夫婦での在宅ワーク、ストレスや不満をためないコツは? ベテランリモートワーカーが工夫してきたこと

文・イラスト ちょっ子

どうも、イラストレーターのちょっ子です。私は夫と息子(現在小学4年生)との3人家族。夫は息子が生まれる少し前に独立し、自宅でデザインの仕事を始めました。私も出産後そのアシスタント兼イラスト担当として共に働くことになり、以来約10年にわたり、夫婦2人での在宅ワークが続いています。

コロナ禍による在宅ワークの普及で、同居する家族やパートナーと家で仕事をするようになった方もいらっしゃると思います。そんな中で「オンラインMTGなどで発話しづらい」「相手の存在が気になって集中できない」など、同じ空間で仕事をするゆえのストレスを感じることもあるでしょう。

コロナ禍にそういったストレスをため込んだことで夫婦仲が悪化するケースも増えていると聞き、10年ほど前の私たちのことを思い出しました。私たちも在宅ワークを始めてしばらくは、同じようにストレスを抱え込み、家の中が険悪なムードになってしまうことが多々あったのです。

現在もケンカになることが全くないわけではありませんが、うまくいかない状況の中で自分たちなりに少しずつ改善を重ねていき、あの頃に比べたらずいぶん関係は穏やかになりました。そこで今回は、私たち夫婦が在宅ワークをするにあたって、互いに不満をためないためにどんなことを工夫してきたかを振り返ります。

夫婦で在宅ワークを始めた当初に悩んだこと

夫婦で在宅ワークを始めたのは、息子が2カ月の頃。保育園に入れられるタイミングまでは、仕事をしながら自宅保育をしようと考えていたのです。

当初は自宅のリビングを事務所とし、そこに2人分のデスクとパソコン、そしてその傍らにベビーラックを置いて0歳の息子の世話をしながら仕事をしていました。


リビングで仕事

しかし育児をしながらの作業は想像していた以上にはかどらず、「思ってたんと違う」状態……。夫が取引先と電話するにも一苦労でした。(そういうときは私が息子を連れて別室に移動したり、逆に夫が別室に移動して話すようにしたりして対応しました)

育児しながらの仕事は苦労の連続

独立したての仕事に初めての育児……。思えば当時の私たちには常に不安が付きまとい、精神的な疲れが蓄積していました。

お互いにストレスが蓄積

夫はピリピリしていることが多く、ストレスから体調も崩しがちに。私も24時間体制の育児による睡眠不足でまともに頭が働いていない状態で、仕事量はほどほどにとどめていたものの、その分、料理から洗濯から掃除まで、家事の大半を私が担っており常にヘトヘトの状態でした。

当時は家事をがんばり過ぎていた

コロナ禍の在宅ワークにおいても、夫婦いずれかに家事の比重が偏ってしまうケースがあると聞きます。家にいる時間が長くなったことで「完了していない家事の存在」に気付きやすい方がいつのまにか負担を抱えがちになってしまうのかもしれないし、「家事は女性が主に担うべき」という固定概念にとらわれ妻側に負担が偏る家庭も多いかもしれません。

私も今となっては何であんなにがんばっていたのかと思うのですが、当時、食事を三食とも自分で作っていた時期がありました。無意識のうちに「家にいるんだから、仕事を減らしているんだから、主婦なんだから、やらなければ」という気持ちになっていたのだと思います。

そして、不安定な精神状態の2人が24時間一緒に過ごしていると、仕事に加えて生活のいろんなところが気になって、お互いへの不満がたまってきます。家事育児のやり方・配分、互いの態度の一つ一つを巡って、ちょっとしたことでいちいちぶつかり、家庭内の空気が険悪になってしまうこともしょっちゅうでした。そんなときでも在宅ワークゆえ夫婦でずっと同じ空間にいなければならず、互いに苦痛に感じていたのです。

仕事は軌道に乗ってきたけれど、さらに余裕がなくなる日々

そんな中でも夫のがんばりで仕事は軌道に乗り、忙しさは増していきました。

先述の通り、本当は息子を保育園に預けたかったのですが、私たちが住んでいる地域には待機児童が多く、息子を保育園に入れることがかないませんでした。そこで時々無認可保育園の一時保育を利用したり義母に頼ったりして、どうにか業務をこなす日々。

しかし仕事は忙しくなった上、息子はますます手が掛かる時期に突入。慌ただしい日々の中でさらに気持ちに余裕が持てなくなり、夫婦間のいさかいが減ることはありませんでした。

夫婦間のいさかいが続く

事業主としての夫の苦労を理解して十分いたわることができていたら、そんな状況にはならなかったのかもしれない……と今となっては思うのですが、私も当時は産後からずっと続く睡眠不足と育児疲れで心身がズタボロ。いたわってほしいのはこちらも同じ。2人ともいっぱいいっぱいで、建設的な話し合いができたことはほぼ無かったのです。

とうとう別室で仕事をすることに。しかしこの判断が転機になった

そしてこんな状況にお互いが限界を感じたある日……。

別室で仕事をすることに

広い住居ではなかったのですが、無理やり仕事部屋を分けて日中の距離を取ることに決めたのです。

夫は別室へ、私はそのままリビングで。1日のうち何度か進行を確認したり、必要に応じて打ち合わせをしたりするものの、作業は基本的にそれぞれ1人で集中するようにしました。

別室とリビングでそれぞれ作業

するとどうでしょう……! ほとんどケンカ別れに近い状態での部屋分けだったのですが、四六時中顔をつき合わせる環境を脱したことで、お互いに対するストレスが格段に軽減されていきました。そのうち息子も幼稚園に入り、より日中は仕事に集中できるようになると、さらに心に余裕が生まれ、夫婦間のいさかいはかなり減っていきました。

この頃から通常の仕事に加えて私個人のコミックエッセイなどの依頼が少しずつ増えてきていたのですが、夫もその状況を見て私にばかり負担がかからないよう、自然とこれまでより家事を担ってくれるようになりました。夫はもともと細かいところに気が付くタイプなので、心の余裕が生まれたことで「イライラする前に自分がやればいいか」と思い直した面もあったようです。

夫が以前より家事をやってくれるように

こうして以前に比べ平和に過ごすことができていましたが、一部屋を夫の仕事場に割り当てたため、生活空間としての部屋が足りなくなっていたことも悩みでした。なので思い切って、もう少し部屋数の多い住居へ引っ越しをすることに。

新居では夫だけでなく私も自分の仕事部屋を確保し、より快適に仕事に集中できる環境を整えました。

新居ではそれぞれ自室を持った

スケジュール共有、昼食を適当にするなどで負担を減らし、気分転換の時間も大切に

やがて息子も小学校に入り、私たち夫婦の毎日のルーティンのようなものも次第に定着していきました。

夫婦の毎朝のルーティンが定着

朝、息子が登校していったら夫と2人で家事を済ませ、午前9時から始業。その日のお互いの作業スケジュールを確認・調整したのち、各自の部屋で作業に入ります。必要があればちょこちょこ呼んだり呼ばれたりして話し合います。

同じ部屋で作業していた頃はあまり意識していなかったのですが、始業時にスケジュールを確認することで、お互いの仕事の状況が見えやすくなったように思います。また相談ごとがあるときに互いの時間を無駄に使わせないよう、少し時間が取れるかどうか逐一確認することでストレスを減らしました。私たちの場合、今のところこのやり方で十分円滑に進められています。

地味に負担だった昼食の準備は、メニューを考えたり作ったりという手間を削減し、インスタント食品や冷凍食品で以前よりも適当に。自分たちにとってがんばる必要がないところでがんばるのは一切やめ、週に一度くらいは気分転換に2人で外にランチを食べに行くようになりました。(コロナ禍になってからはテイクアウトのものを買いに出かけたりしています)。

仕事の話題だけでなく、たわいのない話をして頭を休めつつ、2人で昼食やおやつを食べるのが、ちょうどいい息抜きとコミュニケーションの時間になっています。

息抜きの時間も大切に

夕食作りは基本的には私の担当ですが、夫が作ってくれる日も多くなり、食事にまつわる私の負担は今ではかなり減りました。

おわりに

私たちの場合は「家庭内でも離れて仕事をするようにしたこと」、「家事負担を片方に偏らないようにしたこと」で在宅ワーク環境が安定しました。もちろん、離れることが可能な環境であったこと、夫が状況を見ておのずと家事をやるよう変化してくれるような人間であったことは幸運だったのだと思います。

今になって思えば「あの時もっとこういうふうに接すればよかった」と思うことも出てきますが、イライラしている状況の中では、互いに「歩み寄ろう」という気持ちはなかなか芽生えませんでした。

ケンカ別れのような状況がきっかけでしたが、「相手のことや仕事のことを必要以上に意識しなくていい」時間を持てるようにしたことが、結果として私たちの関係改善につながったと感じています。

部屋を分けることが難しくても、家具の配置やパーテーションで簡易的に空間を区切ってみたり、少しでも互いが一人で過ごせるタイミングを持てるようにするだけでも、一緒にいること自体へのストレスは少し軽減すると思います。

家事については、どちらかの仕事だと決めつけずシェアする意識を強く持ち、手間を減らせる部分は減らす方向でお互いにがんばらないことを許容できたら、さらに気持ちに余裕が生まれるかもしれません。

今後、いずれコロナ禍が落ち着いたあとも、在宅ワークが新しい働き方として定着していくような動きもあるようです。そんな中、私たちの経験が少しでも参考になればうれしいです。

著者:ちょっ子

ちょっ子

アラフォーのイラストレーターで一児の母。個性あふれる息子と夫との愉快な日常をつづった漫画ブログ「ちょっ子さん」、ゆるく更新中。

Twitter:@chokko_san ブログ:ちょっ子さん

在宅ワーク中のお悩み、どう解消する?

りっすん by イーアイデムTwitterも更新中!
<Facebookページも更新中> @shinkokyulisten

編集/はてな編集部