目標に向かって突き進め! 「やりたいこと」を見極めて、欲深い私は生きていく

文・写真 あたそ
ケニアで撮った写真 旅行中は写真を撮るようにしている。この写真はケニアで撮ったもの。

私が新卒入社を捨てて大好きな旅行、しかも海外に出てみようと決心したのは、リビングで寝転がりながら、愛犬と戯れているときだった。大学3年生になり、周りに流されるようになんとなく就職活動を始めたころ。今思い返すと現実逃避だったかもしれない。でも、あのころの私は「行くなら今しかない」と思っていたし、「まとまったお金を貯めて、海外に行く」という小さな目標ができた瞬間、なんだって頑張れると思った。目の前に目標や夢が広がっている世界が、キラキラして見えたような気がした。本当に。

私の大ざっぱすぎる人生

「貯金をして海外へ行く」という目標はすぐに実現した。アジア、中東、アフリカ、また中東と約9ヶ月間の海外放浪が終了し、現在は都内でまったりと会社員をしている。いやあ、まさかね。「どうせまともに働けない」と周囲から散々言われ続けた私が、こうして毎日満員電車に揺られながら同じ場所に何年も通うなんてね。思ってもみないことだった。

正直なところ、帰国当初は「本当に正社員として働けるだろうか」「就職活動がいつまでも上手くいかなかったら、どうしよう」と、胸の内は不安だらけだった。新しいことを始めようとすると「もしも」「万が一」を考えてしまうけれど、過ぎてしまえばどうってことはない。不安がその通りになることなんて滅多にないし、大抵はなんとでもなる。

その証拠に、大したスキルもないくせに、海外放浪後に入社した前職も現職も案外すんなり内定をもらっている。「就職できなかったら、精神がぶっ壊れてしまうかもしれない」と大げさに考えていた過去の自分を笑ってやりたい。

旅行中に撮った写真

だって、こんな海外放浪なんて馬鹿な旅、絶対若いときしかできないじゃないか! と日本で落ち着いた今でも思う。11人乗りのハイエースに32人がぶち込まれて3時間真っ暗な夜道を爆走するとか、爆破テロがよく起こるらしい地区で寝泊まりするとか、水もガスも止まって5日間シャワーも浴びられないとか。まあ、年齢はあまり関係ないような気もするけど、なるべくなら過酷な体験をするのは若いうちだけにしておきたいもの。

そして、海外放浪の経験が生きているのかいないのか、現在は様々な媒体で記事を寄稿したり、トークイベントを行ったりしている。やっぱり、人生なんとかなるみたいだ。

平日はダラダラと文句を言いながら会社員として働き、空いた時間や休みの日に文章を書いたり好きな趣味に明け暮れたりしている。たまに友達と酒を飲んで、記憶を無くしたり暴言を吐き合ったりする。悪くない。全然悪くない。昔から集団行動ができないし、モテないし、酒癖悪いし、新卒入社もしなかったし、初めて働いた会社も数ヶ月で辞めてしまったけど、全然悪くない人生だと思う。

「女性の限界」を感じる中で、どんな選択をしていくべきか

そもそもの私は、とても欲深い人間だと思う。というか、常に欲しかない。更に最悪なことに、自分の欲を満たすための時間、お金、労力を惜しまない。バリバリ働きたいけど、海外へ渡って長期間フラフラしたい。働かないのも大好き。結婚もしてみたいし子どもも欲しいけど、自分のためだけにお金と時間を費やす期間ももっと欲しい。友達とのルームシェアも楽しそうだ。海外での生活やワーキングホリデーもなんだかよさそうな気がする。

本当なら、私の中に眠る欲望の数々を全て叶えていきたい。想像できる限りの色々なことを経験してみたい。

しかし、女性には、タイムリミットがあるようだ。30歳? 35歳? 分からないけど。この辺りの年齢になると、周囲からの「結婚はしないの?」「今のうちに子どもを産んでおかないと後悔するよ」とプレッシャーをかけられる風潮が残念ながら未だある。子どもも授かりにくくなってしまうらしい。もちろん、周囲の意見なんて気にしなくていいと思うし、女性の価値を決めるのは年齢だけではないと考えている方がほとんどだろう。でも、特に出産を考える女性なら、誰もが年齢を意識するときがくると思う。労働環境や家事分担、様々な面で男女が平等になるとしても、女性の身体が都合良くライフスタイルに合わせて変化してくれる訳ではない。

つまり、結婚・出産の可能性がほんのわずかにでも残っている限り、このボーダーラインによって私たちは満たすべき欲望、そして自分にとっての幸せと向き合わなければならないのだと思う。

ある意味での「女性の限界」を感じる中で、私はどんな選択をすればいいのだろう、と悩むことがある。昔も、今も。周囲の男性の目、親族からの結婚の催促、親友の結婚、そして自分自身の将来を考えたとき……。私を取り巻く様々な要素が、大きな壁となって目の前に立ちはだかっている。女性の限界という名の壁にぶち当たることが日常生活の中でよくある。まあ、ある。

旅行中に撮った写真

人生は長い。でも、自分のためにだけ使える時間は?

2016年の厚生労働省調査によると、日本人女性の平均寿命は87.14歳らしい*1。長い。長すぎる。87年もあったら、どんな欲望も叶えられそうな気がする。

でも、健康で体力がある期間は? 自分のためだけにお金と時間が自由に使える期間は? 自分に対してだけ責任を取っていれば基本的に大丈夫な時期は? と考えると、かなり短いことが分かる。

時間に制限がある中で、迷っている暇もない。もったいないと思う。

人生の中でやりたいことがあるなら、ピックアップして細分化して、一つ一つ着実にクリアしていけば、どんなに大きなことでもできる。情熱とかやる気とか、そういうのがあれば、なんだってできると信じている。

「難しいかもしれない」「もしも失敗したらどうしよう」と考えることだって、ある。でも、諦めたり失敗したりすることがあっても、今なら自分にしか迷惑がかからない。最高。自分さえよければそれでいい。立場もパートナーも子どももいない今だからこそ、自分だけが納得のいく選択をしていけばいいだけだ。もちろん、仕事仲間とか友達とか、周囲に迷惑がかからないよう配慮する必要はあると思うけれど。

旅行中に撮った写真

私の「やりたいこと」は、長期間海外を放浪することだった。かなりシンプルなことだ。金と時間があれば、誰だってできる。それでも、出発まで「本当にできるのかな」と思っていた。

目標額を決めて貯金して、必要なものを買いそろえて、自分の感情の赴くままに好き勝手に行動する。今まで見たことのない景色を見て感動したり、触れたことのない文化に触れたり。まあ、病気にもなったし危ない目にあったりしたのも、今となってはいい思い出だ。

大したことではないけれど、私にとってはとても大切な経験になり、自分への自信にもつながっている。

自分の欲を分別して、やるべきことを見極める

以前は、「旅行なんて趣味の一環だし、今後の人生に役立つことはないだろう」と思っていた。でも、その考えはどうやら間違っていたようで、経験、記憶、様々なものが私の新しい価値観や考えに反映されている。海外で見聞きしたものだけじゃない。日常生活で得たありとあらゆるものが私の血潮として流れているんだと思う。一見役に立たなさそうなことが、ある日パズルのようにピタリとはまることがある。色々なことに興味が湧くようになったし、知りたいことが更に増えた。これは、自分でも意外なことだった。

海外へ放浪せず、普通に就職活動をして、新卒入社できちんと働いていたら、その選択なりの満足できる時間を過ごしていただろう(結婚はしていないと思うけど……!)。安定だって、生活をしていく上では凄く重要な要素だ。でも、後悔していたかもしれない。自分にとっては退屈で、つまらない生活をしていた可能性だってある。

結局大事なのは、自分が今どんなことをしたくて、その経験を何に生かしていけるのか、将来後悔する可能性を低くできるのか、というのをしっかり見極めることなんじゃないかと思う。今は、仕事も趣味もある程度満足して適当に楽しく過ごせている。まあいいかなあ、と思う。気に入っている。

結婚・出産の経験はまだないし、自分が結婚生活を送っているところも人の親になっているところも全く想像できない。「いつか結婚や出産をしてみたいなあ」というフワフワとした思いが、固い決意に変わったとき、私なりの目標を設定して、そこに向かって努力していくんだと思う。

実は、前々から転職を考えていたのだけれど、つい最近転職先も見つかった。今の会社でできることはやりきったと思うし、今の自分の力でもっと好きなことや新しいことがやれるんじゃないかと思ったから。

やりたいことなんて思いつく限りいくらでもある。でも、きっと自分の欲望を全て満たすなんてきっと無理だ。恐らく人よりも多すぎる欲の中から、本当に何がしたいのか、そしてどんなことにつなげられるのかを見極めて、まだまだ自分の好きなように生きていたいと思う。

著者 あたそid:ataso01

あたそ

横浜在住。よくものをなくす。会社員をしつつ、執筆やトークイベントなどを行っています。音楽以外には、焼き鳥やもつ煮の美味しい居酒屋、辺鄙な地へのひとり旅、ヒロインがぶっとんでる漫画、女々しい小説、退屈な映画、甘めのシーシャなどが好き。
ブログ:私地獄
Twitter:https://twitter.com/ataso00

次回の更新は、10月11日(水)の予定です。

編集/はてな編集部

*1:厚生労働省「平成28年簡易生命表」参照