「巻き込んで子育て」で仕事と家庭を両立 働くママは冷徹な司令塔であれ

川崎貴子

私は、女性に特化した人材コンサルティング会社を経営している傍ら、他2社の社外取締役、コラムニストとしての執筆を月に数本、その他に講演や取材をガチャガチャと受けているため、人様に大変忙しそうな人だと思われております。本当はそうでもないのですが……。

また、我が家には11歳と4歳の娘がおり、その娘たちと一緒に食事をする様子や休日の様子をSNSに時折アップしているため図らずも、

「仕事と家庭の両立ができているのですね」

という壮大な誤解を友人知人に与え続けてしまっています。

「ワークライフバランスな私」はSNSを通して私が作り出した虚像です。ただ、実際のところはどうであっても、何とかかんとか仕事が回り、子供たちが元気で、幸せに毎日が送れているのにはいくつか理由があると自負しております。

ちっとも羨ましくない両立法かもしれませんが、現在子育て中の働くママや、これから結婚して出産する女性たちが「こんなんでいいんだ」と、少しでも肩の荷を下ろすことができればと思い、今回は恥を忍んで我が家の事例を書きつづりたいと思います。

まわりの協力も得ながら家事育児を回す

さて、友人知人は「ワークライフバランスな川崎貴子」と誤解してくれたりするわけですが、初対面の人の場合、何かの拍子に私に子供がいるという話になると必ずと言っていいほど一瞬絶句されます。

「お、お子さんがいるようにとても見えないですね……」

この一瞬の絶句は、私が若く見えるとか、所帯じみていないとか、そんなプラスの素敵な理由では200%ありません。

子育てに集中している母親がまとう特有のまろやかな優しさや母性的な空気が私から1ミリも感じられないことが原因と思われます。その代わり、ガンガン仕事して憂さ晴らしに梯子酒してる雰囲気は醸し出してしまっているのでしょう。そのギャップに皆さん驚かれるのです。

第一印象って怖い……。そんな洞察力に優れた「初対面の皆さま」に出会う度に私は思うのです。

ばれてるやん!
家事と子育て、 専任で従事したことがないのだだ漏れやん!

思えば長女が生まれた時、彼女の生後3週間で職場復帰した私は、私と元夫、ベビーシッター2名(8:00~15:00までの人と15:00~20:00までの人)、私の実母、妹の計6名で家事育児を回しておりました。メーリングリストを作り、娘の日々のバージョンアップを共有し、ともに喜びともに問題解決にあたったものです。

その後離婚してシングルマザーになるも、元夫が抜けただけでプロジェクトC(Cは長女の名前である「ちあき」の「C」をもじったもの)は滞りなく遂行されました。

巻き込み型子育てにもルールがある


Photo by Kat Grigg

それから1年後、今の夫(当時ダンサー)と再婚。その頃会社を拡大するために奔走していた私は大黒柱担当となり、夫がダンスの仕事と兼業で家事育児を担当することになりました。これをもってプロジェクトCは正式に解散することになりましたが、新たに夫の両親がその穴を埋めてくれるように参戦。定期的に子育てを手伝ってくれました。

さらに6年後。次女を出産するタイミングで実父が他界。一人になった実母と同居することになり、さらに夫も新しい仕事にチャレンジするため外で働き始め、

  • 家事は
    • 洗濯が実母
    • 掃除は夫
    • 料理は私
  • 子育ては
    • 3名体制 + 義母が週一で手伝ってくれる

という現在の体制に相成りました。

こうやって羅列してみると、なんて多くの人に助けてもらってきたことか……と、我ながら呆れます。しかし、私に巻き込まれた形とはいえ、助けてくれた全ての人が未だに娘たちの成長を見守ってくれているというありがたさに、改めて胸が熱くなりました。

確かに私はラッキーです。でも、この巻き込み型子育ては「ラッキーな人の、ラッキーだった子育て」という側面の他に「私特有のルールや秘訣」らしいものがあるにはあるのです。

1. 柔軟性の高いパートナーを選ぶべし

元夫も家事や育児のアウトソーシングは全く抵抗のない人でしたし、今の夫はさらに子育てのために家庭に入ったり仕事を変えたりと人生をアクロバティックに変化させてくれました。男女ともに「自分はこういう働き方しかできない!」であったり、頑なに「他人が家に入るのは嫌!」とならない「柔軟なパートナーを選ぶこと」は私の経験上とても重要だと言えます。

2. 任せて、感謝して、丸投げすべからず

子育てがスタートしてから現在まで我が家はシフト制なわけですが、その時々に担当してくれている人が実母であろうとシッターさんであろうと、ちゃんと「信頼して任せる」ことが重要です。

逐一チェックしたり、自分のやり方を細かく押し付けたりしても担当者のモチベーションを下げるだけです。情報共有は大切にしながら、毎日感謝の気持ちを言葉で伝え、気持ちよく手伝ってもらえる空気、互いに相談しあえる空気を作ることが肝でした。

3. 優先順位を間違えず、コア業務に集中するべし

家事を分担すると、コップ一つ洗ったの洗わないので夫婦は喧嘩になります。共働きですもの、家電にはガンガン投資いたしましょう。「手作り料理が愛」「毎日ピカピカな家を維持するのが愛」という幻想を捨てて、時には外食やデリバリー、時にはホコリがあってもかまへん、かまへん。

私と夫の家庭でのコア業務は「子供と話し、触れ合うこと」だと思っています。そして、仲の良い夫婦関係を維持し、その空気の中で子育てをすること。忙しさに翻弄されてコア業務の優先順位が下がらないように注意が必要です。

4. アウトソーシング費用は投資と思うべし

ベビーシッターも私立の保育園も託児所も、夫婦片方の給与が飛ぶほど高かったりします。我が家もそうでしたが、結局「子供を預けるために働いているようなもの」であり、「それだったらお母さんが仕事を辞めた方がいいのではないか?」という思考になるのは十分理解できます。

でもプラマイゼロはあくまでも現時点だけのこと。長い目で見ると、ここでキャリアを手放しブランクを作ると生涯年収で1億以上の損失が出るとも言われています。年金支給が危うい我々世代が、長い人生の中で家族の疾病や夫の失業などのトラブル時にも、子供たちの可能性にお金を投じられるよう、尚且つ自分たちが老後食べていくためにも、これからは家族にとって「妻の経済力」は最強のインフラになるであろうと予想されます。一時的な損得勘定と情に惑わされず「長期ビジョンでの判断が必要」です。

5. 理念とビジョンを作り、最重要業務は夫婦でするべし

いよいよ会社経営の体をなしてきましたが(笑)、会社経営と家庭経営を両方経験した者として言わせていただければ、これらは非常によく似た性質を持っていました。どんなに親族やプロに子育てを手伝ってもらったとしても、「どんな子供に育てたいのか」「どんな家庭にしてゆきたいのか」を決めるのは共同経営者である夫と妻です。

少し前になりますが、夫が私に「次女がおばあちゃんに甘やかされて育っているから良くない」的なクレームをずらずら言いだしまして、私は久しぶりにキレたものです。

おばあちゃんはあくまでもパートタイマー。いえいえ、無報酬ですから善意のボランティアです。こうしたい、という具体的な代替案があれば私を通して共有するもよし。私たちの理念とビジョンが伝わっていないだけです。それよりも何より、最重要業務である基本的な子供たちの躾(しつけ)は我々夫婦がやること。それは経営者が「うちの業績が悪いのはボランティアの人のスキルが低いから」などと言っているようなものです。

協力してくれる義実家もボランティアであり、我が家の大切なステークホルダー。食事会や旅行を企画して親族が仲良く結束できるよう、理念やビジョンが共有できるよう、家庭の経営者も「全てのステークホルダーの満足度」を考えなければならないのです。

仕事を持つ妻が専業主婦と同じように家族に手をかけ、ケアすることはできません。でも、できない自分を責めたり、気の利かない夫を責めて夫婦仲が悪くなったりするよりは、働くママが自らは専任で手を下さず、仕事で培ったスキルを家庭でも存分に生かし「優秀な司令塔になる」のが手っ取り早いのです。子育て中の最大のリスクは、共同経営者である夫と妻が疲弊して家庭に笑顔がなくなることです。

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3歳児神話とか流派の違う教えに惑わされず、関わってくれる全ての人たちと密なコミュニケーションを取り、各家庭においてオリジナルな「仕事と家庭の両立」を目指していただきたいと切に、切に願っております。

家庭のためだけ、仕事をこなすためだけにそれぞれが存在するのではなく、個人と家族が幸せになるために「仕事」も「家庭」もあるのですから。

著者:川崎貴子

川崎貴子

1972年生まれ。埼玉県出身。1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を展開。女性誌での執筆活動や講演多数。著書に「結婚したい女子のためのハンティング・レッスン」「私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由」「愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。」「上司の頭はまる見え。」がある。2014年より株式会社ninoya取締役を兼任し、ブログ「酒と泪と女と女」を執筆。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。10歳と3歳の娘を持つワーキングマザーでもある。 Facebookはこちら