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「体力がなくて働けない」は甘えじゃない 世間の“ふつう”に合わせない働き方|絶対に終電を逃さない女さん

絶対に終電を逃さない女さんインタビュー

体力がなくて“ふつう”に働くのがしんどい。でも、これって甘えなのかな……。そんなふうに罪悪感を抱いていませんか。

今回お話を伺ったのは、虚弱体質で「1日8時間×週5日」という働き方がどうしても難しかったという文筆家・絶対に終電を逃さない女さん。エッセイ『虚弱に生きる』には、そんな自身の体験や考えがつづられています。

世間の“ふつう”と比べず、自分なりの働き方に向き合うヒントについて伺いました。

「ふつうの働き方」がしんどい人はこんなにもいる

💡POINT
  • 「体力がない」というつぶやきが、予想以上の反響を呼んだ
  • 努力をしても人並みの体力には届かず諦めがついた
  • 「他者からの共感」が自分を受け入れるきっかけに
著書『虚弱に生きる』では、「体力ありき」で設計された世の中や働き方に対する生きづらさが描かれています。まずは、ご自身の経験を発信しようと思ったきっかけをお聞かせください。

絶対に終電を逃さない女さん(以下、終電):もともと「発信しよう」と強く思っていたわけではなく、SNSに何気なく「肩こりがひどい」「膝が痛い」「体力がなくて人並みに長時間働けない」といったことをぽつぽつとつぶやいていたんです。

そしたら、虚弱体質についての対談の依頼をいただいて。そこからWebメディアへの寄稿や書籍の出版につながっていった、という感じです。

具体的にはどのような反響が多かったのでしょう?

終電:「フルタイムで働くこと自体が難しい」「フルタイムで働けてはいるけれど、その分、プライベートや日常生活が立ち行かなくなっている」といった方からの共感の声が多かったです。

「虚弱体質」のリアルをつづったエッセイ
▶『虚弱に生きる』(扶桑社)

それまでは「体力がなくて人並みの半分も働けていないのは自分だけだ」と思い込んでいて、「自分は怠けているだけなのではないか」という疑念もありました。

でも、しんどさを感じている人がこれだけいるのなら「そもそも“ふつう”の基準が高過ぎるのでは?」と考えるようになっていきました。

現在は働く時間の限界が「1日4時間」だと著書に書かれていました。終電さんは、自分に最適な働き方をどのように見つけていったのでしょうか?

終電:人におすすめできるようなやり方ではありませんが......この7〜8年間、自分の限界に挑戦しては体調を崩す、ということを繰り返してきました。

その間、食事管理をしたり筋トレや有酸素運動を取り入れたりと、できることは1つひとつ試してきたんです。

それでも「1日8時間×週5日ができる体」には到底届かず「1日4時間」が自分の限界、という結論にたどり着きました。

「1日4時間“しか働けない”」という結論を受け入れ難く感じることはありませんでしたか?

終電:私はもともと「バリキャリ女性」に憧れていたので、すぐには受け入れられませんでした。

「どうしてみんなと同じように“ふつう”に働けないんだろう」「怠けているだけなんじゃないか」と思ってしまって。

「1日4時間しか働けない」と口にすれば「甘えるな」と受け取られるかもしれないと思うと、恥ずかしくて人に言えない時期もありました。

絶対に終電を逃さない女さんインタビュー

でも、最近ようやくある種の諦めがついた、と言いますか。体力をつけるために最大限努力はしたけど、それでも無理だったのならもう受け入れるしかないなと。

あとは、発信を通じて自分と似た悩みを抱える方がいると知れたことが、大きかったと思います。

1人で抱えていたしんどさを誰かと分かり合えた経験が、少しずつ自分の「限界」を受け入れるきっかけになったのかもしれません。

目に見えない“内臓や体力”にも、多様性がある

💡POINT
  • 体の“中”など目に見えない個人差は見落とされやすい
  • 何に疲れを感じやすいかは人それぞれ
  • 母の「ゆっくりでいい」という言葉が救いになった
世の中の基準ではなく「自分の限界」を肯定できるようになるために、まず何から始めるのが良いと思われますか。

終電:まずは「内臓や体力にも多様性があって当然」と捉えてみることでしょうか。

身長や体重、骨格や筋肉のつき方が人それぞれであるように、「内臓」や「体力」など見えない部分にも個人差があるのは自然なことだと思っています。

ただ、その“見えない個人差”は見落とされがちだと感じていて。例えば「人とのコミュニケーションに疲れてしまう」「目が疲れやすくパソコン作業の負担が大きい」など、何に疲れを感じやすいかは人それぞれだと思います。

私たちは小さい頃から、「順位」や「平均点」といった指標で人と比べられることが当然の環境で育ってきましたが、本来は「そもそも人と比べる必要はない」という前提を大切にできると良いですよね。

つい周囲と比べそうになってしまうとき、終電さんはどのように気持ちを切り替えていますか?

終電:そういうときは「人と比べなくていい。ゆっくりでいい」という母の言葉を思い出すようにしています。保育園を卒園するときに母がくれた手紙にそう書かれていたんです。

絶対に終電を逃さない女さんインタビュー

私は子どもの頃から苦手なことが多くて、友達ができなかったり、運動会のダンスが踊れなかったり、保育園に行けなくなった時期もありました。

大人になってから聞いた話なのですが、母も最初は「みんなと同じようにできてほしい」と悩んでいて、いろいろ考えた末に卒園の時には「そのままの娘を受け入れよう」という心構えにたどり着いたそうです。

身近な人からそういった言葉をかけてもらえると、気持ちがラクになりますね。

終電:私自身、自分の体調や体力を理解して「どうすれば健やかに生きられるか」が分かってきたのは、30歳手前になってからでした。

「遅過ぎる」「もっと早く自分のことを理解していれば......」と感じて落ち込むこともあったのですが、そんなときこそ「ゆっくりでいい」と言ってくれた母の言葉を思い出すようにしています。

「虚弱」という言葉が、誰かと分かり合うきっかけになれたら

💡POINT
  • 自分の体質を理解するために日々「小さな工夫」を試してみる
  • 体調の問題は自分の「人間性」と切り離して考える
  • 「体調不良は怠けではない」ともっと世の中に伝わってほしい
終電さんのようにもっと「自分の体質を理解したい」と思う人は少なくないと思います。そのような方におすすめしたいことはありますか?

終電:先ほどお話ししたような「限界まで挑戦しては体調を崩す、を繰り返して自分の体質を理解する」はおすすめできないので.....。

疲れを減らせそうなことを日々の生活に取り入れてみるところから始めるのはどうでしょうか。

例えば、読者の方が「荷物で意外と重いのは小銭」と教えてくれたことがあって「たしかに!」と「財布と小銭を持ち歩くのをやめる」を試してみたんです。そんな、本当に小さなことでも試してみる価値はあると思っています。

確かに最初から「運動習慣をつける」などの大きな目標を掲げても、そもそも体力をつけるための体力がない......なんてこともありますもんね。

終電:そうなんです。そもそも新しい習慣を試すにはそれなりの体力が必要ですから。

それを「怠惰だ、甘えだ」と自分の性格や意志の弱さの問題だと考えてしまうと、どんどんメンタルの調子が落ちて悪循環に陥ってしまいます。

ですから、何かを試す元気さえないときは「今はただ疲れているだけなんだろうな」と軽く受け止めて、まずはしっかり休む。ちょっと元気が出てきたら、気になっていた小さな習慣を試してみる。

いずれにしても、体調の問題は自分の人間性と切り離して向き合うのが大事なのかなと思っています。

絶対に終電を逃さない女さんインタビュー

著書には「健康な人にこそ、虚弱体質のことを知ってほしい」という想いが込められているそうですね。誰しもが生きやすい・働きやすい社会になるために、どんな変化が必要だと感じていますか。

終電:「体調不良は怠けではない」こと、そして「努力をしても人並みの体力が手に入らない人もいる」ということが、世の中に伝わっていけばいいなと思っています。

実際、読者の方から「自分の体質を理解してほしくて上司に本を渡しました」「親に読んでもらいました」という報告をいただくことがあって。

この本が「自分のしんどさ」を周囲に伝えるための手段になるだけでなく、「他者のしんどさ」に想像力を働かせるきっかけにもなってくれたら嬉しいです。

いずれは「虚弱」という言葉が社会に浸透し、説明しなくても「ああ、それね」と当たり前に理解し合える世の中になったらいいですよね。

取材・文:貝津美里
プロフィール写真:山川修一(扶桑社)
編集:はてな編集部

お話を伺った方:絶対に終電を逃さない女さん

絶対に終電を逃さない女さんプロフィール

1995年生まれ。大学卒業後、体力がないせいで就職できず、専業の文筆家となる。様々なWebメディアや雑誌などで、エッセイ、小説、短歌を執筆。単著に『シティガール未満』(2023年、柏書房)、『虚弱に生きる』(2025年、扶桑社)、共著に『つくって食べる日々の話』(2025年、Pヴァイン)がある。
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