会社で『モラハラ上司』と恐れられていた人と、愛称で呼び合う仲にまでもっていった、私の上司ハック術

こんにちは、斗比主閲子です。

私は、既婚アラフォー、子持ち、働いていて、二世帯住宅に住んでいます。姑とのやりとりを日記に綴ることで自分の中で消化したり昇華させたりしようとブログを書き始めたところ、いろいろあって、『保活のテクニック』やら『年賀状だけで世帯年収を推測する方法』やら嫁姑とは関係のないことまで紹介するようになっていました。

topisyu.hatenablog.com

『りっすん』に寄稿してほしいとの依頼があり、担当編集の方とチャットで何を書くか打ち合わせをしていたところ、職場でのモラハラからの脱出体験記がみなさんの役に立つのではないかという話になりました。

かなり気分が悪い部分もありますけど、他人事のように書いていますので、口当たりも軽いはず。どうぞ気軽に読んでみてください。


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仕事でモラハラ上司と組むことに

私は仕事をしていて、パワハラ、モラハラなどのハラスメントを何度か経験しています。

「あなたなんか仕事ができるようになるわけがない」と毎日言ってくる職場の同僚がいました。人づてに聞いた話では、その人の子どもは、受験直前で家族に暴言を吐いていて、同僚は苦しんでいたそうです。私はそれを聞いて溜飲を下げることはしませんでしたし、パワハラが許されるとも思いませんでしたが、こういった経験を経て「職場の人間でもさまざまな事情を抱えているんだな」と思うようになりました。

自分が経験したハラスメントの中で、最悪に近かったのがK氏によるモラハラでした。

K氏は会社の中で非常に優秀な人間であるという評価がある一方、モラハラ上司としても有名でした。彼がどれくらいモラハラかといえば、

  • 彼のメールへの返信が30分以内にできないと「どうなった?」とリマインドがある
  • スケジュール表で相手に明らかに予定が入っているのが分かっていてもメールの返信を期待する(メールってそういうものだっけ?)
  • それは土日祝日でも同じ
  • 部下の仕事については一つのミスも許さない。メールの誤字脱字も当然チェックして、Cc(同報メール)全員宛てで指摘
  • 間違いがあれば「それでよく大学を卒業できたな」「何を会社で学んできたのか」と他の社員の前で全否定
  • 何か問題があるとすぐに会議を招集する

といった感じでした。要するに完璧主義者です。他人を自分が思うように支配したい『コントロールマニア』でした。

K氏の管理下で仕事をすることになった際、自分も同じ目に遭うのはどうにか避けたいと、ミスをしないよう、またできるだけ早く返事をするよう心がけていたものの、私も同様のモラハラを受けることになりました。

彼との仕事を半年ぐらい続けていて、もうこれは、仕事を辞めるしかないかなと思い始めました。他の社員と働く機会もあるにはあるのですが、プロジェクトを完了させるまで、少なくとも5年はK氏と一緒に働かないといけなかったからです。

なぜこの人はコントロールマニアなのか?

仕事を辞めるか、このままモラハラに耐えながら働くかという2択を毎日思い悩みながら、K氏がなぜコントロールマニアなのかについても考えるようになりました。

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ちょっと話が私の子ども時代になりますが、私は子どもの頃から周りを観察するのが大好きでした。最初は生き物の観察が好きで、それが長じて人や周りの状況も見るようになったのです。

同級生を観察していると、その子のそれまでの行動や性格から、次はどんなことをするかを予想するようになりました。友達作りや学級運営では、こういうふうに同級生を見ることが役に立ちました。大学に入る頃には、人間の突飛な行動には事前に予兆があること、その人の人格には本人の家庭環境が大きく影響を受けている場合があることなど、他人を見るときの自分理論を確立していました。

働き始めてからは、仕事に慣れるのに精一杯で、付き合う人も自分より随分年上の人ばかりだったので、私のそれまでの観察眼が使えるとは思っていませんでした。ただ、K氏と仕事をするようになり、モラハラに遭い、K氏のことばかり毎日考えているうちに、自然とK氏のことを観察し、K氏の情報を収集するようになったのです。ちょっとした片想いみたいなものですね。(笑えない。)

半年間で私がK氏とのコミュニケーションを通して知った、本人のパーソナリティに関係しそうな情報はこんなところです。

  • 学歴コンプレックスがある模様
  • 父親は東大卒のエリート、母親はお嬢様
  • 子どもの頃は、父親は仕事で不在がちで、母親に厳しくしつけられたらしい
  • 時々「お前ら、俺が仕事をしていないと思っているだろう」と言う(どうやら本気)
  • 会議があるのは本人が心配になっているとき
  • 部下からのメールに対しては自分に肯定的な回答があることを期待している

これらの情報を組み合わせた結果、K氏は「自分に自信がないのでは?」と思うようになりました。自己肯定感が低いと考えたわけです。自己肯定感とは、自分が価値ある存在だとして自分自身を認める感覚のことです。自己肯定感が低いとうつ病に至るケースもあります。

自己肯定感とは - はてなキーワード

K氏が頻繁にメールでやり取りをしたり会議をしたりするのは、自分の不安を解消したいからであり、自分に自信がないから他人を信用できず他人に仕事を任せることができないからであり、他人への罵倒は(自分がされたことの裏返しであり)自分への戒めを含むものではないか――。不安で、他人が信用できず、自分自身も認められないとなれば、これは明らかに自己肯定感が低い。

通常、仕事ができるという評判の人間に対して、周りは「あいつは自己肯定感が高い」と思いがちですから、このような推測をした人間は恐らく社内・社外含めて誰もいなかったでしょう。そもそも、自己肯定感という概念をわざわざ職場に持ち込んだり、仕事の同僚に対して自己肯定感があるかないかを判定する人自体が少ないでしょうが。

自己肯定感が低いと分かればやりようがある

「K氏は自分に自信がないからモラハラみたいなやり方でしか仕事ができないのではないか?」という仮説を立てたので、それからはK氏が自己肯定感が低い人だとして、接してみることにしました。

具体的にはこんなところです。

  • K氏が私の仕事を攻撃してきたときには、とにかく淡々と話を聞く。話の腰は折らず、すべて話を聞いた上で、自分が悪意を持ったり怠惰であったりしたからこういったアウトプットをしたわけではなく、ちゃんと意図があったことを冷静に説明する
  • K氏が喜んでいるときには「良かったですね」と同調し、思い通りにいかず怒っているときには「大丈夫、何とかなります」とフォローのコメントをする
  • K氏が他人を攻撃したあとには「たぶん、彼/彼女も悪意があったわけではないんですよ。こんな事情がありましたし」と背景事情を知っている限り説明する

K氏のことを受け入れ、K氏の不安を和らげ、周りにも事情があることを徐々に伝えたわけです。当時は、今ほど自己肯定感が低い人への対処法を詳しく知っていたわけではありません。しかし今振り返ってみると、素人ながらによくやったなと思います。これは、職場において部下が上司に対してやるようなことでは絶対にないですね!

こういったことを心がけて接しているうちに、K氏は私を頼り始めて、仕事を任せるようになりました。私に任せている仕事はチェックが頻繁でなく、会議もほとんど行われません。私のちょっとした報告だけでK氏は安心していたようです。最終的にはお互いを愛称で呼び合うようになりました。そのプロジェクトが終わるまで、快適に働けるようになったのです。

相手に事情があると考えて接すると、楽になる

このエピソードでお伝えしたいのは、「モラハラをする人でも上手く付き合えば仲良くなれるよ!」ということではありません。

私の場合は、追い詰められてのるかそるかの究極の精神状態で、しかたなく行ったことです。上手くいったのもラッキーみたいなものです。何しろ、K氏と同様の関係性に至った同僚はその後、私以外に出ていないようですから。モラハラ上司は職場にはいないほうがいいし、そんな人間と無理に付き合おうとしなくてもいいでしょう。

ただ、経験を通じて、冒頭で紹介したように『職場の人間でもさまざまな事情を抱えていること』を強烈に意識するようになったわけです。今は、ざっとこんなところを意識して同僚をウォッチしてますかね。

  • 新卒か転職経験者か(転職経験者であれば前職での仕事内容)
  • 外国人かそうでないか(異なる文化的背景があるか)
  • プライベートをどれだけ重視しているか
  • 仕事で実現したいことがあるのか

自分と相手に違いがあることを確認して「あいつは自分とは違う人間だから理解できない」と区別するわけではありません。違いがあるのは当然だとして、相手を受け入れ、相手の人生観・仕事のやり方・プライベートは尊重するようにしています。モラハラ上司への対応はかなり特別でしたけど。

自分に余裕がなければそんなことまで見ていられないと思われるかもしれません。でも、こちらに余裕がないときこそ、違いがあることを理解して、相手を尊重してコミュニケーションを取ったほうが揉めることが少ないじゃないですか。「何で分かってくれないの!?」を100回言っても分かってもらえないかもしれませんが、「お互いにこういうポジションだよね」と言えば、違いがあることを分かり合うのは容易ですよね。

誰もが何か事情を抱えていて、そんな中でみんな仕事をしています。他人の事情を深く突っ込んで知る機会はなかなかないし、知ったほうがいいかといえば必ずしもそうではないですけど、他人には他人の事情があることを踏まえて接したほうが楽だなと私は思います。



以上、『わたしのモラハラ脱出体験記』でした。

一つの上司ハックエピソードとしてご参考にしていただけるとうれしいです。


著者:斗比主閲子 (id:topisyu)

斗比主閲子

「年齢は35-40歳。旧帝大卒業後、一部上場企業に勤務。外資系企業含め複数回転職を経験し、現在は某企業のIR部門に所属。2.5世帯住宅に住み、X人の子を育てながら日々姑と対決中……」ということになっています。

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