仕事は“人生の一部”。仕事と適度な距離をとり、生活を大事にできるようになった話


転職や子どもの誕生を機にワークライフバランスを見直し、テレワークOKの会社を選んだイチさんが、これまでの試行錯誤から得た「仕事一辺倒にならないための心構え」を紹介します。

「仕事が忙しく、自由な時間がなかなか取れない」「テレワークになって、だらだらと遅くまで働くようになってしまった」など、働き方の形態にかかわらず、仕事とプライベートのバランスの取り方には多くの人が課題を感じているのではないでしょうか。

「仕事に人生を捧げる必要はない、生活を大事にしたい」と考えテレワークを始めたはずのイチさんも、最初は残業時間が増えるなど、なかなか切り替えが上手にできなかったそう。最終的に自身に合っていたのは「仕事と適度な距離を保ちつつ、あえてオンとオフも切り分け過ぎない」という方法でした。

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こんにちは。テレワークで働いている会社員の「イチ」です。都内にあるIT系の会社から片道1時間半ほど離れた地方に暮らしており、一児を育てたり、デスク周りのガジェットや働き方に関するブログを運営したりしています。

今でこそ「仕事=人生の一部分」と捉え、家事・育児やブログでの発信活動、プライベートの予定もほどよくこなせていますが、社会人になったばかりの頃はまさに「仕事一辺倒」の生活を送っていました。

この記事では最初の転職をきっかけに仕事漬けの生活から抜け出した私が、結婚・子どもの誕生をきっかけにテレワークという働き方を選び、自身に合った「仕事とプライベートのバランスの取り方」を見つけるまでを振り返ります。

ワークライフバランスを意識した働き方に興味がある人、仕事だらけの生活を変えたい人の参考になればうれしいです。

人生初の転職を経て「会社に尽くすべき」という考えが180度変わった

10年以上前、私の新卒時代の生活は今とはかけ離れたものでした。ラッシュ時に満員電車で通勤し、連日深夜残業をするのが当たり前の環境。

自ら進んで選んだ業界で幸いにも良い仲間に恵まれていましたが、そんな生活を3年ほど続けていたら無理がたたって心が折れてしまい……。逃げるようにして人生初の転職を決意。

それまでの私は「転職=リスクのあるもの」と捉え、「入社した会社には一生添い遂げるべき」という考えを持っていました。

しかし(前向きな動機ではなかったものの)実際に転職をしてみると、暮らしに時間的な余裕ができ、友達と会ったり、買い物や散歩などに時間を使えるようになったり、前以上にやりがいを感じる仕事に出会えたりとポジティブな出来事が。

この経験を経て、会社に尽くすべきというそれまでの考え方が変わり、「仕事」という存在と少し距離をとれるようになりました

趣味ができる。パートナーができる。新しい体験をする。

今までに無かった経験によって自分の価値観が変わることはよくありますが、私にとってその1つが“転職” でした。「仕事=自分の全てを捧げるもの」ではなく「働き方は自分の価値観に合わせて選ぶべきもの」と思えるようになるとともに、ライフステージが変わるたびに「今の環境がベストなのか?」と考えるようになりました

次の転機は、妻の妊娠が分かったタイミング。「家事・育児のためにもっとプライベートを優先しやすい働き方がしたい」と思うようになり、通勤のない働き方=テレワークで働くことを決めました。

当時はコロナ禍に突入する前でテレワークは一般的ではなかったものの、業界によってはリモート勤務をOKとしている企業もあったため、条件で絞って転職先を探し、無事希望する条件の職場で働き始めました。

「テレワークを選んだのに残業が増えた」から脱却すべく時間の使い方を見直した

イチさんの自宅デスク
自宅のワークスペース (C)MILIBLO

二度の転機で「仕事との距離の取り方」を意識するようになった私。しかし、テレワークで働くようになって時間的な自由度が高まったかといえば、最初はまったくそんなことありませんでした。むしろ逆です。

家の中に常に「仕事場」がある状態になったことで、一度終えたはずの仕事のことが気になって、深夜にやりかけの作業を再開してしまうことが増えました。

以前は帰宅したあとで仕事を再開するのは物理的に不可能でしたが、テレワークになったことで、自分で区切りをつけないといつまでも仕事が終わらない状況に。それは想定外の変化でした。

プライベートの時間を確保するためにテレワーク可能な会社に転職したのにこれでは意味がないと危機感を覚え、時間の使い方を見直すことにしました。

意識的に実践したタイムマネジメントの方法は2つ。

家事や育児をベースに時間割を作り、仕事の優先度を2番目に

通勤していたときは、出社時間から逆算して乗る電車や起きる時間、家を出るまでにやることを計算していましたが、テレワークになってからは、家事や育児の予定から起きる時間や稼働時間を逆算するようになりました。

というのもテレワークは「仕事」と、家事や育児といった「生活」との距離がとても近いからです。

自分で昼食を手配する必要がありますし、自炊したら当然片付けも必要です。また子どもがいると「家だから時間を気にせずのんびり働ける」といったこともありません。家にいるからこそ「仕事」と「生活」の時間をしっかりと切り替えて、食事、入浴、寝かしつけなどのスケジュールをしっかり管理する必要があります。

最初はこういった家事や育児の予定を考慮せずスケジュールを組んでしまい、仕事とプライベートがごちゃごちゃになっていました。今では仕事の予定と同じように、家での家事や育児の時間を予定に組み込むことで、しっかり時間の管理ができています。

仕事が詰まっているときは苦労することもありますが、最初から「この時間までには仕事を終わらせないと」という気持ちで働くことで、プライベートに必要な時間をきちんと確保できるようになりました。

あえて「休日に仕事のことを考えるのもOK」とする

以前から休日も仕事のことを考えてしまいがちだった私。在宅勤務で仕事とプライベートの境界があいまいになってからは、そういう機会がさらに増えました。

最初は「せっかくの休みに、また仕事のことを考えてしまった……」と罪悪感を感じていたのですが、ある日、後悔で終わらせるのはもったいないと思い、頭の中で考えたことをメモに起こしてみることに。

すると、仕事のアイデアが生まれたり、頭の中が整理されて平日の仕事時間の短縮につながったりといったことがちらほらあったのです。

テレワークはどうしても、オンオフの切り替えが難しいものです。だからこそネガティブな気持ちで「仕事のことを考えてしまった」と自分を責めるよりも、あえて切り替えずに「平日の時短になるかも……!」と思って行動することで、少しでもポジティブに過ごせるようになりました。

とはいえ、休日にずっと仕事のことを考え続けてしまってはせっかくの休みが台無しなので「考えるのはこの仕事のこの部分だけ」と最初に終わりを決めるようにしています。

例えば最初に考え始めてしまった範囲のタスクだけに絞り、他の関連タスクは一旦脇に置いたり。そうすることで気持ちを切り替えやすくなります。

つい仕事を優先してしまいそうになったときに意識したいこと

前提として今の私は、仕事に人生を捧げたいとは思っておらず、「自分の趣味や家族との時間を楽しむためにお金が必要」という感覚で働いています。

しかしそんな私でも、仕事を理由に趣味やプライベートな時間を蔑ろにしてしまうことはあります。そんな自分に嫌気がさすことも。

そんなときは、これから紹介する2つを意識的に考えるようにしています。

仕事は暮らすための「手段」であって「目的」ではない

仕事は嫌いではないし、たまには楽しいと思える場面すらあります。それでも、

「仕事はあくまで人生を豊かにするための手段で、仕事以外にもっと大切にしたいことがある」

この気持ちをベースに行動を決めるようにしてから、すごく気持ちが楽になりました。

私の場合は、子どもがいるのでその気持ちを意識しやすかったんだと思います。子どもでなくとも、例えばデスクのまわりに趣味の写真やモノなどを飾るなど、常に「仕事以外に大切にしたいこと」を意識できるようにすると良いかもしれません。

私が会社に提供しているのは「時間」ではなく「成果」である

会社が求めているのは鬼のように残業する人材ではなく、しっかりと成果を出す人材のはず。言い換えれば、やるべきことをやっていれば長時間仕事をする必要はないと私は考えています。

そう意識するようになってから「仕事は終わってるけど、まだ終業するには早過ぎるかも……」といった考え方にとらわれづらくなりました。

結果として仕事の「時間」ではなく「成果」を意識し、プライベートな時間を確保できるようになりました。

そうは言っても最初からサッと仕事を終えるのは難しいと思うので、まずは「今より30分早く仕事を終える」ことから始めてみるのがおすすめです。

「この日は午前中に仕事を終える」といったやり方もありますが、それだと他の日に仕事が偏って、結局残業しなければならない場合も。個人的には、毎日の仕事時間を30分、難しければ10分でも15分でも早く終えられるようにする方が、結果として仕事と生活のバランスが取りやすくなると思います。

オンオフを「切り分ける」のではなく「融合させる」

「ワークライフバランス」と聞くと「仕事とプライベートをきっちり分けている」という印象を持たれる方も多いと思います。しかし私の場合は自分の価値観に合った働き方(テレワーク)を選んだ結果、良い意味で仕事とプライベートの境界線が無くなりました

オンオフを切り替えてメリハリのある暮らしをしているというより、暮らしていく上で必要なことの1つとして、家事・育児や趣味と同じような位置に仕事があります。

仕事が生きていく上で重要なのは間違いないですが、人生の全てではありません。また、今置かれている環境は数ある選択肢の中の1つでしかなく、「今の生活は自分の価値観に合っていない」と感じたら環境を変える方法もあります。

仕事と心理的な距離感を保ちつつ、オンオフは切り替え過ぎずにあえて融合させる。それが、私にとっては「仕事一辺倒の生活にならない」ために重要なことだったのかなと思います。

結果的に今は自宅で仕事をしつつ、朝・昼・夜と子どもと食事を楽しんだり、一緒にお風呂に入ったりという暮らしができるようになりました。私の場合はテレワークがきっかけでしたが、仕事と一定の距離をとる心がけのおかげで仕事以外の時間がより充実していきました。

この記事が少しでもあなたの暮らしや価値観を変えるキッカケになれば幸いです。
それでは!

編集:はてな編集部

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著者:イチ

イチさんプロフィール画像

都内にあるIT企業で働きながらブログ運営 / Webライターとして記事を執筆する会社員。2016年、子どもの誕生を機にテレワークにワークシフトして地方移住した1児の父。ブログ「MILIBLO」では、リモートワークを快適にする方法や仕事に役立つアイテム等を紹介している。
ブログ:MILIBLO Twitter:@ichi_MILIBLO

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