
洗濯日和/(c)kanahei
今回「りっすん」に登場いただくのは、イラストレーター・漫画家のカナヘイさん。高校生の頃、運営していたサイトで配信していた携帯電話の待受用イラストがきっかけとなり、2003年にイラストレーターとしてプロデビュー。現在もLINEスタンプの人気シリーズ「ピスケ&うさぎ」を手がけるほか、企業コラボやキャラクターコラボを行うなど、第一線で活躍されています。
今年で33歳となるカナヘイさんは愛媛県に在住し、3人のお子さんを持つ母親でもあります。今回は、イラストレーター・漫画家としての活動のこと、フリーランスとしての働き方について、プライベートと仕事のバランス、母になったことでの表現の変化についても伺います。
現役高校生イラストレーターとしてデビュー
カナヘイ 高校生の頃サイトを運営していまして、自分で描いたパロディイラストを携帯用の壁紙やデコメにして配信していました。それが口コミで全国的に人気になったことがきっかけで集英社のファッション誌『Seventeen』の編集の方にお声かけいただき、イラストレーターとしてデビューしました。その後、『Seventeen』の連載を見たりぼん編集部の方にお声がけいただき、2008年から『りぼん』で漫画家としての活動もスタートさせ、漫画家としても10年ほどやっています。
カナヘイ 誰かと比べてどうこう考えたりしないタイプなのか、周囲と違うことをしていても、特に何も感じませんでした。交流が続いている高校時代の友人や私の周りの人たちも、似たようなタイプだったので、何も感じなかったのはそのおかげかもしれません。
カナヘイ 基本的にはチャットワークやLINEを使ってやりとりしています。 グッズサンプルや色校*1は宅配便で送ってもらい、それを見ながらテレビ会議などでコミュニケーションをとっています。東京に行くのは2〜3ヶ月に1回ぐらいかなという感じです。写真や動画でやりとりするのでそんなに不便は感じていないです。

カナヘイさんの作業机
カナヘイ 大きな影響はないと思っているのですが、あえて言うなら、都内に住んでいる人ほどサッと人に会いに行ったり、実物を確認したりすることができないので、何かお仕事のお話が来てもレスポンスが遅くなってしまう……というのはあります。ただ、人によるとは思いますが、私は田舎ののんびりした空気が好きなので、「ストレスなく暮らせて働けること」はメリットだと思っています。
カナヘイ 不安はとくに感じません。自分の得意な分野で楽しくお仕事をさせていただいているので……本当にありがたいです。元々楽観的で、考え込むより行動した方が手っ取り早いと思うタイプなので、不安で悩むということ自体が昔からないんです。ただ、長く活動すること自体は大変だと思わないのですが、単純に毎回の締切が時間との戦いで大変です……。
不安を解消するために、というわけではないのですが、収入がない時期があっても最低限住むところさえあればどうにかなるだろうということで、家を買いました。2人目が産まれた後に家探しを始めて、偶然出会った古民家を少しずつ改築しながら暮らしています。
何もしなければ、何も始まらない
カナヘイ 「楽しんで描き続けること」だと思います。そして、作品を発信し続けることも大事かと思います。絵が世に出て人目に触れれば、チャンスもそのぶん増えると思うので……。何もしなければ、何も起きないと思います。それと、楽しんで描くために、描くことが嫌にならないよう、「この仕事は楽しくないな、嫌な気持ちになるな」という仕事は受けないようにしています。自分自身が楽しんでいないと、それが絵にも出ると思っています。

LINEスタンプでおなじみの「ピスケ&うさぎ」シリーズ/(c)kanahei
カナヘイ どのお仕事も楽しくさせていただいているのですが、『ドラゴンクエスト』や『ONE PIECE』など、キャラクターコラボのお仕事はどれも印象深いです。小さい頃からパロディイラストやファンアートを描くのがすごく好きで、私の「描きたい!」という欲求の根源はそこなんです。だから、公式に権利元さんから直接コラボのご依頼が来て絵を描くことになったときは、心の底から嬉しさが溢れてきました。
キャラクターコラボのお仕事をさせていただくときは、毎回とても幸せな気持ちで描いています。人生のご褒美だと思っています!
10代の「不安定」なイラストは、出産を経て変わった
カナヘイ 2017年に3人目を出産し、家に0歳児がいるので、今は「そもそもバランスがとれるものではない」と割り切っています。
カナヘイ 夫婦で仕事・家事・育児を共同で行っているのですが、それぞれのタスクが常に並行に進行しているので、緊急度の高いものからひたすらこなしていき、その間溜まってしまったものは余裕ができた隙にどちらかが消化していく……という感じでやっています。
基本は自宅での作業なので、0歳児が寝ている間に仕事をして、作業に煮詰まったら気分転換に家事をして、0歳児が目覚めたら遊びつつ同時進行できる作業をやれるだけやる……という感じです。
カナヘイさんInstagramより
カナヘイ ものすごく忙しい時期に学校の行事やPTA、地域行事などがかぶると、物理的に無理な状況に陥るのでそこは大変だなと感じます……。
カナヘイ あります。すごくあります。そのときに思っていることとか考えていることがそのまま絵に出るタイプなんです。10代の頃は自分の中のモヤモヤしたものを絵にしていたので、不安定だったり残酷だったりする絵を描くこともありました。出産後は日頃の子どもたちの言動を見ているせいか、ほのぼのした雰囲気のものが増えているように思います。
意識して変えているものではないので、昔の雰囲気で描いてと言われると頑張って模写しないと再現できなかったりします……(笑)。

よつ葉のクローバー/(c)kanahei
好きなものを、これからも描き続けていきたい
カナヘイ 任天堂Switchで「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をやっていたときは、ゲーム中でパラセール(グライダー)で空を飛ぶのが楽しくて、イラストでもパラシュートを描いて自分のキャラたちを空に飛ばしていました。サーカスを見に行ったらサーカスを描くし、キャンプをしたらキャラたちにもキャンプをさせます。楽しかった出来事は直接的にモチーフとして出てきます。
毎月壁紙を描いて公式サイトで配信しているのですが、それによく表れているなぁと思います。
http://www.kanahei.com/gallery/
カナヘイ 『Seventeen』とのつながりから「りぼん作家」になったので、漫画家の活動はできなかったのかなぁと思うことはあります。でも、今のような活動の仕方ではないとしても、きっと田舎でなにかしら描いて作っているんだろうなあ……と思います。
カナヘイ イラストレーターとしては、好きなものを描き続けられたらいいなと思います。母としては……子どもたちが巣立つまで、楽しく見守ってあげられたらと思っています。
お話を伺った方:カナヘイさん

イラストレーター・漫画家。
自作待受画像の配信から全国でブームとなり、2003年に現役女子高校生イラストレーターとして『Seventeen』(集英社)にてプロデビュー。以降、出版、モバイルコンテンツ、企業広告、キャラクターコラボ、『りぼん』(集英社)での漫画連載など、さまざまな媒体で幅広く活動を続け、20~30代の男女を中心に多くのファンを持つ。「ピスケ&うさぎ」を中心とした「カナイの小動物」シリーズは国内外でグッズ展開されており、LINE Creators Stamp AWARDで準グランプリ(2014年・2015年)、グランプリ(2016年)を受賞。
Web:カナヘイの家
※6月13日(水)更新予定の記事は、都合により掲載を延期することとなりました。尚、次回の更新は6月20日(水)を予定しております
執筆・編集/はてな編集部
*1:「色校正」の略称。雑誌をはじめとした印刷物の発色をチェックすること