小さいことの積み重ねで自分を育てる ブロガー・kobeniさんの仕事観と「働く母親」観

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はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』では、女性が普段の仕事や生活で感じるさまざまな思い――楽しさも苦しさも、“考え事”も“もやもや”も――について、もっと誰かと気軽に話し合えるような土壌を整えていきたいと考えています。今回お話を伺ったのは、ブログ「kobeniの日記」や主にワーキングマザーをテーマとした寄稿で活躍するkobeniさんです。

「ワーキングマザー」という属性に焦点が当たりがちなkobeniさんに、このインタビューではkobeniさんの仕事への考え方、ブログで「働く女性」に関する発信をするきっかけについて伺うことにしました。kobeniさんが思いを発信するようになっていった経緯とは?

「女性がずっと働いていくのは難しい」注意深く生きなければ、と思っていた

kobeniさんのこれまでの経歴について教えてください。

30代後半で、新卒のときに入った広告関連の会社に10年以上ずっと勤めています。その間に2回育児休業を取得しました。家族構成は夫、7歳と3歳の男児2人、猫1匹です。名古屋出身で大学から東京に出て、今も東京で暮らしています。

kobeniさんが、ワーキングマザーとして寄稿していて、「お母さん」に関して考えていることって何ですか?

ママ友と話していると、「家のことをやる」ことにすごく誇りを持っている人が多いです。家事が得意で、かつ“私が”やらなければならないと思っている。その理由は、うまく言語化できていないにせよ、突き詰めるとやっぱり「女性だから」なんです。私の両親は「女だから◯◯」のような育て方を一切しない人でした。だから私はそういう感情が結構フラットで。当時としては珍しかったんじゃないかなと思います。

確かに、「男女共同参画」「機会均等」などの考え方はまだ浸透していない頃ですよね。

母は教師として長く働いていたんですが、世間では自分が少数派だということをよくわかっているようでした。当時、女性が長く続けられる職業は教師くらいしかなかったことも聞いていました。母は私に、「女性も経済的に自立しなければならない」ということを繰り返し言っていましたね。

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私はそれを聞いて、「そうか、女性がずっと働き続けるのって、難しいことなんだ」って思ったんです。自分がそうなりたいなら、注意深く生きないと、という気持ちをずっと持っていた気がします。大きくなるにつれて、親の言うことと世の中の現状が違うということに、驚きやギャップを感じるようになってきて。

親の話と世間が違う……と自覚したのは、何がきっかけだったんでしょう?

小学生のときに何年も学級委員をやっていました。親は褒めてくれたんですが、「どうも、女の子が目立つようなことをするとモテないぞ!」と気づき、モテないのはやだなーと思って(笑)、中学校に入ってからは「長」の役割をやるのをやめてしまいました。「真面目にやるのださーい」みたいな雰囲気、あるじゃないですか。高校に入ってからは、ただのサブカル女子(笑)として過ごしていたように思います。

「女性のあり方を考える」という感じではなかったんですね。

はい、普通に高校生活をエンジョイしていましたね。大学は東京の大学を選びました。周囲には地元に残る人が多かったんですが、「地元に残らなきゃ」「女の子はそんなに勉強しなくていい」ということは全然考えていませんでした。マスコミ関連の会社が多い東京に行きたい、そのためには親を納得させるだけの学校に行かないと!と思って、一生懸命勉強していました。私は一人娘でしたが、親も上京には賛成してくれました。

大学生活を謳歌できず自信喪失、小さいことの積み重ねで復活

東京の大学に進んで、生活は変わりましたか?

親や地元の友達と離れ、新たな環境で人間関係を作っていく経験がなかったので、大学で孤独になって、強い挫折感を味わいました。授業はばらばらだし、サークルに入る人も入らない人もいる。スムーズになじんで大学生活を謳歌する人と自分を比べて、すっかり自信をなくしました。すごく寂しくて、自分が何もできない気がして。大学1年の冬に実家に帰ったときには、布団をかぶってずっと泣いていました。

kobeniさんの今の活動を見ていると意外ですね!

でも、せっかく頑張って勉強したのにもったいないし、何とかしようとは思いました。自信を取り戻そうと思って大学2年から始めたのが「自動車の免許取得」だったんです(笑)。みんなが当たり前にやっていて自分にはできないと思ったことをとりあえずやってみようと。ちょっとしたことです、本当に。バイトも始めました。

そこから状況は好転しましたか?

家と大学以外に行く場所ができたことで、だんだん生活が作られていって、大学とは違う人間関係も生まれました。大学のクラスの友達がものすごく真面目だったので、そうじゃないタイプとも知り合いたいと思って、映画のサークルに入ってみたり、短期留学をしてみたり。映画のサークルでは観るだけではなく、撮り始めたんですよ。

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だいぶ活動的に……!

サークルの先輩が「撮ると撮らないの間にすごく違いがあるから、撮りなよ」って熱心に勧めてくれて。それで8ミリ映画の脚本を書いて、よくわからないながらも撮ってみたら、狭いサークルの中なんですけどほめられて、すごくびっくりしました。思っていることを表現したら「良い」と言われた。その辺からちょっとずつ自信を取り戻した気がします。その先は大学を卒業するまで映画ばっかり撮っていましたね。

自信をなくしたときの対処法としても、良いヒントになりそうですね。

意外とできた!という経験で、それまでマイナスだったものがゼロくらいに戻るじゃないですか。小さいことを積み重ねるって大事ですよね。一足飛びに何か難しいことをやろうとしなくていいんだと思います。

大学卒業後は広告関連の会社に入社したとのことですが、広告の分野にはもともと興味があったんですか?

サークルで作っていた冊子に、自分が書いた文章を載せたことがありました。友達がそれを読んで「文章うまいね」って言ってくれたんです。その言葉が印象深くて、「そういえば文章を読んだり書いたりするの好きだった」と気づいて。マスコミ関係の会社が東京にあるから東京の大学に来たんだし、と思って、出版社や広告関係の会社をいろいろ受けました。

出版社には全然受からなかったんですが、ロッキング・オンだけ最終試験までいったんです。我ながら面白いと思って、結構人生のネタにしてます(笑)。

「なんでそれが当たり前だと思うの?」と考えるのが大事

仕事をする上で、自信が持てないときにkobeniさんはどう対処していたのでしょうか。大学時代に少しヒントがありそうに思うのですが……

身近なところから地道にこつこつ「自信をつける」のほかに、「自信があるように振る舞う」も大事な気がしています。若い頃って、仕事の方向性を見つけるためにすごく模索する時期で、なかなか自信が持てないですよね。でも、ある程度ハッタリも必要ですし、実際に自信がある方が当然良い結果になると思います。例えばクライアントのところへプレゼンに行ったときに、自信のなさが相手に伝わると不安にさせてしまう。

仕事に関して、後輩や友達にアドバイスする機会もあるのでしょうか。

20代の人から相談を受けることはありますね。20代は、やりたいことや得意なことがわからず焦るような状態でも全然良いんじゃないかな。苦しい時期だけど、むしろ健全なのかもしれません。結果を出したいと思うから焦ったり不安になる訳で。

私の場合は、結構単純なんですが、後輩が増えてきたら急に気持ちが楽になりました。年下の人が多くなると、自分が当たり前にやってきたことについて「教えてください」と言われるようになって。「この仕事に自信が持てず、将来のことが不安だ」と相談された場合は、「今は不安かもしれないけど、ずっと働いているとフッと『あ、頼られてる』と感じる時期が来るよ」と言っています。

今のkobeniさんは、「働くこと」についてあらためてどう思っていますか?

みんな「その人らしさ」を持っていると思うんですよね。自分ではなかなか見つけられなくても、他の人から「◯◯さんはここが良いね」って言われること、あるじゃないですか。それを聞き逃さないようにして、自分でそこを育てるのが大事かなという気がします。自分の良いところと他の人の良いところは違うから。

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自分で育てて、伸ばすんですね。

女性は「働くこと」について考える機会が多いですしね。男性の場合、働くのは当たり前って育てられることが多くて、疑いようがない、考えたこともない感じだと思うんです。男性は男性で別の大変さがあると思うけど、夫婦間でもときどき話がかみ合わなくなるケースを聞きます。

例えば、働くのが当然と思って働く夫に、子育て中で仕事が思うようにできない妻が「仕事したい」と言ったら、夫から「自分の方が給料高いし働かなくてもいい」って言われたり。

男女の役割分担には刷り込み、思い込みもありますよね。

例えば「女性は家事ができないと恥ずかしい」と思う人は多いだろうと思います。しかし現実的には、夫婦どちらも仕事をしている状態で女性だけが家事をしたら、ダブルワークで倒れてしまうでしょう? 「なんでそれが当たり前だと思うの?」と考え続けるのが良いんじゃないかな。「そういうものだ」ってそのままにしておくと、何か起きたときにすごくモヤモヤする。自分の悩みや痛みから、考えて、調べて、例えば「ジェンダー(社会的・文化的性差)」という言葉にたどり着く、「あ、私の違和感はこれだったんだ」と気づく……こんなことの繰り返しが大事だと思います。

違いはあるけれど、そこを認識した上で考えようと。

私が子育てを始めて、「ああ……」と敗北感があったのは、「男の子と女の子は全然違う」ということでした。うちは男子2人なんですが、男らしく育てようというつもりはなかったのに、女の子たちと比べると気が散りやすかったり、暴れるのが好きだったり……。逆に女の子は言葉を覚えるのが結構早かったり、じっと遊んでいるのが得意だったり。

男女に違いがあることは仕方ないと思っているんですけど、家事や育児も同じか?というのはわからないですよね。女性だって、男性しかやっていなかったはずの「仕事」をやるようになって、そして誰も別にほめてはくれない(笑)。たぶん仕事も、昔は男性しかできないと思われていた訳で。

「会社での自分とは関係ない自分」として始めたブログ

2009年4月からブログを書き続けていらっしゃいますが、ブログを始めたきっかけについて教えてください。

kobeni.hatenablog.jp

実はインターネットを使い始めたのは結構遅くて。会社の同期のエンジニアから、「はてなブックマークが面白いよ」って教えてもらったんです。最初は読者としてはてなブックマークの「人気エントリー」をよく見ていました。

以前からネット慣れしていらっしゃるのかと思っていました。

それまではネット上に長い文章をアップしたこともなかったんです。1人目の育児休業中に、ネットの記事をいろいろと読みました。そのうち自分でも記事の感想を書きたいと思うようになって、ブログを始めました。

ブログは「会社での自分とは関係ない自分」として始めたかった。肩書き、年齢、性別などが一切関係ない場所なので、自分が書くものが面白ければ読まれるはず、面白くなければ読まれないだろう、ちょっと挑戦してみたいなと思って。ハンドルネームやペンネームのような別名も持ったことがなかったんですが、別の名前を作れば、顔も本名も出さずに済むって知りました。

「働く女性」に関する記事を多く書いていますね。

母の影響もあって、個人的に「女性が働き続けること」について関心を持っていました。もしブログを長く続けていくなら、働くお母さんや働く女性のための記事を書けたらいいなと思いました。

考えを書いて発信することで、ご自身の仕事や考え方に与えた影響はありましたか?

自分にとって、ブログを書くという経験はかなり大きかったです。記事への反応を見て「悪気はないのに怒られた」と悩んだこともありました。でも、「自分が当たり前だと思っていることは当たり前ではない」という、すごく基本的なことを知りましたね。私は割と、ばーんと正直に発言し過ぎて「なにこいつ」と思われる……という経験を繰り返している気がして。

ネットでもそのまま「ばーん」という感じだったんですね。

例えば会社でもたぶん、「そんなのこうすればいいじゃん」みたいなキツい言い方をしていたと思うんですよ。でもそのままの言い方や考え方でブログを書くと「こういう人だっているじゃないか」という意見や反応が来る。しかもそれが正しいことだったりする。

……ということは、私は実社会で、人を傷つけている可能性があるって思ったんです。キツい態度でえらそうにしゃべって、「自分の考えは絶対正しい」みたいな言い方して……でも相手は言い返せなくて、愛想笑いをして、流してくれていたのかもしれない。いろいろな人、いろいろな考え方があるということを学べました。

少数派の意見をネット上に広げたら、近い仲間が見つかった

子育てをしながらブログを書くのは大変だったのでは?

ものすごく頑張って書いていて、周りの人には「いつ書いてるんだ!」ってよく言われましたね……。育休から復職したとき、仕事を制限せざるを得ない状況になりました。仕事の内容も大きく変わってしまい、フラストレーションがすごく溜まりました。その発散方法は人それぞれだと思いますが、私の場合は「隙間時間に書けるブログでフラストレーションを発散するしかない!」と思っていました。

kobeniの日記

普通だったことが普通ではなくなる状況はつらいですね。

そういうお母さん、結構多いんですよ。よくあるのは「マミートラック」(出産・育児休業を経て復職した女性が、子育てと仕事を両立する名目でそれまでと違う仕事に変わり、キャリアアップのコースから外れてしまうこと)。今までと同じワークスタイルで働けないときに、負担は軽いけれど自分がやってきたことと全然関係ない仕事しかさせてもらえない、自分らしさが発揮できない……それまでプライドを持って仕事に取り組んできたのに、アイデンティティや熱意、キャリアプランなどが置き去りにされてしまう。

都市部はだいぶ変化してきていると思いますけど、地方によっては、まだまだ復職が難しい職場、妊娠したら退職するしかない職場もあると思います。子どもが小さいうちは、子育てしながら自分ができることを探さないといけない。

それがkobeniさんにとってはブログだった?

何かを始めて、その告知をしたり仲間を集めたりするのに、ブログはすごく良いんじゃないかと思います。誰でも開設できるし、お金もかからないし。その「何か」は、隙間時間でできて、自分が好きでやりたいと思うことなら何でもいい。ブログをTwitterと連携すれば、趣味でも仕事でも関心が近い人とつながれます。それがきっかけで「良いね」って言われたり、喜ばれたりすることって大事ですよね。

kobeniさんはブログもTwitterも活用されていますね。

働くお母さんや働く女性の話題をブログに書いてTwitterに流すと、ワークライフバランスをもっと良くしたいと思う人たちとつながることができて、実際に会うこともありました。「働くお母さん」って、会社の中ではどうしても少数派なんですよね。ひとりぼっちだとか、女性はいるけど自分が育休取得第1号だった、という人もいます。みんな悩みもたくさんある。でも、ネット上でそれを広げてみたら、仲間が実はいっぱいいる!ということがわかります。

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ネットを通じて、見える範囲が広がったんですね。

私がブログを始めた2009年ごろって、基本的に会社以外の人と接する機会が少なく、「会社と家庭が自分の世界」という感じの人がまだまだ多かったと思います。インターネットを通じて「もっと他の世界の人とも付き合わなきゃいけないな、狭かったな」と思いました。

全然違う場所で違うことをして暮らしている人、今まで出会わなかったような人と、知り合う・つながるというすごく貴重な経験をして、結構感動しました。今はもしかしたらみんな当然だと思うかもしれないけど、そのときは「マジではてなとTwitterありがとう!」って思ってました(笑)。考え方も変わるし、視野も広がるし、楽しいですよね!

お話を伺った人:kobeni (id:kobeni_08)

kobeni

7歳と3歳の男児を子育て中のワーキングマザーです。はてなで「faviconkobeniの日記」というブログを書いています。ブログを始めるまで、周囲の人に「面白い」と言われることなど全くなかったので、「面白いですね!」と言われると大変驚きますし、いちいち嬉しいなと思っております。