育児に追われ、一度は自分の個性を見失ってしまった私。これからは「好きなことを仕事にする」と決めた

 ふるえるとり


Twitterの子育て漫画で人気を集めている、ふるえるとりさん。実は1人目の子供が生まれてしばらく、育児と家事に追われるあまり、心が空っぽになってしまった時期があったそう。そこから少しずつ本来の自分を取り戻し、新しいチャレンジを決意するまでの道のりについてつづっていただきました。
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育児と家事に追われるうち、自分の「個性」を見失ってしまった

はじめまして、ふるえるとりと申します。現在、夫と3歳・0歳の姉妹との4人家族で、普段はイラストや漫画を描いて過ごしています。

私はもともと会社員としてデザインの仕事をしていたのですが、上の娘の育児休暇中に夫の転勤が決定し、引越しに伴って退職。専業主婦になりました。

子供が生まれる以前の私は、手芸やイラスト、デザイン、ゲームなど、たくさんの趣味に夢中になっていました。しかし仕事をやめて育児と家事に追われるうち、そういった好きなことからはどんどん離れてしまい、自分自身が無個性の「ただ育児と家事をする人」になったように感じる日々が続きました。



そのことをTwitterでつぶやいたら、大きな反響がありました

もちろん育児は楽しく、子どもはかわいい。子育てに追われる日々が嫌で仕方がない、というわけでは決してなかったのですが、かつての自分がどこかに行ってしまったような、心に大きな穴が開いたような寂しさを感じていました。

「毎日15分だけ」の習慣で、少しずつ好きなことを取り戻す

子供が育ち、生活にも慣れて余裕が出るようになったころ。「15分だけでも」と、子供のお昼寝の合間に趣味のお絵かきや刺しゅうをしてみました。

たった15分。しかし、イラストがいくつか描けました。小さな刺しゅうが刺せました。達成感は大きく、久々に「自分のための時間」を過ごせたことに心が躍りました。母親になったからといって「趣味も好きなことも諦めなくて良い」ということに気付けました。

時間は限られているし、家事・育児の疲れから、気力が湧かないこともあります。でも「好きなものを食べる」「好きな曲を聞く」「ハンドメイドをする」など、とにかくできる範囲で思いついたことをやってみるようにしました。たとえすぐ飽きてしまっても、次の“好きなこと”をどんどん探せばいい。「何かやった」というだけでも、少しずつ心の穴が埋まっていくような気がしました。

いろいろやってみた中で私が一番続けたいなと感じたのが、イラストを描くことでした。そう気付いて以来、習慣的にイラストを描き続けるようになりました。

好きなことを毎日少しずつ続けていたら、新しい仕事につながった

産後、気兼ねなく独り言をつぶやいたり、同じように育児に勤しむお母さんたちと交流したりするために、Twitterを始めました。イラストを描くようになって、せっかくなのでTwitterにもアップしてみたところ、思っていた以上に反応が返ってきました。

初めは自分の個人的な記録のための創作でしたが、見てくれた人たちから「分かる!」と共感のコメントをもらい、そのたびに育児での喜びや悩みは皆同じなのだと、うれしくなりました。他の人からの共感が、育児をする中でこんなにも励みになるのだと気付いたのです。

そこから、自分の思っていることをどんどん漫画にして投稿するようになりました。毎日続けているうちに見てくれる人の数が増え、やがて寄稿や連載、書籍化のお話をいただいたりして、少しずつ仕事にもつながっていきました。

そうしてイラストや漫画の仕事での収入が増え、とうとう夫の扶養を外れることに。今後はフリーランスのイラストレーターとして、イラストや漫画を自らの仕事にする道を選択しました。

もともと独り言をつぶやくための場所だったこともあり、夫には当初、Twitterにイラストや漫画をアップしていることは秘密にしていたのですが、ある漫画がバズったタイミングでカミングアウトしました。その時は「そうなんだ」とあまり驚きのない反応だったのですが、後になって「実は、教えてもらう前からTwitterのこと気付いていたんだよね……」と、夫から逆にカミングアウトされてびっくりしました。

それからは漫画描きとしての私の活動を喜んでくれているようで、制作の時間を確保できるように育児・家事を分担してくれたりと、全面的に協力してくれます。

フリーランスとして開業することを決めるにあたっては、正直「このままお仕事をいただける状況が続くのだろうか?」という不安もあり、悩みました。しかし背中を押してくれたのは「イラストや漫画を描いている今が楽しい」というシンプルな気持ちでした。それに、育児・家事に追われて一度は見失っていた「自分の個性」をこうして仕事としてフルに発揮できる状況になったのは“毎日の15分”を繰り返してきた自分の努力だということが、自信につながっていました。

母になっても好きなことを楽しんでいる私の姿を、娘にも見せてあげたいと思っています。娘が将来、私と同じように余裕をなくしてしまったとしても、好きなものを諦めてほしくないのです。

2人育児と好きな仕事を両立させるために、家族で話し合ったこと

2人目の子供が生まれた今、以前よりも育児の負担は大きくなりました。フリーランスとして働いていくことを決心したものの、子供が起きているうちは目一杯相手をしたいので、日中はほとんど作業ができません。上の娘が幼稚園に入園するまでは、子どもたちが寝静まった後に働くことになるでしょう。

これからどうやって自分の時間を作るか、何度も考えました。そしてまずは夫に「今まで通りでは仕事と育児の両立がとても難しい」ということを伝えました。そして相談した結果、私が家事や育児の中で「自分でしかできないと思い込んでいた」部分を、もっと周りに頼るようにしようと決めたのです。

私はもともと頼り下手な性格で、仕事で疲れている夫に何かお願いするたびに「なんだか申し訳ないな」「手抜きをしてダメな母親かな」と思ってばかりでした。しかし思い切って相談してみると、夫の方から提案をしてくれました。

例えば寝かしつけ。これまでは私がしなければと勝手に思っていましたが、夫は「夜は自分に娘たちを任せて」と言ってくれました。そして寝かしつけた後は、ベビーモニターで別の部屋から間接的に子供たちを見守ることに。こうして今では、寝かしつけ後の3時間ほどを作業時間に充てられるようになりました。

日中の家事の負担軽減については、乾燥機付き洗濯機や食洗機などの時短家電を導入しようと夫が提案してくれました。私自身は古いタイプの人間なので当初は導入に消極的だったのですが、これが予想以上に便利で、時間の余裕ができました。そして食事については、炊事がままならないなら冷凍食品やお惣菜に頼ればいいのです。

思えばこれまで、私が「自分でやらないと」と思い込む一方で、自分ばかりが育児や家事に追われている気持ちになり、休日家で休んでいる夫に対してついイライラしてしまうこともありました。

自分に余裕がなければ、子供たちにゆとりを持って接することもできないし、自分や家族のために働くこともできません。一人で抱え込まず頼れるものにどんどん頼り自分を大切にすることが、実は家族のためにつながるんだと、最近やっと考えられるようになりました。これからは肩の力を抜いて、自分を大切にしながら仕事と子育ての両立をしていこうと思います。

家族のためにも自分のためにも、絵を描き続ける

私は漫画を描くとき、自分の内面を客観視してまとめるということをよくしています。そうすることで、自分が何をどう悩んでいるのか、家族に対してどうあたりたいのか、少しですが以前よりは見つめ直すことができるようになりました。それに漫画を通じて、夫にも自分の気持ちが以前よりも伝わるようになった気がしています。

漫画を描き始めた当初は、自分の悩みや葛藤を描いていろんな人に共感してもらうことで「自分だけじゃなかったんだ」と安心することが目的だったように思います。しかし漫画を描いているうちに自分の考えが整理され、また「オチ」を考える中で自分がどうなりたいか、どうすべきかがはっきりと見えるようになりました。

例えば離乳食に悩んだ経験から「娘は少食・偏食だけど、それも個性。食べる時期になったら食べるようになるから、焦り過ぎず見守ろう」といった内容の漫画を描きました。実際は焦り過ぎず見守ることはなかなか難しいのですが、こんなふうに考えられたら素敵だな……という理想や目標を盛り込んでいます。有言実行できるように意識することで、家族との関わり方も前向きになっているように思います。

そして、子供たちの生活をよく観察し、絵日記として漫画に描くうち、なんでもない日々がもっと大切に思えるようになりました。

私が絵を描き続けることは、家族のためにも自分のためにもなると思っています。いつか子供たちが私の漫画を読む日がきたら、漫画を通して「あなたたちとの日々が喜びに満ちたものだった」ということを伝えたいです。

著者:ふるえるとり

ふるえるとり

秋田出身東京在住、3歳と0歳の姉妹の育児中。子どもたちの寝静まった隙にイラストや漫画を描いて暮らしています。育児ネタのほかにシュールなキャラクターなどのイラストを描いています。

サイト:ふるえるとりのふるえワークス | Twitter:@torikaworks

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編集/はてな編集部