いつもよりがんばって働いた日、ふらりと寄り道して家路につく日、何もかも忘れてぼーっとしたい日……そんなとき、こころとからだを癒す時間を設けてみませんか? 疲れを癒す音楽や旅行、活力をチャージするごはん、元気をもらう本を読んで、気分転換してみては。はたらく人を応援するコラム企画「深呼吸の時間」をお届けします。今回のテーマは、心も体も癒す「レシピ」です。
こんにちは。ライターで、だし愛好家の梅津有希子です。
『だし生活、はじめました。』『もっとおいしい、だし生活。』(共に祥伝社)のような「だし」に関する本や、「夜遅く帰っても、これなら作れる」というヘルシー1皿レシピ集『終電ごはん』(幻冬舎/高谷亜由との共著)といったレシピ本を出しています。
忙しく働いている皆さんは、「だしをとるなんて無理……!」「難しそう」「面倒くさい」と思っていらっしゃるでしょうか?
数年前までは、まさにわたしもそう思っていました。でも、「簡単」で「挫折しない」だしとり方法にたどり着いてからは、顆粒やパックのだしを一切買わなくなりました。なぜなら、自分でとっただしはとてもおいしくて体によく、「本物のだしさえあれば、料理はものすごくラクになる」ということを、身をもって体感したからです。
今回は、わたしが実践しているだしのとり方と、まな板と包丁を使わずにパパッと作れる、働く女性におすすめの料理をご紹介します。
かつおだしはドリッパー、昆布と干し椎茸は水につけるだけ

まずは、「挫折しないだしのとり方」です。今回は、「かつおぶし」「昆布」「干し椎茸」3種のだしのとり方を紹介します(それぞれ作りやすい分量)。
(1)コーヒードリッパーを使った、かつおだしのとり方
かつおだしは、コーヒードリッパーを使えば簡単にとれるんです! コーヒードリッパーにフィルターをセットし、かつおぶしを(4〜5g)入れ、コーヒーを入れるように熱湯(150〜180ml)を注ぐだけ。これで、みそ汁やだし茶漬け1人分のかつおだしがとれます。
かつおぶしは、小分けのパックが便利。わたしは4.5g入りの小分けパック1袋を一度に使い切ることが多いです。かつおぶしは開封した瞬間から酸化して鮮度が落ちるため、一度に使い切れる小分けパックは、ドリッパーだしに最適です。
MEMO:たくさんだしを使いたいときは、鍋でだしをとっても◎。鍋でだしをとる場合は、鍋で水1リットルを沸かし、沸騰したら火を止めてかつおぶし30gを投入。1分たったらキッチンペーパーをのせたザルで濾(こ)します
(2)麦茶ポットを使った、昆布だしのとり方
麦茶ポットに昆布を入れて水を注ぎ、冷蔵庫に1晩〜2晩入れておくだけ。昆布20gに水1リットルが目安。だし初心者には、うまみの濃い真昆布か羅臼昆布がおすすめです。
MEMO:一般的に、昆布だしは軟水を使った方がだしが出やすいと言われています。日本の水道水は基本的に軟水ですが、地域によって硬度が異なり、「中軟水」と呼ばれる硬度の場合もあるため、自分にとってベストなつけ時間を見つけてみてください。関東地方の方は2晩程度、関西地方の方は1晩おくと、しっかりとしただしが出ます
(3)空き瓶を使った、干し椎茸だしのとり方
空き瓶に干し椎茸3〜4枚を入れ、水200mlを注ぐだけでOK。1晩で茶色くなり、コクのある干し椎茸だしの出来上がり。
MEMO:干し椎茸だしは、風味が強いため単体で使うことはほとんどなく、コクとうまみをプラスする目的で、「スープ1人分にティースプーン1杯分」くらいを、ちょい足しで使うことが多いです。どんな料理も深みが出て、ぐっとおいしくなります。「入れ過ぎないこと」がポイントです
わたしは、上記3種のだしを日常的に愛用しています。ベースに使うのは、かつおだしと昆布だし。気分次第で、煮干しや焼きあご、帆立貝柱などでもだしをとることも。全て水につけておくだけで、十分だしが出ます。
日持ちは、かつおぶしや煮干しなど動物性のだしが冷蔵庫で2日程度、昆布と干し椎茸など植物性のだしは、1週間程度持ちます。
では、だしのとり方が分かったところで、レシピをご紹介していきましょう。どれも、包丁&まな板いらず、そしてだしさえあれば何とかなるお手軽レシピです。
冷蔵庫にあるものだけ! 「納豆とふわとろ卵のだし茶漬け」

ひとつめは、「納豆とふわとろ卵のだし茶漬け」。
家に常備されていることが多い食材だけで作れる創作だし茶漬けです。ふんわりとバターが香り、納豆と卵の相性抜群。「栄養もとれている」という安心感もある1品です。
【作り方】
1. ごはんをチンしている間に納豆を混ぜ、添付のたれとからしを加えておく
2. フライパンにバターを熱し、半熟状のスクランブルエッグを作る(塩胡椒で味付け)
3. コーヒードリッパーでかつおだしをとり、熱々のごはんにスクランブルエッグと納豆をのせ、だしを注げば完成! もし冷蔵庫にあれば、小口切りにしたネギをトッピング。キッチンばさみで切ると楽ちんです。
材料(1人分):卵2個、納豆1パック、冷凍ごはん1膳分、かつおだし150cc、バター10g、塩胡椒(適量)
だしは、昆布だしでもOKですが、引き立てのかつおだしは、立ち上る香りもごちそう。だしが香るだけでも幸せな気持ちになれるので、だし茶漬けには、ぜひコーヒードリッパーでとったかつおだしをおすすめします。
ヘルシー食材だけで完結! 「きのこと豆腐のとろみ春雨」

2つめは、「きのこと豆腐のとろみ春雨」。かつおだしときのこのうまみに、鶏ひき肉でコクと食べ応えをプラス。
【作り方】
1. 手で崩した豆腐としめじ、鶏ひき肉をだしで煮込み、ひき肉に火が通り、しめじがしんなりしてきたら、春雨を投入
2. 2分ほど煮込んだら薄口醤油とみりんを入れ味をととのえ、水溶き片栗粉でとろみをつけたら出来上がり。お好みで、小口切りにしたネギをトッピングしてもOK
材料(作りやすい分量):鶏ひき肉(150〜180g)、豆腐1丁、ブロックタイプの春雨2個(80〜100gが目安)、石づきがカットされた袋入りのしめじ(お好みの量)、かつおだし400cc、薄口醤油大さじ1、みりん小さじ1、水溶き片栗粉(適量)
ポイントは、すぐに火が通る食材を使うこと。ブロックタイプの春雨は、水戻し不要。2分ほど煮込むだけで、とろりとやわらかくなります。きのこは、石づきがカットされているものを選べば、袋からザッと入れるだけ。鶏ひき肉も、切らずに使えてあっという間に火が通ります。だしは、昆布だしでもおいしく作れます。
だし+豆乳+みそのコラボ 「ごろごろお豆とベーコンの豆乳みそスープ」

ラストのレシピは、「ごろごろお豆とベーコンの豆乳みそスープ」。昆布だしに干し椎茸だしをプラスした、深いうまみの"食べるスープ"は、具だくさんでボリュームも十分です。蒸し大豆に豆乳、さらにみそという、大豆製品のオンパレード。だしを組み合わせ、「体にいいものを食べている」という安心感も得られます。
【作り方】
1. キャベツは手でひと口大にちぎり、えのきだけはキッチンばさみで食べやすい大きさにカットする
2. 鍋に昆布だし、干し椎茸だしを入れて火にかけ、全ての食材を煮る
3. キャベツとえのきだけがしんなりしてきたら豆乳を加える
4. フツフツとしてきたらみそを溶き入れ、黒胡椒を振って出来上がり!
材料(作りやすい分量):カット済みベーコン100g、キャベツ1/4個(手でひと口大にちぎる)、えのきだけ1/2袋(キッチンばさみで食べやすい大きさに切る)、蒸し大豆または大豆の水煮1缶、昆布だし300cc、干し椎茸だし大さじ1、無調整豆乳200cc、みそ大さじ1、黒胡椒(適量)
大豆は、水煮缶よりもホクホクして甘みも強い蒸し大豆がおすすめです。加熱済みでそのままでも食べられるので、常備しておくと何かと重宝します。キャベツは、カット野菜を使うとさらに簡単。えのきを切るのが面倒だったら、石づきカット済みのしめじか舞茸を使いましょう。ベーコンもカット済みのものを使うと便利です。スープだけだと物足りないという方は、お好みでショートパスタや春雨を入れると満足度もアップ。
以前、深夜まで働く“終電族”の女性たちを取材したところ、「納豆を食べておけば安心できる」「豆腐は夜遅い時間に食べても罪悪感がない」という声がとても多かったのが印象的でした。安価でヘルシーな上、栄養価の高い大豆製品は体のためにも積極的にとりたい食材で、わが家の冷蔵庫にも納豆と豆腐は切らさず常備しています。
仕事に忙殺されて、コンビニごはんが続くと気持ちも落ち着かなくなりがちですが、体にいい簡単ごはんは、「栄養をとれている」という実感も持つことができて、心にも効きますよ。
まな板&包丁いらず、そしてだしのきいたおうちごはんで、疲れた体をいたわってあげてくださいね。
著者:梅津有希子

編集者・ライター、だし愛好家。「終電ごはん」と題した料理写真を、深夜にツイッターで発信していたことがきっかけで書籍化された『終電ごはん』(幻冬舎)や、『だし生活、はじめました。』(祥伝社)など、著書多数。春と夏の甲子園シーズンは、高校野球ブラバン応援研究家としても活動し、『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』(文藝春秋)というマニアックすぎる著書も持つ。
公式サイト:umetsuyukiko.com
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編集/はてな編集部