弾丸トラベラーの私が就職、結婚、転職を経て感じた「今」との向き合い方

 桜花

こんにちは。観劇、映画、漫画、コスメなどいろいろな趣味を楽しむおたくOL、桜花といいます。

ここ数年一番力を入れているジャンルは「旅」。誰かと行くときもあれば、一人旅をすることもあります。これまでに渡航した国は50カ国以上、月に1〜2回は週末を利用して国内外に飛ぶ弾丸トラベラーをしています。2018年はマイル修行(航空会社のマイルを貯めるために頻繁に飛行機に乗ること)にも挑み、毎週のように弾丸旅をしていました。

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今年は鹿児島や沖縄、マレーシアにも日帰りしました

できるだけ会社を休まないことを目標にしているため、日帰りか1泊2日、もしくは週末に有休を1日くっつけた2泊3日の旅が多く、短い滞在時間をいかに充実させるかに情熱を注いでいます。LCCや相部屋の格安ドミトリーを駆使するのはもちろん、なるべく早く計画して割引を受けられるようにするなど(高額な欧米路線でも相場の半額くらいに抑えられたりします!)、1回あたりの金額を抑える努力も惜しみません。

頻繁に旅をしていると「学生時代からバックパッカーとかしてたの?」なんて聞かれることもありますが、実は旅行に本格的にハマったのは社会人になってから。学生時代はむしろ予定がある日以外はずっと家の中でだらだらツイッターを見ているようなインドア派でした。

社会人になったら旅行はできない?

きっかけは、就活が終わったときに周囲から言われた「就職したらできなくなるから、卒業までにたくさん旅行しておいた方がいいよ!」という言葉でした。

仕事で疲れて休日に遠出する元気なんてなくなる、まとまった休みを取るのは大変、一週間以上の旅行ができるのなんて新婚旅行くらいーー本当に多くの人から同じことを言われました。

元々舞台やライブといった、いわゆる「現場」が好きなおたくで、「今、この瞬間しか見られない」舞台やライブを観ることに全力を尽くしていたタイプの私は「今を逃すと●●できなくなるよ」というフレーズにめちゃくちゃ弱いのです。周囲の「行っておかないと後悔するよ!」攻撃に負け、学生生活のラスト2カ月は旅行の予定を入れまくりました。

「社会人になったらすぐにお金なんて貯まるんだから」という言葉にも押され、バイトで貯めたお金を大放出して東欧、トルコ、韓国、台湾、タイなどの旅券を手配し、友人からの卒業旅行の誘いには全て乗り、隙間にはライブの遠征などを埋めていった結果、入社までに地元で過ごすのはほんの数日というハードスケジュールになっていました。

「できない」と思っていた旅行はむしろ、加速した

就職前の思い出作りのつもりだった旅尽くしの日々は想像以上に楽しく、体力的にこの予定をこなせるだろうか……という心配は杞憂で、むしろ身体も心もとても元気になっている自分がいました。

本や映画で見た場所に自分の足で立つ興奮。知らない食べ物や文化との出会い。「自分探し」がしたいわけではないし、ほんの数日の滞在で根底から価値観は変わらないけど、自分が未知の刺激に対して疲れよりわくわくする性格だということを知りました。旅の手配から現地に着いて帰ってくるまで、日常生活では遭遇しないハプニングにひとつひとつ対応するうちに、「自分にもこんな柔軟性があったんだ」と自信がついていきました。

そして「あのとき泊まった民宿の親切なおばさんの故郷に行ってみたい」「モスクの美しさに感動したから、他のイスラム教の国の様子も知りたい」と興味関心の幅も広がり、訪れたい土地はどんどん増えていきました。

トルコで感動した、気球の浮かぶ雪景色
トルコで感動した、気球の浮かぶ雪景色

結局そのまま勢いがついて、就職後も旅をするように。

就職直後は関西に住んでいましたが、関西からはLCCがたくさん飛んでいて、韓国や台湾行なら片道5,000円くらいで航空券が買えます。なので、東京に遊びに行くような感覚で海外にも行けてしまう。すると相対的に国内はどこも近所のように思えてしまい、更にフットワークが軽くなる。

次の旅を楽しみに仕事も頑張れるし、体調不良でも航空券は人に譲ることはできないと思うと自己管理も徹底するようになります。「就職したら旅行ができなくなる」と聞いた焦りから始めたはずなのに、気付けば学生時代より各地を飛び回っている自分がいました。

卒業旅行で初めて訪れた台湾で小龍包にハマり、その後20回以上通うことに。
初めて訪れた台湾では小龍包にハマり、その後20回以上通うことに

結婚すると一人旅はできなくなる……?

次に旅の強化月間(笑)を設けたのは、結婚のために上京・転職する直前でした。

「新しい職場ではすぐに有休は取れないし、旅行はしばらく諦めよう」と思っていたし、「結婚したら、自分で自由に使えるお金や時間なんてなくなるよ」という周囲の声も気になっていました。有休消化と次の仕事が始まるまでの間に、在職中は難しかった1週間単位の旅行を詰め込みました。

蓋を開けてみれば、夫は私の趣味を制限するつもりは全くないようでした。それどころか、交際前から私の趣味に生きるブログやSNSを見ていたこともあり、「あなたは一人でも人生を楽しめる人なんだから、結婚を理由に何かを諦めたり我慢したりしないようにしてほしい」と言ってくれました。夫は私以上に一人の時間を大事にしたい人で、私の「放っておいても一人で楽しそうにしている」部分も長所と思ってくれていたようです。

私は「パートナーとは余暇をできるだけ一緒に行動しなければならないし、趣味は共有した方が良い」と思い込んでいたのですが、そういうことなら、と夫が家で集中したいときは外出の予定を入れるなどしてお互いの時間を作るようにしました。

2人だと楽しいことは2倍にできる、でも1人で楽しいことを1/2にしなければいけないわけじゃない。お互いが自由に楽しく生きられるように気遣い合う生活はとても快適で、先輩方から「結婚したらいろいろなことを我慢しなきゃいけなくなるよ」と聞いてそれなりに覚悟していた私には嬉しい誤算でした。

遠くてなかなか行けなかったNYで大好きな舞台三昧をしたり
遠くてなかなか行けなかったNYに舞台遠征

結婚してからも、夫を置いて一人で旅をしている話をすると、特に年配の方には「あなたの旦那さんの心が広いんだよ」とよく言われるし、それはそう思います。

もちろん独身時代と100%同じというわけにはいかないけど、自立した大人同士が一緒に暮らすために全ての時間やお金を家庭に捧げないといけないわけではない。冷静に考えれば分かることなのに、なぜか「結婚したらいろんな自由が奪われる」という強迫観念があったんです。それは逆にいうと無意識のうちに自分も相手の自由を奪う権利があると思い込んでいたわけなので、危なかったなと思います。

また思わぬ良い変化もありました。私は元々「舞台のチケットのためならとにかく節約、そのためなら毎日もやしを食べても平気。部屋は寝るためだけの場所!」という、日常生活をおざなりにしがちなタイプでしたが、夫は逆に非日常にはそこまで重きを置かず、丁寧に生活をするタイプ。夫と暮らすことで私も「生活も今しかできないことの一つだな」と思えるようになり、遠くに行かなくても日常を楽しむことはできる、ということを学びました。

疲れているときも、私は遠出をしてリフレッシュしたいタイプで夫は家や喫茶店でゆっくり過ごしたいタイプ。基本的にはお互いの意向を優先しつつ、たまに「おいしいものを食べに弾丸旅行しよう」「今日は1日中、家から出ないでのんびりしてみよう」というように提案し、相手のやり方も取り入れています。

未来を恐れて、今の自分を脅迫する必要はない

現在は再度の転職を経て、旅に関わるIT企業で働いています。旅した経験や知識がそのまま仕事になる、自分にとっては夢のような環境。同僚にも旅好きが多く、職場の理解にも後押しされてさらに旅の頻度は上がりました。「時差3時間までは近所」を合言葉に、休みと財布の許す限り、元気に飛び回っています。 

「後悔したくない」から始まった旅人人生ですが、最近は少し考え方も変わってきました。それは、意外と「今を逃すと●●できなくなる」わけではないのかもしれない、ということ。

就職前に「社会人になったら旅行なんてできなくなる」と思い込んでいたように、思い返せば「新卒で入った会社をすぐ辞めちゃいけない」「アラサー女性の転職は不利」「学生時代の恋人と別れたら出会いがなくなる」などなど、自分がまだ経験してもいないようなことも、聞きかじった言葉で自分を脅して行動の指標にしていました。でも実際は、就職してからも旅はできるし、転職で希望の職に就けることはあるし、人生のパートナーを見つけるのに年齢は関係ないことも知っています。

私は結婚してからも心のどこかで「子どもができたら旅行はなかなか行けなくなるな」「歳をとったら飛行機に乗れなくなるかも」と焦っていましたが、最近は「子連れ旅行も楽しいかもしれないし、私が老人になる頃にはもっと快適な移動手段が発明されているかもしれない」と思えるようになりました。「後悔しないようにそのときにできることを精一杯やる」ことは大事ですが、「今の機会を逃したら二度とできなくなる」と自分を脅迫する必要はないんだな、と思います。

行きたい場所は無限に増えるけど

旅をすればするほど行きたい場所は増えますが、その全てを訪れるには絶対的に時間(とお金)が足りません。舞台や本も同じで、観たい公演を全て観たり、世の中にある面白い本を全て読むことはきっとできません。

どれだけ頑張っても、仕事や生活がある以上、やりたいことを全部やりきる時間はない。ですが、「行きたいところ全てに行けなかった…」と嘆くより、今このときに行ける場所を満喫したいと思うのです。

旅は巡り合わせなので、今はまだ行けない場所は、いつか行くべきときに行けるはず。「今しかできない」ように見えることはたくさんあるけど、「今」はまた巡ってくるものなのかもしれません。

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著者:桜花 (id:oukakreuz)

世界のミュージカルと旅とチョコレートが好き。すぐ遠征するおたく。

Twitter:@oukakreuz
golB:欲しがります負けたって

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次回の更新は、2019年1月9日(水)の予定です。

編集/はてな編集部