者かがこの小さな穴を通して、われわれに黒々としたチョコレートの息を吹きこんだのだ」

     

    とうとうコアラたちは、神の名としてのLOTTEを、あの懐かしいロッテの響きを思い出すであろう。

     

    コアラたちは園内を見回して、神の名を構成する四文字のアルファベットが当たり前のように存在していたことに驚くであろう。忘却の過ちを懺悔して、コアラたちはL、O、T、Eの四字に特別な地位を与え、とくに横並びのT・Tを〈聖なる連結〉と呼んで、最上の地位に置くであろう。

     

    神の概念を持たないゴリラどもは、こうした信仰をまったく理解しないであろう。ゴリラどもは相変わらずアルファベットで面白そうに遊び、Lによじのぼり、Oに飛び込み、Tにぶらさがり、Eを元気よく遠くへ放り投げるであろう。

     

    コアラたちの目には、こうした行為は神への冒涜にしか映らないであろう。

     

    戦争がはじまるであろう。

     

    コアラとゴリラの争いは、やがて他のすべてのビスケットを巻き込んで、終りのない戦いへと発展するであろう。無数のビスケットが砕かれるであろう。多量のチョコレートが流されるであろう。平和な大地は黒々とした血で染め上げられるであろう。

     

    長い戦争が終った時、地上に残る者はなく、柔らかなチョコレートの海を、無数のビスケットの残骸がむなしく漂っているだけであろう。

     

    熱い季節と冷たい季節が交互にやってきて、チョコレートの海は溶解と凝固を繰り返すであろう。

     

    ある日、動物園にようやく一組目のお客さんがやってくるであろう。それは布きれを身につけたヒト族の男女で、硬く凍りついた大地を踏みしめ、希望に満ちたまなざしで、何もない世界を見渡すであろう。二人はこの土地に街を作るだろう。地の底に眠る無数のビスケットの残骸を、今はまだ知ることもなく。


     

    ということで、今回は三本の日記でした。

    それでは、また次回。

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    この記事を書いた人

    上田 啓太
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