「カピバラさん」「ほわころくらぶ」などのプロモーション・商品開発に奮闘中
井上さん(以下、井上) 「ファンシー雑貨プロジェクト」というチームに所属し、主にプロモーションを担当しています。チームは12名で、そのうち女性が7名、男性が5名です。「ファンシー雑貨プロジェクト」は、バンダイの他の部署と比べてもプロモーション方法がちょっと特殊なんです。
井上 他の部署は、基本的にはCMや広告などで、“キャラクターの商品”を売るためのプロモーションをしていますが、私たちは、“キャラクター自体”のプロモーションをしています。代表的なキャラクターでは、「カピバラさん」がありますね。キャラクターの認知度アップを目指したり、いかにしてそのキャラクターを好きになってもらえるかということを考えているんです。
井上 キャラクターのデザインや商品展開に合わせて、イベントの企画・実施をしています。「カピバラさん」では、カフェとコラボをしたり、旅行会社さんとのツアー企画、動物施設とのタイアップ、人気キャラクターとのコラボなどを実施しました。
井上 前期までは「カピバラさん」の担当をしていましたが、今期からは、新しく立ち上げた「ほわころくらぶ」というキャラクターの担当になり、グッズの開発やプロモーションの実施などを中心に日々奮闘しています。私は今回、「ほわころくらぶ」のプロデューサーとしてメインで仕事をしています! ですから、このキャラクターへの思い入れも強いですし、今まで以上にいろいろとドキドキしています。
井上さんが担当する「ほわころくらぶ」(C)NORIYUKI ECHIGAWA
井上 イラストレーターのえちがわのりゆきさんがデザインしたキャラクターです。このキャラクターの商品化窓口を弊社が行っていまして、作者さんと一緒に、今後のキャラクター展開について相談しながらデザイン、商品化のタイミング、イベントやコラボなどの企画を進めています。バンダイからは2017年9月上旬に、初めてのグッズとしてぬいぐるみを発売しました。
井上 そんなことないと思いますよ(笑)。チームの人数も少ないですし、限られた予算の中で企画を進めなければならないので、自分たちで細かい作業を行うこともしょっちゅうあるんです。
例えば、キャラクターのコラボカフェや、物販の催事イベントなどを行う際、イベントのパネルを作ったり、キャラクターと写真が撮れる整理券を1枚ずつ切ったりという作業も私たちがやっています。お客様には見えないところで地味な仕事もたくさんしているので……。イメージされているような華やかさには欠けるかもしれないですね。
井上 お店の方と一緒にメニュー開発をしたり、ランチョンマットなどの配布物を決めたり、装飾をどうするかを決めたり……。あらゆることに携わります。お客様に満足してもらえるよう、「さまざまな方向からキャラクターの世界観を楽しめる空間を作ろう!」と尽力しています。
子どもを笑顔にできる“おもちゃ”に魅力を感じ、バンダイへ
井上 大学では、児童福祉を専攻していました。当時は子どもの発達や保育、児童虐待、子育て支援などの「子どもに関わる勉強」をしたいと思っていて。
井上 就職活動時、最初はバンダイ以外のおもちゃ会社だけでなく、通販会社など、「モノ作りに携われる仕事」をチェックしていたんです。その中でも、バンダイの「人を喜ばせるモノ作りができる」だけでなく、「子どもたちに夢を与えることができる」という点に強い魅力を感じて。
例えば、キャラクターの変身グッズを扱っているので、子どもに「ヒーローになりたい!」という夢を与えたり、その夢に寄り添ってあげることができる。これは、バンダイだからこそできることだと思っています。
井上 もちろんそれもありますが、弟の影響が大きかったように思います。
私には13歳年下の弟がいるんですが、年が離れていることもあって、自分の子どものようにかわいいんですよね(笑)。そんな弟がおもちゃで楽しそうに遊んでいるのを見て、「おもちゃって子どもをこんなに笑顔にすることができるんだ。おもちゃってすごい!」と思うようになりました。
井上 そうですね。それと、子どもが喜ぶ「モノ」を作る仕事に就きたいという思いはありましたが、バンダイは幅広い年齢層の商材を扱う会社で、さまざまなチャレンジができるというのも魅力に感じました。
井上 そうです。異動の希望を出して、入社4年目に異動することになりました。
井上 もともとファンシー系の雑貨が好きだったというのもありますが、入社して数年働いているうちに、「自分の感覚が生かせるところで働いてみたい」という思いが芽生えてきたんです。「ファンシー雑貨プロジェクト」は主に20~30代の女性に向けた商品を扱っているので、ターゲット層と自分の年齢がぴったり合っていて。なので、ファン層の気持ちを分かってあげたり、思いをくみ取りやすかったりするので、お客様の心に刺さる企画が考えられるんじゃないかなと思い、異動を希望しました。
井上 好きでした! 学生時代も、キャラクターの筆記用具とかを使っていました。かわいいものが身近にあると、それだけでワクワクしますよね。あとは雑貨も好きでした。大人になった今もプライベートで買い物に出かけたら、キャラクターグッズや雑貨コーナーをついのぞいてしまいます。最近は、無意識のうちに「この雑貨でうちのキャラクターグッズを作ってみたいな」と、仕事目線で見るようになっちゃいました(笑)。
「カピバラさん」のコラボツアーでは、お客様からのリアルな声も
井上 やっぱり、お客様に喜んでいただけたときが、何よりも嬉しいですね。お客様が参加するタイプのイベントに携わることも多く、直接お客様の反応を見ることができるので。
例えばコラボカフェだったら、オープン前から多くのお客様が並んでくださっていたり、入った瞬間に「わぁ!」と感動してくださったり……。そういう様子を見ていると、私も「頑張ってよかった!」とこみ上げてくるものがあります。カフェの方と肩を組んで涙したこともありましたね(笑)。お客様の笑顔が一番の活力です。
井上 旅行会社さんと一緒に、「カピバラさん」とのコラボツアーで那須や台湾の旅を企画したときのことですが、私も運営のため旅行に同行しました。そのとき、お客様と直接会話をする時間がたくさんあって、お客様のリアルな声をしっかり聞くことができたんです。「あのデザインがよかった」「こういうグッズが欲しい」と、お客様の表情を見ながらご意見を聞くことができたのが嬉しかったですし、勉強になりました。ツアー自体も好評で、貴重な経験ができました。
井上 「カピバラさん」のキャラクターイベントをしているときに、カピバラさんのファンの方が「前もいらっしゃった担当の方ですよね」と声をかけてくださったり、私宛てにお手紙を書いて来てくださった、ということもあるんです。「いつも楽しいイベントをありがとうございます」というようなことを書いてくださっていたりして。私は一担当者ではあるんですが、私のキャラクターへの愛情が、お客様にも伝わっているのかなと思って、とっても嬉しく思いました。
井上 「おしゃれで大人っぽいカピバラさんの新デザインを作ろう」と企画し、実際に進める過程は、悩んだり、落ち込むことが多くありました。
井上 「カピバラさん」は今までキャラクターが前面に出ているデザインが多く、少し幼いイメージもあったので、「カピバラさんは好きだけど、もっとさりげなく持てるデザインの商品が欲しい」という意見も多く寄せられていたんです。そこで大人っぽい新デザインを……ということだったのですが、今までのキャラクターイメージを変えることにもなるので、最初関係者の方々から「売れるの?」という不安の声をいただくことがあったんです。10年以上も人気のキャラクターですし、ファンも一緒に歩み大人になっているので、大人っぽいデザインの必要性はアンケートの調査や分析からも自信はあったのですが……。
井上 ただ、売り出した結果販売状況もよく、人気のデザインシリーズとして今までになかったお店への商品導入やタイアップも実現しました。より多くのお客様に手に取ってもらえて、「大人っぽいデザインを今後も広げていきましょう」となったんです。最終的にはすごくいい形で企画を進めることができました。
「大人の女性」をターゲットにした「OTONA KAPIBARASAN」 (C)TRYWORKS
井上 そういうのは少ないかもしれないですね。そもそも、会社自体が挑戦することを評価してくれることもあり、失敗しても「次の挑戦に生かし、挽回する!」という風土があるんです。なので、失敗したとしても落ち込みすぎず、次に向けていろいろなことに挑戦できていると思います。それでも落ち込むときは、チームのメンバーに相談して解決するようにしています。
井上 一人でどうしようもなく困ったときは、声をかけると一緒に解決策を考えてくれるし、みんなでなんとかしようと考えてくれるチームです。チームの人数が少ない分、役職に就いている方も現場に出たりとか、一緒になってイベントで使用するパネルを作ってくれたりしているので、そういう環境がまたチームの絆を深めているのかもしれないですね。
今は私がチームの最年少ですが、後輩ができたときは、私が今先輩にしてもらっているような、意見を言ったり相談をしやすい雰囲気を作っていきたいと思っています。
井上 そうですね……。これもやっぱりお客様の笑顔を見ることですかね。キャラクターのイベントの開催や商品発売をするとなれば、開催や発売に至るまでがどんなに大変できつくても、当日にはお客様の笑顔にたくさん出会えます。そうすると、つらかった思いもふき飛んじゃうんです! その笑顔を糧にして、次の企画も乗り越える……。この繰り返しですね(笑)。
あとは、自分が担当するキャラクターにとても愛情を持っているので、その愛情が、自分のモチベーションを上げてくれているという部分も大きいと思います。
担当するキャラクターを、長く愛されるよう育てたい
井上 入社して最初に配属された部署では女性の先輩が多かったのですが、みなさんそれぞれすごい方ばかりだったんです。仕事がバリバリできて、しっかりした意見を言えて、憧れの方ばかりでした。なので、今の自分の仕事ぶりをチェックするときは、その先輩方が当時入社何年目だったかを思い出しながら、「自分は、当時の先輩に追いつけているかな?」と考えるようにしています。その都度「まだまだだ! もっと頑張らないと!!」と、やる気になりますね。
井上 直近では、今担当している「ほわころくらぶ」を、多くの人に長く愛される、定番のキャラクターに育てていくことですね。「カピバラさん」は誕生して10年以上になりますが、それだけ続くと定番キャラクターだなという認識があるので。まずは10年続くよう目指します。
井上 はい。まだまだ新しいキャラクターを作って、育成しないといけないなと思っているので。「ほわころくらぶ」だけでなく、もっとたくさんのキャラクターに携わっていきたいです。
また、今後はもっといろんな開発もやってみたいなという意欲も湧きました。今はぬいぐるみの開発ですが、バンダイは、おもちゃやコスメ、アパレルなど幅広い商品を扱っているので。長い目で見たら、そういう違った商材の開発もしてみたいな、と思います。
取材・執筆/石部千晶(六識)
撮影/小高雅也
(C)TRYWORKS
(C)NORIYUKI ECHIGAWA
お話を伺った方:井上陽子(株式会社バンダイ ファンシー雑貨プロジェクト)
バンダイに入社して7年目。メディア部で3年間働いた後、現在のファンシー雑貨プロジェクトに所属。アニメキャラクターのグッズ開発にも携わっているため、帰宅後は録画しておいたアニメ番組をチェックしている。長年担当していた「カピバラさん」に顔が似てきたと言われることも。
編集/はてな編集部