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「夫婦同時失業」のどん底経験はムダじゃなかった 元“貯まらん女”のFP、花輪陽子さん

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シンガポールのマリーナベイサンズの最上階からの風景(写真提供:花輪陽子さん)

今回「りっすん」に登場いただくのは、お金にまつわる専門家とも言われる「ファイナンシャル・プランナー(FP)」として活動する花輪陽子さん。現在シンガポールに暮らしながら多数の雑誌やWebメディアで活躍する花輪さんですが、外資系会社のリストラやシンガポールへの転勤などさまざまな転機を乗り越えてきました。また、FPとして活動する前は、お金を「あるだけ使ってしまう」という"貯まらん女"だったのだそう。

そんな花輪さんに、FPになったきっかけや"貯まらん女"時代のエピソード、シンガポール在住のFPとしてのお話などを伺いました。

リストラがきっかけで、FPとして独立

現在FPとして雑誌やWebでの執筆や監修を中心に活躍されていますが、FPになるまでは会社員をされていたんですよね。

花輪陽子(以下:花輪) はい。大学卒業後、新卒で外資系の金融機関に入社しました。その後、リーマンショックのあおりで2009年にリストラされてしまって。しかも当時新婚だったのですが、夫が勤めていた会社も倒産し、夫婦同時失業状態になりました。

ご自身だけでなく、ご主人まで……!

花輪 このころはどん底でしたね。実は、私がリストラされた1年ぐらい前から社内でリストラが始まっていて、社内の空気も悪くなっていたんです。いつ自分もそうなるか分からない状態だったので、リストラが始まりだした時期からFPの仕事の勉強を始めて、万が一のための準備は整えていました。

いつ何があってもいいように、対策は考えていたんですね。

花輪 そうです。CFP試験*1という資格試験の準備中にリストラされたのですが、とにかく資格を取ってしまおうと思って。試験直前には1日6時間くらいは勉強し、リストラ後にはなってしまいましたが、無事資格を取得することができました。

花輪さん

シンガポール在住の花輪さん。取材はビデオ通話で行いました

資格をとったあと、FPとしてすぐ独立されたとのことですが、どうやって活動をスタートさせたのでしょうか?

花輪 最初は専門誌に寄稿するなど、できることからやっていました。会社都合でリストラされたので、失業保険の待遇がよかったこともあり、当面のお金にすごく困っているわけではなかったため、1年間はじっくりと活動していました。

独立して働くには、やはり人脈も大切になってくるのではないかと思います。どのようにお仕事を得ていったのでしょうか。

花輪 今まで築いた全ての人脈を使いました。例えば、元同僚に知り合いの雑誌編集者を紹介してもらったこともありました。あとは、FPが集まる会合やセミナーへ積極的に参加してましたね。とにかく交際費にお金をかけて、いろんなところに顔を出すようにしていました。地道に営業をしたり記事を書いたりしていたのですが、独立から1年後に『夫婦で年収600万円をめざす!二人で時代を生き抜くお金管理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2010年)という本を出すことができて。

出版してからはコラムの連載が決まったり、次の本の依頼をいただいたり、わっと仕事の幅が広がっていきました。夫婦で失業した経験があったからこそ書けた本もあったりして、ムダな経験はないな、と感じました。

夫婦で年収600万円をめざす! 二人で時代を生き抜くお金管理術

夫婦で年収600万円をめざす! 二人で時代を生き抜くお金管理術

  • 作者: 花輪陽子
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン


会社員時代からFPの資格取得のための準備をされていたとのことですが、リストラ後、他の会社で働こうという考えはなかったんですか?

花輪 それはなかったです。自分の今後の未来を想像したときに、独立して働いている方が楽しそうだったので、周囲の忠告を振り切って独立の道を選びました。

FPになろうと思ったのは、何か理由が?

花輪 大学で政治経済を専攻していたこともあって周りにFPの資格を持っている人がいて。ただ当時は「そんな資格もあるんだな」ぐらいで実際に資格を取ろうとは思っていなかったんです。でも、婚約をきっかけにお金の使い方を見直すようになって。

ちょうどその時期に、スージー・オーマンさんの『幸せになれる人バカな人生を送る人のお金の法則』(エレファントパブリッシング、2007年)という書籍をたまたま読んだんです。この本に感銘を受けて、浪費癖を直そうと意識と行動を変えていくことができました。それからお金の本などを読むようになって、FPの資格を取りたいと本格的に思うようになりました。なので、独立するならFPと決めていました。

会社員時代、あるお金は使ってしまう"貯まらん女"だった

政治経済を専攻したり、外資系のお仕事をされていたりということで、以前からお金に関心はあったんでしょうか。

花輪 そうですね、学生の頃からお金に関心がありました。なので、就活では証券会社を受けるなどしてましたね。ただ、お金は好きだったんですが、自分自身がお金の管理ができていたかというとそうではなくて……。ついつい使い過ぎてしまったり、お金に振り回されるタイプではありましたね(笑)。

著書にもあるように、独身時代は「貯まらん女」だったとか。当時は主にどんなことにお金を使われていたんですか。

花輪 給料のほとんどを、服とかコスメとかに使っていました。かといって、そのとき購入したものを今でも大切にしているかというとそうではなくて。振り返ると、本当にもったいない使い方をしていたなと思います。

貯まらん女のお金がみるみる貯まる魔法のレッスン88

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  • 作者: 花輪陽子,ふじいまさこ
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス

「貯金しよう」とは考えていらっしゃらなかったんですか。

花輪 そのときは貯金のことをそんなに考えていなかったです。大学時代も、アメリカに短期留学したときにクレジットカードの限度額30万円しっかり使ってしまったこともありましたし。昔から浪費癖がありました。就職して給料をもらえるようになってからも、「収入が常に入ってくる」という過信があったので、収入に比例して使うお金も増えていって……。

そこからどうやって気持ちを切り替えたのでしょうか?

花輪 まずひとつめは、先ほども少しお話しましたが婚約がきっかけです。婚約したときに、クレジットカードの残債が200万円ぐらいあったんです。「これはいけない。結婚式までにこの残債をなんとかしなければ」と思ったんです。あと、今もですが主人の存在が私の浪費防止になっているのは間違いないです。

なるほど。ほかにもきっかけがあったのでしょうか。

花輪 あとはやはりリストラですね。収入が途絶えてしまったので、お金の使い方を見直さざるを得なくなってしまって。人は追い詰められないとなかなか変われないものです……(笑)。

ちなみにご主人のお金の感覚は、花輪さんと近いのでしょうか?

花輪 主人はもともと物欲がなくて、浪費するようなタイプではありませんでした。私と真逆で、なにもしなくてもお金が貯まっていってしまうような人です。

お金の使い方でご主人ともめることはありませんか?

花輪 意外とないんです。でも、今でも私がまとまったお金を使ってしまうことがたまにあるので、そういうときは不服そうにしています。夫婦共同のお金なので、もちろん事前に相談はしていますが。

花輪さん

目に見えるものが全てじゃない。経験だって大きな財産

雑誌やWebなどで働く女性の悩みに答える記事も書いていらっしゃいますが、最近の働く女性はどのようなお金の使い方をされていると感じますか。

花輪 働く女性でもいろいろカテゴリーがあり、年収や、既婚や未婚、一人暮らしや実家暮らし、住んでいる地域によっても変わってくるので一概には言えないのですが……。旅行や食べ物、洋服、コスメ、趣味などいろんなことに関心がある人が多くて、まんべんなくお金をかけているというよりかは、「自分がこだわっているところにお金をかけている人」が多くなってきているのかなという印象がありますね。

貯金に対する意識はどうでしょう?

花輪 年収300万円ぐらいでも、30代で1000万円貯金できている方もいらっしゃいますし、高収入だけど支出も多くて、貯金が全然できていない人もいらっしゃいます。「貧困女子」というワードが2012年ぐらいに出てきましたが、収入と貯金額というのは必ずしも比例しているわけではありません。

使い方の問題なんですね。貯金が全然できていなくて不安を感じている方も少なくないのではないかと思います。そういう人に向けてアドバイスをいただけますでしょうか。

花輪 そうですね。でもそういう方は「経験」がたまっていると思うんです。お金を全然使っていないという方は、経験がたまっていない場合もありますし。例えばファッションにお金をかけていた人は、ファッションセンスが養われているはずです。旅行が好きな人は世界中に友人ができたかもしれない。

お金はたまっていなくても、目に見えない資産が残っていればそれはそれでいいので同じくらいの価値があるのではないかと思います。貯金額だけでなくて、無形資産を一度棚卸ししてみるのもいいかもしれないですね。

さまざまな転機を乗り越え、現在の生活に

自身の働き方を振り返って、転機だと感じた出来事を教えてください。

花輪 リストラ、出産、シンガポールへの移住の3つです。

先ほどリストラのお話は伺いましたが、出産はどのような点が?

花輪 妊娠した時期が、FPとして1番乗りに乗っている時期だったんです。もちろん子どもができたという嬉しさはとても大きかったのですが、テレビのレギュラーなど、受けたかった仕事もお断わりせざるを得ないこともあり、そういう面では自分の働き方について悩みました。

出産前後はどうしても仕事に影響が出てしまうのは、難しい問題ですよね……。そして出産後、続けざまにシンガポールの移住が決まったそうで。

花輪 はい、出産して1年後ぐらいに夫の仕事の都合でシンガポール行きが決まりました。子どもが小さかったこともありますが、テレビの出演や講演といった、日本でしかできない仕事は断らなければいけなくなるので、私が東京で築いてきたキャリアはどうなるんだろうって思うと、正直不安になりました。悩んだ末、家族全員で移住することを決めましたが、やっぱりシンガポールに移住してすぐのころはけっこうふさぎ込んでいましたね。

立ち直ったきっかけはあるんでしょうか。

花輪 シンガポールでもFPとしての仕事ができる、と分かってからですね。移住してからもコラムの執筆など、継続してお仕事をいただけたのは嬉しかったです。

シンガポールに来てからはどのようにお仕事をされているんですか。

花輪 子育てもあるので、最初は仕事の量をかなり減らしていましたが、最近は執筆を中心に仕事をしていて、15程度の媒体で連載を持っています。電話やメールでもいいという場合が多いので、インタビューの仕事も増えてきて。テレビや講義など、日本でなければできない仕事を除けば、日本にいたときとそこまで大きな変化もなく仕事ができているかなと思っています。

花輪さん

今後、「こうしていきたい」といった思いはありますか。

花輪 シンガポールに来て3年になりますが、今年からはシンガポールでの活動を増やしたいと思っています。会計士さんと一緒にセミナーを開いたり、シンガポールや日本を中心とした、アジアに住んでいる日本人に向けた活動をしたり。こちらに住んでいる人には、いずれは日本に帰ろうと思っている人も多いので、いろんな需要に合わせた内容を考えているところです。

花輪さんは今後日本に帰る予定はあるんですか?

花輪 今のところないですね。それに、実はこっちに長くいてもいいなと思っていて。最初はシンガポール行きに戸惑いましたが、来てみるとシンガポールにいるということもひとつのコンテンツになっていて。シンガポール在住のFPはほとんどいないので、差別化できるようになったんです。シンガポールにいることで自分独特の視点が持てるようにもなりました。

なるほど!それはひとつの強みですよね。

花輪 そうですね。なので、今後はそれを活かした新しいビジネスを展開できたらな、なんて思っています。シンガポールや香港の金融機関や金融商品の情報を研究して、その情報を日本人の方に提供できたらいいなと。

マイナスのものをプラスに捉えるように

シンガポールに来て、日本との働き方の違いについて感じることはありましたか。

花輪 割と現地の人と話してても、男女関係なくフラットな方が多い気がしますね。シンガポールで働く会社員の人からも、こちらの方が働きやすいとよく聞きます。業界を全く変えて転職をしたという人もけっこういらっしゃいますし、チャレンジしやすい環境なんだと思いますね。

リストラの経験をはじめ、逆境をプラスに変えてきた花輪さんですが、普段考え方において意識されていることはあるのでしょうか。

花輪 マイナスのものをプラスに捉えるように意識しています。日本人って、マイナスの感情はいけないような風潮があるじゃないですか。例えば、誰かに対して嫉妬するっていうのも、日本人はいけないことだと感じる場合が多い。でもそれって、実はその人に憧れていて、その人のようになりたいと思うパワーがあるということ。その感情を使って、自分とその人の差を埋めるという考え方や行動力に持っていけるはずなんですよね。怒りとかも同じです。一見マイナスの感情ときちんと向き合って、プラスに働くパワーに変えていきたいなと思っています。

嫉妬や怒りという感情の原因を知ることが大切なんですね。本日はありがとうございました!

取材・文/石部千晶(六識)

お話を伺った方:花輪陽子さん(ファイナンシャル・プランナー)

花輪陽子

シンガポール在住のファイナンシャル・プランナー(FP)。CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。夫婦同時失業を経験したのちFPとして独立。自分自身の"貯まらん女"だった経験をもとにしたアドバイスで、働く女性からも高い支持を得る。「少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図 」(講談社+α新書)、「毒舌うさぎ先生のがんばらない貯金レッスン」(日本文芸社)など著書や監修本多数。

次回の更新は、2018年5月9日(水)の予定です。

編集/はてな編集部

*1:日本FP協会が認定する民間資格